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ユニゾ買収、HISはどこでボタンを掛け違えたか

8月20日(火)5時40分配信 東洋経済オンライン

HISの買収提案を退け、ソフトバンク傘下の不動産投資会社フォートレスによる買収を受け入れたユニゾホールディングス(撮影:梅谷秀司)
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HISの買収提案を退け、ソフトバンク傘下の不動産投資会社フォートレスによる買収を受け入れたユニゾホールディングス(撮影:梅谷秀司)
 旅行会社大手のHISに敵対的買収を仕掛けられた不動産会社ユニゾホールディングスが「ホワイトナイト(白馬の騎士)」として選んだ資本提携相手は、アメリカの不動産投資会社フォートレス・インベストメント・グループだった。

 8月16日、ユニゾはフォートレスからTOB(株式公開買付け)を受けると発表した。TOB価格は1株4000円。発行済み株式数の66.67%にあたる2281万株を下限に、応募のあった全株を買い付ける。期限は10月1日までで、TOBが成功した場合、フォートレスは残りの株式も強制取得し、ユニゾを上場廃止とする方針だ。
■HISのTOB提案は「シナジーも信頼関係もない」

 ユニゾに対してはHISが7月11日から、1株3100円で最大1375万株、発行済み株式数の45%を上限に買い集めるTOBを仕掛けていた。

 ただ、ユニゾ側はHISのTOBを検討した結果、「シナジーがない、TOB価格が不十分、一方的な提案で信頼関係がない」として反対を表明。アドバイザーを使って対抗提案を16社から募り、そのうち4社と交渉し、最も高いTOB価格を示した1社であるフォートレスを選んだという。
 フォートレスはアメリカの不動産投資会社だ。2017年末に投資ノウハウの取得を狙ってソフトバンクグループが約33億ドル(3500億円)で買収している。日本では旧ツカサウィークリーマンションから独立したホテル運営会社、マイステイズ・ホテルを2012年に買収している。

 フォートレス側の開示資料によれば、ユニゾを完全子会社化し、自社のノウハウを注入することで、企業価値の向上に貢献できると判断したという。
 フォートレスが提示した4000円という水準は、直近の株価を大幅に上回る。HISがTOBを公表するまで2000円前後で推移していた株価は、HISがTOBを公表した後、TOB価格の3100円を上回る水準で推移していた。

 この間、株を買い集めていたのが、大手アクティビスト(物言う株主)のエリオット・マネジメントだ。同社は直近でユニゾ株を9.9%保有する大株主に浮上している。

■ユニゾとHISの「浅からぬ縁」
 注目が集まるのは今後のHISの対応だが、今のところ「ユニゾの発表した内容を精査する。対応が決まったら公表する」(会社側)とするのみだ。

 そもそもHISにとって、ユニゾ買収にメリットがあったのだろうか。ユニゾ側の質問に対してHISが示した回答やユニゾの反対表明をみる限り、都市部でビジネスホテルのような宿泊特化型ホテルを展開するユニゾと、リゾートホテル主体のHISのホテルでは相乗効果が乏しい。

 さらに、両社の間に「信頼関係がない」点も大きい。
 HIS側が、財務担当取締役の中谷茂氏らが訪問したり、証券会社を通じてユニゾ側に提携を打診したと説明しているのに対し、ユニゾ側は30分間のただの表敬訪問で業務提携の打診はなく、証券会社を通した打診も不明瞭で意味があるものではなかったと反論している。

 実はユニゾとHISには浅からぬ縁がある。ユニゾはかつて、ハウステンボス内の高級ホテル「ホテルヨーロッパ」の不動産について、3分の2を保有していた。だが、経営不振が続いたハウステンボスが2003年に会社更生法の適用を申請。2010年からはHISがスポンサーとして再建に取り組むことになった結果、ハウステンボス側からホテルヨーロッパの資産譲渡を求められた。
 ユニゾの当時の開示資料によれば、ハウステンボスの運営方針が変わり、ホテルヨーロッパが閉館する可能性があること、再生計画の一環として賃料の見直しが条件とされており、同社からホテルヨーロッパの譲渡を求められたことが記されている。

 そして、ユニゾは当時の簿価で約43億円あったホテルヨーロッパをわずか0.5億円でハウステンボスに譲渡。関連損失も含めて、2010年3月期に45億円の特別損失を計上した。

■株式市場はもう一段のTOB価格切り上げを期待
 今でこそハウステンボスはHISの大きな収益柱だが、2010年当時は経営再建の展望が見えない状況だった。HISにとってもユニゾにとっても、ホテルヨーロッパの譲渡と損失計上は仕方がない選択肢だったかもしれない。

 ただ、HIS側が今回のユニゾ買収を進めるにあたって、ユニゾの過去の協力に敬意を払い、澤田秀雄会長兼社長自身が提案を持ちかけていれば、もう少し違う結果になっていた可能性はある。

 ユニゾをめぐっては、HISとエリオット、今回のフォートレスと、当事者が増えるたびに株価が釣り上がってきた。8月19日時点のユニゾの終値は4080円と、フォートレスの提示した価格を上回る水準だ。
 ある市場関係者が「株価が示しているのは『もう一波乱ある』という市場の期待だ」と指摘するように、市場はもう一段のTOB価格切り上げを期待している。ユニゾが保有する不動産の含み益は2000億円以上あり、見ようによっては株価はまだ割安と捉えることもできる。

 次の焦点は8月23日。HISがTOB終了までにどれだけの株式を集められるか。その結果次第で、各社の出方も変わってきそうだ。
松浦 大 :東洋経済 記者

最終更新:8月20日(火)5時40分

東洋経済オンライン

 

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