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小学校の「プログラミング教育」は何をすべきか

8月19日(月)5時10分配信 東洋経済オンライン

45分×2単元で行われたプログラミング授業。写真は5月に京都府の小学校で行われた出前授業(撮影:ヒラオカスタジオ)
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45分×2単元で行われたプログラミング授業。写真は5月に京都府の小学校で行われた出前授業(撮影:ヒラオカスタジオ)
 7月上旬、東京都渋谷区にある区立鳩森小学校の体育館で児童たちの笑い声が響いた。

 「変な動きになっちゃったよ」

 3人1組になって、手元にあるタブレットを熱心に操作する子どもたちの視線は、彼らの指示を受けてしゃがんだまま歩き出す「ロボット」に集まっていた。

■プログラミング必修化を前に教育現場の悩み

 「動け! せんせいロボット」と銘打ったこの取り組みは、京都の電子部品大手、村田製作所が手がけるプログラミング教室だ。
 村田製作所の社員が講師となって、全国の学校で実施している出前授業の1つで、来年度から学習指導要領の改訂で必修化されるプログラミング授業を想定している。5月に京都府の小学校で1回目のプログラミング授業を行っており、鳩森小学校は2回目となる。

 プログラミング授業の必修化を前に全国の学校現場では悩みが広がっている。必修化の目的は「Python(パイソン)」などのプログラミング言語を学習させるような専門的なものではない。「目的を達成するために物事を順序立てて考え、結論を導き出す」という論理的思考を身につけることが狙いだ。
 ただ、教える側からは「タブレットやパソコンの操作に不安がある」(長崎県の小学校教員)や「そもそも何をすればいいのか」(都内の小学校教員)という声があがっている。

 必修化の前年となる今年に入り、多くの学校や教育委員会はプログラミングに関するノウハウを持つ企業に対し、「出前授業」という形で協力を仰いでいる。村田製作所は2006年から、ロボットに入っている部品の仕組みなどを知ってもらうための出前授業を年100校に対して行ってきた。
 村田製作所のプログラミング授業はとてもユニークだ。多くの企業が提供するプログラミングの出前授業は、画面上で「前に進め」のようなシンプルなコマンドを選択し、実際に映像やロボットを操作することが多い。それに対し、村田製作所では人間をロボット役にして、子どもたちが彼らにタブレットを通じて指令を出す。

■子どもたちの指示通りにロボット社員が動く

 まず、段ボール製の「ロボット」を村田製作所の社員がかぶり、スマホを設置する。子どもたちは手元にあるタブレットで「前に進め」「右を向け」といった複数の指示を、順番を決めて出す。ロボット役の社員はスマホを見て、子どもたちの指示通りに動く。
 ロボット役は、3歩先に障害物があっても指示通りに動かなくてはならない。進む回数を誤ったり、間違った方向を指示したりすると、ロボット役は障害物にぶつかってしまう。

 ロボットに腕立て伏せをさせるなら、「うでを90°上げる」「ひざ立ちをする」「こしを90°曲げる」「ひざをのばす」「ひじを曲げる」「ひじをのばす」といったコマンドを、順序よく組み立てる必要がある。指示を1つ間違うだけで、ロボット役の社員が無理な体勢を強いられることも起きる。
 本物のロボットではなく、ロボット役の人間にこだわったのは、その方が子どもたちが深く考えるきっかけになると考えたからだ。

 授業を担当する村田製作所広報部の吉川浩一氏は「デジタルで無機質なロボットを動かすだけだと、コマンド入力を失敗してもすぐにやり直せばいいと思って、深く考えない。しかし、人間だと失敗したときに辛そうな状態になっていることが伝わり、申し訳なさからしっかり考えようとする」と狙いを話す。
 実際に、子どもたちの中からは「次にその指示を出したら、しゃがんだまま歩くことになってかわいそうだよ」との声も聞こえてきた。人間がやるロボット役は子どもたちにとっても親しみやすい対象で、ロボットにひどいことをさせてはいけないと自然に思わせる効果がある。

 さらに、「無理な動きや無駄な動きは人間でもロボットでもそのぶん余計なエネルギーを消費することになる。しっかりと考えさせることで目標に向かって合理的な判断ができるようになり、プログラミング教育の趣旨にも合っている」(吉川氏)と、人間ロボットの教育効果にも期待する。
■出前授業で従業員満足度も向上

 参加した子どもたちからは、「当たり前に動かしている自分の体の動きを理解できた」「動きをどう説明して伝えればいいか気づいた」などの感想が寄せられたという。人間が普段のコミュニケーションの中で、高度な判断を自然にできているという能力の高さを知る機会にもなっている。

 講師役の社員は決してプログラミング教育を専門的に担当している社員たちではない。社員にとっても普段の仕事の考え方を、教育という社会貢献で実践できる楽しさがある。出前授業によって従業員満足度を高め、社内で自社の企業価値を再認識してもらえる。
 村田製作所は今後も島根県出雲市、岡山県瀬戸内市など、同社の事業所がある地域の学校を中心にプログラミング授業を展開していくことにしている。
劉 彦甫 :東洋経済 記者

最終更新:8月19日(月)5時10分

東洋経済オンライン

 

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