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「太郎と進次郎」、首相候補2人のライバル意識

8月19日(月)6時50分配信 東洋経済オンライン

将来の首相候補としてライバル関係にある河野太郎氏(左)と小泉進次郎氏(右)(写真:左はロイター/アフロ、右はつのだよしお/アフロ)
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将来の首相候補としてライバル関係にある河野太郎氏(左)と小泉進次郎氏(右)(写真:左はロイター/アフロ、右はつのだよしお/アフロ)
 夏休み状態の永田町にあって、将来の首相候補2人は公私ともに多忙を極めている。河野太郎外相と小泉進次郎自民党厚生労働部会長だ。

 河野氏は外相として東奔西走し、小泉氏は滝川クリステルさんとの結婚について関係者への報告に追われている。

■ともに世襲エリート、英語が堪能な人気者

 両氏とも神奈川県出身で、代々続く政治家一家の世襲エリート。どちらも学生時代にアメリカに留学し、英語は堪能だ。選挙区での人気も高く、ポスト安倍の総理・総裁候補にもそろって名を連ねるなど、政治家としての共通点が多い。
 経歴や現状をみれば「似た者同士」(自民幹部)ともいえるが、これまでの政治家としての生き方や、父親との関係などでは違いが目立つ。近い将来、自民党総裁選で対峙する可能性が高いが、両氏の本格的なライバル関係はようやく始まったばかりだ。

 現在、河野氏56歳、小泉氏38歳と年齢は二回り近く離れている。初当選は河野氏が33歳、小泉氏は28歳で、いずれも先代から続く選挙地盤を引き継ぎ、当選を重ねてきた。河野氏の同期には菅義偉官房長官ら有力政治家も多く、小泉氏の同期には斎藤健元農林水産相がいる。
 河野氏は、2015年10月発足の第3次安倍内閣(第1次改造)で国家公安委員長・内閣府特命担当相(規制改革など)として初入閣。 2017年8月発足の第3次安倍内閣(第3次改造)で外相に抜擢され、その後も再・留任して「総理・総裁候補への足掛かりをつかんだ」(自民幹部)。

 河野太郎氏の父は、元衆院議長の洋平氏。自民党の実力者として副総理兼東京五輪担当相などを務めた一郎氏は祖父、参院議長を務めた謙三氏は大叔父という名門政治家一家だ。
■2人とも党内有数の政治家一家

 祖父、父とも総理・総裁を目指したが、祖父・一郎氏は総理・総裁の一歩手前で病に倒れた。さらに、父・洋平氏は、8党派の細川連立政権が誕生した1993年6月の衆院選後に野党の自民党総裁となり、その1年後の自社さ連立内閣(首相は村山富市社会党委員長)で副総理・外相も務めたが、1995年の党総裁選では所属した派閥(宏池会)の内部対立で出馬断念を余儀なくされ、首相になれなかった初めての自民総裁となった。
 この総裁選で勝ったのはその後首相になった橋本龍太郎氏で、対抗馬として小泉純一郎氏(元首相)も出馬している。

 河野氏は父・洋平氏の地盤の一部を引き継いで、1996年衆院選で神奈川15区から出馬・初当選し、現在8期目。自民党が2度目の下野に追い込まれた2009年衆院選後の総裁選には閣僚経験のないまま立候補し、谷垣禎一氏(政界引退、前自民党幹事長)に敗れている。

 一方、小泉氏は「政権交代選挙」と呼ばれた2009年衆院選で父・純一郎元首相の地盤を引き継いで初当選し、現在当選4回。閣僚経験はなく、自民党青年局長や農林部会長、復興大臣政務官などを経て、現在は厚生労働部会長として社会保障政策の党側の取りまとめ役を務めている。
 小泉氏の曽祖父・又次郎は戦前に衆院副議長や逓信大臣を務め、祖父・純也氏は防衛庁長官、そして父・純一郎氏は2001年4月から約5年半首相を務めた、こちらも党内有数の政治家一家だ。

 今やライバル視される関係となった両氏だが、それぞれの父親との関係は対照的だ。初当選後、13年間にわたって父・洋平氏と親子で国会議員を務めた河野氏は、「父と私は別人格」が口癖で、洋平氏も「息子のやることには関知しない」と距離を置いていた。
 洋平氏が持病の肝機能障害が重症化した際、太郎氏がドナーとなって自らの肝臓の3分の1を提供したが、外相就任後の河野氏の言動について、父・洋平氏は公式の場でも「俺に聞かないでくれ」と顔をそむける場面が多い。

■一匹オオカミの河野氏、若き優等生の小泉氏

 一方、小泉氏は大騒ぎとなった先の結婚発表会見でも「政治家としての父をまねするつもりはない」と語ったが、「一緒に温泉に行くなど、お父さんっ子で、常日頃の相談相手も父」(小泉氏周辺)とみられている。今回の滝川クリステルさんとの結婚についても、小泉氏が滝川さんを父と引き合わせた際は「(父も)涙ぐんでいた」(兄・孝太郎氏)とされるなど、政界でも「仲良し親子鷹」として知られる。
 政治家としての歩みも大きく異なる。河野氏は徒党を組むことを嫌う一匹狼として独自の活動を展開し、「変人」「異端児」と揶揄されることが多かった。料亭政治などを嫌い、政治家や官僚との打ち合わせもハンバーガーで済ませるなど、従来の自民党政治家とは一線を画した。このため、初入閣も遅く、外相になるまでは本格的な総理総裁候補とはみられていなかった。

 これに対し、小泉氏は初当選時から若さとルックスですぐさま人気政治家となり、父親譲りの弁舌とアピール力で安倍首相と並ぶ人気応援弁士として東奔西走。「若き優等生」(自民幹部)として瞬く間に「近未来の総理総裁候補」としての地歩を固めている。ただ、小泉氏は2012年9月の自民党総裁選と2018年9月の前回総裁選では、いずれも首相の対抗馬だった石破茂氏(元幹事長)に投票している。
 また、安倍政権での河野氏の初入閣や外相抜擢の際は、当選同期でもある菅義偉官房長官が河野氏を強く推薦したとされ、党内では「河野氏の後ろ盾は派閥の親分の麻生氏ではなく、菅氏」との見方も広がる。

 初当選以来、菅氏とは一定の距離を保ってきたとされる小泉氏だが、参院選直後の7月下旬に月刊誌の企画で菅氏と初めて対談。菅氏は小泉氏を「ポスト安倍の有資格者」と持ち上げた。

 8月7日にはあえて菅氏を官邸に訪ねて結婚を最初に報告したことで、「菅氏と小泉氏の距離が一気に縮まった」(自民幹部)とみられている。このため、「菅氏は令和おじさんとしての人気急上昇でポスト安倍の有力候補となったが、本音は河野、小泉両氏の後見人として自民党のキングメーカーを狙っているのでは」とのうがった見方も出ている。
 もちろん現状では、首相が4選を狙うか、任期途中で退陣しない限り、2021年9月に実施される予定の総裁選の有力候補は石破氏と岸田文雄政調会長だ。河野氏は「第3の候補」としての出馬に意欲をにじませるが、小泉氏は「次の次狙い」(周辺)との見方が多い。仮に河野氏が出馬しても、年長で当選回数も多く派閥の領袖でもある石破、岸田両氏を破って河野氏が首相の座を射止める可能性は低いとみられている。

 となれば「次の次」となる2024年総裁選で、河野、小泉両氏が激突する可能性は少なくない。その時には河野氏は61歳、小泉氏は43歳で、小泉氏が勝てば自民党史上最年少の総理総裁誕生となる。その場合、勝敗のカギを握るのは安倍、菅両氏となる可能性が高い。
■王道を歩む小泉氏、横道から頂点目指す河野氏

 小泉氏については、現在、派閥を超えた自民若手中心の「小泉親衛隊」が形成されている。祖父と父が首相だった福田達夫氏(衆院当選3回)がその中軸となるなど、政権獲得への基盤づくりも進んでいる。 

 対する河野氏は、麻生派を引き継ぐ可能性も不透明だ。それだけに河野、小泉両氏が対決する総裁選では、「派閥単位での多数派工作に頼らない新時代の総裁争い」(自民長老)となる可能性もある。その場合、党員・党友による地方票が勝敗のカギとなるが、現状では圧倒的な人気を持つ小泉氏が有利だろう。
 ただ、政治家の人気は移ろいやすい。今回の結婚発表も「あまりにもあざとい」との自民党内の批判ややっかみも少なくない。一方で、河野氏も「もともと一匹狼だけに党内に友人が少ない」(自民若手)という弱点も目立つ。

 戦後の政界で祖父と孫が首相となったのは、「吉田茂―麻生太郎」「鳩山一郎―鳩山由紀夫」「岸信介―安倍晋三」の3組で、親子で首相というのは「福田赳夫―福田康夫」だけだ。将来、小泉氏が首相の座を射止めれば2組目の親子首相となる。一方、河野氏が首相となれば「親子孫3代かけての悲願達成」となるわけだ。
 これまでの河野、小泉両氏の総理総裁候補への歩みを比較すれば、「小泉氏は王道、河野氏はやや横道から頂点を目指している」(自民長老)ようにもみえる。保守合同後、神奈川県選出の首相は小泉純一郎氏だけで、「まさに政治家一家の跡取り同士の因縁の対決」(自民幹部)となる。どちらが勝つのか、はたまた2人とも首相の座にたどり着くのか。それは「今後の両氏の行動次第」(首相経験者)となる。
泉 宏 :政治ジャーナリスト

最終更新:8月19日(月)6時50分

東洋経済オンライン

 

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