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米で「逆イールド」発生 景気は将来的に後退するのか?

8月19日(月)15時00分配信 THE PAGE

 「リーマンショック」以来の将来的な景気後退の予兆なのか――。アメリカで「逆イールド」と呼ばれる現象が発生し、市場関係者の間で懸念が出ています。逆イールドがなぜ発生し、なぜ景気後退の予兆といわれるのか。第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストが解説します。

「2年物」と「10年物」で発生した理由は?

 8月14日の米国市場ではNYダウが800ドル超(3%程度)下落しました。引き金となったのは「米国債の長短金利逆転」です。通常、金利は満期までの期間が長いほど高くなるのですが、そうしたセオリーに反して、14日は2年金利が10年金利を上回る逆転現象が発生しました。これは逆イールドと呼ばれ、「景気後退の予兆」として広く認識されています。前回、逆イールドが発生したのは2007年で、その翌年にリーマンショックが起きました。14日の株式市場参加者は、この「凶兆」をみて景気に強気なポジションを解消、すなわち株式を売却したと推測されます。

 今回、逆イールドが発生したのは2年金利と10年金利です。ここで2年金利と10年金利について簡単に解説を加えましょう。まず、2年金利は市場参加者の政策金利見通しを素直に反映する特徴があります。FRBが政策金利を引き下げると予想される場合に2年金利は低下します。したがって、現在の2年金利が年初の2.5%から大幅に低下し1.5%付近で推移しているのは、FRBの利下げ予想が支配的になっているため、と理解できます。実際、FRBは約10年半ぶりの利下げを決定した7月に続き、更なる利下げを実施すると予想されています(筆者もそう予想しています)。

 他方、10年金利はより複雑な要因で決まります。政策金利の予想に加えて、中長期的な景気・物価動向などさまざまなファクターが加味されます。したがって、何らかの理由で将来の景気後退懸念が喚起された場合、政策金利の引き下げ予想と景気後退懸念が相まって、10年金利は(2年金利に比べて)大きく低下する傾向があります(例外多数)。

 今回、2年金利と10年金利で逆イールドが発生したのは、FRBの利下げ(予想)を受けて2年金利が低下傾向にある中で、将来の景気後退への懸念が膨らみ、それ以上に10年金利が低下した、という文脈で説明可能でしょう。

なぜ「景気後退の予兆」といわれるのか?

[グラフ]銀行融資担当者調査の銀行貸出態度
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[グラフ]銀行融資担当者調査の銀行貸出態度
 ところで、なぜ逆イールドは景気後退の予兆と認識されているのでしょう。一つは、過去の景気後退局面で、その1~2年前に逆イールドが発生していたからです。市場参加者がこうした経験則を強く意識していることに疑いの余地はありません。そしてもう一つは、長短金利差の縮小(逆転)によって、銀行が貸出利ザヤを確保しにくくなると銀行が貸出に消極的になり、企業倒産と失業が増えるためです。伝統的な銀行のビジネスモデルを念頭に置いた場合、短期金利(≒預金預金、調達金利)が長期金利(≒貸出金利)よりも高くなると、銀行は貸出で儲けることができませんから、貸出を絞ります。

 しかしながら、実際のデータをみると、長短金利差と銀行貸出態度の関係は不明確です。関係が全くないとは言えませんが、少なくとも現段階で銀行貸出態度は安定していますから、現在のところ逆イールドが景気後退を引き起こすメカニズムが強く働いているとは思えません。

 ただし、理論的根拠に乏しくても、逆イールド発生が人々の景気後退懸念を喚起することで、実際の景気後退を招くルートを侮ってはいけません。14日に「逆イールド発生→株価下落」という事象を目の当たりにして、人々が実際に景気後退を意識し始めたのは事実です。当面は、金融市場でこの逆イールドが話題となりそうです。
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※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

最終更新:8月19日(月)15時00分

THE PAGE

 

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