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「五輪後に東京の不動産価格が暴落する」は間違い

8月19日(月)11時00分配信 不動産投資の楽待

(写真:iStock.com/winhorse)
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(写真:iStock.com/winhorse)
2020年の東京五輪開催まで、あと1年を切った。「東京五輪後に不動産価格はどうなるのか」というのは業界内で何年も前から議論されているテーマだが、「価格は五輪まで上昇を続け、五輪後に暴落する」という予測も多い。

しかし、住宅評論の第一人者で年間200件以上の物件取材を行う住宅ジャーナリスト・櫻井幸雄氏はこの意見に真っ向から反論する。長年の経験と現場の取材を基に、東京五輪後のマーケットに対する見方を聞いてみた。

■「間違いなく儲かる」と思った事例

楽待新聞で記事を書くのは初めてだが、本題に入る前にひとつ断っておかなければならないことがある。

それは、私が「不動産投資をしていない」ということだ。

35年間不動産の取材をし続け、毎年200を超える物件の取材を行ってきているから、「これは、間違いなく儲かる」と確信した事例がいくつもある。

たとえば、渋谷区内の高級マンション「広尾ガーデンヒルズ」では新築分譲時(1986年前後)5000万円台で購入できる2LDKがあったし、新橋駅に近い汐留エリアの超高層マンション「東京ツインパークス」では新築分譲時(2000年から01年にかけて)3000万円台の1LDKもあった。いずれも最盛期3倍から10倍に値上がりしたし、賃貸として活用した場合も表面利回りで10%前後は確実だろう。
 
でも、手を出さなかった。

■600万円が1億円に

理由は、最初に取材したマンションにある。

私がはじめて不動産の取材をしたのは投資物件だった。1980年代のはじめ、六本木で売り出されたワンルームマンションで、約20平米が600万円という物件。全100戸くらいの規模で、私自身買ってもいいかなと思った。が、100戸一括で買うという中国人が現れて、一般には売り出されなかった。

その物件は、バブルのときに1部屋1億円まで値上がりした。それを知った私も「同様のワンルームを買っていれば…」と悔しい思いが浮かんだ。が、同時に悟りめいたものもあった。オマエはコツコツと取材をして記事を書いてゆきなさい、という神の思し召しのようなものだ。 

以来、取材だけの生活を送ったおかげで、市況の動きが読めるようになった。自ら不動産投資をやっていると、希望的観測が出てくる。これからの市況はこうなってほしい、こうならないでほしいという欲だ。すると、市況を見誤ることになりがち。

ところが、投資をしていないと、上がっても下がっても関係ない。ニュートラルな目で現場を見て歩くと、これから上がるか、下がるか、がピンとわかる。そして、おおよそその通りになった。

これまで、不動産市況の動きを外したのは、東日本大震災の後だけ。これから上がると考えていたのが、震災によって下がってしまった。その1回だけだ。

と、思いきり大きな風呂敷を広げてから、これからの予測を書きたい。

■マンション暴落論の中でも

東京五輪の閉会後に首都圏のマンション価格は大きく下がる、という予測がある。

しかし私は、都心マンションの価格が上がり始めた2015年以降、一貫して「この先、不動産価格は下がらず、東京五輪後も下がらない」と言い続けている。

2015年といえば、マンション暴落論が広まっていた時期。その中、「下がらないと言ってるのは、アンタだけだ」とテレビ局から取材が来たくらいだから、当時は異端扱いされていた。

実際、首都圏の不動産価格は下がらなかった。東京五輪後も下がらないだろう。

■過去の五輪開催国はどうなったか

その根拠として、私は、過去五輪を開いた国の状況を挙げている。

2016年のリオ五輪まで約30年の間で、五輪の開催地は次の通り。

16年 リオデジャネイロ(ブラジル)
12年 ロンドン(イギリス)
08年 北京(中国)
04年 アテネ(ギリシャ)
00年 シドニー(オーストラリア)
96年 アトランタ(アメリカ)
92年 バルセロナ(スペイン)
88年 ソウル(韓国)

過去8回の五輪開催国のうち、6カ国で五輪開催前から景気と不動産価格の上昇が起き、閉会後も下がらなかった。

中国と韓国で五輪閉会後も好景気が続き、不動産価格が上昇し続けたのはご存じの通り。近年陰りが見えてきたとされるが、中国は五輪終了後11年間好景気が続いている。韓国にいたっては五輪終了後30年も好景気だった。

92年バルセロナ五輪が開かれたスペインは07年から08年にかけてのリーマンショックで一時打撃を受けたが、それ以外の時期は好景気だ。96年アトランタ五輪のアメリカもリーマンショックまで不動産価格が上がり続けた。00年シドニー五輪のオーストラリアは、91年以降一度も景気後退が起きていない優等生である。

12年に五輪を開催したイギリスでは、五輪開催後もロンドン周辺の不動産価格は上昇を続け、現在は高止まりの状況を見せている。

■閉会直後から下がった国はない

過去約30年の前例を調べると、「五輪まで上がって閉会直後から下がった」という国の例はひとつもない。ちなみに8カ国のうち、景気と不動産価格の上昇が起きなかったのはアテネ五輪のギリシャとリオ五輪のブラジルの2カ国。これは特殊な例といえる。

ギリシャは経済が悪化し、ヨーロッパの「お荷物」になっていた。この状況を打破するため、五輪をきっかけに持ち直して、との期待を込めて開催が決まった。

ブラジルは成長する南半球の象徴として開催が決まった。しかし、サッカーのワールドカップ(14年)と五輪(16年)を立て続けに開催するのは無理があった。2つの国はいずれも五輪開催の費用が負担になり、五輪前から経済が悪化。五輪景気も盛り上がらず、ただ下がっただけ、という特殊ケースである。

■五輪後も不動産価格が下がらない理由

五輪開催が景気と不動産価格を上げる理由は、いくつかある。

まず、五輪開催国は基本的に政情と経済が安定している国が選ばれる(ギリシャとブラジルは例外)。

伸びる素地がある国が選ばれ、五輪に向けての公共投資が行われる。会場や選手村を建設するだけでなく、道路や鉄道の整備も行われる。前回、1964年の第18回東京五輪のとき、東海道新幹線と東名高速道路が作られたのが分かりやすい例だろう。公共投資とインフラ整備のおかげで、五輪開催後も経済は活気づき、閉会後も景気と不動産価格が上がるという流れだ。

加えて、都市の再開発が景気と不動産価格の上昇をもたらすことも分かっている。その例となるのが、12年にロンドン五輪が開かれたイギリスだ。

ロンドン周辺の不動産価格は五輪後も上昇を続け、今高止まりしている理由として挙げられているのが、五輪に向けて市街地を再開発したこと。スラム化した倉庫街を再開発し、テムズ川に大きな観覧車をつくって魅力的な場所にするなど街づくりに力を入れた。その効果でロンドンの魅力が増し、土地の価格が上がり続けたと分析されている。

■東京は再開発が目白押し

では、来年五輪が開かれる東京はどうか。

東京では、五輪開催が決まる前から副都心計画や市街地再生事業などの再開発を盛んに行っている。ロンドンと同じ事が、より大きなスケールで進行しているわけだ。加えて、インフラ整備も進んでいる。大きいのはリニア中央新幹線。東京~名古屋を約40分でつなぐ、世界でも最先端の鉄道が建設されている。

新東名高速道路の建設も進んでいる。これらのインフラ整備は、2020年東京五輪に間に合わせようとしているわけではない。リニア中央新幹線は27年目標で新東名の全線開通は30年目標である。五輪の後を目指すインフラ整備が進み、2020年東京五輪は通過点でしかない。にもかかわらず、東京五輪後に景気と不動産価格が急転直下で落ちるのだろうか。

■五輪後に不動産価格が下がるという理由

「東京五輪後に東京の不動産価格が下がる」という意見の根拠は、これまでいくつも出されている。

まず、東京五輪による不動産価格の上昇は実態に根ざしたものではなく、お祭り騒ぎ的なムードで生じているもの。そのため、ムードを生んでいる五輪が終了すれば、支えを失って下がるという意見がある。

五輪による上昇の背後には新しい街づくりやインフラ整備があることは、すでに説明したとおり。ムードで上がっているわけではない。だいたい、現在の不動産購入者がムードだけで高いお金を出してマンションを買うだろうか、という点も疑問だ。今のマンション購入者はもっと賢く、十分に研究して購入を決めている。ムードに流されるほど「甘ちゃん」ではない。

2022年以降大量に放出される可能性がある「生産緑地」の問題や、進行する人口減少・住宅余りで不動産価格はいずれ大きく下がる……など、「不動産価格下落」の予測はその他にも多い。

■生産緑地に関する反論

しかし、生産緑地は山手線の内側に一箇所もない。23区内で生産緑地が残っているのは山手線の外側で、駅から徒歩10分以上の場所だ。いずれも、マンション用地としては魅力が薄い。今、「売れるマンション」の条件は山手線内側か山手線外側の23区内で駅徒歩10分以内、できれは7分以内の場所。そういうマンション適正地に生産緑地はない。

加えて、生産緑地個々の面積はマンション用地としては小さい。国土交通省のデータ(2017年)によると、東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県の生産緑地は3万1445箇所で総面積は約7417ヘクタール。単純に割り算すると、1カ所当たり0.24ヘクタール。2400平米だ。マンションならば、5階建て35戸規模のマンションができるかどうか。敷地面積100平米の建売住宅ならば24軒建つが、道路の面積を勘案すると、せいぜい20軒程度。

生産緑地は建売住宅や賃貸住宅への転用は考えられるが、マンションへの転用は駅距離が遠いことと、規模が小さくなることがネックになる。つまり、生産緑地が大量に放出されても、マンション市況への影響は小さいわけだ。

■住宅需要が下がることはない

少子化による人口減少にも対策がある。もっと子どもを産むようにする、のではない。それは、どんなに推奨しても奏功しないことが分かっている。

人口減少への対抗策として、政府は外国人観光客と外国企業・研究所の呼び込みに力を入れている。すでに外国人観光客が増え、ニセコのスキー場周辺や石川県金沢市内で地価上昇を起きていることが地価公示や路線価で証明されている。

政府は続けて、外国企業の呼び込みに躍起で、法人税率を下げ、外国企業に優遇を与えるアジアヘッドクォーター特区や経済特区をつくっている。

これらの政策により、外国人増加が少子化による人口減少を上回れば、住宅、特に都心立地の住宅への需要は下がることがないだろう。

冷静に考えると、「五輪後に不動産価格が一気に下がる」という説は根拠が薄く、説得力も乏しい。過去に五輪を開いた国と同様、東京の不動産市況は上昇を続けるだろうというのが私の一貫した予測であり、その予測を変える気にはなれないでいる。

■五輪後、都心は高止まり。値上がりは周辺へ

次に、首都圏各エリアごとの市況について予想したい。

東京五輪後、首都圏の不動産価格は下がらないと予測しているが、その上がり方は一様ではないだろう。場所によっていろいろな現象が出てくると考えられる。

まず、山手線内側を中心にした都心部では高止まりする可能性が高い。理由は、山手線の内側で土地を持っている人はもう手離さないからだ。

土地は、一度売ってしまったらそれで終わりだ。高い値段で売れても、得た利益の多くを税金で持っていかれるケースもある。だから売らずに、商業ビルやオフィスビル、賃貸マンションとして活用する。その賃料で安定した生活を送る方がはるかに得だと考える。これは、世界の大都市中心エリアで同様にみられる現象だ。

パリ、ロンドン、ニューヨーク、東京の「世界四大都市」のうち、パリとロンドンは50年以上前から土地・建物の売り物が出にくい状況が続いている。「買いたくても買えない。住みたかったら、借りるしかない。その家賃は高い」といわれている場所だ。高い家賃を稼ぐことができるので、不動産所有者はなおさら売らない。ニューヨークも、20年くらい前から「買いたくても買えない場所」になってきた。

四大都市のうち、最後まで「不動産の売り物が多い」場所となっていたのが東京だった。その東京でも、2020年東京五輪をきっかけに、「買いたくても、買えない場所」になってきた、ということだろう。

■山手線内側は3.3平米あたり1000万円以上に

土地の売り物がでないので、たまに出てくる新築マンションは値段が高い。東京港区内の白金高輪エリアで、これから分譲をはじめる大規模超高層マンションがあるのだが、その価格は現在「未定」。しかし、都心の不動産市況から推測すると、3.3平米あたりで700万円以上。中層階から上は3.3平米あたり1000万円を超えるのではないだろうか。

昭和から平成にかけてのバブル期であっても、「3.3平米あたり1000万円」は、超えられない壁だった。それを超える価格設定の新築分譲マンションは出たが、結局売れずに最終的に半値くらいまで値段を下げていた。

その「3.3平米あたり1000万円」の壁があっさり越されそうだ。JR山手線の内側は、それくらい高くなってしまった。

■「選手村マンション」の行方

それと比べれば、東京五輪選手村マンションである「HARUMI FLAG」は割安感がある。

山手線内側では3LDKが3億円以上といった水準に対し、「HARUMI FLAG」は2LDK~4LDKで5400万円から2億3000万円。最多価格帯が8600万円台(シーヴィレッジ)、6400万円台(パークヴィレッジ)。山手線内側と比べると、だいたい半額といったところだ。もちろん誰でも購入できる価格設定ではないが、「まったく、無理」という価格水準でもない。

山手線の外側だが、中央区アドレスとなり、銀座から約2.5キロ、東京駅から約3.3キロ。丸の内のビジネス街に自転車通勤できる、という立地でこの価格は買いだ、と判定するパワーエリートが多い。

「HARUMI FLAG」は、7月末から8月頭にかけて第1期600戸の販売が行われた。すべての住戸に申込みが入ったという状況ではなく、一部住戸には申込みが入らなかった。それでも、最高で71倍の抽選になった住戸もある。分譲戸数600戸に対し、購入申込者は1543組。平均2.6倍で、販売終了後、抽選に外れた人のために追加販売も行われた。この数字をみれば、上々の売れ行きといえる。

■都心部は、高くなりすぎて投資には不向きか

「HARUMI FLAG」は特殊な例で、多くの都心立地マンションは、それよりもずっと高額化している。もちろん、それだけ高くなると、売れ行きは落ちる。なかなか買い手がつかないが、不動産会社は値下げをしない。

それを売ったら次に売る物がないからだ。じっくり構え、場合によっては売っている途中で値段を上げることもある。もしくは、不動産会社が「大家」となって賃貸として貸し出す。そういう状況がすでに始まっている。

この先、都心で分譲されているマンションで「大幅な値下げ物件」が出るようなことがあれば、購入のチャンスとなるだろう。価格は、人気が落ちるから下がる。大幅な値下げが起こる局面では都心部が魅力を失っているということになるが、そんなことが起こるだろうか? それはない、と判断すれば、大きく値下がりする可能性も薄いという考え方になる。

■準都心、郊外の狙い目エリアは

山手線内側の不動産価格が高騰し、高止まりする特殊な場所になれば、次に注目度が高まるのはその外周部。「準都心」と呼ぶべき東京23区内の山手線外側エリアだ。

すでに北区や江戸川区、江東区などは、昨年からマンションの売れ行きがよくなり、価格も上昇。といっても、新築マンションの3LDKを5000万円台で見つけることができるので、まだ価格上昇の伸びしろは残っている。準都心部では、五輪終了後も価格上昇が続く可能性がある。

準都心部には、ここ数年人気が下がっていた世田谷区や杉並区が含まれる。「もはや、世田谷が大きな顔をする時代は終わった」とまで言われたが、じつは今年に入ってから、短期間に完売するマンションが増えだした。

世田谷、杉並では価格の手ごろさが再評価され、今後人気も価格も上昇する可能性が高い。要注目の場所だろう。東京都下や神奈川、埼玉、千葉の郊外エリアでは、駅近の場所でマンション価格が大幅に上昇。新築3LDKが7000万円台という場所が増えてしまった。

■徒歩圏の駅遠も売れ行き回復か

一方で、駅から徒歩10分程度のマンションであれば価格が抑えられている。新築マンションの3LDKが3000万円台、4000万円台という価格水準だ。この「駅遠(といっても徒歩圏)」は、割安感から今後売れ行きが回復するだろう。

売れ行きとともに価格も回復。ある程度まで価格が上がったのち、緩やかに下がってゆくことが予想される。といっても、投資という観点からすると、「駅から10分以上で3LDKが3000万円台の新築マンション」は魅力的とは言いがたい。中古として売り出したときに買い手がつくか、賃貸の需要があるか、という不安があるからだ。

実需目的のマンション購入であれば、駅から徒歩10分レベルのマンション、建売住宅は十分に魅力的なのだが。

「郊外駅近で3LDK7000万円台の新築マンション」も、価格が高くなったことで魅力的とは言いがたい。それに準じた価格設定の中古マンションも同様だ。

郊外エリアで考えると、千葉県内で駅近立地のマンションがある。つくばエクスプレスの流山おおたかの森駅や柏の葉キャンパス駅、JR総武線の稲毛駅、JR京葉線の検見川浜駅などであれば、新築3LDKが5000万円台でみつかる。郊外でも駅近3LDKは7000万円台の新築マンションが増えているなか、千葉ならまだ抑えられている。中古であれば、さらに価格の魅力も大きくなりそうだ。
櫻井 幸雄

最終更新:8月19日(月)11時00分

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不動産投資の楽待

株式会社ファーストロジック

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