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老後に2000万円貯蓄でも足りない!誰も口にしない理由と背景

8月18日(日)19時50分配信 LIMO

写真:LIMO [リーモ]
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写真:LIMO [リーモ]
「老後2000万円」というともはやだれもが知るキーワードとなったが、その一次ソースは「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」で「高齢社会における資産形成・管理」というレポートであった。今回はその中で指摘のあった老後に2000万円の貯蓄で本当に足りるのか、それともそれ以上に貯蓄が必要なのかについて考えてみたい。

前提条件の中の2000万円の中身とは

この報告書の中で問題となったのは、以下の文言であろう。

「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1300万円~2000万円になる。」

この不足の5万円は、厚生労働省の資料である「第21回市場ワーキング・グループ」の中での「高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)」で、実収入が20万9198円、実支出が26万3718円となっていることをベースにしている。もっともこの厚生労働省の資料は総務省の2017年の「家計調査」を出所としている。

さて、ここで気になるのは、実支出が実収入よりも多くなることだが、では、実支出で何が含まれているのだろうか。

 ・食料:6万4444円
 ・(非消費支出):2万8240円
 ・交通通信:2万7576円
 ・教養娯楽:2万5077円
 ・光熱・水道:1万9267円
 ・保険医療:1万5512円
 ・住居:1万3656円
それ以外の項目もあるが、このような項目と金額といった具合だ。

この中で、勘の良い読者の方は「おや?」と思う項目もあるはずだ。

それは支出における「住居」の1万3千円ではないであろうか。

住居に必要な賃料、つまり家賃は住居の場所によって大きく異なることは当然だ。しかし、住居に必要な出費が1万円台の家賃である住居というのは違和感を感じるのではないであろうか。これは、普通に考えると、今回のシミュレーションのケースで考えれば、「持家」の世帯が前提となっているのではないか。

60歳代の持家の比率はどのくらいの割合あるのか

確かに、金融広報中央委員会(事務局 日本銀行情報サービス局内)の「知るぽると」による「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](平成30年)」によれば、持家比率は世代別に見れば以下のとおりである。

 ・20歳代:25.4%(非持家比率:74.6%)
 ・30歳代:56.5%(非持家比率:42.5%)
 ・40歳代:70.9%(非持家比率:28.5%)
 ・50歳代:75.9%(非持家比率:22.5%)
 ・60歳代:82.6%(非持家比率:16.3%)
というように、60歳代の世帯のうち、8割を超える世帯が持家世帯となっている。もちいえであれば、当然ながら家賃は必要ない。もっとも、築年数が長ければリフォームなどの出費が臨時で必要になるということが考えられるが、経常的に家賃が必要となることはない。

実は、今回のレポートの老後に必要な貯蓄、つまり取り崩す可能性がある金額のシミュレーションは持家世帯が前提となっている。

持家か賃貸かの議論を超えて

経済メディアでは、住宅ローンを組んででも持家が良いのか、それとも住む場所を自由に選ぶことができる賃貸住宅が良いのかの議論はよく目にする。ただ、今回はその議論をここで展開するつもりはない。

今回のシミュレーションで考えれば、老後も賃貸住宅に住み続けるのであれば、さらに貯蓄が必要ということになる。

つまり、月額の賃料×12か月×老後年数、が先のシミュレーションの貯蓄を取り崩す額に加算されることになる。

たとえば、定年退職前に持家となり、住宅ローンを返済しているという状況であれば、老後に毎月の賃料は必要ないが、築年数が長くなればリフォームの必要性も出てこよう。したがって、持家であれば全く住居に関する支出が必要でなくなるというわけではない。リフォームを前提とした貯蓄も必要であるということである。

ここで強調しておきたいのは、老後に2000万円不足するといっても、住宅の保有の有無やその築年数の状況によって必要となる貯蓄額も異なるということである。つまり、老後2000万円問題は、これまで以上に住居についての議論が必要となってこよう。

持家に積極的でない若い世代は資産形成の更なる必要性

ここまで、老後における住居についての重要性を見てきたが、実は若い世代は持家に対して、古い世代と比べるとあまり積極的ではないというコメントもある。

もっとも、空き家問題に代表されるように、需要と供給のバランスが崩れる可能性がある中で、積極的に自宅を長期の住宅ローンを組んで自分のポートフォリオに組み込むことはないという意見は当然あってもよい。

しかし、高齢化が進む中で、老後がどれくらいの時間があるのかについて、これまでの時間軸よりもさらに伸びてくる中で、住居をどうすべきかはより重要となっていることはまちがいない。

持家は自分のポートフォリオに「不動産」を組み込むことになる。住宅ローンを金融機関から借りるのであれば、バランスシートの右側に「借入」が、そして左側には「不動産(自宅)」がのることになる。

住宅を購入することは立派な投資である。老後前までにその投資を行っているのか、そしてないのかは大きな分岐点になろう。

老後に2000万円で足りるのか、足りないのか

ここまで見てきたように、先のレポートの前提は、詰めが甘い部分も残っている。このレポートだけで「足りる、足りない」を議論してもあまり意味がなく、それぞれのライフスタイルや自分のポートフォリオと前提を比べた上で参考にする方がよさそうである。

複利効果を出そうにも日本の資産には金利を活用した運用はほとんどないといってもよいであろう。また、米国も含め先進国の超長期金利も低下傾向にある。そして、株式市場も米国も含めて荒れ模様だ。その中で、どのように資産形成ができるのかが今後の日本国民の資産形成を考える際には必要となってくる。

 参考資料

 ・「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書『高齢社会における資産形成・管理』」
 ・知るぽると「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](平成30年)」
青山 諭志

最終更新:8月18日(日)22時10分

LIMO

 

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