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「圧倒的権力者」親たちが犯すとんでもない失敗

8月13日(火)5時30分配信 東洋経済オンライン

子どもは親がどんなに理不尽でも従うしかありません。でも、子どもは大人が思う以上に親の行動をきちんと見ているものなのです(写真:MachineHeadz/iStock)
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子どもは親がどんなに理不尽でも従うしかありません。でも、子どもは大人が思う以上に親の行動をきちんと見ているものなのです(写真:MachineHeadz/iStock)
 ほとんどの親は、親であることに甘えています。なぜなら、親は圧倒的な権力者だからです。それに対して、子どもは弱い存在です。子どもは全面的に親に頼って生きているので、親に見放されたら生きていけません。

 ですから、どんな理不尽な親でも従うしかないのです。このような圧倒的に違う立場を利用して、多くの親がやりたい放題です。親の多くは独裁者、暴君、専制君主、圧制者です。

 親は、大人同士ではとても言えないような罵詈雑言を、わが子には平気で浴びせてしまいます。例えば、「また○○してない。何度言ったらできるの」「なんで○○しないの!  ちゃんとやらなきゃダメでしょ」「なんでそんなにだらしがないの!」「○○しないとおやつ抜きだよ」「本当にお前はだらしがない」などです。
 そして、それを「子どものため」とか「しつけのため」と思っています。しかしながら、こんなことが子どものためになるはずがありません。ただのハラスメントです。親によるパワーハラスメントでありモラルハラスメントでもあります。世間では、いろいろなハラスメントが問題になっていますが、実は親から子どもへのハラスメントがいちばん多く、しかも深刻なのです。

■徹底的なしつけがもたらした親子関係の成れの果て

 これはある60代の男性の話です。その人は自分の息子を育てるにあたり、「世間に後ろ指をさされない、きちんとした人間にしたい」という気持ちが強くあったそうです。それで、息子が小さいときから「また○○してない。なんで○○しないんだ。○○しなきゃダメだ」と毎日叱って育てました。
 あるとき、「使ったものを片付けてなかったら捨てるぞ」と宣言し、子どもが作りかけのプラモデルや遊び途中のボードゲームを庭に捨てました。食べ物の好き嫌いを直そうと、子どもが嫌いなものを毎日食卓に出したり、無理矢理食べさせたりしました。正直な人間に育てたいと考えたので、子どもがちょっとでもウソをつくと徹底的に追及して叱りました。

 数年後、どうなったでしょうか。息子は何かにつけ自信がない、おどおどした感じの青年になりました。父親から離れたい一心で遠くの大学に進学し、そのままそちらで就職。結婚の際は、父親に会いたくないので結婚式は夫婦2人だけで済ませました。実家には父親のいない日を確認して、年に1度帰るだけ。自分の住所は両親共に知らせてありません。
 こうした冷え切った親子関係は少なくありません。親がしつけを大義名分にハラスメントを繰り返した結果、親子関係に修復不能なほどの破綻をもたらすこともあるのです。

 親は、自分ができないことでも子どもには「やれ」と言います。「お前、頑張るって言っただろ。言ったからにはやらなきゃダメだろ。ほんと、お前は口ばっかりだ」「毎日やるって約束したよね。なんで守れないの。そういうのを三日坊主って言うんだよ」。親はこういったことをよく言いますが、自分も三日坊主であることは棚に上げています。
 大人が仕事から帰ってくればのんびりしたいですし、休日にはゴロゴロしたいものです。でも、子どもが学校や塾から帰ってくると、「すぐ宿題しなさい」「先にやるべきことをやってから云々」と叱ります。子どもには「ちゃんと話を聞かなきゃダメでしょ」と叱りますが、自分は職場で人の話を全然聞いていません。

 子どもが勉強でわからないことを聞いてくると、「すぐ人に聞かないで、自分で考えなさい」と言いますが、自分は職場でわからないことがあるとすぐ人に聞いています。子どもがスマホ、テレビ、ゲームに夢中になっていると叱ります。でも、自分は暇さえあればスマホを見ています。
 親は、子どもに「あんた、お兄ちゃんでしょ。なんでそんな意地悪なことをするの。もっと弟や妹に優しくしなさい」と叱ります。でも、自分は子どもに意地悪なことをいっぱいしています。本当に、親は自分がダブルスタンダード(二重基準)であることに無自覚です。

 親は自分ではこのようなことをしておきながら、子どもには別のことを言います。そして、子どもから何か指摘されると、「大人はいいの」と苦しい言い訳をします。

 本当に、親はやりたい放題です。まさに権力の座にあぐらをかいているのです。でも、権力に溺れた者はすべて哀れな末路をたどります。今のうちに気づいて軌道修正することを心からオススメします。
■子どもは親の、人としての成熟度を表す鏡のような存在

 自分より強い相手や立場が同等以上の相手にはへつらい、おもねる。自分より弱い相手や立場が下の相手にはいばり、高ぶる。これは恥ずべき行動です。いくら社会的地位が高くて収入が多くても、こういう行動をする人は人間として未熟です。そういう人が周りの人からリスペクトされることはありません。表面的にはみんな従いますが、裏では背きます。面従腹背です。

 自分より弱くて立場が下の相手にも、1人の人間としてリスペクトして接する人こそ立派な人であり、人間として成熟度が高い人です。そういう人は相手にもリスペクトされますし、周りの人からもリスペクトされます。
 そして、親にとっては、まさに子どもこそがそういう相手です。子どもはあなたの人間としての成熟度を表す鏡のような存在です。鏡がありのままのあなたを映し出し、ウソやごまかしが利かないように、子どももあなたのありのままを映し出します。

 もしあなたが、子どもにひどい言葉を投げつけているなら、それは、あなたがその程度の人間なのだということを表しているのです。

 親は子どもを侮っています。でも、私の長年にわたる教師として経験で言わせてもらえば、子どもは決して侮れない存在です。何もわかっていないように見えますが、実は大人たちの行動をしっかり見ていて、無意識のうちに相手に対する的確な評価をしています。上司が部下を評価するより的確です。
 子どもを侮っていると、子どもからも侮られるようになり、子どもをリスペクトしていれば、子どもからも同じリスペクトが返ってきます。子どもには、大人の真の姿を見抜く力が備わっているのです。それは、弱い存在が生き延びるための本能的な能力なのかもしれません。

 あるいは、今はやりの言葉で比喩的に言えば、子どもはビッグデータのようなものを活用しているのではないかとさえ思えます。

 それはこういうことです。例えば、親がひどい言葉で叱りつけても、翌日には子どもはけろっとしていたりすることがよくあります。こういうことが毎日よく起こるわけで、子どもは親の一つひとつの行動や言葉を覚えていないように見えます。
 でも、人間はそんなに単純ではなく、もちろん、意識的に引き出せる記憶としては残らないかもしれませんが、子どもの無意識層にデータとして蓄積されて、何年も経つうちにそれはビッグデータのようなものになる、ということがあるのではないでしょうか。

 そして、そのビッグデータが、子どもに「この大人はこういう人だから、このように扱うべし」と教えてくれる……。これは比喩的な表現ですが、こういったことはあるのではないでしょうか。
■子どもを1人の人間としてリスペクトすべき理由

 このことを私が痛烈に感じた出来事があります。それは私が教師をしていた頃のことです。ある日の休み時間に、私は4人の子どもたちのおしゃべりを聞いていました。4人とも同じ団地の子で、いつも一緒に遊んでいるので話題は遊びのことでした。次に、話題がそれぞれの母親の噂話になり、誰にお菓子を出してもらったとか、仕事を手伝わされたりとか、片付けのことを注意されたりなど、いろいろな話が出ました。
 そして、A君が「B君のお母さんが言うと、なんだか聞かなきゃって感じするよね」と言いました。すると、それを聞いたほかの子たちが「そう、そう」「なんだか、そうしようっていう気になるよね」と同意しました。次に、C君が「おれっちの母さんだと、なんだか別にどうでもいいやって気にならない?」と言いました。すると、ほかの子たちが「うん……、そんな感じがするかも」と同意しました。

 子どもたちの会話に出てきたB君のお母さんというのは、どういう人だと思いますか?  子どもたちが言うことを聞くということで、とても怖いお母さんなのかと思うかもしれません。でも、実はまったくその反対で、とても穏やかで優しいお母さんなのです。では、子どもたちがあまり言うことを聞く気になれないというC君のお母さんは、どういう人だと思いますか? 
 もうおわかりだと思いますが、とても感情的な人で、子どもたちにも平気でひどい言葉をぶつける人です。C君もよく大きな声で叱られていましたし、一緒に遊んでいる子どもたちも、「また、片付けてない!  あなたたちは、何回同じことを言われればできるの!?」といったひどい言葉でよく叱られていました。B君のお母さんは、決してこのような言い方はしません。

 さらに聞いていると、どうやら4人のお母さんたちについて、子どもたちは心の中で無意識のうちにランク付けをしているらしいということに気づきました。
 B君のお母さんが1位で、続いて、A君、D君、C君のお母さんという順位のようでした。これは、子どもたちの話を聞いているうちに私が気づいたということであり、その子たちは気づいてはいないのです。自分たちで気づいてはいないのに、4人の心の中にまったく同じ順位のランク付けがあるのです。これには私も驚きました。

 このように、子どもは侮れない存在です。すべての親は、自分が圧倒的な権力者であることを自覚し、1人の人間としてのあり方に立ち返ってほしいと思います。
 そして、子どもを1人の人間としてリスペクトしてください。「この言葉は大人同士でも言える言葉なのか?」というのが1つの基準になります。大人同士ではとても言えないようなひどい言葉は、子どもにも言ってはいけないのです。
親野 智可等 :教育評論家

最終更新:8月13日(火)7時55分

東洋経済オンライン

 

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