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中卒から家賃年収1億6000万、一匹狼大家が描く夢《楽待新聞》

8月12日(月)20時00分配信 不動産投資の楽待

(写真:不動産投資の楽待)
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(写真:不動産投資の楽待)
「僕の原動力は貧しさや、寂しさにあるんですよ」

福岡を拠点に活動する野中周二さんはそう話す。2013年に不動産投資を独学で学び、現在は個人と法人で180戸超を所有。年間家賃収入は1億6000万円を超え、税引き後のキャッシュフローは約5000万円だ。

だが、彼は「安い物件が出た」や「良い土地が出た」という話には興味を示さない。不動産投資家という枠を超えた、オンリーワンの活動に注力する野中さんに話を聞いた。

■「徹底的な差別化」

現在45歳の野中さんは以前、「中卒サラリーマン大家」と名乗っていた。

「僕には両親がおらず、学校には中学1年生までしか通っていません。15歳の時にパソコンショップで働き始め、そこからずっといくつかの会社でサラリーマンをしてきました。2017年に退社してからは、自分の事業に専念しています」

野中さんが「自分の事業」と話すのは、「パースペクティブ」と付く自身の法人で行っている不動産開発・賃貸事業だ。自社で建てる物件では「徹底的な差別化」を図り、退去抑制につなげる。例えばクローゼット内にもコンセントを設置し、ズボンプレッサーや除湿器、ハンディアイロン、コードレスクリーナーの充電ができるなど、家電を使いやすくしている。

夏場は暑く、冬場は寒くなりやすいトイレにも小型空調機用のコンセントを設置。また、夜中にトイレに立った時、まぶしさで目が覚めないように、調光式の照明を採用する。あるいは熊本地震の経験から、「地震などの災害時、風呂場にいる時であっても、少しでも早く状況が確認できるように」と浴室にもテレビを付けていると言う。

■「退去抑制」は融資にも好材料

野中さんが開発する賃貸物件にはこうした差別化のポイントがいくつも取り入れられており、これまで実現させてきたアイディアは40種類にも及ぶと話す。

「誰がどの差別化ポイントに惹かれてくれるかわかりませんから、無数に取り入れています。ここまで利便性の高い物件はほかにないから、退去抑制につながるんです。僕の物件に住んだ後に引っ越そうと思っても、『これがない、あれがない』となる。やむを得ない事情ではない限り、出ていけなくなります」(野中さん)

実際、昨年度は退去すると連絡があった後に「退去自体を取りやめる」とキャンセルが8件もあり、理由を聞くと「代替物件が存在しない」からだったそうだ。

入居者のターゲットは「イノベーター(革新者)とアーリーアダプター(初期採用者)」。マーケティングの世界で使われる「イノベーター理論」において、新しい商品やサービスなどの市場普及の際、最も早く取り入れる人々と、その次に取り入れ、大きな影響力を持つ人々のことだ。

「こういった人が、うちの物件のファンになってくれるんです。引っ越すとなったとしても『パースペクティブ』に住みたいと物件を見ないで決めてくれる。彼らが望むのは、最新の設備と最新の機能。『パースペクティブならあれがあるだろう、この仕組みがあるだろう』と分かってくれます。ブランドの価値が浸透してきた証拠だと感じます」

退去されにくい物件は、融資審査にも好材料だ。「退去のほとんどない仕組みを持っていることは、銀行でも評価が高いです。『次の物件も大丈夫ですね』と融資が通りやすくなります」と野中さんは話す。地銀や信金などからこれまでに調達した事業融資は、21億円にも上ると言う。

■自身の仕事は「賃貸業ではない」

前述したように、野中さんは自らの法人名義で物件を建て、そして賃貸経営をしている。規模や考え方は違えど、行っていることはいわゆる不動産投資家と同じだ。しかし、自身は「僕の仕事は、賃貸業ではありません」と明言する。

「パースペクティブという、会社のブランド価値を高めることが僕の仕事です。ブランドマーケティングを意識しています。つまり、僕の会社の影響力を増すことです。だから、儲かるとか、良い土地が出たとかと言うことには、関心は示していません。常に、その事業が会社の価値につながるかどうか、を考えて動いています」

その背景にあるのは、「自分以外の誰かが作った仕組みや価値観に縛られたくない」という強烈な思い。自分や自社に影響力がないとその思いは達成できないと考え、実現させるべくマーケティング活動を行っている。

また、自身の物件には、必ず自社のロゴマークを表示させるのがこだわり。「金融機関に向けて、売却をしないという意思表示であると同時に、あのロゴマークで『パースペクティブの物件なんだな』とわかってもらえる」からだ。

ブランドにとっては認知が重要との考えから、物件は道や駅から見える位置にしか建てない。「認知される場所に建てることで、絶大な力を生むんです。曲がりくねった道の先に物件があって、誰にも見えないようでは意味がない」

■現代風の商店街をつくる

野中さんは現在「商業一体型のまち」づくりに取り組んでいる。木造のガレージハウスが10戸立ち並び、そのうち3戸は店舗兼用だ。現在はRC造10戸が入る3階建てのガレージハウスも建築中。すべて合わせると、広さは約800坪。一帯には統一感があり、まるで別世界のような景色が広がっている。野中さんの「現代風の商店街を作りたい」という思いが込められたまちだと言う。

この土地を取得するまでに、地権者と2年半の交渉を重ねた。

「立地が良く、年に何社も不動産会社が来る場所です。しかし、地主の方々が絶対にこの土地は売らないとおっしゃっていました。僕もやはり最初は断られたのですが、2年半、『どうしてもこの場所でやりたいことがある』と交渉を続けていたところ、1人の方が『本当にあなたがその事業をするなら売ってもいい』と言ってくださって。そこから、ほかの地主の方をひとりひとり紹介してくれました」

地権者には「恥ずかしいものは絶対に作らない。地域のためになるものしか作りません」と断言した。その熱意と事業計画で地権者たちに納得してもらうことができ、ようやく購入することができたのだ。

テレビなどでも活躍する建築家の木本功次郎さんの協力も得て、計画は進んだ。総額は約3億8000万円。そのうち5000万円は自己資金を充てた。「高かった。でも値段じゃないんです。会社の価値が高まる事業だと思ったし、金融機関もそれを許してくれたので、実現できました」

■1万坪の「まち」づくりへ

立ち並ぶ戸建ての外観はまるで「要塞」。中の様子をうかがい知ることは難しい。これでは室内も暗いのでは……と思いきや、想像できないほど窓も多く、明るい。野中さんがこれまで取り入れてきた差別化ポイントもふんだんに採用されたこの物件も、入居希望者が後を絶たない。

「ここも800坪と広いですが、これは実はプロトタイプ(試作品)です。福岡県糸島市に1万坪の土地の取得を進めており、このまちづくりをもっと発展させていく予定です」

現在、一部の土地の取得を終えたところだが、全て買収し終えれば、130世帯が入る「まち」を作る考えだ。

■利回り重視からの転換

両親がいない境遇から、決して楽な幼少期を過ごしたわけではない。親戚の家に行っても疎外感を感じ、友達も作らなかった。だからこそ、自身の原動力は「貧しさや寂しさという、負の感情だと思います」と語る。そうした中でも、17歳の時からずっとそばにいる妻が野中さんの支えだ。「嫁さんが僕を変えてくれた。彼女がいなかったら今の僕はいないですし、彼女の価値観が僕の土台を作っていると思います」

2013年に不動産投資を始めたのも、妻の母が病気になったことがきっかけだ。「その時に、お金に対する価値観が変わったんです。お金がなければ、万が一の時に誰も守ることができない。自分の子供を、そういう環境に置くことはできないと感じました」

参入当初は、大多数と同じように利回りを重視する普通の不動産投資家だった。だが、2016年に熊本地震が発生し、同県に所有していた自身の物件が被災すると、その考え方は大きく変わった。

「入居者さんは全員無事でした。しかし、家の中はぐちゃぐちゃだった。被災した物件に支援物資も持って行きましたが、逆に言うとそれ以外は何もできずに、無力さに泣きながら妻と一緒に戻ってきました」

だが、安全な建物を提供することで人命を守ることができるのだと言うことを、改めて感じたのだと野中さんは語る。

「だから、不動産で儲ける、儲けないじゃない。もちろん収益が上がらなければ事業としては成り立ちません。しかし、人の人生において大きな基礎となる住環境として、いかに素晴らしく、安全で、豊かなものを提供するかと言うことに目覚めました。これが僕の義務であって、役割だと思いました」

そこからは自社で開発する物件では、入居者に豊かな生活を送ってもらえるような徹底的な差別化を図っている。そうすることが退去抑制につながり、そしてそうした安全で快適な住居を提供することが、野中さんの目指す「会社の価値向上」にもつながるからだ。



野中さんの考え方や行動は、多くの投資家や賃貸経営者から理解されないことも多い。だが、自身はそれでいいと思っている。「僕の目的はお金ではなく、影響力を増すことです。自分の心に従いたい。自分の理想を体現したい。ほかとは圧倒的に違うから理解されないというのであれば、それでいいと思っています」

「不動産投資家」ではなく「事業家」を名乗る野中さん。誰の、どんな事業とも違う挑戦は続いている。
不動産投資の楽待 編集部

最終更新:8月12日(月)20時00分

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