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「ボイコットジャパン」で韓国LCCに赤信号

7月25日(木)6時30分配信 東洋経済オンライン

7月5日、ソウルの日本大使館近くで、日本製品のロゴをあしらった箱を踏みつける韓国のビジネスマンら(写真:EPA=時事)
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7月5日、ソウルの日本大使館近くで、日本製品のロゴをあしらった箱を踏みつける韓国のビジネスマンら(写真:EPA=時事)
 会社員のカン・ユジンさん(28)は、夏休みの東京旅行のために予約した韓国・チェジュ航空のチケットをキャンセルしようかどうか悩んでいる。韓国で広まる日本製品の不買運動のためだ。

 ネット上ではすでに、日本旅行の感想を記した投稿を非難するコメントが増えている。カンさんは「日本旅行をキャンセルしたとの投稿が多い。LCC(格安航空会社)の便を予約したのでキャンセル料を支払わなければいけないが、キャンセルするつもりだ」と打ち明ける。
■広がる「ボイコットジャパン運動」

 日本路線を拡大させることで成長してきた韓国のLCC業界に赤信号が灯った。日本政府が韓国に対する半導体素材関連品目の輸出規制を行い、韓国ではそれに反発して日本旅行をキャンセルする動きが急速に広がっているためだ。「ボイコットジャパン」と言える動きで、航空業界では「反日感情の高まりが、日本路線が多いLCCの収益性に悪い影響を与えないか」と不安な声が強まっている。

 韓国LCCがいかに日本路線へ依存しているかをみてみよう。韓国のLCCは現在6社。6社が運航中の国際線は232路線あるが、日本行きは87路線と全体の37.5%を占める。
 業界トップのチェジュ航空は、国際線68路線のうち22路線(32.4%)が日本路線だ。ジンエアーは28路線中9(32.1%)、ティーウェイ航空は53路線中23(43.4%)、イースター航空は34路線中12(35.3%)、エアプサンは32路線中10(31.3%)、エアーソウルは17路線中11(64.7%)を日本路線が占める。

 LCC業界全体の売り上げに日本路線が占める割合も高い。2019年第1四半期(1~3月)でみると、ティーウェイ航空は売上高の30.9%が日本路線だ。これは、大韓航空の11%、アシアナ航空の14%の2倍超だ。同期間中、チェジュ航空は25.6%、ジンエアー24.0%が日本路線からだった。航空業界関係者は「LCCは日本の主要都市はもちろん、地方の中小都市に路線を広げることで成長した。日本路線が落ち込めば、業績も悪くなる他はない」と言う。
 反日感情の高まりが、確実に日本路線への搭乗客を減らしている。今年7月第1週には83.5%だった仁川(インチョン)・関西路線の平均搭乗率は、同月第2週には75.5%と8ポイント下落した。イースター航空を除く6社は、すべて90%超の搭乗率だった。

 これまで同区間の平均搭乗率は80%超が続いており、「ドル箱路線」とされてきた。特に団体旅行客のキャンセルが増えた。個人旅行には大きなキャンセルの動きは出ていないが、日本行きの航空券をキャンセルした証拠となる書類などをわざわざSNS(交流サイト)で公開する者も増え始めた。さらに、官公庁や公的機関などを中心に団体客が7~8月の旅行をキャンセルする動きが相次いでいる。
■旅行代理店でも日本旅行が大きく減少

 日本旅行への需要全体が縮小するとの見方も広がっている。韓国航空大学経営学部のホ・ヒヨン教授は「日本が輸出規制措置を発表する前に日本行きの航空券を予約した人は、旅行自体をそれほどキャンセルしないかもしれない。しかし、反日感情の高まりで日本への旅行を選択肢から外す人が増えてくるだろう」と指摘する。そして、「景気全体の悪化でただでさえ韓国航空業界への影響が心配されている中、日韓関係の悪化は業界にとってさらなる重荷となるだろう」と付け加える。
 航空業界だけではない。旅行代理店でも、日本への旅行客の減少がはっきりしてきた。韓国人の海外旅行取り扱いでは韓国トップのハナツアーでは、1日平均1100人程度の日本旅行予約者数が最近では600~700人にまで減少した。日本旅行に関する問い合わせも一気に減った。同じ旅行代理店のモドゥツアーは、昨年夏の旅行シーズンには1日平均1000人程度だった日本旅行客が、今年は半減したという。

 LCC業界にとっては稼ぎ時となる今年第3四半期(7~9月)の業績悪化が、すでにささやかれ始めるなど業界は戦々恐々とし始めた。日韓関係の悪化が収益の足を強く引っ張るのではないかと見られているためだ。
 2018年第3四半期には、チェジュ航空やジンエアー、ティーウェイ航空の各社は、日本で発生した地震や台風などの影響などで繁忙期の運航に支障が出て、営業利益が前年同期比6.5~54.3%の減益となった。日本製品不買運動が長期化すれば、今年の繁忙期の業績はさらに悪化しそうだ。

 韓国CAPE投資証券のホン・ジュンギ研究員は「安全保障問題をめぐって、中国が韓国に対して経済的圧力をかけるなど韓国と中国の関係が悪化した2017年当時、訪中した韓国人数は前年比19%減少した。この前例から考えると、日韓関係の悪化がLCC各社の業績を悪化させる可能性も排除できない」と指摘する。
 日本が輸出規制措置を発表する前となる今年第2四半期(4~6月)にはすでに、韓国LCC業界に業績悪化の陰が忍び寄っていた。韓国観光公社によれば、今年1~4月に日本を訪問した韓国人観光客は264万7400人と、前年同期比4.4%減少した。昨年は逆に5.6%増だったこととは対照的だ。

 韓国LCC各社の株価も下落しており、訪日客数の減少が主な原因となっているのは間違いない。

■チェジュ航空の株価は15%下落した
 チェジュ航空の株価は今年6月28日に3万3150ウォン(終値、約3000円)だったが、7月上旬には2万8000ウォン(約2600円)と15.5%下落した。同期間、ジンエアーとティーウェイ航空の株価もそれぞれ17.5%、8.9%下落している。

 このような状況に直面した韓国LCC各社は、中国に視線を向け始めた。2017年に前述した中韓関係が悪化した当時、中国路線を日本路線へと振り替えたこととまったく正反対な動きだ。
 イースター航空やエアプサンなどは、中国路線の新規就航と増便にいち早く動き出した。今年5月、仁川・上海路線など6路線週27便の路線割り当てを受けたイースター航空は、7月12日から仁川・上海路線を週7便運航している。同社関係者は「大手キャリアより平均20~40%ほど安い運賃を設定し、顧客の需要を喚起する。今年下半期は中国路線を軸に収益改善を図る」と述べた。

 エアプサンは7~10月に、すでに就航している釜山(釜山)・延吉(中国吉林省)線、釜山・張家界(同湖南省)線を増便させる方針だ。一方、大邱(テグ)・大阪線は減便し、大邱・東京線は運航を休止する。同社は、仁川からの中国路線を年内に開設する予定だ。チェジュ航空、ティーウェイ航空、エアーソウルも年内に中国へ新規就航する準備を進めている。
韓国「中央日報エコノミスト」

最終更新:7月25日(木)8時26分

東洋経済オンライン

 

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