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まさに佳境、「相鉄・東急直通線」工事現場を歩く

7月24日(水)15時00分配信 東洋経済オンライン

鶴見川河底の防水扉用の部材を取り付けてゆく。作業にあたる重機の移動のために底部にレールを敷設(撮影:山下大祐)
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鶴見川河底の防水扉用の部材を取り付けてゆく。作業にあたる重機の移動のために底部にレールを敷設(撮影:山下大祐)
鉄道ジャーナル社の協力を得て、『鉄道ジャーナル』2019年9月号「まさに佳境を迎えた相鉄・東急直通線トンネル掘削現場を見る」を再構成した記事を掲載します。

 相模鉄道が東京都心に乗り入れるという、首都圏ではまた1つネットワークの変革となる出来事の実現が間近に迫ってきた。まずは相鉄・JR直通線として相鉄本線西谷から新線に分岐し、羽沢横浜国大駅経由で東海道貨物線とつなげ、JR東日本との相互乗り入れによる渋谷・新宿方面との直通ルートが、今年11月30日に開業する。
 一方、羽沢横浜国大駅で分岐して日吉で東急東横線・目黒線とつなぐ相鉄・東急直通線は、2022年度下期開業を目指して土木工事が続けられている。構造物が形になれば報道公開等によりPRされるが、建設中の様子も知りたい。今回、鉄道・運輸機構の案内により、その現場を見ることができた。

 ちなみに、整備においては都市鉄道等利便増進法に基づく受益活用型上下分離方式が採用された。鉄道・運輸機構が整備主体となり国が3分の1、地方自治体(神奈川県・横浜市)が3分の1を負担、残る3分の1については機構が調達し、営業主体となる相鉄と東急は受益相当額を施設使用料として機構に支払い、借入金を返してゆくスキームである。
■新綱島駅地下40mの空間へ立坑から潜入

 訪れたのは新綱島駅。東横線綱島駅の目と鼻の先に設置される地下駅である。相鉄・東急直通線は羽沢横浜国大~日吉間約10.0kmで、途中に新横浜、新綱島の2駅が設けられる。この両駅はまだ仮称の段階にある。西谷から羽沢横浜国大を経て新横浜までが相鉄として営業する区間で「相鉄新横浜線」、その先、新横浜~日吉間は東急として営業する区間で「東急新横浜線」との線名が昨年12月に決定された。
 非常に狭隘(きょうあい)な土地に高架下バスターミナルを抱える綱島駅とは対照的に、工事現場は中原街道の反対側に広い空間を有している。日吉方のシールドマシン発進立坑と教えられたその地下へ文字どおり潜入すると、鉄骨を縦横に組んだ壮絶な空間が地下40mまで掘り下げられている。幅の狭い作業用階段を何十回も折り返しながら下ってゆくと、クレーンによる資材搬入口を上方に仰ぎ見て一筋の光が注ぐ光景となり、深さを思い知る。
 発進立坑はちょうど深さ40mまで掘削を終えたばかりで、底の地山が見えている段階だった。これから2mもの厚さのコンクリートを打って底板を構築し、壁面にもコンクリートを立ち上げて巨大空間を完成させる。そこに工場で製造されたシールドマシンを解体してパーツごとに運び入れ、再び組み立てる。マシンの搬入は今年9月ごろ、そして日吉に向けた発進は11月ごろを予定する。

 新綱島から日吉に向けた綱島トンネルは、単線シールドトンネルの並列になる。日吉では東横線高架の両側に上下線が分かれて取り付くためだ。長さ約1350mのうち1065mがシールド式で、地上につながる部分は東急が開削式で施工している。
 地底に下る途中、SFの要塞にしか見えない壁面に鋼管がアーチ状に並ぶ場所に案内された。ここは駅の一部であり、この場所からシールド区間まで水平方向に35mほどトンネル全周にわたり角形鋼管を押し込み、その鋼管が駅部の大断面トンネルの外郭となる。「鋼管推進工法」と称するこの手段は、地上にすでにマンションが建ち、開削工法が採れなかったために選択された。今後、鋼管の中および鋼管同士の間にコンクリートを充填して強固にした後、鋼管に囲まれた内部を掘り抜く。
 地下4層に及ぶ開削式で施工されたホーム部は、新横浜方および日吉方の発進立坑を除いて軌道階と地下3階の土木工事を完了、今後は軌道工事や電気工事に入る。地下水に濡れた床版が仮設照明の連なる壁面を映して奥まで続いている。

■新横浜方は複線シールドマシンで掘進中

 一方、その上層に移動すると、地下2階の床版を打ったばかり。下から順に実体を構築しては縦横に交錯する鋼材を切って取り外し、改めてステージを組んで上層階の床を施工するための型枠や鉄筋を配置し、コンクリートを流し込む手順である。強度が出るまでコンクリートが乾燥しないよう黄色いシートで養生しているのが、まさに前日に打ったばかりの様子を伝えていた。
 地上を経由して見学場所を新横浜方に移動。そちら側では新横浜まで3304mの新横浜トンネルを複線シールド式で掘進中である。昨年12月の発進で、現状はすでに鶴見川をくぐり右岸に達した。

 この鶴見川の川底からトンネル径の2倍近い離隔を取らなくてはならないため、直近の新綱島駅は地下4層の深い駅となっている。軌道面は地下30mであるが、駅部から発進させるシールドマシンは真円のため、その組み立て作業場でもある立坑は40mの深さが必要になる。
 立坑には円形シールドの穴が大きく口を開けており、真新しいトンネルが最前線に向かって35‰で下っている。鶴見川の先は大倉山付近までは東横線の直下を進むが、一帯は台地状のため、地表からの深さは約60mになる。建物の杭との離隔を十分に取るためだ。その最深部から一転して急勾配を上り、首都高速横浜環状北線のトンネルを乗り越えて新横浜駅に至る。

 シールドマシンがうがつトンネルの外径は9.5m。掘進と同時に後部に厚さ40cmのセグメント(覆工)を施工してゆくのでトンネル内径は8.7mとなる。その円筒には仮設の床が敷き詰められ、その面上に複数のレールが通っている。左右に配置されているのはマシン本体を動かす電源や操縦室、その他資材等を乗せる「後続台車」用で、中央のレールは地上から吊り下ろしたセグメントを運搬するための線路である。立坑付近に蓄電池機関車が留置されていた。
■シールドマシンの後部は「地下工場」

 その線路上を歩いてゆくと、片側14両ずつ(状況によって変わる)の後続台車が連なっている。これらを伴って1台のマシンとしての機能を果たす。

 それが尽きると、地下工場とも呼べそうなシールドマシン本体の最後部にたどり着いた。本体の全長は約12m。その先端でカッターを取り付けた円盤がゆっくり回転して地盤を削ってゆく。切羽の崩壊を押さえるため泥水で圧力を掛けながら掘り進むため、「泥水シールド工法」と呼ばれる。泥水は、送泥管と排泥管を使って地上との間で循環している。
 そして、マシンが地中を掘り進んだら、その直後で1リング分8ピースに分割されたセグメントをエレクターがはめ込んでゆく。作業者は、泥水があふれ出る場面はもちろん土を見ることもないのが現在のシールド工法である。

 前進は、装置後部の円周に取り付けられた300tジャッキ28台が、施工したばかりのセグメント端部を支点に突っ張ることにより行われる。合計8400tの能力となるが、実際に使われる圧力は4000t程度だそう。ジャッキで押して伸びきったら新たなセグメントをはめ込み、ジャッキの支点を移し替えて次なる前進に移る。
 その現場に用いられていたセグメントは、鶴見川の氾濫を起源とする軟弱な粘土層に対応するため、特段の強固さがある合成セグメントであり、1ピースの幅は1.5m。昼夜一貫しての掘進で昼に4リング、夜に4リングを施工するため、1日12mの計算になる。工程上の休日を挟んで、月進250~300mといったところだ。

 この先さらに掘り進めて硬い上総層に入ると、幅2mのRC(鉄筋コンクリート)セグメントに替える計画である。幅が広くなる分、工数が減って進捗が早く、そしてコストダウンになる。
 トンネル掘削の最前線と聞けば、耳を圧するほどの騒音を想像していたが、今やそのようなものではない。聞こえてくるのは換気のための送風の音や、マシンのカッターを駆動するモーター音程度で、会話もほぼ普通にできる。開削工法の現場と異なり、マシンが進んだルートには整然と完成状態の円形トンネルが連なっている。取材日時点でのマシン位置は、発進立坑から約250mであった。

 ちなみに他の工区を見ると、新横浜駅も地下4層構造の駅とするべく、開削工法による掘削、進捗した一部では構築を施工中。羽沢横浜国大~新横浜間の羽沢トンネル3515mは羽沢横浜国大駅側の発進立坑から複線シールドマシンが新横浜駅に向けて掘進中であり、すでに3分の1近く進行している。
■地上には掘削土の処理プラント

 最後に案内されたのは、地上の掘削土処理プラント。排泥管を通して運ばれてきた泥水は最初にふるいにかけられ、粒形の大きい砂を分ける。

 次に濃くなった泥を沈殿槽で沈殿させた後、濾過して水分を抜きマット状にする。これを「泥水ケーキ」と称する。これを乾燥させたらベルトコンベアで3つ目の装置に投入し、薬剤を加えて、自然由来の重金属が溶け出さないよう処理し、埋め立て基準に合致した土とする。これらの処理を施した改質土はダンプトラックで搬出、横浜市資源循環局の南本牧廃棄物最終処分場に運ばれ、埋め立てに使用されることになる。
 工事現場を離れて鶴見川の堤防に立つと、中原街道越しに東横線電車が鉄橋を通過してゆく光景が望める。地面の数箇所に直径5cmに満たない鋲が打ってあり、鉄道・運輸機構の略号である「JRTT」と筆記されている。それは今しがた歩いてきたトンネルの軌道中心線の標であった。
鉄道ジャーナル編集部

最終更新:7月24日(水)15時00分

東洋経済オンライン

 

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