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中高一貫校の入試スタイルが激変し始めた事情

7月22日(月)5時40分配信 東洋経済オンライン

中高一貫校の選び方に変化が生じている(デザイン:杉山 未記、写真:Getty Images)
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中高一貫校の選び方に変化が生じている(デザイン:杉山 未記、写真:Getty Images)
 中高一貫校が再び人気になっている。

 日能研の推計によると、首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)では一貫校の受験者数が4年連続で増加中。来年の入試では2011年以来の受験者数6万人台回復の可能性が高い。この時期は、来年の入試に向けて学校説明会の開催が相次いでいるが、多くの学校で例年以上の参加者を集めている。

『週刊東洋経済』7月22日発売号は、「子どもが幸せになる学校選び 中高一貫校」を特集。中高一貫校の新しい動きなどについて紹介している。
■東京23区の人口増に連動して受験者数増

 首都圏を中心とした中高一貫校の受験者数増の背景には、人口増加がある。とくに一貫校への受験率が高い、中央区、千代田区、文京区、江東区など東京都心部で児童の数が増えている。一貫校で育った保護者が増えていることも理由の1つに挙げられる。

 2021年度入試から予定される大学入試改革の影響も大きい。センター試験の代わりに導入される「大学入学共通テスト」では国語などで記述式問題が導入される。さらに、英語民間試験を活用した英語4技能(聞く、話す、読む、書く)の評価や、「主体的に学ぶ力」を評価するための提出書類の改善なども改革のポイントだ。
 そして、従来から重視される「知識・技能」だけでなく、「思考力・判断力・表現力」や「学習の主体性」も求められている。

 そうした学力を私立や公立の一貫校であれば、6年間かけてじっくり養うことができると考えられているのだ。実際に一貫校では、「グローバル教育」、理数系教育に重点を置いた「STEM(ステム)教育」(=Science<科学>、Technology<技術>、Engineering<工学>、Mathematics<数学>の頭文字を取ったもの)、それにArt<芸術>を加えた「STEAM(スティーム)教育」など、時代の変化に対応した特色を打ち出す学校が目立つ。内部進学で大学まで進むことができる大学付属校の人気も高まっている。
 そんな中、中高一貫校の入試にも変化が出ている。

 中高一貫校の入試といえば、2科(国語、算数)、4科(国語、算数、理科、社会)入試が定番だ。しかし、最近ではSTEM教育など新時代に対応した教育をすることを前提にした、新しいタイプの入試を導入する学校が増えているのだ。

■算数1科入試導入が相次ぐ

 中でも急速に広がりをみせているのが、「算数1科入試」だ。攻玉社、高輪、鎌倉学園という以前から導入していた学校に加え、2018年度入試では品川女子学院、大妻中野などが、2019年度入試では新たに巣鴨、世田谷学園、普連土学園、栄東といった学校が新たに導入した。
 理系人材の需要が高まっており、算数が得意な生徒を確保して育成につなげたいという各校の思惑がある。大学入試でも、国公立大のみならず2021年度からは早稲田大学政治経済学部が数学I・Aを入試の必修科目にするなど、私大文系志望者でも数学が無関係とはいえない状況も後押しする。

 中学受験生にとって、算数1科入試は、従来の2科、4科入試に比べて負担が少ない。首都圏模試センター・教育研究所の北一成所長は「難関校を目指す受験生は算数の強い生徒が多く、その併願を狙っている」と分析する。また、2020年度入試からは、湘南白百合、田園調布学園、富士見、啓明学園、駒込などが算数1科入試を導入する予定だ。
 さらにユニークな新型入試も続々と登場している。例えば、北区にある男子校・聖学院中は2013年度から思考力入試を始めた。中でも目を引くのが、レゴブロックを使った「ものづくり思考力入試」だ。

 これは、社会問題に関する解決策をレゴブロックと文章で表現するもの。4人1組のグループをつくり、どのような意図で作品をつくったのかを説明し、それに対して他のメンバーが、気づいたことや、改善点などを書き込む。レゴづくりから創造力を、ディスカッションによって他人の話を聞く力などを評価する。
 同校の児浦良裕・広報部部長は「男子は言葉で表現するのが苦手な子どもも多い」と言い、ものづくり思考力入試では自らの考えをレゴで表現させることによって、表現力を評価しているという。

 さらに、思考力入試で入学した生徒の中には大きく伸びる生徒が少なくないという。同校では、このものづくり思考力入試のほか、資料や写真から気づいたことを作文させる「M型思考力入試」や、資料をみてその解決策をレゴで表現し、文章で解説する「難関思考力入試」を実施している。この3種類を合わせた入学者が2割にも上る。この割合をさらに高めていきたい考えだ。
 一方、駒込中では、2019年度からSTEM(プログラミング)入試を導入した。同校でSTEM教育に力を入れているのを受けたもので、算数問題と、実際にビジュアルプログラミング言語「スクラッチ」を使ってプログラミングをする。STEMの力を試す算数では、駅から学校までの経路について考えるものなど、生活の場面に関連づけた内容を出題している。

■PBL入試に踏み切った和洋九段女子

 和洋九段女子中では、2019年度入試からPBL型入試を始めた。同校では4年前から全教科の授業の2割ほどで、PBL(問題解決型学習)を取り入れている。PBLとは、アクティブラーニングの一種で、正解のない課題に対し、生徒の間で分析や議論を重ねて、解決策を提示する教育手法だ。授業を通して生徒を評価するための知見が蓄積されたことから入試でも導入に踏み切った。
 PBL型入試では数人のグループを組み、与えられたテーマについて個々に考えたのち、議論を重ね発表する。例えば「桃太郎になったつもりで、鬼ヶ島に連れて行く3種類の動物を考えよ」というテーマが与えられる。試験ではタブレットが貸与され、足りない知識は検索することができることから思考力に重きを置いた試験であることが分かる。

 アイデアの質よりも、発表に至るまでのプロセスを評価することに重点を置いている。議論の進行を担ったり、発表役を買って出たりする子どもが有利になるのではと考えがちだが、「ほかの子どもの話を聞いてうなずいたら加点をするなど、相手を尊重したり協力したりできるかを重視している」(中込真校長)という。
 レゴによるものづくりやプログラミング、問題解決といっても難しく考える必要はない。事前に対策や評価のポイントを解説する入試説明会や体験会を実施しているため、6年生になってからの準備でも対応可能だという。

 駒込中の河合孝允校長はSTEM(プログラミング)入試を「(体験会を通して子どもを)育てる入試」と表現する。中学入試の形態は、知識偏重の問題から「思考力・判断力・表現力や」「学習の主体性」といった新しい時代に求められる資質を持った子どもを発掘するための問題に変わり始めている。
『週刊東洋経済』7月27日号(7月22日発売)の特集は、「子どもが幸せになる学校選び 中高一貫校」です。
常盤 有未 :東洋経済 記者

最終更新:7月22日(月)8時39分

東洋経済オンライン

 

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