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マツダ「ロードスター」はどう進化していくのか

7月22日(月)6時10分配信 東洋経済オンライン

7月に開催されているロードスター展では、10周年記念(NB)、20周年記念(NC)のファンサインカーが展示されている(筆者撮影)
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7月に開催されているロードスター展では、10周年記念(NB)、20周年記念(NC)のファンサインカーが展示されている(筆者撮影)
 7月初旬の土曜日、梅雨空のマツダR&Dセンター横浜(横浜市神奈川区)に、マツダファンたちが集結した。この日行われていたのは、日本最大級のロードスターファンクラブ、ロードスター・クラブ・オブ・ジャパンが毎年、自主的に開催するロードスター展だ。7月の土日祝日に開催し、今年は合計9日間実施する。

 このロードスター展は、日本屈指のライトウエイトスポーツカー、マツダ「ロードスター」がファンと共有してきた30年間という“楽しい時間”を再確認する場だ。マツダも場所の提供などでサイドサポートしている。
■生誕30周年を迎えたロードスター

 ロードスターは1989年に初代(型式NA)が誕生以来、2代目(NB)、3代目(NC)、そして2015年に現行の4代目(ND)が登場し、2019年に生誕30周年を迎えた。

 マツダは、専用色レーシングオレンジのロードスター30周年記念車を世界で3000台発売すると発表し、日本ではソフトトップモデル110台、電動オープン仕様のRFが139台の合計249台を予約発売。予約が殺到し倍率は20倍近い希少車である。30周年記念イベントとしては、10月13日にマツダのテストコース・三次(みよし)試験場(広島県三次市)が控えている。
 ロードスター・クラブ・オブ・ジャパン会長の水落正典氏(59)は「ロードスターと同じ時代を生きてこられたことがとてもうれしい」、また「ロードスターはわれわれにとって家族の一員です」と、約1200人の会員の気持ちを代弁した。

 筆者は、ロードスターを個人所有した経験はない。だが、マツダ主催の広報関連イベントやアフターマーケット向けの部品開発などで、これまで数多くのNA、NB、NCに触れてきた。NDでは、2015年1月にスペイン・バルセロナで行われた世界初のメディア向け公道試乗会に参加しマツダ関係者と膝を突き合わせてロードスター談義をした。
 もちろん、10月三次での30周年記念イベントは現地取材する予定だが、その前に、ロードスターの歩みを改めて振り返り、ロードスターの未来について考えてみたいと思った。そこで今回、広島から来ていたマツダ商品開発本部・ロードスター担当主査の齋藤茂樹氏に、ロードスター展にお越しいただき、R&Dセンター横浜の構内で1時間強にわたりロードスターについてじっくりと話を聞いた。

 齋藤氏は1989年入社でNB時代から車両実研部でロードスターの開発に携わり、近年は車両開発推進部の人馬一体アカデミー校長やNDー副主査など経て、今年5月から商品本部でNDの主査に就任している。
 ――(数百台のロードスターが集まる恒例大型イベント)5月の軽井沢ミーティングにも参加されましたが、改めてロードスターの担当主査になったお気持ちはいかがですか。

 (現地では)イベント開場前から現地の雰囲気を感じたり、入場する皆さんが私に手を振ってくれたり、とても感動しました。ロードスターの開発でいちばん難しいのは、マツダとファンの皆さんが(一緒になって)これからロードスターをどう進化させるかだと思います。これまでは広島で、ロードスターの副主査をやってきたので、開発(そのものの)流れはわかります。ただし、「ことづくり」の分野でどうするべきか、悩んでいます。マツダがやるとなると、ハードルもあります。
■ファンが集うサロンをつくりたい

 ――そのハードルというのは具体的に何ですか? 

 今日もファン主体のイベントですが、マツダ主体のイベントをいろいろ仕掛けていくべきだと思います。私は実研部門育ちなので、三次や美祢(みね:山口県美祢市)の試験場での一般的な高速での走行会などを想定してしまいがちです。そうなると安全面や運営コストはもちろん、継続させることが大きな課題となります。

 また、アパレルなどのグッズを拡充する場合、近年はマツダ全体としてのブランド戦略としての統一感が求められ、デザインの確定まで時間がかかるなどといったことも考えられます。それでも、例えばサロンをつくるのもひとつの手かもしれません。
 ――ファンが集うサロンということでしょうか? 

 はい。ディーラーに併設するロードスターファンのためのサロンをつくりたい。都心よりも郊外や地方でスペースが広いディーラーで。部品やグッズの販売、レストアやファン同士の情報交換の場としてのサロンです。事業として継続させることはなかなか難しいと思いますが……。

 ――改めて、発売から4年が経ったNDの進化を振り返っていただけますか。

 国内では2018年秋にRF用の2.0リッターエンジンを大幅改良しました。最高回転数をそれまでの6500rpmから7500rpmまで一気に上げ、全回転域でのトルクも上げました。1.5リッターも多少ですがトルクアップなどを行い、すごく乗りやすくなったとお客様から好評です。
■「だれもが、しあわせになる。」という提供価値

 ――そのエンジンラインナップですが、仕向け地別での違いはどうなっていますか。

 日本は(電動ハードトップの)RFが2リッター。北米はすべて2リッター。欧州ではソフトトップとRFそれぞれに1.5リッターと2リッターがあります。これはNCで採用した1.8リッターがエントリーモデルとして人気だったことに由来します。

 こうした違いは、地元ディーラーやお客様からの声をもとに決めています。日本でもソフトトップに2リッターを、という声が一部にありますが、(国内での走行状況を加味した性能のバランスを考慮して)2リッター導入の予定はありません。マニュアルミッションとオートマチックトランスミッションとの比率は(世界市場で)ソフトトップが7対3で、RFはゆったり優雅に乗りたいという要望が多いため5対5です。
 ――では、未来について伺います。30年間のロードスターの進化を踏まえて、これから先のロードスターの進化をどのように展望していますか。

 いまから30年、50年経っても、ロードスターの提供価値は変わっていないと思います。「誰もが幸せになる」。これがNAのカタログの1ページ目の言葉です。開発の哲学としての、人馬一体はこれからも変わらない。みんなで集う楽しみ、カスタマイズする楽しみも変わらない。ライトウエイトであること、前後重量配分50:50など、(いわゆる)ロードスター憲法は変わらない。時代時代で法的な規制などがあっても、マツダが持てるすべての技術を擁して、これから先もロードスターであり続けます。
 ――ND誕生からもう4年が経ちますが、次期NEのイメージはもう、お持ちでしょうか。

 それより、まずはNDを改良します。当然、(マツダ第7世代のマツダ3らが導入した車体設計の考え方)スカイアクティブ ビークル アーキテクチャーの導入を考えています。また、法規制では環境対応が最も大きなファクターです。さらに、将来的には衝突安全への対応が厳しくなります。(衝突安全は現在、アセスメントとして評価基準だが)マツダとして思い切った判断を下すなど方策が問われるはずです。
 ――よく聞かれる質問だと思いますが、将来ロードスターが電気自動車(EV)になることもありえますか。

 ロードスターは、パワートレインにはこだわりません。EVだろうがなんだろうが、アクセル踏んで楽しめれば、いいと思います。ただし、EVになってロードスターらしい楽しい走りができないのなら、EVはいらない。ファンの方々に失礼ですから。

■運転訓練をやってみたい

 ――最後に、冒頭でお話しになったロードスターによる「ことづくり」について、さらにアイデアがあれば教えてください。
 運転訓練です。滑らかな運転とは何か。どういうブレーキの踏み方が気持ちいいのか。走る、曲がる、止まるという一連の車の動きの中で、Gのつながりをしっかり感じ取りながら走る訓練です。

 実際に、人馬一体アカデミーでは、全国のマツダ販売会社や国内営業部向けで美祢で行ってきました。各モデルの担当主査向けでも、車の評価能力向上のために行っています。決してタイヤは鳴らして走らず、最初は時速10kmでじんわりとゆっくり走り、こぶし1つ分の少ない操舵を行うなどの訓練をします。これを、例えば年間3回、一般向け有料プログラムにする提案を(社内で)進めたいと思います。
 
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 齋藤主査と話した後、ロードスター展でのさまざまな展示物を通じて、改めてロードスター30年の歴史を実感した。そこにあるのは「誰もが幸せになる楽しい時間」だ。事実、この日から4日間、ロードスターの広報車をマツダ本社からお借りして試乗しているのだが、単純明快、実に楽しい。

 自動運転、EV、コネクテッドカー、そしてライドシェアリングなどの「所有から共有」。自動車業界はいま、技術/サービスの大変革の嵐の真っただ中にいる。齋藤主査がまだ公にしていないような、ロードスターによるさまざまな「ことづくり」が始まることを期待したい。
桃田 健史 :ジャーナリスト

最終更新:7月22日(月)13時13分

東洋経済オンライン

 

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