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働く女性の5割超「フルキャリ」を活かす方法

7月19日(金)6時30分配信 東洋経済オンライン

働く女性について「ゆるキャリ」「バリキャリ」と二元論で語られがちですが、「フルキャリ」という第3の働き手が、これからの人材不足時代の鍵となるかもしれません(写真:xiangtao/PIXTA)
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働く女性について「ゆるキャリ」「バリキャリ」と二元論で語られがちですが、「フルキャリ」という第3の働き手が、これからの人材不足時代の鍵となるかもしれません(写真:xiangtao/PIXTA)
今や働く女性の半数を超える「フルキャリ」をご存じでしょうか? 
「ゆるキャリ」でも「バリキャリ」でもない、新しい価値観をもった第3の働き手を「フルキャリ」と名づけ、近著『フルキャリマネジメント』を著した武田佳奈氏が、フルキャリたちの仕事に対する姿勢や考え方を紹介します。

■女性の部下の育成に戸惑う管理職

 ある日、女性の部下に「妊娠しました」と報告されたら、マネジャーであるあなたはどうしますか。

 実際に、そのような報告を受け、その後産休に入るまでどう接すればよいのかわからなくて困ったという経験をした管理職の方も増えてきたのではないでしょうか。育休から復職してくる女性の部下について、どのように受け入れるべきなのか頭を抱えている人もいるかもしれません。
 まだ経験はなくても、部下の顔を見回して、いつそのような報告があってもおかしくない、明日はわが身だと感じる人も少なくないのではないでしょうか。

 女性の採用比率は年々高まっています。ここ数年で女性の採用を積極的に進めてきた多くの企業において、働きながら、結婚、妊娠・出産といったライフイベントを次々と経験していく女性社員が増え始めています。統計的に見れば、妊娠・出産後も仕事を続け、子育てしながら働く女性社員は増えました。
 しかしながら、一人ひとりの管理職の立場に立って見てみると、これまで、妊娠・出産後も仕事を続け、子育てしながら働く女性社員を部下に持ち、彼女たちの業務の管理や育成・評価などを実際に行った経験のある管理職は一部にすぎません。

 子育てしながら働く女性の部下を持ったことのある管理職はいまだ極めて少ないのです。

 そのため、冒頭のように「妊娠しました」と報告され、突如、子育てと仕事を両立しようとする女性を部下に持つこととなる事態は、多くのマネジャーにとって、未経験もしくは経験の乏しい(おそらく相当不安な)事態の発生です。
 ただただ何事もなく時が過ぎますようにと祈願したり、自宅で妻に「○○(お子さんの名前)を妊娠したときってどんな感じだったっけ」とうっかり聞いてしまい、「あのときは何もしてくれなかった」などと寝た子を起こす事態を招いて、収束するのに精一杯、当初の問題解決には至らなかったといった人も少なくなかったのではないでしょうか。

 これまで、子育てと仕事を両立しようとする女性を部下に持つことは、一部のマネジャーのみが対処を迫られる「イレギュラー事象(社内の一部で例外的に起こること)」でした。
 しかし、これからは違います。すべてのマネジャーの方にとって、子育てと仕事を両立しようとする女性を部下に持つことは、「レギュラーな事象(すべての管理職において日常的に起こること)」になります。

■女性の部下はやりにくい? 

 妊娠・出産こそしないものの、育休を取って復職してくる男性の部下、働く妻を持ち、家事や子育てを対等に分担しながら働く男性の部下を持つ管理職も、今以上に増えるでしょう。子育てと仕事を両立しようとする部下を抱えることのレギュラー化は、確実です。
 一方で、筆者が男性管理職4718人を対象に実施したアンケート調査では、多くのマネジャーが女性の部下のマネジメントに不安ややりにくさを感じていることがわかりました。以下は、いずれも「そう思う」と回答したマネジャーの割合です。

■「女性の部下の育成に自信がない」 45.4% 
(参考:「男性の部下の育成に自信がない」 25.7%)
■「女性には結婚や出産があるので、長期的なキャリアプランを考えてあげにくい」 63.4%
■「正直にいって、男性の部下だけのほうがマネジメントしやすい」 50.7%

 筆者は、今後、女性の部下をマネジメントするうえで重要なのは、働く女性の中に、出産や子育てにも積極的に取り組みたいが、仕事でも周囲の期待に応えたい、自身のキャリア形成にも前向きに取り組みたいと考える人が増えていること、そしてそのような働く女性の思考や行動特性を理解することだと考えています。

 これまで一般的に、働く女性は極力、家庭やプライベートの都合を仕事の制約にせず、男性と対等に、仕事での成功やキャリアアップを追求したいバリキャリか、家庭やプライベートの時間を確保することを優先し、それが可能となる範囲で仕事をするゆるキャリかといった二元論で語られてきました。
 実際のところは、日本企業のこれまでの職場環境が、彼女たちに二者択一を強いてきた結果ともいえるかもしれません。

■「フルキャリ」という第3の働き手

 少し古い調査にはなりますが、労働政策研究・研修機構が2014年に発表した調査(男女正社員のキャリアと両立支援に関する調査結果⑵―分析編―2014年3月)によると、男性管理職の約80%が子どものいる既婚者であるのに対し、女性管理職のうち子どものいる既婚者は約30%にとどまっていました。
 また、未婚の男性管理職が10%未満であるのに対し、未婚の女性管理職は40%を超えていました。

 結婚することや子どもを持つことを希望するかどうかは個人の選択であり、希望したとしてもさまざまな事情で実現に至らないこともあるため、一概にはいえませんが、これまでのわが国の企業において、女性は男性に比べて、結婚や出産・子育てとキャリアアップを同時に実現することがいかに難しかったかを振り返るには十分なデータだと思います。
 一方、近年、プライベートでは結婚も出産もして、家事や子育てにも積極的に取り組みながら、仕事でも、周囲の期待に応える成果をしっかりと出して、仕事を通じて少しでも自分を高めていきたいと考える女性が増えています。

 筆者は、このように、家事や子育てでも、仕事でも、貢献と成長を目指し、二者択一ではなく、双方に同時に取り組み、実現したいと考える人を、従来のバリキャリ、ゆるキャリのどちらでもない新しいセグメントであるとして、フルキャリと定義しました。
 従来のように、結婚か仕事か、子どもか仕事かというように、どちらか一方を選ぶ、もしくはどちらか一方に重きを置くのではなく、理想的にはどちらも「Fulfill したい(全うしたい、目標を成就させたい)」と考えているのがフルキャリです。

 そうであるがゆえに、時間的にも、肉体的にも、精神的にも、「Full(あふれるほどいっぱい)」になりやすいという特徴を持ちます。こうした特徴を踏まえて、筆者は彼女たちを「“フル”キャリ」と名付けました。
 筆者が行った女性5454人を対象に実施したアンケート調査によると、働く女性の50.4%が自分はフルキャリだと回答しています。ちなみに自分はバリキャリだと回答した人は13.5%、ゆるキャリだと回答した人は36.3%でした。

 筆者は、現代の女性の部下をマネジメントするうえでカギとなるのは、このフルキャリの存在だと考えています。

 少子高齢化を背景とし、生産年齢人口がますます減少していくことは、もはや避けられない日本の未来であることはさまざまな識者が指摘をしています。日本の企業が事業活動を維持し、成長していくための最重要課題は人材の確保ですが、その状況が今後抜本的に解消することは期待できません。
 人材の「量」の確保もさることながら、人材の「質」の向上も急務です。雇用した人材一人ひとりのパフォーマンスをできる限り最大化し、組織としてのパフォーマンスの総和を最大化することこそが、今後の日本企業、ひいてはわが国経済の成長の維持、拡大のカギを握るからです。

 わが国においては、人材の「量」を確保するという意味で、ますます女性社員の比率は高まるでしょう。そしてその多くが、ライフイベントにも積極的に取り組みたいとするフルキャリになっていきます。
 続いて多いのが家庭やプライベートを優先するゆるキャリです。従来のように、家庭やプライベートによって就労制約がある女性社員の仕事を、家庭やプライベートを大きな制約とせず働ける人で十分にカバーできる時代ではもはやありません。

■「フルキャリ」を活かすマネジャーが会社を救う

 こうした構造的問題を踏まえれば、これからの日本企業にとって、フルキャリだろうと、ゆるキャリだろうと、自社の個々のパフォーマンスを極力最大化する戦略こそが、成長戦略そのものになることは明白です。
 筆者は、中でも、仕事への高い意識を持っていながらも、ライフイベントにも積極的であるがゆえに、従来の環境では必ずしもパフォーマンスを最大化できてこなかった、つまりパフォーマンス拡大の伸びしろが大きいフルキャリに着目しています。

 個々のフルキャリのパフォーマンスをできるだけ最大に引き出すことができれば、組織のパフォーマンス総量は確実に増えると考えているからです。

 会社という単位だけでなく、部や課といったチーム単位でも同じことがいえると思います。チームの女性比率は今後ますます高まっていくでしょう。
 チームの中のフルキャリ部下に対し、彼女たち特有の高い仕事に対する意識をできるだけ確実にパフォーマンスにつなげ、活躍を最大化できれば、チームのパフォーマンス総量は最大化します。あなたが率いるチームの目標達成可能性は高まるでしょう。

 人材不足時代において、従来の環境では必ずしもパフォーマンスを最大化できてこなかったが、パフォーマンス拡大の伸びしろが大きいフルキャリ一人ひとりのパフォーマンスを最大化できるマネジャーこそが、チームや組織の成長を牽引する、これからの組織にとって必要不可欠な存在なのです。
武田 佳奈 :株式会社野村総合研究所未来創発センター上級コンサルタント

最終更新:7月19日(金)6時30分

東洋経済オンライン

 

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