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スカイラインに「日産」エンブレムが復活の理由

7月18日(木)5時20分配信 東洋経済オンライン

9月に発売する新型「スカイライン」。エンブレムは海外向け高級車ブランド「インフィニティ」から「NISSAN」に戻った(記者撮影)
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9月に発売する新型「スカイライン」。エンブレムは海外向け高級車ブランド「インフィニティ」から「NISSAN」に戻った(記者撮影)
 5年ぶりの「NISSAN」エンブレムの復活は、日本市場回帰への第一歩なのか――。

 日産自動車は7月16日、高級スポーツセダン「スカイライン」を大幅改良して今年9月に発売すると発表した。高速道路の同一車線内での手放し運転や車線変更時の運転支援などが可能になる先進運転支援技術「プロパイロット2.0」が目玉だが、ひそかに注目を集めるのがエンブレムだ。

■「インフィニティ」エンブレムは5年間で終了

 スカイラインは1957年に初代が発売され、現行モデルは2014年に販売が開始された13代目だ。日産車では最も長く同じ名称での販売が続けられている車種で、まさに日産の歴史を体現する象徴的な車と言える。
 今回の刷新では型式自体はそのままだが、デザインが一新され、先進安全技術や最新のコネクテッド機能などが付いた。車両本体価格は427万円(消費税込み)から。手放し運転機能があるのはハイブリッドエンジンを搭載したグレードのみで、547万円(同)からになる。

 先進安全技術に目がいきがちな今回の大幅刷新だが、日産の日本市場に対する今後の姿勢を占う意味での注目点がある。エンブレムが、日産の海外向け高級車ブランド「インフィニティ」から「NISSAN」に戻ったことだ。
 2014年発売の現行モデルで採用されたインフィニティエンブレムは5年間の短命に終わることになったが、そもそもなぜNISSANエンブレムは消えていたのか。

 スカイラインがたどった歴史を振り返ると、1999年にフランスのルノーと資本提携した後の2001年に発売された11代目から、海外市場への展開を重視した高級車路線に舵を切ったことが、1つの転機となった。

 国内では「スカイライン」、海外では「インフィニティ」ブランドの車種として販売された。13代目の車両価格は前モデルから150万円以上も上昇し、高級車としての位置づけが一層鮮明になった。それを機に、「新しいスカイラインをプレミアムブランドとして位置づけるため」(当時のアンディ・パーマー副社長)として、インフィニティのエンブレムが冠された。
 ただ、インフィニティブランドは日本国内で展開されていない。にもかかわらず、日本の消費者にはほぼ無名のエンブレムを付けて、NISSANブランドのスカイラインとして販売するという「ねじれ」が生じていた。

 背景には、日産が経営の軸足を海外市場に移し、日本市場の存在感が低下していたことがある。現行スカイラインと時期が重なる日産の中期経営計画「パワー88」(2011~2016年度)では北米や中国、インドやブラジルなど新興国での事業拡大を重視。ホームマーケットであるはずの日本は成長余地が乏しいとみなされ、国内向けモデルへの投資は抑制される傾向にあったのだ。
 「(スカイラインの)現行モデルは北米を中心とした海外を意識して開発された。日本はあくまでもプラスアルファの市場。そうした日本市場の位置づけがエンブレムに現れていた」(日産関係者)

■日本市場を見捨てたかのような印象

 とはいえ、スカイラインは日産の歴史を体現する看板車種だ。海外でのインフィニティブランドと同じ「Q50」に車種名を統一しようとする一部の外国人役員らの動きに日本人役員があらがった結果、スカイラインの名称のみが残される折衷案に落ち着いた経緯がある。
 ただ、エンブレムがインフィニティに変わったことは、日本市場を見捨てたかのような印象を消費者に与えた。

 売れ筋がSUV(スポーツ多目的車)やコンパクトカーに移り、セダン市場が縮小したこともあり、直近2年のスカイラインの国内販売は年間2000台程度に低迷。価格帯が近く、ライバルとして比較されることが多いトヨタ自動車の高級車ブランド「レクサス」のISと比較しても劣勢の状況が続く。

 スカイラインにNISSANのエンブレムが復活することについて、日本事業を統括する星野朝子副社長は「そもそもインフィニティがスカイラインを奪っていったと個人的には思っている。スカイラインは日産の車。オリジナルなポジションに戻ってきた」と話す。
 今回の改良ではエンブレムのほかにも、フロント部分に日産車のデザインを象徴する「Vモーショングリル」が採用され、リヤ部分にはかつてスカイラインのアイコンだった「丸目4灯コンビネーションランプ」も復活した。

 日産の最先端技術を真っ先に積んできた歴史を持つスカイラインに「プロパイロット2.0」を初搭載したのも、海外の「おさがり」だった直近の位置づけから脱却させようとする動きに見える。

■西川体制による「日本回帰」の傾向
 これは、海外市場での拡大戦略を主導したカルロス・ゴーン元会長が昨年11月に逮捕され、後を継いだ西川廣人社長率いる現体制が、これまで軽視されてきた日本市場を再評価しようとしている動きと無縁ではない。

 西川社長は「投資の優先順位が世界市場に置かれ、日本には手薄な時期があった。日本の重要度を上げていきたい」と鼻息が荒く、最近の人事では日本人役員を重用するなど、「日本回帰」の傾向を強めている。

 一方で、人口減少が進む国内市場は頭打ちの傾向が鮮明で、成長の源泉が海外にあることは事実だ。日本企業といえども、海外に経営資源を集中させることは合理的でもある。日産は刷新されたスカイラインの販売目標を年間2400台(モデルサイクル全体の平均)に置くが、2018年とほぼ同等の水準だ。国内重視の方針が説得力を持つためには、従来以上の実績が求められる。
岸本 桂司 :東洋経済 記者

最終更新:7月18日(木)5時20分

東洋経済オンライン

 

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