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目標倒れに終わる人と目標達成できる人の差

7月17日(水)16時00分配信 東洋経済オンライン

現状から変化を恐れずに適度なストレスをかけることも必要です(写真:RyanKing999/iStock)
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現状から変化を恐れずに適度なストレスをかけることも必要です(写真:RyanKing999/iStock)
 「年初に目標は立てるのだけど、すぐに飽きてしまう」

 「途中で計画が狂うと、心が折れて諦めてしまう」

 「上から目標を言われても、どうせ無理だろうと考えて本気になれない」

 こんな経験はありませんか? 

 私は、弁護士としてこれまでに自分のクライアントや同じ勉強会に参加している仲間たちの中で、次々と高い目標をクリアしていく人たちをたくさん見てきました。

■高い目標をクリアしていく人たちの決定的な共通点

・年々売り上げを増やし、5年で会社を5倍に成長させた経営者
・上場すると宣言し、準備期間わずか3年で上場を果たした経営者
・3年連続で社内トップの営業成績をあげた生保会社の営業マン
・社会人になってからゴルフをはじめ、忙しく働きながら県大会で優勝した会社員
・20キロのダイエットに成功し、そのうえボディビル大会で入賞までしたお医者さん
拙著『最高の結果を出す 目標達成の全技術』でも詳しく解説していますが、高い目標を次々とクリアしていく人たちには決定的な共通点があります。それは、一定のストレスを感じる状態を楽しんでいるということです。
 人にはそれぞれ、安心に感じる行動エリア、快適に感じる行動パターンがあり、これを心理学の用語で「コンフォートゾーン」(安心快適領域)と呼びます。

・毎日同じ時間に通勤する
・与えられた仕事を黙々とこなす
・住み慣れた家に帰宅する
・毎年変わらない年俸を受け取る
 といった状態がコンフォートゾーンの典型例です。 このコンフォートゾーンを一歩出た状態が、「ストレッチゾーン」(ラーニングゾーン)と呼ばれるエリアです。
・新しいプロジェクトを任されて、これまでとは違う仕事の仕方をしなければならない
・引っ越しをして新しい地域になじまなければならない
・職場のリーダーに抜擢されて年収が1.5倍に急増した
 などという状態です。

 コンフォートゾーンを出てストレッチゾーンに入ると、人はストレスを感じます。さらに、このストレッチゾーンより外のエリアを「パニックゾーン」と呼びます。

・会社をクビになった
・言葉が通じない国に突然転勤を命じられた
・病気やケガで仕事が続けられなくなった
 といった状態です。

 このゾーンに入ると、人は文字どおりパニックに陥り、どのように行動すればいいか、すぐには考えられなくなります。

■「ストレッチゾーン」が目標達成のキモ

 人はコンフォートゾーンにいるよりも、ストレッチゾーンにいたほうが作業効率は上がり、高いパフォーマンスを発揮できます。

 期限に余裕がある仕事だと散漫になってしまい、なかなかいいものに仕上げられないのに、期限が迫っている仕事だと集中力が増し、短時間でいいものに仕上がったという経験が、あなたにもあるのではないでしょうか。
 「火事場のばか力」という言葉があるように、何も刺激がない安心で安全な領域にいるより、多少のストレスがある状態に置かれたほうが作業効率が上がることは、マウスを使った実験でも科学的に証明されているそうで、人間だけでなく多くの動物に共通した習性なのです。

 「目標を立てたけど、なかなか実行計画が進まない」「毎朝早起きをすると決めたのに、なかなか起きられない」という状態は、コンフォートゾーンから抜け出せずにいることが原因になっている可能性があります。
 目標達成が苦手な人は、今までに経験したことがないような高い目標を設定することに不安を感じたり、これまで長年続けてきた生活や仕事のスタイルを変えたりすることにストレスを感じ、ついついコンフォートゾーンの中で毎日を過ごしてしまいます。

 一方、次々と高い目標をクリアしていく人は、「本当に達成できるかな?」と思うような高い目標を掲げ、サボることができないようなアクションプランを自らに課すことでストレッチゾーンに身を置き、高いパフォーマンスを発揮しているのです。
 このように、目標達成が上手な人と苦手な人の違いは、前者はいつもストレッチゾーンにいるのに対して、後者はいつもコンフォートゾーンにいるという、この1点に尽きるのです。 そして、コンフォートゾーンの広さというのは人によって決まっているのではなく、経験によって広がっていきます。 最初は難しいと感じていたことも、慣れてくると当たり前になってきます。

 例えば、初めて自転車に乗る練習をしたときや、免許を取るために自動車教習所に通い始めたときはとても緊張したと思いますが、今では何のストレスも感じずに自転車や自動車に乗っているというのがいい例です。 目標達成について考えるときにも、簡単にできることを目標としてしまうとコンフォートゾーンから抜け出せず、逆に達成の確率が下がってしまいます。
 しかし、高すぎる目標はパニックゾーンの領域に入ってしまい、思考が停止して行動が伴いません。適度なストレスがかかるストレッチゾーンの目標や行動計画を設定し、これをクリアすることで、次はこれが当たり前となり、さらに高い目標が達成できるようになるのです。

■わかっているのに行動が変えられない人間の脳の仕組み

 一方で、頭では「ストレッチゾーンに行くべきだ」とわかっていても、なかなか行動が変えられないと思いませんか? 
A)無条件で1万円をもらえる
B)じゃんけんで勝てば3万円もらえるが、負けると何ももらえない
 という二者択一を迫られたらどうしますか? 

 多くの人はAを選択します。理論的な期待値はBのほうが得ですが、勝つか負けるかの2択なので、Bの期待値は3万円の2分の1=1万5000円といえるからです。

 逆に、

C)1万円を罰金として支払わなければならない
D)じゃんけんで勝てば罰金は免除となるが、じゃんけんで負けると3万円を支払わなければならない
 と聞かれればどうでしょうか? 

 このような選択では、理論的な期待値はCのほうが得なのにDを選択する人が増えます。

 人間の脳は、新しいことをして得られることよりも、新しいことをして失うことのほうを過大に評価するようにできていて、なるべく変化のない選択をするようにプログラムされています。

 これを「現状維持バイアス」と言います。変化を避けようとする人の心理作用で、変化することにより利益が得られる可能性があっても、変化を恐れて行動を起こさないという習性です。
 実際にはなかなか入れないのは、意志が弱いからでも情熱が足りないからでもないのです。 ストレッチゾーンの前に「現状維持バイアス」という強敵が高い壁となって立ちはだかり、コンフォートゾーンに追い返そうとしているからです。

■変化を恐れる心理が行動にブレーキをかける

 これから手に入れられるかもしれないこと(失うかもしれないこと)よりも、すでに手に入れているものを大切にしようとするので、日常生活の中では、
・職場に不満があっても、なかなか転職できない
・恋人同士で長く付き合うと、不満があってもなかなか別れを切り出せない
・逆に、恋人同士が長年交際していても、なかなか結婚に踏み切れない
・ずっと挑戦してみたいと思っているスポーツがあるが、なかなか手を出せない
・ダイエットしたいのに、ついつい間食をやめられない
 といったことが起きるのです。そして、

・給料は低いけど、自分には合っているし大きな不満ではない
・今の相手は完璧ではないけれど、別れてももっといい人と出会える保証はない
・結婚すると楽しいかもしれないけど、いろいろと制約も生まれそうだ
・今は忙しいから、また時間ができたときに考えよう
・今月は宴会が多いから、ダイエットは来月からにしよう
 などと自分に言い聞かせ、無意識のうちに変化や新しい挑戦をブロックしているのです。 もともと、現状維持バイアスは人間に備わっている生存本能、防衛本能です。

 「今までこのやり方で死ななかったのだから、このやり方を続けられる限り、新しいことは取り入れずこのやり方を続けよう」と考えたほうが、生命の危険から身を守れる可能性が高まります。だから、新しいことに尻ごみするのは種の保存のために自然なことだったのです。
 しかし、新たな目標を達成したいときにはこの現状維持バイアスが、目標達成の行く手を阻む最大の敵になります。現状維持バイアスという壁を上手に乗り越えるためには、「目標を公言する」「仲間を作る」など、いくつかコツがあります。

 もう1つ、お伝えしておきたいことがあります。

 それは、目標は達成できなくても格好悪くないということです。 みなさんも、上場企業が業績予想を下方修正したという新聞記事を目にしたことがあるのではないでしょうか。そもそも「目標を立てて、計画を実行したら、すべてが予定どおり順調に達成できました」などと、簡単にいくことばかりではありません。高い目標であればなおさらです。
 予定が狂ってしまった場合には、達成までの道のりを考え直して、計画を修正すればいいのですし、それでも達成が難しければ、目標自体を立て直せばいいのです。

 意外に思うかもしれませんが、高い目標を達成している人ほど、数多くの失敗をしています。昨年、新規上場を果たしたA社のK社長も、実は過去に2度上場に失敗していて、今回が3度目の挑戦でした。念願がかない、上場パーティーでは晴れやかなお顔をされていました。
 また、ある上場企業の社長も、上場直後に98%減益という下方修正を発表して機関投資家から批判を浴びたそうですが、それもエネルギーに変えて業績はV字回復を果たし、さらなる高みへ成長を続けています。

 このように達成上手な人たちは、失敗を恐れず高い目標を立ててストレッチゾーンで毎日を過ごしています。

 そして、立てた目標に届かなかったときは、「何が悪かったのか?」「どうすれば今度は成功できるか?」を考えてすぐに再チャレンジをします。
■目標は達成できなくても、いいことしかない

 なぜ目標を立てたがらないかというと、目標を公言したら達成できないと恥ずかしいとか、格好悪いという見えや思い込みがあるからなのです。この見えが邪魔をして、現状維持バイアスの壁をなかなか越えられないのです。 新しい行動を決断するときにはストレスを感じて迷いますが、行動した後にその決断を後悔することは、ほとんどないはずです。
三谷 淳 :未来創造弁護士法人 代表弁護士

最終更新:7月17日(水)16時00分

東洋経済オンライン

 

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