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幹線扱いされず残念!「元気な地方交通線」10選

7月17日(水)5時10分配信 東洋経済オンライン

JR札沼線の石狩太美駅。北欧スウェーデン風の駅舎が目を引く(筆者撮影)
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JR札沼線の石狩太美駅。北欧スウェーデン風の駅舎が目を引く(筆者撮影)
前々回の「過去のにぎわいが懐かしい『残念な幹線』10選」、前回の「新幹線や車に主役を譲った…『残念な幹線』10選」の記事で、「幹線」に分類されながらも実態は「地方交通線」という残念な路線を合わせて20路線紹介した。

 今回は逆に、地方交通線に分類されながらもJR各社の経営努力や沿線の開発により「幹線」に再分類してもおかしくない元気な路線を取り上げてみた。

■JR北海道の希望の星? 

1)札沼線の桑園―北海道医療大学間(北海道)
 経営不振にあえぐJR北海道において、希望の星と言えるのが札沼線の札幌近郊区間、桑園―北海道医療大学間である。かつては、札幌近郊にありながらものどかな田園地帯を走ることもあってか、2時間に1本列車が走る程度の閑散路線であった。

 ところが、沿線にニュータウンの建設、北海道教育大学札幌校、北海道医療大学が設置されたことからにわかに利用客が増加。駅の新設、複線化、高架化、列車本数の増加と好循環を繰り返し、2012年には桑園―北海道医療大学間の電化が完成、電車が走り始めた。
 現在、昼間は札幌発20分ごと、夕方のラッシュ時は15分ごとと、とても地方交通線とは思えない。地方交通線としては、一部の区間としては全国で最大の輸送密度を誇るとの統計もある。

 なお、北海道医療大学―新十津川の非電化閑散路線は、2020年5月をもって廃止されることが決まっている。また、札沼線という名称は、札幌と石狩沼田を結んでいたことに由来するのだが、すでに実態に合っていないため学園都市線という愛称が一般的には普及している。
2)田沢湖線(岩手県・秋田県)
 岩手県の盛岡駅と秋田県の大曲駅を結ぶ田沢湖線は、いわゆる秋田新幹線「こまち」が1時間に1本は走るのに、地方交通線のままである。

 もともとは地味なローカル線をつないで東北横断線の1つとしたのだが、東北新幹線盛岡開業で、秋田への近道として脚光を浴び、電化、その後ミニ新幹線のルートと躍進を続けた。「こまち」以外の普通列車は本数も少なく、赤渕―田沢湖間は1日4往復しか列車が走っていない。
 しかし現在、どの幹線でも特急重視で、田沢湖線の一部区間以上に普通列車の本数が少ない区間はあるので、これだけで地方交通線にしておいてよい理由とはならないであろう。

■新潟・名古屋の近郊路線

3)越後線の新潟―内野間(新潟県)
 新潟市の近郊路線としての役割を果たす越後線。区間によって列車本数のバラつきはあるけれど、新潟―内野間は、昼間でも1時間に3本の設定がある。

 新潟駅に乗り入れる白新線や、同駅に列車が直通する磐越西線がどちらも幹線であることを考えると、越後線だけ地方交通線扱いするのは気の毒にも思える。
4)武豊線(愛知県)
 知多半島を走り、愛知県最古の路線という伝統ある武豊線は、近年まで冷遇されてきた名古屋圏の近郊路線だ。半田や武豊は名鉄河和線の利用者のほうが多く、非電化のディーゼル路線では勝ち目がなかった。

 遅まきながら、2015年に全線電化され、名古屋からの直通の区間快速電車も走るようになった。

 昼間は30分ごと、ラッシュ時には1時間に3~4本の電車が運行され、輸送密度も幹線並みに高いので、地方交通線のままなのがかわいそうな気がする。
5)高山本線の岐阜―高山間(岐阜県)
 名古屋から(1本は大阪から)の特急列車「ワイドビューひだ」が世界的に有名な観光地高山へ向けて多くの観光客を運んでいる。定期の特急列車は1日10往復、繁忙期には臨時列車も運行される。

 名古屋発で見た場合、1日4往復の「ワイドビュー南紀」が走る紀勢本線が幹線なのに高山本線が地方交通線扱い。何ともアンバランスな実態である。

■中国・四国地方にも

6)可部線(広島県)
 いったんは2003年に廃止となった可部以北のうち、沿線に宅地が広がる可部―あき亀山間が2017年3月に電化延伸という形で復活した。
 現在では、「レッドウイング」という愛称で呼ばれる新型電車227系がさっそうと走っている。

 広島駅へ直通し、本数は昼間で1時間に3本、ラッシュ時には途中の緑井駅発着を含めると5、6本もあり、とても地方交通線というイメージではない。

 廃止になったJR線の一部が運転を再開するのは全国で初めてのケースであり、これからも頑張ってほしい路線の1つだ。

7)内子線(愛媛県)
 かつて予讃本線から分岐する盲腸線だった内子線のうち新谷―内子間を組み入れて、あとは予讃線の新線とともに海沿いの本線のショートカットが1986年に完成。優等列車は原則、ショートカット経由となっている。
 長崎本線や中央東線の旧線新線のように、すべて予讃線に組み入れればよかったものの、現在に至るまでややこしいことになっている。

 しかし、利用者のうち、内子線を走行しているなどと体感している人は、地元の鉄道通以外どれくらいいるのだろうか? 

8)筑豊本線の桂川―若松間(福岡県)
 石炭輸送全盛期には非電化ながら複線どころか複々線区間もあるなど繁栄を極めた路線だった。

 だが、炭鉱の閉山などで急速に斜陽化が進み、国鉄再建法制定の基準となる1980年当時は地方交通線に格下げされても致し方ない状況だった。
 その後は、福岡近郊路線として、幹線の篠栗線とともに桂川―折尾間が電化され、状況は一変。運行本数も増え、幹線にしてもいい状況ではある。

■非電化でも「電車」が走る

9)香椎線(福岡県)
 一部区間が福岡市内を走るものの全線非電化のローカル線だった。今では、全線が福岡近郊区間に含まれている。JR九州になってからは列車の本数が大幅に増え、一時は昼間でも20分ごとに列車が走るようになった。

 近年のダイヤ見直しにより、昼間は30分ごと、夕方は1時間に3本と調整されたものの、幹線に分類していいほどの状況である。
 2019年3月から、あらかじめ香椎駅で蓄電池にためておいた電気で走る「DENCHA」が投入され、架線がないにもかかわらず“電車”が走っている。

 これにより面目を一新、都市近郊路線としてふさわしい路線になった。

10)豊肥本線の熊本―肥後大津間(熊本県)
 熊本都市圏の熊本―肥後大津間は1999年に電化され、昼間は1時間に2~3本と地方都市圏にふさわしい状況である。九州新幹線開業前には、特急「有明」が博多へ直通運転していた。
 今年の改元で再注目された平成駅は1992年、光の森駅は2006年に開業しており、新駅が誕生するほど比較的利用者が多い路線になっている。

 一方、観光特急「あそぼーい!」も走っていた肥後大津より先、阿蘇までの区間は熊本地震で甚大な被害が出て現在も運転を見合わせたままだ。今後は、まずは災害による不通区間の復旧が先決だが、熊本空港への延伸計画や複線化の構想が実現できるか注目される。

 以上のように、地方交通線に分類されていても真の「幹線」に匹敵する元気な路線、区間もある。見かけにとらわれず、実情をしっかり見ていきたいものだ。
野田 隆 :旅行作家

最終更新:7月17日(水)5時10分

東洋経済オンライン

 

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