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宇宙の「商業利用」がなかなか進まないわけ

7月16日(火)5時00分配信 東洋経済オンライン

世界各地で民間企業によるロケットの開発や打ち上げが進んでいる。写真は2017年3月に種子島で打ち上げられたH2Aロケット(編集部撮影)
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世界各地で民間企業によるロケットの開発や打ち上げが進んでいる。写真は2017年3月に種子島で打ち上げられたH2Aロケット(編集部撮影)
アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏、テスラ創業者のイーロン・マスク氏、ライブドア元社長で実業家の堀江貴文氏。この3人が共通して力を入れているのがロケットの開発だ。
ベゾス氏は2000年にロケット開発ベンチャーのブルーオリジンを設立し、マスク氏も2002年にスペースXを設立している。スペースXはすでに100機以上のロケットを打ち上げ、NASA(アメリカ航空宇宙局)などからも人工衛星の打ち上げを受注している。
堀江氏も小型ロケットを開発するインターステラテクノロジズに出資している。ほかにもイギリスのヴァージン・ギャラクティックやニュージーランドを拠点とするロケットラボなど、世界各地で民間企業によるロケットの開発や打ち上げが進んでいる。
背景には、観測衛星や通信衛星など、人工衛星の需要が急増していることがある。需要を取り込むために各社はロケット開発を進めており、宇宙産業は華やかに、壮大に成長しているように見える。
ただ、現状は政府や公的機関からの発注やエンジェル投資家を中心とした資金獲得で事業を継続しているところが多い。成長する宇宙ビジネスに「B to B」の流れを作ることができるのか。2017年に「宇宙商社」をコンセプトに設立された「Space BD」(スペースBD)の永崎将利社長に話を聞いた。

■宇宙における商業利用はまだ不十分

 ――ロケットや人工衛星など、ものづくりのイメージが強い宇宙産業で人工衛星とロケットのマッチングや、打ち上げサービスを提供する「商社」を設立したのはなぜでしょうか。
 宇宙産業が自ら収益を得られるビジネスになりきっていないという思いがあった。産業の両輪は技術革新と商業利用にある。宇宙産業では技術革新が続いているが、商業利用はまだ十分に進んでいない。

 宇宙産業はもともと政府が主導して民間企業にロケットなど宇宙開発のためのインフラ作りを発注してきた産業で。官需依存の面が強い。一方で、人工衛星を打ち上げて通信や観測データを利用したいという民間企業は増えている。そのような企業と衛星を打ち上げるロケットを提供する企業をつなぐ存在が必要になっていると考え、宇宙商社としてロケットと衛星のマッチングや打ち上げにかかる煩雑な手続きを代行する打ち上げサービスを立ち上げた。
 私自身は2013年に起業するまで三井物産で鉄鋼の商材を扱ってきた。鉄鋼の世界では、原料の購入から鉄を売るまでの流れが民間企業同士で還流している。「B to G(政府)」の状態を脱していない宇宙ビジネスを始めたのは宇宙好きだからではなく、いちばん難しい分野にチャレンジしてビジネスパーソンとしての本懐を遂げたいと思ったからだ。

 ――日本でも民間企業によるロケット打ち上げを目指す動きなど宇宙分野での起業が盛んになっています。
 にわかに宇宙ベンチャーが増えて、宇宙ビジネスが脚光を浴びているが、そうとう危ない状況にあると思う。なぜなら、国やJAXA(宇宙航空研究開発機構)を相手にして利益をあげている企業以外で、利益を出している企業はほとんどないからだ。

■今後は海外の需要を日本国内に引き込んでいく

 日本では主な宇宙ベンチャーが20社ほど存在する。しかし、大半は資金調達を繰り返して独自の衛星やロケットを生み出している状態で、売り上げ自体はまだ立っていない。本来であれば、例えば3億円かけて人工衛星を作り、3億円かけてロケットを打ち上げ、衛星を5年間運用して12億円の収入を得て、粗利を6億円得るというのが健全な状態だ。
 ところが、今は投資家からどれだけリスクマネーを集めることができたかで評価されている段階で、ビジネスとして健全だとはいえない。資金を集めることは重要だが、いかに収益を出せるかが宇宙ベンチャーの課題だ。

 ――スペースBDが日本の宇宙産業発展のために果たす役割は何ですか。

 海外で人工衛星を打ち上げたい企業や団体に日本のロケットなどを紹介することで、日本の宇宙産業にB to Bの流れを作っていく。昨年5月には国際宇宙ステーション(ISS)の日本の実験棟「きぼう」から超小型衛星を放出する事業者として当社は三井物産とともに選ばれた。スペースBDにはすでに海外事業者を含めて10機以上の受注実績がある。
 今年3月には「きぼう」の船外実験装置の利用事業者として民間で唯一選ばれた。ISS利用のリーディングカンパニーともいえる状況なので、海外でも信頼を得ることができて衛星打ち上げ事業者へのマーケティング活動を順調に進められている。

 日本のロケット打ち上げ事業者に海外の潜在顧客を紹介することができ、今後は海外の需要を日本国内に引き込むことが一層できると思う。世界の需要動向も把握しているので、日本のロケット開発事業者にロケット開発の参考になる情報も提供できるだろう。
 ――ただ、日本ではJAXAや大手重工メーカー以外に、民間企業によるロケット打ち上げによる人工衛星投入実績がありません。

 国内でも堀江貴文氏が出資しているインターステラテクノロジズやキヤノン電子が中心に設立したスペースワンなどが、衛星打ち上げ需要を取り込もうと懸命に開発を進めている。スペースBDとしてもロケットを開発できた企業がすぐさま事業として収益をあげられるよう顧客の開拓を進めて協力していきたい。
 またH2Aロケットやイプシロンロケット、開発中のH3のように大手重工メーカー各社はすでに打ち上げ実績や技術の蓄積がある。日本のロケット開発技術は世界的にも高い水準にあり、日本の宇宙産業を一緒に盛り上げていくことはまだまだ可能だ。

 海外でもアメリカのスペースXのように一見うまくいっている事例は多くあるが、NASAの発注などによって事業を継続できているベンチャーも多い。日本の宇宙産業を広げる余地は多いだろう。
■宇宙データを使えば、ビジネスに広がりも

 ――人工衛星打ち上げ需要の背景でもある、宇宙に関連したデータビジネスをどう展開しますか。

 関わっていこうと考えている。現在の宇宙産業は人工衛星を打ち上げて、その衛星で得られたデータを本業の事業に生かすことや、外部にデータを販売したりすることでマネタイズしていくことが念頭にある。当社は衛星の打ち上げコストの低減など入口の事業を強化していたが、宇宙データを使って事業に広がりができることで、衛星の打ち上げ需要がより高まる好循環ができるかもしれない。
 すでに国内でも、さくらインターネットが経産省から事業を受託し、衛星画像などの宇宙データを無償で共有するサービス「Tellus(テルース)」を始めた。シャープやコニカミノルタなどの大手企業もTellusを支える宇宙データの活用を民間で推進するための取り組み「xData Alliance(クロスデータアライアンス)」に参加している。今後も宇宙事業とあまり関わりのなかった企業が宇宙分野に関心を示す可能性も高い。宇宙の総合商社として宇宙事業を始める企業の手助けをしていきたい。
劉 彦甫 :東洋経済 記者

最終更新:7月16日(火)5時00分

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