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冷え込む中国景気、対米摩擦は吉と出るか凶と出るか?

6月27日(木)13時30分配信 ダイヤモンド・オンライン

政府が景気対策に本腰を入れる一方、米トランプ政権の追加関税発動の不安もある中国経済。これからどうなるのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA
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政府が景気対策に本腰を入れる一方、米トランプ政権の追加関税発動の不安もある中国経済。これからどうなるのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA
● 中国景気は増勢が鈍化 デレバレッジ政策が重石

 中国景気は、外需の低迷が続いているほか、内需の回復にも遅れがみられる。本稿では、中国の景気動向を点検したうえで、先行きを展望したい。

 中国からの輸出は、米国による関税引き上げなどにより増勢が鈍化している。昨年7、8月に米トランプ政権が合計500億ドル規模の中国製品の関税率を25%に引き上げ、9月に2000億ドル規模の中国製品の関税率を10%に引き上げた。この結果、輸出総額の2割を占める米国向け輸出は、昨年末から前年割れが続いている。

 さらに、他地域向けの輸出も伸び悩んでいる。世界的にIT需要の回復が遅れているほか、ブレグジット問題を背景とした不透明感から、アジア・EU景気が停滞したためである。

 今年に入り底入れの兆しが見られた固定資産投資(設備投資、インフラ投資、住宅投資など)と実質小売売上高の増勢も、足元でやや鈍化している。昨年までのデレバレッジ(与信や債務の抑制)政策の影響が根強く残っているからだ。

 デレバレッジ政策の柱は、銀行に対する金融規制の強化と、地方財政への監督強化の2つであった。銀行による簿外取引(いわゆるシャドーバンキング)の縮小や地方での野放図なインフラ投資の見直しにより、与信と債務の急拡大に歯止めがかかった。また、地下鉄や空港、高速道路など数多くのインフラ整備プロジェクトが停止し、多くの民間企業も深刻な資金繰り難に陥った。
とりわけ厳しい地方経済
景気対策は力不足
 とりわけ、地方経済が厳しい状況に陥っている。インフラ投資への依存度が低い広東省や江蘇省、浙江省の経済成長率は、小幅な鈍化にとどまる一方、インフラ投資の依存度が高い内モンゴル自治区や吉林省、天津市、重慶市の経済成長率は、2016年の半分程度に下方屈折し、その後も低水準が続いている(図表1参照)。

 こうした地方経済の低迷は、個人消費全体の重石になっている。5月の自動車販売台数は前年比▲16.4%であったが、沿海部大都市でのシェアが高い日本車は、同+1.8%増とプラス維持。一方、内陸部中小都市で高いシェアを持つ中国ブランド車は、同▲28.2%と大きく減少した。なお米国ブランドも、米中関係の冷え込みが続くなか同▲20.4%と減少した。

 もちろん中国経済では、弱い動きばかりではなく、政府の景気対策によって鉄道投資や情報通信機械の需要が拡大している。スマートフォンが9割を占める携帯電話販売台数は、5月に前年比+1.2%と2ヵ月連続で増加した。しかし、デレバレッジ政策のマイナス影響が想定以上に大きく、景気全体を押し上げるには力不足である。
政府は景気対策に本気
成長率は7-9月期から持ち直しへ
 今後を展望してみよう。4-6月期の経済成長率は、再び弱含むと予想される(図表2参照)が、景気失速は回避されると予想する。中国政府が本気で景気対策に乗り出しているからだ。中国の経済成長率は7-9月期に再び持ち直すと見込まれる(図表2)。

 まず、中国政府が投資抑制策の手綱を緩めたため、年後半にインフラ投資が持ち直すとみられる。また、中国人民銀行は、預金準備率の引き下げなど金融緩和に舵を切った。加えて、政府は銀行に対し、簿外取引の縮小の期限を延長したほか、地方でインフラ整備を担う地方融資平台の融資需要に応えるよう要請するなど、金融規制・監督を緩和する方向へ修正した。

 財政面では、需要創造に向けて鉄道などの整備を加速させ、地方政府に対し、地方債発行によるインフラ整備を進めるよう通知した。今後、金融機関による地方債引き受けの拡大で、地方政府の資金繰り難は和らぐとみられる。

 民間企業の設備投資も、政府の投資促進策を受けて回復に向かう見通しである。政府は今春から、ハイテク製造業向けの補助金や優遇税制の導入を表明した。たとえば、重慶市政府は4月29日、産学官によるハイテク製造業プロジェクト(製造業創新中心)に対し、最大2000万元の補助金を3年間支給すると発表した。

 さらに政府は、集積回路とソフトウェア産業に対する企業所得税の減免を決定した。商用5Gライセンスについても、大手通信事業者3社と中国広播電視網絡有限公司にいち早く交付した。こうした政策による景気下支え効果は、今後顕在化すると見込まれる。

 自動車販売も、地方経済の回復や自動車販売テコ入れ策を受けて、持ち直しに転じるとみられる。前述したように、地方政府はインフラ整備をテコに景気を回復させようとしており、追加の自動車販売テコ入れ策も発表された。たとえば国家発展改革員会は、環境保護や渋滞緩和をねらいとした乗用車ナンバープレート規制を新たに導入することを禁止し、広東省は既存のナンバープレート規制を緩和した。

 このように中国景気は、米中貿易摩擦が引き続き重石となるものの、断固たる姿勢で安定成長を追求する政府の政策運営のもと、失速は回避されると見込まれる。

 なお、米トランプ政権による3000億ドル規模の中国製品に対する追加関税が発動された場合、成長率がさらに押し下げられる力が働く。その場合でも、中国政府は金融・財政政策をさらに積み増し、景気押し下げ圧力を相殺するだろう。

 (日本総合研究所 調査部 副主任研究員 関 辰一)
関 辰一

最終更新:7月1日(月)21時45分

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