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一緒に働く“外国人”に難なく仕事を教えるコツ

6月26日(水)9時00分配信 東洋経済オンライン

文化・習慣や日本語レベルの違う外国人スタッフに“やってほしい行動”を正確に伝えるコツとは(写真:Tempura/iStock)
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文化・習慣や日本語レベルの違う外国人スタッフに“やってほしい行動”を正確に伝えるコツとは(写真:Tempura/iStock)
日本各地で人手が不足し、外国人労働者が増え続けています。サービスの向上や人材の多様性を高めるメリットなどを鑑み、戦略的に外国人を採用している企業も。ただ、言語も文化も違う外国人スタッフに業務を教えるのはなかなか大変なこと。そこで、人間の‟やる気や根性”ではなく‟行動”に着目して指導や育成を行う「行動科学マネジメント」を確立した石田淳氏に、外国人スタッフに仕事を教えるための技術を教えてもらいました。
■やってほしい行動を正確に伝えるためには

 人手不足の現代日本では、「とにかく人が採れない」という悲鳴が、あらゆる業界から聞こえてきます。少子高齢化による労働人口の減少は今後もとどまる気配がありませんから、日本で“働く外国人”はこれからますます増えていくことでしょう。

 また、外国人採用を検討すべきなのは、“人手不足の現場”だけではありません。

 例えば、外国人の顧客に対応できるスタッフがいるとビジネス上有利になるのが、ホテル、レジャー施設、販売店、飲食店など。多くの外国人旅行者が日本にやってくるという状況は、おそらく今後も続くでしょう。お客様と母国語でスムーズにコミュニケーションをとれる外国人スタッフがいれば、売り上げアップにつながりますし、外国人ならではの視点で新たな商品やサービスを提案してくれるケースもあるはずです。
 さらには、人材の多様性を高めることによるメリットにいち早く気づき、何年も前から戦略的に外国人を採用している企業もあります。

 日本で働くことを希望する人たちの日本語レベルはさまざまです。中には源氏物語の原文を読みこなせるような人もいますが、一般的には“目下、日本語勉強中です”という人がほとんど。“片言の日本語しか喋れない”“日本語をほとんど聞き取れない”といった段階の人も少なくありません。

 教える技術である「行動科学マネジメント」で最も重要なのは、仕事の内容を“具体的な行動”で伝え、それを実践し続けるようにサポートすること。「行動」に焦点を当てる科学的なマネジメント手法ですから、年齢・性別・国籍などにかかわらず、どんな部下であっても誰に対しても、教え方の基本は同じです。
 ただ、日本語がネイティブではなかったり、文化・習慣の違う外国人スタッフの場合、“やってほしい行動”を正確に伝えるためには、さらに少しの工夫が必要になります。

 私たちの“ふだんどおりの日本語”では十分なコミュニケーションがとれない相手に“やってほしい行動”を正確に伝えるためのコツをお伝えしましょう。

■在留外国人との会話に必要なのは英語ではない

 “外国人との会話”というとすぐに「英語」を連想しがちですが、日本で暮らす外国人の実態を知ると、必ずしも「英語」が万能ではないことがわかります。
 2017年6月末時点での在留外国人の出身国(地域)および公用語を人数の多い順に並べると、1位が中国の28.8%、2位が韓国の18.3%、3位はフィリピンの10.2%、4位がブラジルの7.5%、5位がベトナムの9.4%、6位がネパールの3.0%、そして7位にやっと米国の2.2%がランキングしており、“英語が公用語でない国”の人が非常に多いことがわかります。

 また別の調査で、在日外国人約1700人に“母語(幼児期に最初に覚えた言語)以外で日常生活に困らない言語”を複数回答してもらったところ、日本語が70.8%だったのに対し、英語は36.8%だけでした(2009年:国立国語研究所「生活のための日本語:全国調査」)。
 さらに、文化庁の「日本語に対する在住外国人の意識に関する実態調査(2001年実施)」「日本語教室に通っている16歳以上の在住外国人への調査」によると、日本で暮らす外国人の多くはローマ字よりもひらがなやカタカナのほうが読めるという結果も。

 こうして見ていくと、「外国人スタッフと共に働くためには、とにかく英語を勉強しなければ!」という考え方が、少々的外れであることがわかります。だからといって、韓国語やベトナム語、ポルトガル語など、それぞれのスタッフがいちばん得意とする言語をマスターするというのも、非常に困難なこと……。
 そこで、職場での公用語は“やさしい日本語”にしようというのが、私からの提案です。

 近年、多方面で使われはじめている「やさしい日本語」とは、日本語に不慣れな外国人にわかりやすいように、“難しい単語を使わない”“表現をシンプルにする”など、さまざまな工夫をした日本語のことです。

 研究や活用が最も進んでいるのは防災・減災の世界。地震や台風といった災害が起こったとき、被災地にいる外国人に必要な情報を素早く、わかりやすく伝えるのが目的です。
 ここでは、日本語が片言の外国人のみなさんに仕事を教える際にも、「やさしい日本語」を使うことを提案したいと思います。

 彼らは職場の外では“日本で暮らす生活者”ですから、職場での業務時間中に“やさしい日本語”で日本語に慣れていけば、日常生活でも日本語がどんどんスムーズに使えるようになっていく、というメリットもあるでしょう。

■あいまいな表現を具体的にする

 それでは、「やさしい日本語」を使って仕事を教え、確実に業務をこなせるようになってもらうためのポイントや注意点をお伝えしましょう。
 「外国人スタッフが、当たり前のことをやってくれない……」

 という人に詳しく状況を聞いてみると、ほとんどのケースが私から言わせれば”指示の仕方に問題あり”です。

「なるべく早く仕上げてください」
「きれいに掃除しましょう」
「ちゃんと丁寧に取り扱ってね」
 例えば、こういった日本語ならではの“あいまいな表現”を使っていないでしょうか? 

 ですがこれはとくに外国人スタッフに対してやってはいけない指示の出し方です。
 「なるべく早く」といっても、それがどのくらいの時間や日数を意味するのか、人によって感覚がまったく異なりますし、「きれいに」と言っても海外を旅しているとおわかりになるとおり、「何をもってきれいと感じるか」という衛生概念は、国や地域によってさまざまです。

 「ちゃんと」という言葉も便利なので、ついつい使ってしまいがちですが、どのような動作をすることが「ちゃんと」なのか、具体的にわかりづらいですよね。

 したがって、次のように表現するのが望ましいでしょう。
「なるべく早く仕上げてください」→
「今日の夕方5時までに」「明日の昼休みまでに」といった具体的な締め切りを伝えましょう。
「きれいに掃除しましょう」→
例えば、もしちりひとつ落ちていない環境を求めるのであれば、実際にやって見せながら、掃除道具の使い方や“きれいに掃除できた状態”をはっきりと示し、「このように、床のほこりと髪の毛がすべてなくなったら完了。部屋の四隅にほこりが残っていないことも確認してください」と指示しましょう。
「ちゃんと丁寧に取り扱ってね」→
例えば、「片手でつかみ、反対の手で下から支えます。体を揺らさないように台のところまで移動し、コツンと音をさせないよう、静かに置きます」というふうに行動を分解して説明すれば、自ずと丁寧な扱いになるでしょう。

■「正しくできている」ことを伝える

 もう1つ付け加えると、過剰なまでの丁寧語や謙譲語も“やってほしい「行動」”をわかりにくくしています。

 例えば、アメリカで道路工事による片側交互通行を実施しているとき、運転手に対して係員が言うのは「Stop!」「Go!」といういたってシンプルな言葉。
 これが日本だと「大変ご迷惑おかけして申し訳ありませんが、少々お待ちください」「お待たせしました。ご協力ありがとうございます!」となるわけです。

 この丁寧な対応が、日本人の魅力ではあるのですが、“「行動」をわかりやすく伝える”という目的からは外れます。

 「いったん停止をお願いします」「お通りください」くらいの表現だと、丁寧さとわかりやすさのバランスがよいかもしれませんね。

 さて、やってほしい「行動」を具体的に伝えることができたら、さらに1つ大事なポイントがあります。
 それは、正しい行動ができていたら「正しくできています」と本人にはっきり伝えること。

 日本では、できていないときには指摘するけれど、できているときには言葉にしない傾向があり、「何も言われないということは、合ってるということ。そのくらい察しなさい」なんて公言しているマネジャーもいますが、はっきりと言わなければ、とくに外国人は「合っていないのかな!?」と戸惑ってしまいます。

 日本人スタッフにも、「合っている」というメッセージははっきり伝えるべきです。また、当然ながら正しい行動ができていない場合は、「そうではなく、このようにしてください」と正しい行動を教えましょう。
石田 淳 :社団法人行動科学マネジメント研究所所長

最終更新:6月26日(水)9時00分

東洋経済オンライン

 

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