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スバル車がアメリカで売れ続ける「2つの要因」

6月21日(金)7時20分配信 東洋経済オンライン

アメリカのスバル販売店。現在のスバルの業績を支える大きな存在だ(筆者撮影)
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アメリカのスバル販売店。現在のスバルの業績を支える大きな存在だ(筆者撮影)
 昨年、北米市場への参入50周年を迎えたスバル。現在のスバル好調の理由は、北米での成長抜きには語れない。特に2008年以降の新車販売台数の伸びは著しく、2019年3月期の現地での販売台数は71.7万台を記録。実に世界販売の7割を北米が占める状況だ。

 スバルが北米に軸足を置いているのは自他ともに認める部分だが、それにしてもこの快進撃の要因は何なのか? 現地で“生の声”を聞いてきた。

■「安全性」と「信頼性」
 まず、クルマを売る販売現場を訪れた。今回訪れたのはニューヨーク・マンハッタンからクルマで約1時間半の位置にあるペンシルベニア州アレンタウンにあるディーラー「ショッカ・スバル(Ciocca Subaru)」である。対応してくれたのはショッカ・スバルを含め14ブランドの自動車ディーラーの経営を行っているショッカ・ディーラーシップのCEO、Gregg R. Cioccaさんだ。

 まず、北米のユーザーはスバルの何をどのように評価しているのだろうか? 
 「それは『安全性』と『信頼性』です。安全性に関してはIIHS(アメリカ道路安全保険協会)が実施する安全性評価で、7車種が最高評価の『トップセイフティピック+』を獲得している事が大きいです。実際に『交通事故にあったが、クルマが守ってくれたので大きなケガをせずに済んだ。次もスバルを選ぶ』と言う人も多いです。信頼性に関しては『AWD』による走行性能の高さが評価されています。動画サイトでスタックしたトラックを助けるスバル車の映像がありますが、私のお客さんの中にも同じ経験をした人がいますよ」(Cioccaさん)
 ただ、この2つの強みは2008年以前からスバルが重要視している項目である……。「そういう意味で言えば、北米市場が求めるクルマをいいタイミングで発売してくれた事が販売の追い風になっています」(同)

 振り返ると、2009年に5代目レガシィ、2011年に4代目インプレッサ、2012年に4代目フォレスターが登場している。その後、インプレッサは2016年、フォレスターは2018年に最新モデルへと世代交代。2018年には「家族構成の変化に柔軟に対応できるモデル」として3列シートSUVのアセント(アメリカ専用モデル)を発売した。
 ディーラーからも「待望のモデル」「これなら売れる」と太鼓判が押され、早くもアメリカのスバルSUVシリーズの新たな柱となっている。今年2月のシカゴショーでは7代目となる新型レガシィ、4月のニューヨークショーでは新型アウトバックが登場するなど、鉄壁の包囲網を敷いている。

 「もう1つの要因は、2007年より北米スバル独自の『LOVEキャンベーン』という広告展開をスタートした事でしょう。一般的には自動車の広告はスペックや値段をアピールしますが、スバルはオーナーの愛車への思い入れ(=LOVE)を強調した宣伝活動を実施。これに共感する人が増え、結果として認知やブランドバリューもアップしたと考えています」(同)
 これはトヨタ自動車の豊田章男社長がしばしば語る「数ある工業製品の中で『愛』が付くのはクルマだけ」という考え方とよく似ている。

■乗り換え比率が確実に増えている

 「さらにこの2つの要因を裏付けるのが『コンシューマー・リポート』での高い評価です」(同)。コンシューマー・リポートは非営利の消費者団体が発行するアメリカの月刊誌(雑誌は400万部、ウェブは300万の登録者)で、ユーザーのために消費財の徹底評価を行う。紙面に広告を一切掲載しないスタイルで絶大な信頼性を持っている。
 そのクルマ特集の最新号でスバルが初めてナンバーワンを獲得したのだ。ロードテストではBMWやポルシェの成績のほうが高かったが、信頼性やオーナー満足度を含めた総合評価で上回った。ちなみにミッドサイズSUV総合評価トップ(96ポイント)のアセントが表紙になっている。

 「以前と比べると、スバル車以外のブランドからの乗り換え比率が確実に増えています。その多くはコンシューマー・リポートを見て、足を運んでくれる方が多いですね」(同)
 そんなアセントに試乗させてもらった。ボディサイズは全長4998×全幅1930×全高1819mm、ホイールベース2890mmと歴代スバル車最大だが、視界性能の高さと小回り性能も相まって非常に扱いやすい。インテリアはSUVシリーズのフラッグシップとしての質の高さと「目線が高く、より広いエクシーガ」といった居住性を実現しており、3列目は大人が座っても苦にならないスペースだ。

 264ps/376Nm を発揮する2.4L直噴ターボ(FA24)は、2トンオーバーの巨大を軽々と引っ張る力強さと実用域からトルクフルな性格とターボラグを上手にカバーするCVT制御の効果が相まって非常に扱いやすい。
 フットワークはキビキビというよりも重厚な味付けで、穏やかな特性ながらも操作に対して忠実なステアリングとハンドリング、前後バランスがよく安心感の高い4輪の接地性、無駄な動きが抑えられた抜群のロールコントロール、スバル最良と言ってもいい直進安定性の高さ、アタリの優しいフラットな快適性、大きく向上している静粛性を実現している。

 乗る前は「北米向けなので大味なのでは?」と思っていたが、実にスバルらしい3列SUVに仕上がっていた。ただ、「日本へ導入すべきか?」といわれると、さすがにサイズが大きすぎる。せめてマツダCX-8くらいの全幅に抑えられれば何とかなりそうかも!? 
■トヨタとEVを共同開発

 このように順風満帆なスバルの北米戦略だが、この流れを日本にそのままスライドできるかというと、そうはいかない……。

 例えば、安全性に関しては今も「アイサイト神話」があるものの、最近はライバルメーカーの進化も相まって優位性は減っている。信頼性に関してはハード面での優位性はあるものの、完成検査問題/リコールも相まって決して高いとはいえない状況である。

 また、今もコンベンショナルなガソリン車がメインストリームの北米市場に対して日本市場は電動化の流れが著しいが、独自開発の1モーター「e-BOXER」だけでは役不足は否めない。しかし、先日トヨタと中・大型乗用車向けのEV専用プラットフォーム、およびCセグメントクラスのSUVタイプのEVの共同開発を発表。個人的には、水平対向エンジン/シンメトリカルAWDというスバルのコア技術を使わず、スバルの“味”をどう構築させるのか、非常に興味がある部分だ。
 また、北米と同じように「求めるクルマが適切なタイミングで発売されているか?」という部分は、スバル入門者に対してハードルを下げる役目のモデルは用意されているが、コア層向けの「さすがスバル!!」と思ってもらえるようなプラスαを持ったモデルは残念ながら減っている。例えば、ほかのメーカーが積極的に採用を進めるMTは今ではWRX STIのみ……。このあたりはまもなく世代交代と噂される「レヴォーグ」と「WRX」に期待したい。
 日本にはアメリカの「LOVEキャンペーン」を行わなくても、スバルを愛してくれる「スバリスト」が数多く存在する。ただ、ちょっと優しすぎるのと「あばたもえくぼ」な部分があるので、決して彼らに甘えてはいけない。現在、スバルは「モノを作る会社から、笑顔を作る会社に」をスローガンにしている。笑顔を作るためには、現状に満足せずスバルらしい独創的な技術をより磨いてほしいと願っている。
山本 シンヤ :自動車研究家

最終更新:6月21日(金)7時20分

東洋経済オンライン

 

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