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「期待外れ」だった米FOMC、ビハインド・ザ・カーブで日本株売り圧力が強まる恐れ

6月20日(木)13時00分配信 ダイヤモンド・オンライン

FOMC後の会見に臨むパウエルFRB議長 Photo:EPA=JIJI
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FOMC後の会見に臨むパウエルFRB議長 Photo:EPA=JIJI
● 米FOMCは利下げ見送りだが 早期の利下げを示唆

 米連邦準備理事会(FRB)は20日、FOMCでフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を2.25~2.50%で据え置くことを決定した。FOMC投票メンバー10人のうち9人はFF金利の誘導目標据え置きに賛成したが、セントルイス連銀のブラード総裁は0.25%の利下げを求めて反対票を投じた。15年末に利上げを再開したFOMCにおいて、利下げを求める反対票が出たのは初めてとなる。

 FOMCメンバーによる政策金利見通し(ドット・チャート)では、回答者17人中7人が今年(2019年)中に2回、1人が1回の利下げが実施されることを示唆。一方、利上げを見込む回答者は1名にとどまった。

 最近のFOMC声明文は、4つのパラグラフ(段落)で構成されることが多い。各段落で示されるテーマは、ほぼ変わらず、第1段落では米経済に関する現状認識、第2段落ではFF金利の誘導目標など金融政策に関する決定とFOMCの今後に対する姿勢が示される。市場関係者は、声明文での第1段落と第2段落の前回声明文からの変化を通じて、FOMCメンバーの考えを推察する。

 では、今回のFOMC声明文を前回(5月1日)と比べてみよう。第1段落で記載される米経済に対する評価の部分では、経済活動は「適度なペース」で拡大しているとされ、前回使用された「堅調に拡大している」との表現からややトーンダウンした。また、設備投資は軟化し、金融市場におけるインフレ期待は低下していると、それぞれ下方修正された。

 同声明文の第2段落では、FF金利の誘導目標の据え置きを決めたとし、前回と同様の表現で、FOMCは持続的な経済成長、力強い労働市場状況、目標とする2%程度の物価上昇率を見込み続けているとした。しかし、前回声明文ではなかった「見通しに関する不確実性は高まっている」との表現が追加された。

 その上で、第2段落では、不確実性およびインフレ圧力が抑制されている点を考慮し、FOMCは経済見通しに関する情報のインプリケーション(意味すること)を注視し、力強い労働市場と2%物価目標、そして経済成長を維持するために適切に行動すると記載された。ちなみに前回声明まで記載されていた(FOMCは今後のFF金利誘導目標をどう調整するかを決めるために)「忍耐強くなる」であろう、との表現は削除された。
 パウエルFRB議長は、FOMC声明やドット・チャートの公表後の会見冒頭で、声明文において重要な変更が数点おこなわれたとし、今後公表される経済見通しに関する情報のインプリケーションを注視する意向を表明した。その上で、設備投資や企業景況感を例にあげ、企業セクターにおいて軟調な動きが見られることなどから、FOMCメンバー多くが、今後利下げが適切となる可能性が高いとみていることを紹介した。

 またドット・チャートで、年内はFF金利誘導目標を据え置くと回答したメンバー8名のうち数名は、追加的な金融緩和が実施される可能性が前回(5月)FOMC後に高まっていると考えていることも明らかにした。

● 注意すべきは利下げの回数ではなく 緩和姿勢を強めない可能性

 声明文において、「不確実性の高まり」との表現が追加され、これまで記載されていた「忍耐強くなる」が削除される代わりに「適切に行動する」との表現が追加された。ドット・チャートでは、年内2回の利下げを見込む回答が17名中7名(一方で年内の利上げを見込む回答は1名のみ)だったことなど、今回のFOMCから得られる情報を整理すれば、いずれ(おそらく7月の次回FOMCで)FRBは利下げをする、と見るのが自然だろう。しかし、こうした見方は、金融市場が以前より織り込んでいたことであり、今回のFOMCが市場関係者に大きなサプライズを与えたわけではない。

 米金融政策に関して注意すべきは、FRBの利下げ回数よりも、市場関係者が期待するほどFRBは緩和姿勢を強めない可能性があることだろう。ドット・チャートにて、17名の回答者のうち7名が年内2回の利下げを見込んでいることを根拠に、今年は2回以上の利下げを期待する声が(依然として)優勢だが、同じドット・チャートにて、8名が年内はFF金利の誘導目標が据え置かれると回答していることを忘れてはならない。ドット・チャートと同時に公表された経済見通しにおいても、今年と来年の物価見通しが前回(3月)から下方修正されたが、成長率見通しは今年については据え置かれ(2.1%)、来年は若干ながら上方修正(2.0%)されている。

 FOMC声明後の会見を見ていても、パウエル議長は、市場関係者が期待するほど金融緩和に積極的であるとの印象も持ちにくい。同議長は、今後を占う上での不確実性が強まっていることを繰り返し述べたが、金融政策が短期的な経済指標のブレに過剰反応することはないと明言している。現時点でパウエル議長を含むFOMCメンバーの多くは、市場関係者が想定しているほど米景気の先行き懸念を強めていないと推察される。
● 米金融市場は米国景気の 先行き懸念を強める反応

 興味深いのはFOMC後の米金融市場の反応だ。米国株市場では、ダウ工業株30種平均がFOMC声明発表後に一時100ドルほど上げたが、終値は38ドルの小幅高。一方、米債券市場では買い優勢(金利低下)の展開となり、米10年債利回りは、FOMC終了後の東京市場で2016年11月以来となる2%割れを記録している。

 為替市場では、FOMC声明発表後、ドル円が108円台半ば手前から108円割れへと下落。いったんはドル売りの動きが収まり、NY市場終盤には108円ちょうど近辺で推移していたが、東京市場に入ると107円台半ば近辺と年初来安値水準に達した。

 米国株の上げが限定的である一方で、米国債が買われ(米金利が低下し)、ドル安が進むという展開から推察されることは、市場関係者がFRBの金融緩和姿勢が弱いことを受け、米国景気の先行き懸念を強めたということだ。これまでは、FRBが積極的に金融緩和に動くとの期待から米国景気の先行き懸念が強まることはなかったが、今回のFOMCが「期待外れ」となり、米国景気の先行きに対する見方が変わってしまった。

 2020年11月の米大統領への出馬を正式に表明したトランプ米大統領にとって、米国景気を良好に保ち、米国株を高水準で維持することは、優先順位の高いものだ。このため、足元の金融市場の反応をみたトランプ大統領が、パウエル議長を中心とするFRBへの圧力を強め、その圧力に負ける形でFRBが金融緩和姿勢を強める展開は十分予想される。

 パウエル議長は、過去のFRB議長と比べれば、米金融市場や政治からの圧力を受け、変わり身の早い人物であるとはいえ、それでもFRBが金融緩和姿勢を強めるまでには、それなりの時間を要するだろう。このためFRBが金融緩和姿勢を強めるまで、米金融市場ではFRBに催促する形で米国景気の先行き懸念が強まる展開が考えられる。いわゆる「ビハインド・ザ・カーブ」(金融市場での金利形成に中央銀行が出遅れる状態)だ。この場合、米国株が売られるとともに、為替市場ではドル売り先行の展開が予想され、日本株市場は、米国株市場を上回る売り圧力に直面することになる。

 (クリプトキャピタル チーフ・リサーチ・オフィサー 日枝千代)
日枝千代

最終更新:7月1日(月)21時35分

ダイヤモンド・オンライン

 

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