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スマホ4000万台減でもファーウェイ制裁甘い?

6月19日(水)18時00分配信 東洋経済オンライン

ファーウェイは今年と来年の売上高を、横ばいの1000億ドルと予想している(撮影:梅谷秀司)
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ファーウェイは今年と来年の売上高を、横ばいの1000億ドルと予想している(撮影:梅谷秀司)
 「こんなに厳しいことになるとは、事前に予想していなかった」

 中国の通信機器大手ファーウェイの創業者である任正非氏が、アメリカ商務省による制裁について初めて弱音を吐いた。

 任氏は6月17日、著名エコノミストのジョージ・ギルダー氏とマサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボ創設者、ニコラス・ネグロポンテ氏と中国・深圳のファーウェイ本社で対談した。対談の模様はファーウェイのホームページで配信された。
■ファーウェイは当初、強気だったが…

 アメリカ商務省は5月、輸出管理規則に基づいてファーウェイに禁輸措置を発した。これにより、アメリカ企業は実質的にファーウェイへの輸出ができなくなった。アメリカ企業の製品や技術が25%以上含まれている場合、日本を含めたアメリカ以外の企業もファーウェイへの輸出が事実上できなくなる。

 アメリカ商務省はアメリカ国内への影響を緩和するため、制裁措置の一部を90日間猶予すると発表している。ただ、すでにインテルやクアルコムなどのアメリカ半導体大手がファーウェイへの供給を停止したとされる。ファーウェイ製のスマートフォン(スマホ)は、グーグルが提供するオペレーティング・システム(OS)「アンドロイド」を使えなくなる可能性がある。
 ファーウェイは当初、中国中央テレビなどのインタビューに対し、「(アメリカ政府の制裁に)大きな意味はない」「会社がマイナス成長になることはない」(任氏)と強気の姿勢を見せていた。

 ただ、OSの使用ができなくなることやサポート体制への不安から、世界各国でファーウェイ製スマホの販売が中止になるケースが出始めている。日本国内ではファーウェイジャパンが6月21日から「ファーウェイサービスデー夏の感謝祭」を始める。端末の点検やグッズ配布などを行い、スマホの販売促進やユーザーの囲い込みを図ろうとしている。
 17日の対談で任氏は「これからの2年間で減産することになり、売上高は300億ドル(約3兆3000億円)減少し、今年と来年の売上高はそれぞれ1000億ドル(約11兆1000億円)程度になるだろう」と述べ、厳しい状況であることを認めた。ブルームバーグも同日、ファーウェイの営業・マーケティング担当マネジャーの話として、中国以外の海外向けスマホ出荷台数が前年比40~60%(4000万~6000万台)減少すると報道した。
 「アメリカのファーウェイをたたこうとする決意がこんなに強いとは思ってもいなかった。アメリカの制裁によって多くの国際組織への参加が阻まれ、大学と協力できなくなり、あらゆるアメリカの製品や技術を使用できなくなった」(任氏)。アメリカによる制裁はファーウェイにとって想定以上の打撃となっているように見える。

■ファーウェイへの打撃は「想定以下」

 しかしその一方で、ファーウェイへの打撃が「想定以下だった」と落胆する声も出ている。
 ファーウェイのライバルである中国系スマホメーカーの日本法人幹部は「(ファーウェイは)生産停止にまで追い込まれると思っていた。しかし、思った以上に打撃を受けていない」と明かす。念頭にあったのは昨年、同様の制裁措置を受けた中国通信機器大手ZTE(中興通訊)のケースだ。

 アメリカ商務省は2016年からZTEに対して輸出規制措置を発動していたが、2018年4月にアメリカ企業との取引を7年間禁止する追加制裁を発動。クアルコムなどから部品を調達していたZTEは、またたく間に大半の製品が生産停止に追い込まれた。アメリカ政府への罰金の支払いに応じたことで制裁は解除され、2018年7月から業務を全面再開させたが、2018年は69億元(約1100億円)の赤字に陥った。
 ファーウェイもZTEと同様にアメリカ企業から部品を調達しており、その規模は1兆円以上になる。アメリカ商務省元次官補のケビン・ウルフ氏は週刊東洋経済の取材に対し、数千億円規模の取引に影響が出ることから「エンティティ・リスト(輸出規制リスト)による禁輸措置の影響は『核爆弾』に等しい」と語っている。

 スマホの通信機能に欠かせない半導体技術はクアルコムなどアメリカの企業に頼っているという情報もあり、ファーウェイも生産が滞るのではないかという声が出ていた。
 当初の悲観論に比べると、任氏のいう売上高の減少幅はライバル社からすると期待外れだった。実際、2018年のファーウェイの売上高は1071億ドル(約11兆9000億円)で、任氏が語った「今年と来年の売上高は1000億ドル(約11兆1000億円)程度」というのは、売り上げ横ばいを意味する。成長は鈍化するが、売り上げが減少するわけではない。

 今回、任氏が落ち込むと話したのは海外に出荷しているスマホ1億台のうちの4000万台。中国国内でも1億台以上の売り上げがあり、中国では一部でファーウェイを助けようとする愛国的な動きも出ている。「中国国内のファーウェイのシェアは高まる一方」(前述の中国系スマホメーカー幹部)だ。13億人の市場規模や、スマホ市場の拡大が続く東南アジアやアフリカなどの新興地域に強いことも、ファーウェイに味方している。
 先進国における通信基地局などの設備は、ファーウェイの競合であるエリクソンやノキアに一部流れているが、新興国などでは北欧2社より価格が安いファーウェイの需要が続くとみられる。

■電子部品メーカーへの影響は限定的

 「今後2年で売上高は横ばい」という任氏の発言は、むしろ自信の表れではないかという見方も出ている。ファーウェイと取引がある台湾の電子部品メーカーは「アメリカの制裁をもってしても、ファーウェイに与えられた打撃はこの程度か」と話す。台湾のスマホメーカー、エイスース(ASUS)の幹部は「むしろファーウェイがアメリカの技術に依存せず、自前で(技術を)賄えることが明らかになりつつある」と警戒感を示す。
 アメリカの制裁によって業績への影響が懸念されていた日本の電子部品各社への影響も限定的になりそうだ。村田製作所やTDKなど、日系電子部品各社のファーウェイ向け売り上げは4~8%程度にとどまる。両社とも業績への影響はあったとしても営業利益ベースで数十億円程度だろうとみられる。2019年3月期の両社の連結営業利益は村田製作所が2668億円、TDKが1078億円で、大きな打撃とはいえない。

 ファーウェイの減産が明らかになった翌18日の株価は日経平均が0.71%下落した中、TDKが0.13%上昇。村田製作所も0.51%の下落だったが、取引時間中に一時0.95%上昇するなど、任氏発言は織り込み済みだったようだ。
 アメリカによる制裁は、AI(人工知能)やロボティクスなどに拡大していくとの観測も出ているが、任氏は対談中に「2021年にわれわれは再び輝くチャンスがある」と宣言した。アメリカとファーウェイの戦いは始まったばかりで、4000万台の減産は最初の指標にすぎない。
劉 彦甫 :東洋経済 記者

最終更新:6月19日(水)18時00分

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