ここから本文です

仕事はできるのに「軽んじられる人」の話し方

6月19日(水)9時00分配信 東洋経済オンライン

仕事ができるのに軽んじられる人は、見せたい自分とは違う印象を与える話し方をしているのかもしれません(写真:Fast&Slow/PIXTA)
拡大写真
仕事ができるのに軽んじられる人は、見せたい自分とは違う印象を与える話し方をしているのかもしれません(写真:Fast&Slow/PIXTA)
仕事で結果は出しているはずなのに、なぜか相手から軽んじられている――。
そんなときは、あなたの言葉遣いが問題なのかもしれません。
『大人の伝え方ノート』の著者であり、元NHKのキャスター、現在は長崎大学でスピーチやコミュニケーションについて教えている矢野香先生に、その原因を聞きました。

 こんにちは、矢野香です。NHKでキャスターを務めたのち、現在は大学教員として心理学、主に、人から評価される話し方や、人の印象がどう決まるのか、などコミュニケーションについて研究しています。
■たった1字でも、相手との関係性は変わってくる

 人は相手の言葉や言い回しなどで、その人の品位や知性、信頼できるかどうかなどを無意識のうちに判断しています。

 もしあなたが、「他人から軽んじられている」と思っているなら、何かコミュニケーションの仕方が、あなたが見せたい自分とは違う印象を与えるものになっている可能性があります。

 例えば、次の2つの文章を見比べてください。

A 「コーヒーがいいです」
B 「コーヒーでいいです」
 AとBの使い分けがわかりますか? 

 どちらのほうが、より積極性を感じるでしょうか?  

 どちらのほうが、よりリーダーシップを感じるでしょうか? 

 大抵の人は「A」のほうに、より意思の強さを感じるはずです。コーヒー「で」というと、「考えるのが面倒だし、なんでもいいや」というおざなりな印象を与えてしまいます。

 積極性を伝えたい場合は A「コーヒーがいいです」が正解です。

 ただし複数人の場合は例外です。他の人が希望を伝えた最後に「で」を用います。「じゃ、私もコーヒーで」というとリーダーシップが印象づけられます。
 こんなたった1字でも、相手の反応、ひいてはあなたとの関係性は変わってくるのです。

 ここではよくある失敗をご紹介します。

 発言したり自分の意見を述べたりするときに、語尾が「~と思います」では頼りなく見えます。できる限り「です」「ます」と言い切るようにしましょう。

 もちろん「悲しいと思います」と、事実「思っている」感情を伝えるのであれば問題ありません。注意すべきは、ただ口癖のように「思います」と文末をまとめてしまうことです。
× 「頑張りたいと思います」
→ ○「頑張ります」「努力します」「尽力します」「精一杯、力を尽くします」
 言い切るのが強すぎる、そこまでの自信がないという場合は、「思います」より「考えています」を使うとよいでしょう。

 思考した跡があるため「思う」より高次な言いまわしです。今後の予測であれば、「見込みです」「予定です」という言葉も使えます。

例)×「うまく交渉できると思います」
→ ○「うまく交渉できると考えています」
例)× 「今月中にはお出しできると思います」 
→ ○「今月中にはお出しできる見込み(予定)です」
 このように、「感じます」「考えます」、これからのことであれば「見込みです」「予定です」と言うと、しっかりした印象になります。

■信頼を損ねるお詫びと、信頼感が損なわれないお詫び

 お詫びをするときは、つい、その理由を話したくなるものです。しかし、聞いているほうからは言い訳にしか映りません。それでは逆効果になってしまいます。
 それよりも、その場で求められていることにすぐ取り組んだほうがよいでしょう。例えば仕事場に遅刻したときは、すぐ仕事を進めること。話し合いであったら、すぐ話を始めることです。謝罪したらすぐ今やるべき行動に移る、という姿勢を見せるほうが信頼回復につながります。

 「すみません。すぐに取りかかります。何時までに仕上げます」
(謝罪 + 相手の求めていることを伝える + 行動)

 そもそも、謝罪の場面で、理由をすべて話すと損をします。正直であればよいというものではありません。周囲からの印象としては「いい人なんだけれど」「もうちょっとうまく立ち回ってくれたらな」と思われているかもしれません。
 心理学で[自己開示]と[自己呈示]と呼ばれるものがあります。

① 自己開示(self-disclosure)
自分自身に関する事柄をすべて話すこと。警察の取り調べのようなものです。
② 自己呈示(self-presentation)
他者が持つ自己の印象を統制しようとすること。つまり、自分自身に関する事柄の中で、自分の印象のために伝えたい部分だけを話すこと。舞台で注目してほしいところにだけスポットライトを当てるようなものです。
 大人の伝え方として重要視したいのは、②自己呈示です。

 当人は「正直に話せば許してくれる」と思って、すべてを話しているのかもしれません。しかしそれは自己弁護や保身でしかありません。

 それよりも、相手が何を求めているのかを考え、必要なことだけを伝えましょう。真実の中から何を伝えるのかの判断を相手任せにしないという気遣いです。もちろん、うそをつくのは論外です。

■「えー」「そのー」は、そこまでマイナスにならない
 話しすぎてしまうということとは逆で、すらすらと言葉が出てこず、「えー」「あー」「あのー」というように言いよどむクセがあり、気にしている人も多いかもしれません。実際、言いよどみが悩みだという相談をよく受けます。言いよどみは、聞く側にとって聴覚ノイズとなり、耳についてしまうことは確かです。

 これは心理学の「カクテル・パーティ効果」も関係しています。パーティの雑音の中でも興味ある会話が聞き取れるように、人が音声を選択的に聞くという効果です。人は自分に関係がある必要なところだけを聞き取るのです。「この人はよく『えー』と言うな」と相手が1度気になってしまうと、「えー」だけに注意を払って聞いてしまうのです。話の中で何回「えー」と言ったか数えてしまう、という人もいるでしょう。
 「えっと」なら「えっと」、「えー」なら「えー」というふうに、1種類の言いよどみであると、より目立ってしまいます。ところが、つまり複数の種類の言いよどみであれば、実は意外に気にならなかったりします。

 言いよどみを全部なくすなんて難しいという人は、いっそのこと言いよどみのバリエーションを増やしましょう!  少し気が楽になるのではないでしょうか。

 それでもやはり「えー」「あー」をなくしたい、気になって仕方がない、という方は、話の終わりに口を閉じることを実践してみてください。「~と考えています」と言ったあとに、口をきゅっと閉じるのです。1文を話し終えても口が少し開いているから、次に何を言おうかと考えているときに「えー」「あのー」と言いよどみが出るのです。口を閉じていれば、そもそも「えー」「あのー」という音は出ません。
 話すときは話す、そうでないときは口を閉じる。ぜひ意識してみてください。
矢野 香 :国立大学法人長崎大学准教授。スピーチコンサルタント

最終更新:6月19日(水)9時00分

東洋経済オンライン

 

【あわせて読みたい】

話題の投信ブログ(外部サイト)

【PR】Yahoo!ファイナンスからのお知らせ

平均年収ランキング

ヘッドライン