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3カ月間、近隣の苦情と向き合った女性民泊オーナーの今《楽待新聞》

6月18日(火)20時00分配信 不動産投資の楽待

(写真:不動産投資の楽待)
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(写真:不動産投資の楽待)
フルタイムで働きながら、1年半前に民泊事業に参入した女性投資家がいる。大阪府内で、「特区民泊」の認可を得て事業を行っている北村まどかさん(30代・仮名)だ。

すでに2軒で民泊物件を運用しており、稼働して1年半になる1つ目の物件の年間キャッシュフローは約170万円。2つ目は4カ月前にオープンした。現在、民泊の運営を楽しみながら収入を得ている北村さんだが、実は、開業までには想像を絶するような苦労があった。民泊事業の魅力、そしてその裏にある苦労を聞いた。

■民泊OKの戸建てを借りて開業準備、しかし…

北村さんが民泊を運営するのは、大阪府。国家戦略特区を活用した「民泊」事業が認められているエリアだ。「私自身も海外旅行が好きでしたし、学生時代には旅館でアルバイトをした経験もあります。今のインバウンド需要もあり、自分自身の経験や考えも生かせる、良いビジネスなのではと考えました」

そこで、1年ほど前に「民泊もOK」という戸建て物件を紹介してもらい、それを借りて民泊事業に活用し始めた。

紹介してもらった物件は、駅から徒歩8分と少し遠く、さらに細い路地を通らなければならないなどのアクセスのハンデがあった。だが、民泊事業ができる物件は数少ないため、北村さんの自宅から近くに位置するこの物件で、まずはチャレンジしてみようと思ったという。

戸建てのオーナーは不動産投資家。自分では民泊運営をしないものの、民泊をしたい人に貸すのは問題ないと許可していたようだった。民泊用ということで、家賃は普通の賃貸よりも5割ほど高め。そのため、オーナーもWIN-WINだと考えたのだろう。

無事に賃貸契約を交わすことができ、いよいよ民泊運営に向けて準備を開始した北村さん。しかし、ここからの開業前の苦労はかなり大きかった。

■近隣住民の「不安」

まずは、物件の近隣の住宅を回って民泊事業を開始する旨を説明することから始めた。特区民泊のルール上、説明しなければいけない範囲は物件から20メートル以内。住宅密集地だったため、説明に行くべき軒数は多かった。

「ご近所への説明を業者さんに委託をすることは可能でした。しかし、初めての物件でしたから、まずは1度、自分でやってみようと思ったんです。民泊運営をしている先輩大家さんからも、『自分で回ってみることが重要』とアドバイスをもらっていました」

保健所への申請を委託していた行政書士が同行はしてくれたが、単なる「同行」だけ。事業の内容を説明し、クレームへの対応を行うのは北村さんたった1人だ。行政書士からは、平日の、先方が忙しくない時間帯に行くのが良いというアドバイスを受けたため、平日に有給休暇を取って1日かけて訪問した。

ところが、いざ回ってみると、近隣住民たちの民泊に対する不安は予想以上に大きいことがわかった。不安からくる怒りをぶつけられることもあり、北村さん自身の精神的なストレスも非常に大きかったと振り返る。

実際に訪問して説明した時には「わかりました」と理解してくれた人も、帰宅した家族と相談した結果、「やはり反対」と言い始める人や、最初から頭ごなしに「絶対反対!」と怒る人も多かった。「宿泊者が出したごみの収集はどうするの?」「もしゲストが火事を起こしたらどうする?」など、住民らが感じる不安から、細かい対応を何度も確認されたという。

■保健所、議員にも抗議電話をかけられた

近隣住民からは、説明を求めて電話もかかってきた。早朝や深夜、仕事中にかかってくることもあった。民泊への不安から、何度も電話をかけてくる人もいたという。

「とにかくご近所の不安を解消することが私の仕事だと思って、電話がかかってきたら、すぐに折り返すように努めていました」と北村さん。「夜遅くにかかってきた電話には、私が気付かず寝てしまっていたことがありました。すると、翌朝、同じ人から電話が来るんです」

前述の通り、本来説明しなければならない範囲は物件から20メートル以内。だが、運営後の火種になってはいけないと、北村さんは念の為に範囲を広げて説明へと赴いた。当然のようにそこでも不満やクレームを言われてしまい、何度も心が折れそうになったと話す。

北村さん本人だけでなく、管轄の保健所に対しても「とにかく反対だ」と毎日電話をする人もいた。「保健所から、『今日は9件電話がかかってきました』と言われたこともありました。警察や市会議員の方などに抗議の電話をした人もいるようです」(北村さん)

担当の行政書士は民泊申請を何件も手掛けたことのあるベテランだったが、そんなプロでも「こんなにトラブルが多い事例は、そうそうないですね」と言ったほどだ。

■「不安や怒り、いま鎮めないと」

それほどの逆風が吹き荒れていたが、北村さんは諦めなかった。開業のための要件は近隣住民への説明であって、すべての住民から賛成を取り付ける必要があるわけではない。しかし、「近所の方の不安や怒りを、いま鎮めておかないといけない」と心を決めていた。「泊まりに来るゲストに、怒りの矛先が向かないようにするのが自分の仕事だと思ったんです」

近隣住民から、住民説明会をしてほしいと要望もあった。すでに、日にちも場所も住民側から設定されていたという。

説明会へと臨んだ北村さんは、自分の民泊事業について、誠心誠意説明を重ねた。その場でも何度もキツい言葉を言われ、やめるようにとも説得されたが、北村さんは諦めずに心を尽くして自分の事業内容を訴えたという。

すると、そんな彼女の誠実な対応と頑張りを目の当たりにした出席者の中からは、反対を取り下げ、応援してくれる人も出始めた。

■真摯すぎる対応、「舐められないように」と言われたが…

物件の賃貸契約を終えてから約3カ月。ようやく、民泊開業にこぎつけることができた。

とはいえ、開業後も近隣からの苦情は何度か入った。民泊の申請時、苦情受付先を決める必要があるが、北村さんは、自分自身の連絡先を苦情受付先にしていたのだ。

例えば、ゲストが夜遅くにお風呂に入って眠れない、部屋で騒いでいるなど音に関するクレームだ。

クレームがあると、まずはその事実確認を行う。「夜遅くの風呂」に関しては、ゲストの入浴が深夜1時すぎだったことが判明したため、次以降はルールとして「入浴は夜12時まで」と定めた。

「道路のコンクリートが剥がれたので修理してほしいとか、自宅の塩ビ管の配管が割れているのはゲストがスーツケースをぶつけたためだから修理してほしい、といったクレームもありました。そんな場合でも、まずは事実確認が必要なので、その住民の方とコミュニケーションをとることを重視しました」

本当にそのゲストがぶつけたのかどうかを確認した。住民の思い込みの場合もある。「もしゲストがぶつけたところを見た時は、その場で注意していただいて大丈夫です」のように、ひとつずつの事象を確認しながら、丁寧に対応する姿勢を意識していたという。

彼女のこんな姿勢に、中には「(近隣から)舐められないようにしたほうがいい」などとアドバイスを送る知人もいたという。だが、北村さんは「ご近所の不安や不満には、きちんと向き合って無視しないようにしました」と話す。そのおかげか、今はほとんどクレームもなく、かえって応援してくれる人が増えてきたそうだ。

物件の鍵が壊れてゲストが家に入れずに困っていた時には、近隣住民が北村さんに電話連絡をした上で、対応が終わるまでその外国人を自宅に招いてお茶を出してくれたことも。「ほとんど外国人のいなかった町だったので、不安もあったと思います。でも、今は外国人が来ることを楽しんでくれている住民の方もいます。代行業者にクレーム処理を頼んでいたら、すぐに対応ができず、より反対されたかもしれません。何度も心が折れそうになりましたが、自分が直接向き合う事で良い結果につながって良かったです」と北村さんは笑う。

■CFは170万円、イニシャルコストも回収見込み

現在もフルタイムで働きながら、民泊を運営している北村さん。集客や宿泊予約の管理、ゲストとのやり取りなどは、代行業者に委託している。代行費用は売上の20%ほどだ。1年半がたった今、稼働は約90%で安定している。運営開始後の月々の家賃や光熱費、代行費用などのランニングコストは年間で約360万円。一方で、年間の収入は約530万円だという。CFは約170万円。物件の敷金や礼金を含めたイニシャルコストは約250万円かかっているが、ほどなく回収できる見込みだ。

部屋のしつらえは、インテリアコーディネーターに頼んだ「こだわり」。例えば、寝室が3部屋あるうち、1つの部屋は中国人の好きな赤と金を基調にしてもらい、別の1部屋は北村さんが好きなピンクとライトグレーを基調にしたコーディネートにしてもらったのだという。

1軒目の成功を経て、4カ月前にもう1軒、別の戸建てを借りてさらに民泊事業を開始した。オープンまでの初期費用は約150万円。開業したてなので収支はまだ安定していないが、現在は賃貸した区分マンションでの民泊も準備中だという。

「資本的に不動産投資を始めることが難しい人でも、転貸での民泊は300万円あれば始めることができて、実績を積めば融資を受けることも可能です。部屋を作る楽しさや、海外の方を迎え入れる喜びもあります」と民泊事業の魅力を語る。



このほかにも、戸建てや区分マンションを所有して投資を行っている。「今後も不動産関係の仕事は続けていきたいです。できればあと2年以内に、この事業が本業になったらいいと考えています」と言う。将来は、シェアハウスやサ高住などにも事業の幅を広げたいそうだ。北村さんの夫は不動産投資には興味がないそうだが、「反対せずに応援してくれるのがありがたいです」とほほ笑む。

開業前、そして開業後もたくさんの苦労を重ねた北村さん。だが、その顔に後悔の色は見えない。「苦境を乗り越えられなかったら、一生民泊をしないつもりでした。だから、とにかくできることをやって、後悔しないようにと思って頑張りました」
不動産投資の楽待 編集部

最終更新:6月18日(火)20時00分

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