ここから本文です

サブスク急拡大の理由は「ユーザー有利」にあり

6月17日(月)6時30分配信 東洋経済オンライン

圧倒的に「ユーザー有利」なサブスクリプション。どれほど有利なのか、さまざまな視点から比較します(写真: Sitthiphong/iStock)
拡大写真
圧倒的に「ユーザー有利」なサブスクリプション。どれほど有利なのか、さまざまな視点から比較します(写真: Sitthiphong/iStock)
サブスクリプションへの関心が急激に高まっている。あらゆる業界がサブスクリプションに乗り出し、バブルといってよいほどの様相を呈している。
しかし、残念ながら、言葉だけが独り歩きしている。月額定額制の導入だけでビジネスが生まれ変わり、高収益体質になると思っている事例が多くあり、これから淘汰が進んでいくであろう。
今回は、ビジネスモデルとマネタイズの観点から、サブスクリプションをはじめとする継続収益(リカーリング)モデルを初めて体系化し、『「つながり」の創りかた――新時代の収益化戦略リカーリングモデル』としてまとめ上げた兵庫県立大学教授の川上昌直氏が、サブスクリプションと混同されがちな他の収益化モデルとの違いについて論じる。
■サブスクリプションを視覚的に理解する

定額制のサブスクリプションが「企業有利」ではなく、圧倒的に「ユーザー有利」な収益化モデルだというのは、前回に述べたとおりです。

 いったい、どれほどユーザー有利なのか?  

 それが視覚的に一目でわかるのが、リカーリングマップです。

 「リカーリング」という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、サブスクリプションは、リカーリングモデルという収益化モデルの1つです。

 今回は、各種リカーリングモデルを整理して体系化したリカーリングマップをもとに、他のビジネスモデルと比べながら、サブスクリプションがいかにユーザー有利なのかを、お伝えしたいと思います。
 リカーリングとは、リカーリングレベニュー(recurring revenue)の略で、「収益が繰り返す」という意味です。アップルミュージックやネットフリックスをはじめとする定額制のサブスクリプションは、解約されない限り毎月の支払いが発生する「収益が繰り返す」モデルです。リカーリングマップの中にある、ほかの収益化モデルも、すべて「収益が繰り返す」という共通点があります。

 リカーリングマップは、縦軸はユーザーに対する「継続の拘束力」の大小を、横軸は企業が利益を回収しきるまでの「利益回収の時間」の長短を示しており、その中に、リピーター、レーザーブレイド、リース、フリーミアム、そしてサブスクリプションが分布しています。
 まず注目してほしいのは、斜め上に伸びる線上に分布する、リピーター、レーザーブレイド、リースです。これらはリカーリングという言葉のなかった時代から存在する収益化モデルなので、便宜上、「旧来型のリカーリング」と呼びます。長きにわたり存在し続ける理由は、企業にとっての利益とユーザーの利便性のバランスが取れたところにあるからです。このリカーリングバランスの線上より上にあると「企業有利」に、下にあると「ユーザー有利」の収益化モデルといえます。
 それぞれの収益化モデルの特徴を確認し、サブスクリプションと比べてみます。

■リピーターとサブスクリプション

 その企業の商品を何度も買ってくれるリピーターモデルは、「継続の拘束力」が一切ない意味では厳密には売り切りモデルですが、収益が継続するリカーリング要素を持っているので、リカーリングの一形態とします。

 売り切りモデルでありながら、繰り返し特定企業のプロダクトやサービスを利用し続けてもらうには、企業はプロダクトのよさやブランド価値の高さを十分に認知させなければなりません。
 
リピーターは、基本的に販売時に利益回収を終えます。つまり、利益回収はただちに実行されますから、他のリカーリングモデルに比べて利益回収の時間は最も短いです。

 サブスクリプションとリピーターを比べると、「継続の拘束力」においては、サブスクリプションのように利用登録する必要すらない、すなわち、拘束力がまったくないリピーターのほうが「ユーザー有利」です。ただしリピーターは、繰り返し買うかどうかは、100%ユーザーの自由意思に委ねられているので、1回買ったら終わりという「継続しない」リスクも潜んでいます。
 「利益回収の時間」で見ると、サブスクリプションのほうが「ユーザー有利」です。販売と同時に利益回収を終えるリピーターよりも、毎月定額を支払うサブスクリプションのほうが、毎月の支払額を抑えることができるからです。

 レーザーブレイドは、本体を保有してもらい、付属品を継続的に購入してもらいながら利益を得る収益化モデルです。カミソリを販売するジレットが、カミソリ本体(レーザー)を提供し、その後、利幅の大きいカミソリの刃(ブレイド)で継続的に利益を生んだことに端を発しています。携帯電話の本体と通話料、ウォーターサーバーと替えの水、プリンターとトナーなど、かなり多くのビジネスで使われています。
 本体の利益は、薄利か、場合によっては損失を出すほどですが、付属品の利幅が大きいので、それを時間をかけて購入してもらい、継続的に利益を得ます。

 サブスクリプションとレーザーブレイドを比べると、「継続の拘束力」に関しては、リカーリングマップを見ればわかるとおり、両者はほとんど変わりません。違うのは「利益回収の時間」です。レーザーブレイドは、利幅の大きい付属品でできるだけ短期に回収しようとするのに対し、サブスクリプションは一定金額で薄く長く利益を回収しようとします。つまり、サブスクリプションのほうがレーザーブレイドよりも「ユーザー有利」です。
 ある資産を対象として、ユーザーは所有権を持たずにサービス提供企業に使用対価を支払うのがリースです。ユーザーはプロダクトが新品で手に入る代わりに、数年間にわたって月々の使用料を支払うことになります。

 サブスクリプションと比べると、「継続の拘束力」を見れば、サブスクリプションのほうがリースよりも圧倒的に「ユーザー有利」なことがわかります。サブスクリプションはユーザーが利用登録さえすればスタートできるのに対し、リースは、法的に守られている契約書を交わしてからのスタートです。月々の利用料が滞れば、とたんに延滞利息が発生します。法的に守られているのは企業にとっては安心感がありますが、ユーザーにとっては利便性が妨げられます。
■フリーミアムとサブスクリプション

 旧来型のリカーリングモデルとサブスクリプションを見てきましたが、サブスクリプションは、リピーター、レーザーブレイド、リースよりも「ユーザー有利」であることがわかります。これは、リカーリングマップを見ても一目瞭然です。「継続の拘束力」は小さく、「利益回収の時間」は長いため、ユーザーに支持されているのです。

 サブスクリプションは、2010年頃から注目されました。リーマンショックなどの不況を経て、「所有から利用へ」と消費マインドが移り変わったところに、デジタル化の急激な波が押し寄せてさまざまな企業が取り入れるようになったのです。
 実は、その10年以上前、すでに「ユーザー有利」な収益化モデルが席巻していました。それがフリーミアムです。2000年代より、デジタルの隆盛によって急激に広まり注目されました。

 フリーミアムは、無料を意味するフリーと、有料を意味するプレミアムの2つを掛け合わせた造語です。スマートフォンのアプリケーションには、ゲーム、SNS、ニュース、天気予報など数多く入っていると思いますが、おそらくそのほとんどを無料で使っているのではないでしょうか。
 しかし実際には、無料をウリにしているものの、使用に応じてどこかのポイントでユーザーから課金することで成り立っています。その代表例は、無料でダウンロードして遊べるゲームです。本体は無料なので、ユーザーは無料のまま遊ぶこともできるし、有料アイテムを購入することで、他の人よりもゲームを有利に進めることができます。

 つまり、支払いの有無は完全にユーザーに委ねられているという意味で、「ユーザー有利」のリカーリングモデルです。企業は「利益回収の時間」はある程度かかることを覚悟しなければなりません。
 「継続の拘束力」はきわめて小さく、「利益回収の時間」は長い。フリーミアムもサブスクリプションも、「ユーザー有利」の収益化モデルだから脚光を浴びたのです。
川上 昌直 :兵庫県立大学国際商経学部教授

最終更新:6月17日(月)6時30分

東洋経済オンライン

 

【あわせて読みたい】

【PR】Yahoo!ファイナンスからのお知らせ

平均年収ランキング

ヘッドライン