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銀行系QRコード決済は「Jデビット」の二の舞いか

6月16日(日)15時30分配信 週刊 金融財政事情

Jコインペイの加盟店はどこまで拡大するか。写真は今年2月にJコインペイの発表会見を行ったみずほフィナンシャルグループの坂井辰史社長(左)と、山田大介専務(当時)。
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Jコインペイの加盟店はどこまで拡大するか。写真は今年2月にJコインペイの発表会見を行ったみずほフィナンシャルグループの坂井辰史社長(左)と、山田大介専務(当時)。
「週刊金融財政事情」編集部

昨年来、ペイペイやLINEペイが利用者への大規模な還元キャンペーンに乗り出している。20年春には楽天ペイアプリにスイカが搭載されてチャージもできるようになるなど、QRコード決済の覇権争いが混沌としてきた。一方、銀行が主導するQRコード決済も相次いで提供されており、群雄割拠の様相を呈している。ただ、銀行系はネット大手のような大々的なキャンペーンを打ち出していないため、どこまで支持されるのかは不透明。はたして銀行系に活路はあるのか。

銀行系も続々参入

 銀行界でQRコード決済サービスの先陣を切ったのは、2017年7月からスタートした横浜銀行の「はまペイ」だ。同行はGMOペイメントゲートウェイとシステムを共同開発し、「銀行ペイ」ブランドで他行にもスキームを提供。18年3月から福岡銀行が「よかペイ」、19年5月からゆうちょ銀行が「ゆうちょペイ」として導入するなど、導入予定を含め11行が利用する。
 加盟店は5月末現在で約1万店。これまで各行は地元の中小店舗を中心に開拓してきたが、ゆうちょ銀行の導入と同じタイミングで、ヤマダ電機やウエルシア薬局など多店舗チェーンで利用可能となり、大幅に店舗数が拡大した。実のところ、銀行ペイは先発の決済サービスであるものの、昨年まで利用者への大々的なPRは控えてきた。「使える店の少ないアプリだと思われてスマホから削除されれば、二度とダウンロードしてもらえない」(関係者)からだ。だが、加盟店が拡大してきたことでようやく攻勢に転じられる。各行は加盟店を相互開放して、全国での利用促進を図っていく構えだ。
 一方、みずほ銀行が主導し、約60の地方銀行が参加する送金・決済サービスが「Jコインペイ」だ。みずほ銀行が大手チェーンなどと交渉し、地方銀行が地場取引先を開拓する棲み分けで加盟店の開拓を図っている。
 単独でサービスを提供する動きもある。鹿児島銀行は決済事業を手掛けるインフキュリオンと組み、独自のQRコード決済「ペイどん」を開発。同行は6月27日、本店別館ビルの建替えに伴い、飲食・物販など14か店が入居する商業施設「よかど鹿児島」を開業する。このテナントを加盟店として、ペイどんの利用を開始。同施設は現金を利用した買い物ができない“完全キャッシュレス”が特徴だ。利用者はペイどんのほか、クレジットカードや電子マネー、Jデビット、アリペイなどを利用できるが、現金しか持たない来店客には、楽天Edyのカードを新規発行して対応を図っていく。

銀行界一丸で推進する「バンクペイ」

 そして満を持して登場するのが、銀行界一丸で推進する「バンクペイ」だ。運営するのは日本電子決済推進機構(機構)。当初は10月から実証実験を始め、来年4月から導入の予定だったが、消費増税に伴い実施される5%ポイント還元に合わせて10月に前倒し導入される。銀行キャッシュカードを提示し、口座から引き落とす「Jデビット」の仕組みを活用することでコストを抑える。
 参加するのは、メガバンクから信金・信組、農協まで約1,000金融機関。このうち約140機関が6月下旬から加盟店開拓に着手する。現在のJデビットの加盟店約56万か店は約50機関が開拓しており、今度はその3倍で加盟店を掘り起こす。
 バンクペイでは、利用者に提供するアプリが大きく分けて3種類用意される。一つは「金融機関ペイ型」と呼ばれるもので、機構が利用者に提供する共通アプリと、個別金融機関の独自アプリにバンクペイの決済機能を搭載するものとに分かれる。自行アプリを展開している金融機関は、後者のバンクペイ機能を搭載するタイプを利用するケースが多くなるとみられる。
 二つ目は「加盟店ペイ型」と呼ばれるタイプ。こちらには機構仕様の基本機能を搭載したアプリと、大手加盟店が利用客の囲い込みを目的とするハウス仕様のアプリが用意される。これにより、ネット通販事業者や電子マネー事業者が自社アプリにバンクペイの決済機能を組み込むことができる。
 そして三つ目が「第三者ペイ型」で、他の決済アプリにバンクペイの決済機能を搭載するタイプだ。銀行ペイはバンクペイとの連携を予定しており、実現するにはこのスキームを用いることになる。
 ただし、三つのタイプのスタート時期は異なる。金融機関ペイ型のMPM(利用者がスマホでQRコードを読み取る店舗提示型)は10月開始で、CPM(利用者がQRコードを提示して店舗がコードリーダーで読み取る利用者提示型)は12月開始。加盟店ペイ型の機構仕様はMPM・CPMともに12月からで、ハウス仕様はMPM・CPMともに10月からとなる。第三者ペイ型については、現時点では20年以降になる予定だ。

銀行系が直面する課題

 銀行系QRコード決済が「激戦」のキャッシュレス市場で支持されるには、使える店舗を増やすことが絶対条件だ。だが、銀行系の加盟店開拓はそう簡単ではない。例えば、Jコインペイの加盟店手数料率はおおむね1%台半ば。ある銀行関係者は「クレジットカードと比べれば安いが、LINEペイやペイペイは加盟店手数料が3年間ゼロ円。これが事実上の基準になっている」とし、加盟店開拓の難しさを口にする。
 銀行系サービスが顧客を奪い合う「骨肉の争い」になることも懸念される。加盟店の早期拡大には、LINEペイとメルペイのような加盟店相互開放が効果的だが、Jコインペイは連携戦略を示していない。こうした連携が遅くなればなるほど、「銀行系以外のキャッシュレス陣営を利することになりかねない」と懸念する声も聞かれる。
 銀行系が支持されるうえで何より重要となるのが、「お得感」を打ち出せるかだ。ゆうちょ銀行では、ゆうちょペイを導入した5月8日から9月30日まで、ゆうちょペイに登録した利用者の先着100万人に現金500円をプレゼントするキャンペーンを実施している。ゆうちょ銀行にとって「総額5億円キャッシュバック」は思い切った起爆剤だろうが、ペイペイやLINEペイの100億円単位の還元キャンペーンに慣れてしまった利用者からするとインパクトの弱さは否めない。バンクペイも10月のスタート時に何かしらのキャンペーンを行うことを検討しているが、公共性のある金融機関としては、ネット大手のような派手な施策は打ち出し難い。
 一方で、ライバルとなる他の各キャッシュレス決済事業者は、10月の消費税ポイント還元に合わせて自社ポイントを上乗せするなど、新たな企画を仕掛けてくるとみられる。金融機関ならではの堅牢性や安全性の追求はもちろん大事だが、利用者の「お得感」にも訴求していかなければ、スマホのトップ画面に置いてもらえる決済アプリには育たない。約4億3,000万枚のキャッシュカードが発行されているにもかかわらず、利用が伸びないJデビットの二の舞いにならない戦略が求められる。
「週刊金融財政事情」編集部

最終更新:6月16日(日)15時30分

週刊 金融財政事情

 

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