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なぜ人は「自分を殺す転職」をしてしまうのか?

6月16日(日)11時00分配信 LIMO

写真:LIMO [リーモ]
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写真:LIMO [リーモ]
「なんで、この仕事を選んでしまったんだろう……」
「前の会社で働いておけばよかった」
「年収下げてまで、なんでこんな思いをしなきゃいけないんだ」
「内定をもらった〇〇社に行っていれば……」

『どんな会社でも結果を出せる!  最強の「仕事の型」』の著者で、計7回の転職を経て、現在はコンサルタントとして活躍する村井庸介さんは、「実はこれらは、恥ずかしながら、すべて私の転職失敗談であり、当時の心の声です」と話す。

 この記事では村井さんが、同書の内容に加え、自身の転職と、人事・部門責任者としての転職者の受け入れ経験などを踏まえて、「なぜ人は転職に失敗してしまうのか」、そして「自分を殺す転職」と「自分を生かす転職」の違いについて解説する。

大手シンクタンクからの転職での残念な失敗

 読者の方々の中には、いま転職を考えている人もいると思いますが、そうでなくとも、いつか転職を選ぶ日がくるかもしれません。ただ、最初にお話ししておきたいのですが、特に初めて転職を検討している方は、「転職ありき」ではなく、「現職に留まること」を含めて考えていただければいいでしょう。

 では、まずは私の失敗談から、「自分を殺す転職」とはどんなものかを考えてみたいと思います。

 私は社会人3年目に、大手シンクタンクの通信業・製造業分野のコンサルタントから、密かにあこがれていた人材輩出で有名なウェブサービス企業に転職します。しかも、自ら希望していた事業開発職ではなく、営業職への配属となることも了解し、意気揚々と会社を移ったのです。

 しかし、転職後、同社での営業が「完全に未経験」の仕事だと気づくのに時間はかかりませんでした。その後は、先輩社員や引き継ぎ案件に恵まれ、受注目標はいちおう達成できたものの、悪戦苦闘の日々。お客様に提案すら聞いてもらえず、上司からは厳しいフィードバックをもらう日々でした。一方で、同年代の社員の活躍を横目で見て、「自分は何をしているのか……」と悩み、徐々に会社に行く足が重くなり、受注も遠のき、最終的には出社できない状態にまで陥ってしまったのです。

 この転職の、何がいけなかったのでしょうか? 

自己流の転職活動は「事故流」にしかならない

 転職を決めた当時の私は、それまでやっていたコンサルティング業務への不安と、他社への「あこがれ」だけで転職を決めてしまいました。自分勝手な思い込みで意思決定をしてしまったのです。そのため、

・いまの職務・業界と次にあたる職務の関連性・生かせる点
・自身の価値観と次の会社の風土・価値観との相性
・自身の「ありたい姿」と、いまの会社、もしくは次に行こうと思う会社で積む経験の意味合い
・転職後に「信頼残高」を積むに必要な時間間隔

といったことをまったく見ずに、あるいは知らずに転職していたのです。

 大学在籍時からNPOで就職活動支援事業を創業し、運営した身として恥ずかしい、事故しか起きない、お粗末な自己流の転職活動でした。特に、「不安から離れる」という選択肢以外に、どうすればより良い未来を創れるか、考慮を重ねなかったことは、本当に恥ずかしい行動でした。

 その後の転職で、私は人事部門の人間として転職者を受け入れる機会が増えました。そこで見たのは、前職への不満が強かった方は、転職後も不満を感じやすく、さらに自らの経験を押しつけようとし、会社になじめないまま再度転職することが多いという現実でした。また、スキルがある方を採用したものの、組織内に摩擦が生じてしまい、辞めていただくということもありました。

 では、どんな転職であればうまくいくのでしょうか? 

転職が少しでも頭をよぎったら最初に始めること

 転職を考えている人も、いきなり転職エージェントや転職サイトには登録しないでください。よい転職エージェントの方々も何人もいますが、多くの場合、残念ながらあなたは「カモ」にしか見えません。あくまで彼らは報酬を支払う「企業」のニーズを優先します。求人に心踊らされ、転職後に後悔してしまうパターンに陥ってしまう場合が多いでしょう。

 まずは、自分の身の回りの転職経験者たちに話を聞いてみましょう。職種や業種、さらには年次も問わず、とにかく幅広く聞いてみてください。

 重要なのは、聞く相手が「転職経験者である」ということです。未経験者に聞いても、的外れなアドバイスがくるか、転職への不安が増長されるだけです。そして、複数人に聞くことも重要です。というのも、「転職に失敗した」と感じている人は転職を勧めないでしょうし、「成功した」と感じている人も言語化できているとは限らないからです。

 このインタビューを通じて、いま自分が転職をするべきか、イメージが湧いてくると思います。

転職サイトには、まだ登録しなくてよい

筆者の村井庸介氏の著書(画像をクリックするとAmazonのページにジャンプします)
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筆者の村井庸介氏の著書(画像をクリックするとAmazonのページにジャンプします)
 転職を考えたということは、「自分が望む姿」と「現実」とのズレを感じているからだと思いますが、そもそも、人生や働くことについて、自分が何を望んでいるのか書き出してみましょう。書くのが苦手な人は、転職経験者と話をしながら整理するのも手です。転職は、自分の環境をリセットすることになるので、安易にはすることはお勧めしません。転職を通じて、自分の「次のチャレンジ」が満たせるかどうかを見つめることが大事です。

 そこまで考えた上で、転職をしてみたいと思ったら、次は職務経歴書の作成です。私自身は、毎四半期や毎年を振り返るために、職務経歴書を常に更新しています。その結果を見て、自分が市場から見たときにどの程度、魅力的かを振り返り、次の成長課題を探します。一度作成されたことのある方も、定期的な更新をお勧めします。

 職務経歴書の書き方は、ウェブや本に載っているものの中から、自分にフィットするものを選べばいいでしょう。書いてみた上で、次にしておきたいのが、「志望する業界や職種の求人」を見ることです。これは、登録しなくとも、転職エージェントや企業が求人を一部公開しているので、まずはそれで充分です。

 ここでは、求人情報の「求める人材」の経験やスキルに、自身が当てはまっているかを確認します。多くの場合、その募集要項に自分の実績が該当しないと、通過確率が低くなりますので、現職で転職に生かせる経験・実績を積むことに注力したほうがいいでしょう。自分で判断しにくい場合は、先ほどと同様に経験者へ相談しましょう。

 ここまで準備が完了したら、実際の転職活動がスタートします。転職サイトや転職エージェント、社員紹介制度など、一つひとつに触れながら、自分に合うものを選んでみてください。あとは面談の過程を通じて、いずれ内定が決まることでしょう。

 しかし、ここからが、「本当の意味での転職のスタート」です。

生かす転職になるのは「信頼残高」を積んでから

 面接官として実際にあなたに会ってくれた人を除くと、多くの社員・関係者にとっては、あなたは「外から来たよそ者」です。組織ですので「本当に仕事ができるのか、お手並み拝見」といった態度の人もいると思います。ましてや、社内外からくるさまざまな仕事の依頼の中で、あなたに関わる仕事を優先してくれる社員は少ないでしょうし、あなたにとっても、誰に仕事を頼んでいいのかわからない状態でしょう。

 こんな状況下で、いきなり大きな成果を残すのは、相当な経験・実績を積んだビジネスパーソンでも難しいでしょう。

 そこで大事なのは、「小さな成功」の繰り返しによる「信頼残高」の積み上げです。基本的には社内外の人に感謝されるような成果を残せば残すほど、あなたに仕事をお願いしようとか、忙しいからもう少し仕事を減らしてあげようといった信頼が増していきます。これが積み上がるほど、より仕事が円滑かつ協力的に進むという個人的経験から、私はこれを「信頼残高」と呼んで、特に重視しています。

 この残高が、転職者は職場内で基本的にない状態ですので、ゼロから積み上げていかなければいけません。ヘタに大きな成功を狙ったり、前職の習慣を押しつけようとしたりして失敗すると、むしろ「マイナス残高」になってしまい、回復するのもままならなくなるので、ご注意ください。

「小さな成功」とは、本当に小さなことで構いません。忙しい上司の代わりにコピーを取る、会議の議事録を率先して取る、といったことで十分です。その時間を使って、上司や同僚はより生産性の高い仕事に取り組むことができるため、あなたは感謝されるはずです。また、そうした同僚の働きを陰で支えることで、客観的な視点から「会社や部署が目指したい姿」や「それに対する課題」がおぼろげながら見えてきます。そういった内容をメモ、あるいは記憶しておくことで、自らが大きな成果を残す「提案のネタ」を蓄えておくのです。

 これらは、会社や部署がいままで取り組めていなかったものです。それを解決しようとして提案し、実際に成果まで残すことで、あなたは組織の中で「信頼される人物」となります。そうなれば、重要な仕事を依頼されたり、あなた自身の希望するプロジェクトに配置されたりする可能性も高まるでしょう。ここまでくれば、あなたを「生かす」転職は完了となります。

さいごに

 ここまで、「あなたを殺す転職」と「あなたを生かす転職」の特徴、および転職活動の方法をお伝えしました。しかし、何よりも大事なのは、「皆さんがいきいきと人生を過ごすこと」です。

 転職もいち手段です。あなたの「働く毎日」がより明るくなることにつながれば、筆者として嬉しく思います。

■村井庸介(むらい・ようすけ)
 1st Penguin株式会社 代表、事業開発プロデューサー。クラフトビールや上場人材会社、ブロックチェーンサービスの事業および組織開発に携わる。大学卒業後は、野村総合研究所で通信・製造業の新規事業開発など戦略コンサルティングに携わる。その後、グリー、日本IBM等で戦略企画や人事、メガネスーパでは企業再生(事業開発職)など、計8社での就業を経て独立に至る。プライベートでは、NPO法人の教育事業「ベストキャリア」を通じて累計約500名の大学生の就職を支援。

村井氏の著書:
『どんな会社でも結果を出せる!  最強の「仕事の型」』
村井 庸介

最終更新:6月21日(金)21時05分

LIMO

 

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