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「米中貿易戦争」激化なら円高進行余地拡大へ

6月9日(日)15時30分配信 週刊 金融財政事情

みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト  上野 泰也
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みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト  上野 泰也
〔図表〕トランプ大統領の支持率・不支持率の推移
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〔図表〕トランプ大統領の支持率・不支持率の推移
 中国との貿易摩擦で強硬姿勢を前面に押し出したトランプ政権は今年5月、2,000億ドル相当の中国製品への関税を10%から25%に引き上げた。中国は報復措置を発表するなど一歩も引かない構えで、米中貿易摩擦は長期化する雲行きである。
 米国では、中国を最大の脅威と見なす意見が与野党を問わず支配的である。ギャラップ社の調査で、トランプ大統領の支持率は5月12日時点で42%(図表)。前回の調査からやや下がったものの、4割程度のコアの支持層は健在と言える。
 政治的に弱点を抱えているのはむしろ、中国のほうだろう。中国共産党内には習近平国家主席への権力集中を快く思わない人々がおり、景気悪化や国辱的外交などなんらかの失政があれば、批判を強める構えのようである。5月にワシントンで行われた閣僚級の米中貿易協議で劉鶴副首相が態度を急に変えて対立が深まった背景には、中国共産党内で「弱腰外交」批判の強まりがあったもようだと報じられている。
 そうなると、中国が米国に対する強気の姿勢を変えるのは難しい。共産党系メディアの環球時報は5月13日、米中貿易摩擦は「人民戦争」であって中国全体への脅威だとする論説を掲載。「人民戦争」という言い回しが市場で話題になった。
 中国の国家発展改革委員会は5月28日の声明で、中国はレアアース(希土類)の生産大国だと指摘し、米国の追加関税への対抗手段としてレアアースの対米輸出規制をちらつかせた。その前段階として、習国家主席が20日にレアアース関連企業を視察する一幕があった。人民日報は29日、「われわれが警告しなかったとは言わないように」という牽制を含む論説で、レアアースの輸出規制をさらに強く示唆。米国株の急落を引き起こした。
 相手国からの輸入品に制裁関税をかけ合うだけでは、貿易額の大小の面から中国は不利である。そこで、ピンポイントで効果的な対抗手段を中国は模索している。
 米中貿易戦争の長期化と経済的苦難を中国が覚悟した兆候もある。習国家主席は5月20日、「今は新長征であり、われわれは最初からやり直す必要がある」というメッセージを、江西省で発した。
 中国は米国とは異質な国である。次世代ハイテク分野で中国に覇権を握られてしまうと、米国にとって安全保障面でも大きな脅威になるという対中警戒論は、今後も、米国内で支配的であり続けるだろう。そうした米中の根深い対立は、金融市場で「リスクオフ」の材料になる。事態の展開しだいでは、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げの実施を待たず、今年1月につけた104円台を目指して円高ドル安が加速するきっかけになりうる。
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト  上野 泰也

最終更新:6月9日(日)15時30分

週刊 金融財政事情

 

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