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坂東真理子「東大・上野祝辞に思う女子の現在」

5月27日(月)5時50分配信 東洋経済オンライン

令和に年号が変わったことをきっかけに、男女の垣根なく、女性が自分のやりたいことを自由にできる時代へと変わっていくのでしょうか(写真:KY/PIXTA)  
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令和に年号が変わったことをきっかけに、男女の垣根なく、女性が自分のやりたいことを自由にできる時代へと変わっていくのでしょうか(写真:KY/PIXTA)  
ベストセラー『女性の品格』から12年。坂東眞理子・昭和女子大学理事長がいま考える、人生100年時代を納得して生きるために必要な「女性の美学」とは?  
大人の女性の3大場面、「職場」「家庭」「社会」それぞれの場で女性が直面する問題にどう対応するか。この連載ではつづっていただきます。
 令和に年号が変わると、平成時代のことが遠い過去のように見えるから不思議である。しかしつい先月、東大の入学式で上野千鶴子さんが述べたスピーチは、令和の時代に解決すべき課題の1つが女性に対する見えざる差別であることを示している。
 上野さんも指摘しているが、2018年夏、東京医大で女性と浪人生が入学試験で不利に扱われたことが明らかになり、大きな批判にさらされた。その後の調査では東京医大だけではなく、多くの私立大学医学部では明らかに男性を優遇しており、女性の入学を差別していない学部学科より男性が多い傾向を示していた(今春は改善された)。

 入学試験は点数順に差別なく合格させるものだと思っている人はびっくりしたかもしれないが、私はそれを聞いても「やっぱり今もそうか」と思うだけでまったく驚かなかった。
■活躍を期待されない女性たち

 医学部入試だけでなく、現実の社会では男性が優遇されている。試験の点数だけで判定されているのは限られた分野であり、大企業の入社試験をはじめ、いろんなところで男性が優遇されているのは「常識」だった。入社試験でペーパーテストの順に採用すると女性が多くなりすぎて困るというのはよく聞く話だ。

 企業だけではない。司法試験や公認会計士といった難関国家資格試験では、女性の受験者数は依然として少ない。2017年では男性が4409人に対し、女性は1558人で、受験する前から諦めているとしか考えられない水準だ。結果として、合格者の男女比は8:2と多くの医学部以上に男性の比率が高い。東大も今年の女性入学者は18.1%と、筆者の時代に3%だったのに比べると6倍に増えているが、それでも世界の一流大学に比べると明らかに低い水準である。
 昭和に育った私たちだけではない。平成に育った多くの女性たちも「女の子なんだから無理に頑張る必要はないよ」「どうせ女の子だからよい成績をとっても(よい進学をしても)将来はたかが知れているよ」「できる女性になるより、いい男性(周囲の人)から愛される素直でかわいい女の子のほうが幸せになれるよ」というメッセージを受けて育ってきた。

 教科書には書かれていないが、親からも教師からも、時には友人たちやマスコミからも隠れたメッセージは届く。それに引き換え、多くの男の子は「頭がよくて成績がいいから将来が楽しみ」「男の子なんだから頑張って勉強して(スポーツに励んで)成功を目指せ」「男の子なんだから数学をしっかり勉強しなくては」と期待されて育つ。
 男の子の将来には輝かしい未来が待っているかもしれないが、女の子は無理せずほどほどのところで「かわいい、いい子」になればよし、と子どものころから刷り込まれがちだ。

 結果、男の子たちが頑張って東大や医学部や司法試験や公認会計士を受験したり、大企業の総合職を目指す一方、女の子は無理をしないでほどほどの進学をし、“ほどほどの就職”をしがちだ。

 もちろんどちらも個人の選択だが、現在の日本の社会でも家庭でも職場でも男性が大事にされ優位に立つのが当たり前であり、そうでないと居心地が悪くなる男性は、実際のところ少なくないだろう。
 日本人男性が留学すると元気がなくなり自己評価が下がり、日本に帰りたがるが、女性は生き生き伸び伸びと羽ばたく。筆者の周囲ではそうしたケースを多く見てきた。

 実際、国際機関で働く日本人を見てみると、日本との違いがわかる。たとえば国連で働く日本人は、女性が477人であるのに対し、男性が316人(2016年)。日本の一般的な企業における男女比とは、かなり違うことがわかるだろう。いったいなぜなのか。

 これは語学の問題ではなく、日本の社会では男性にげたをはかせているから、こうした現象が出るのだと筆者は見ている。逆に、女性は日本で自分を抑えていた見えない縛りがなくなったように感じて、自信をもって羽ばたくのかもしれない。
 多くの人がうなずくことと思うが、勉強がよくできて親の期待に応えてきた男の子の中には、パートナー(妻)である女性は自分の世話をして、自分のキャリアを支えてくれるものと思い込んでいる人が少なからずいる。

 若い世代を中心に積極的に家事をする男性は着実に増えているが、依然として、できる範囲でのみ家事育児は手伝う、というスタンスの人も多くいる。女性のほうが家事育児に向いているし、本来それが女性の持ち分だと、悪気なく思い込んでいるのだ。
 男性である自分が家庭より仕事を優先するのが当然であり、パートナーが家庭より仕事を優先するのは許せない。自分よりパートナーの収入が多かったり、職場で成功すると居心地が悪い――。少しずつ世の中は変わりつつあるとはいえ、そういう男性たちもまだまだ多いのではないだろうか。夫の自尊心を傷つけないように、夫を立てるのが賢い女性だと思っている。

■保護者や上司にお願いしたいこと

 こうした世の中で、これから社会に出る女の子たちはどうやって生きていったらいいだろうか。
 私が卒業式や入学式など、いろいろな機会に女子学生に言っているのは「自分を粗末に扱うな、自分を見捨てないで、いいところを少しでも伸ばし、小さい実績を作っていこう」ということである。

 そして保護者の方にも就職先の方々にもお願いしているのは、自分の娘や女性の同僚や部下に期待してほしいということである。

 娘や女性部下が努力を必要とする少し高い目標に挑戦したいと言っていたら、「無理するなよ」「できるはずないだろう」「おとなしくしていたほうが楽だよ」と足を引っ張らない。「君ならやれる」「頑張れよ」と励ます。できれば、具体的な役に立つアドバイスをしたり、同僚の批判から守ってあげるような応援をすることである。
 若い女の子たちに伝えていることは、世の中は理不尽なことが多いが、それにめげてはいけないということだ。今回、東大の祝辞で男女差別に関する内容が扱われたように、かつてに比べれば、日本社会も少しずつ、確実に変わりつつある。「女の子らしく」というプレッシャーに負けることなく、ささやかな努力を持続し、小さな成功を積み重ね、昭和とも平成とも違う令和を明るく生き抜いてほしいと思う。
坂東 眞理子 :昭和女子大学理事長

最終更新:5月27日(月)5時50分

東洋経済オンライン

 

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