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なぜ、2008年安値を境に米ドル安の時代は終わったのか? リーマンショックの再来は?

5月25日(土)14時01分配信 ザイFX!

■ドルインデックスは早ければ夏場にでも100打診か

ドルインデックス 日足 (出所:Bloomberg)
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ドルインデックス 日足 (出所:Bloomberg)
 筆者はかねてより、米ドル全面高の構造を指摘してきた。昨日(5月24日)のドルインデックスの高値更新は、その一環と見なされる。そして、さらなる上昇余地が生まれ、早ければ夏場にでも、心理的大台である100の打診を覚悟すべきであろう。

 米ドル高に懐疑的な論調も多いが、主に米利上げサイクルの終焉やトランプ政権の米ドル高牽制といったロジックに基づいている模様だ。

 しかし、歴史に照らして考えると、米利上げサイクルが終了した後でも米ドル高が続き、また、米政府の意向と関係なく、為替市場のトレンドは形成されてきたから、こういったロジックに大した裏付けはないと思う。

■一口に「16年サイクル」と言っても、数え方で変わってしまう

ドルインデックス 月足 (出所:Bloomberg)
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ドルインデックス 月足 (出所:Bloomberg)
 さらに、米ドル高に否定的な見方の多くは、テクニカル的な根拠としてサイクル論を持ち出すケースが多い。一番影響力のある仮説はいわゆる為替市場における16年サイクルの存在だ。

 もっとも、筆者自身も16年サイクルを重視し、また、サイクル自体をまったく否定しないが、戦後一貫して継続されてきた米ドル安のトレンドは2008年の最安値を境にすでに転換された公算が大きい。

 したがって、サイクル自体が16年の周期をもって繰り返されても、サイクルの位相が違ってくる可能性も大きいから、従来の「米ドル安の期間や値幅は、米ドル高の期間や値幅に比べ長く、また大きい」という特徴も「米ドル高の期間や値幅は、米ドル安の期間や値幅に比べ長く、また大きい」にチェンジされたはずだとみる。

 その上、サイクルの数え方も単純ではない。実際のところ、今回の16年サイクルは、ドルインデックスが付けた2008年の「史上最安値」ではなく、2011年安値から数えなければならない。

 その理屈や前述のサイクルの位相などに関する説明は、かなり文字数が必要なのでここではいったん省略するが(本コラムにて今度詳説する予定)、結論から申し上げると、2011年安値を起点とした米ドルの上昇波は、もしかしたら10年も続くかもしれないから、2020年や2021年まで基本的に米ドル高のトレンドが続くとみるべきだ。

 要するに、米ドル高の可能性自体も市場構造に基づいているから、ファンダメンタルズに関する安易な解釈で見誤るべきではない。

■なぜ、2008年安値を境に米ドル安の時代が終わったのか?

ドルインデックス 月足 (出所:Bloomberg)
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ドルインデックス 月足 (出所:Bloomberg)
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ドルインデックス 月足 (出所:Bloomberg)
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ドルインデックス 月足 (出所:Bloomberg)
 筆者の考え方は、多くの反論や批判を招く可能性が大きいことを承知しているが、根幹的な部分についてまず説明しておきたい。重要なのは、「なぜ、2008年安値を境に米ドル安の時代が終わったのか」ということであり、ここにすべてが集約されると思う。

 周知のとおり、2008年はリーマンショックが発生し、世界景気を大きく後退させ、また、経済環境を大きく攪乱した。

 米国発の危機はあっという間に世界的に広がり、米ドル安が最初進行したものの、直ぐ底打ちを果たし、その後、リバウンドしてきた。ここが重要なポイントであることをまず覚えておいていただきたい。

 危機に対応すべく、FRB(米連邦準備制度理事会)は前例のない大規模QE、すなわち金融緩和を3回も実施してきた。

 統計はいろいろあるが、一般的にはその期間は2008年11月~2014年10月までとされ、QE1は1兆7250億ドル、QE2は6000億ドル、また、QE3も約6000億ドルだった。足した総額は天文学的桁数となり、もちろん、米建国史上最大の「お金のバラマキ」だった。

 実際には、金融緩和自体がそのままお金の印刷ではないが、一般庶民の感覚では、お金を印刷してばらまくということとして理解されやすく、またその理解自体も大した間違いではない。

 ここがまた重要なところだが、米史上前例のない大規模な米ドルバラマキがあっても、米ドルの価格は上下変動したものの、結局、2008年安値を割らなかった。

 ドルインデックスは2008年3月にて安値を付けており、それは米QE実施前だった。3回の大規模QEの実施があっても、その安値を更新しなかったこと自体、歴史的な安値が形成されたことを証明したわけだ。

 ゆえに、その後、ドルインデックスは大きく反騰、2017年年初にて、いったん高値を付けたわけだが、あくまで途中の高値と見なされ、16年サイクルにおけるトップではなかった可能性は大きい。

 なにしろ、天文学的な桁数のお金をばらまいても米ドルは底割れしなかったのだから、2008年安値が歴史的な底として認識されるべきだ。

 「リーマンショックの再来」は、2008年以降、盛んに指摘されてきたが、まったくハズレであった。仮に再来があったとして、また、米QEがあったとしても、2008年~2014年のような大規模なQEを実施できるかどうかは、かなり疑問だ。

 そもそも米国経済は極めて柔軟性を持ち、また過去の過ちを学習し、同じ轍を踏まない健全性が備わっているから、リーマンショックのような危機の安易な再来もないだろう。

■足元の米ドル/円の調整は、中長期でみれば押し目の好機

米ドル/円 月足 (出所:Bloomberg)
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米ドル/円 月足 (出所:Bloomberg)
 いずれにせよ、強調したいのは足元の位置は、このようにマクロ的な視点でとらえないとなかなかつかめないから、前述のロジックで言えば、トランプ云々、米中貿易戦争云々と関係なく、大きなロードマップとして米ドル全面高は継続される公算が高い。

 そして、2017年の高値を超えた高値を形成するのは、ある程度の幅をもって推測すれば2020~2022年だと思われる。したがって、米ドル高の進行はまだまだ途中である。

 この視点は非常に大事だ。なぜなら、米ドル/円の見通しは、結局、米ドル全体の話と緊密な関係があるからだ。

 米ドル全面高のトレンドなしでは、米ドル/円の強気変動があっても長く続かず、また、米ドル/円とドルインデックスの値動きは、確かに乖離するケースも多いものの、結局、収れんしていくものだ。米ドル/円も歴史的な円高時代が2011年を境に終焉したはずで、足元、長い米ドル高のトレンドにある。

 だからこそ、米中貿易戦云々で円高トレンドへ復帰する、といったロジックに同意できない。相場は外部要素ではなく、内部要素で決定されるものなので、足元における米ドル/円の調整は、中長期でみればむしろ押し目の好機だとみる。

 米ドル全面高でクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)における外貨安・円高の進行も一段と確認されたが、主要クロス円における「2019年年初来安値更新なし」というメインシナリオを維持しておきたい。

■もっとも、短期的にはドルインデックスはいったん反落か

ドルインデックス 日足 (出所:Bloomberg)
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ドルインデックス 日足 (出所:Bloomberg)
ユーロ/米ドル 日足 (出所:Bloomberg)
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ユーロ/米ドル 日足 (出所:Bloomberg)
 今回はドルインデックスの話に文字数を使ったから、テクニカル上の詳細な検証はまた次回に回さなければならないが、最後に、目先のサインを1つ指摘しておきたい。

 それは短期スパンにおけるサインなので、中長期のトレンドと逆になるが、ドルインデックスは昨日(5月23日)、高値更新してから陰線で大引けしたから、「フォールス・ブレイクアウト」の疑いが濃厚で、いったん反落してくるだろうとみる。

 そうなると、リンクした値動きとして、ユーロ/米ドルは続落する前に、いったんリバウンドしてくる可能性がある。あくまで途中のスピード調整という位置づけだが…。

 市況はいかに。
陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

最終更新:5月27日(月)14時31分

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