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頭のなかのごちゃごちゃを整理する「思考の目録」のつくり方

5月24日(金)6時00分配信 ダイヤモンド・オンライン

写真:ダイヤモンド・オンライン
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 「決定すべきこと」が多いと、よい決定をするのがむずかしくなる。スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグがワンパターンの服をユニフォームのように着ていたのも、日々の生活における選択肢の数を減らそうとしていたから。決断回数を減らせば、より重要なことに集中できるようになるのだ。
しかし、私たちは日々多くの「やるべきこと」に取り囲まれている。そのためには、まず思考をすべて頭の外にだすこと。「思考の目録」を書きだして、客観的に眺め自問することだ。
 本連載では、いま世界中で話題のノート術「バレット・ジャーナル」の発案者であるライダー・キャロル氏が書き下ろした初の公式ガイド『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』から本文の一部を抜粋して特別公開する。

役に立つと思えないもの、あるいは美しいと思えないものは、いっさい自宅に置かないことだ。
──ウィリアム・モリス(イギリスの詩人・工芸美術家)
● 「忙しい」とは、 することが多すぎて機能できない状態

 さまざまな研究によれば、人は1日に5~7万回、思考をしているという(*1)。その思考が1回につき1個の単語で成り立っていると見なせば、僕たちは頭のなかで1日に1冊の書籍の内容と同じくらいの思考をしている計算になる。たった1日で、だ。

 ところが書籍とは違い、僕たちの思考はきちんと構成されていない。ましな日でも、ぼんやりと筋がある程度。つまり頭のなかでは、常に脳細胞が思考を整理しようと躍起になっているのだ。

 ええと、なにをすればいいんだろう? 最初にどこに手をつければいいんだっけ? 途中で筋道がわからなくなったり、同時に多くの物事に手をだしてしまい、どうでもいいことに注意を向け、一点に集中できなくなったりすることも多い。

 この状態を、僕たちはたいてい「忙しい」と表現する。でも忙しいからといって、生産的であるとはかぎらない。

 「忙しい」という表現は、たいてい「することが多すぎてうまく機能できない状態」にあることを指す暗号だ。つまり、なにを言いたいかって? 僕たちに時間がないのは、多くの物事に同時に取り組んでいるからであって、それではうまくいかないのがオチだってことだ。

 この現象は21世紀に特有の問題じゃないけれど、テクノロジーのおかげで指先ひとつで無数の選択ができるようになってから急速に悪化している。

 いま、なにをすべきなんだろう? パソコンで書類を作成する? メッセージを送る? 電話をかける? メールをする? ブログを更新する? ツイッターをする? テレビ電話で話す? それともデジタル機器に大声で呼びかけて用事をこなしてもらう? これを全部する必要があるのなら、どの順番ですればいい?(ああ、それに用事に着手する前に、まずアップグレードして、アップデートして、再起動して、ログインして、本人である認証を得て、パスワードをリセットして、閲覧履歴を消去しなくちゃ。だから、いざ仕事を始めようとすると、なにをするつもりだったのか忘れてしまう……ええと、なにをするんだっけ?)

 無限に選択肢が与えられている状態は、いわば諸刃の剣だ。「これを選択しよう」と決断をくだすたびに、あなたは集中しなければならない。そして集中するには、時間とエネルギーを投資しなければならない。時間とエネルギーは有限の資源だから、どちらもきわめて貴重である。

● バフェットの「人生リスト」のつくり方

 歴史上、もっとも成功した投資家のひとりであるウォーレン・バフェットは、信頼の置ける専属パイロットのマイク・フリントから、人生の長期計画について相談されたとき、「きみのキャリアにおける目標のトップ25を、リストにして書きだしなさい」と言った。

 フリントがリストをつくると、「そのうちのトップ5を丸で囲みなさい」と助言した。フリントは指示に従い、トップ5の項目を丸で囲んだあと、バフェットにこう言った。

 「たしかにこのトップ5は、最優先で取り組みたい課題ではありますが、残りの20の項目はどれも僅差で2位につけています。自分にとっては、やはり大切なことなのです。ですから時間を見つけて、適宜、取り組んでいくつもりです。いますぐ、どうしても達成したいことではありませんが、やはり努力は続けていくつもりです」

 すると、バフェットがこう断言した。

 「いや、それは誤解だ。丸で囲まなかった項目には、決して着手してはならない。きみがトップ5に選んだ項目をすべて成功させるまでは、絶対に注意を向けてはならんのだよ(*2)」

 「ヴァニティ・フェア」に掲載されたインタビュー記事で、バラク・オバマ元大統領はこう述べている。

 「私がグレーかブルーのスーツしか着ないのは、決断をくだす項目を減らしたいからだ。食べ物や着る物のことで、頭を使いたくない。ほかにも決断しなければならないことが山ほどあるからね(*3)」

 同様のことは、ほかのリーダーにもあてはまる。フェイスブックの創業者マーク・ザッカーバーグは、たいていグレーのパーカーかTシャツを着ているし、アップルの創業者スティーブ・ジョブズは、かの有名な黒いタートルネックとジーンズをユニフォームのように愛用していた。

 複数の選択肢を秤にかける行為がどれほど脳に負担をかけるかを強く意識していたからこそ、日々の生活における選択肢の数をできるだけ減らしていたのだ。

 (注)
*1 Cyndi Dale, Energetic Boundaries: How to Stay Protected and Connected in Work, Love, and Life (Boulder, CO: Sounds True, Inc., 2011).
*2 Jory MacKay, “This Brilliant Strategy Used by Warren Buffett Will Help You Prioritize Time,” Inc., November 15, 2017,.
https://www.inc.com/jory-mackay/warren-buffetts-personal-pilot-reveals-billionaires-brilliant-method-for-prioritizing.html.
*3 Michael Lewis, “Obama’s Way,” Vanity Fair, October 2012, https://www.vanityfair.com/news/2012/10/michael-lewis-profile-barack-obama.
● 決断回数を減らせば重要なことに集中できる

 心理学者のジョン・ティアニーは次のように記している。

 「合理的な考え方をする高潔な人間になろうとしても、次から次へと決断をくだしていると、必ず生物学的な代償を支払わされることになる。それは、いわゆる肉体的な疲労とは違う──疲れていることを自覚していなくても──実際には頭の働きが鈍っているのだ(*4)」

 この状態は「決定疲れ」と呼ばれている。「決定しなければならないこと」の数が多ければ多いほど、よい決定をくだすのがむずかしくなるのだ。

 だから1日の最初の食事である朝食よりも、1日の最後の食事である夕食では、不健康なものを食べがちになる。朝は、まだ意志力がいっぱいにみなぎっているからだ。

 決定疲れの状態をそのまま放っておくと、やがて決断をくだすのを回避するようになる。とりわけ人生を左右するような大きな決断をくだす場合、僕たちは最後の最後まで決断を先延ばしにしようとする。

 でも、いくら先延ばしにしたところで、ひるんでしまうような大きな決断を要する問題が消えてなくなるわけじゃない。その問題はじっと待機していて、ますます僕たちを威嚇する。

 本当に進学したい大学はどこだろう? この人と本当に結婚したいのだろうか? この転職の機会を活かすべきか?

 もうこれ以上、決断を先延ばしにはできない状況に追い込まれて、ようやく決断をする頃には、もう集中力がなくなっている。ストレスを感じ、不安でたまらなくなり、心が折れそうになるのも不思議はない。

 こうした状況におちいると、僕たちはつい、ほかのことで気をまぎらわせようとする。酒を飲む、食べる、旅にでかける、延々とテレビを観る……。でも、なにをしたところで問題の根本的な解決にはならない。あいかわらず決断をくだせず、ストレスは溜まるばかり。

 こうした現状を打破するには、その場しのぎの対応でごまかすのではなく、問題の根本的な原因をはっきりさせ、解決しなければならない。

 重荷に感じている「決めなければならないこと」の数を減らそう。そうすれば「本当に重要なこと」に集中できるようになる。

 (注)
*4 Roy F. Baumeister and John Tierney, Willpower: Rediscovering the Greatest Human Strength (New York: Penguin, 2011).(『WILLPOWER 意志力の科学』ロイ・バウマイスター、ジョン・ティアニー著、渡会圭子訳、インターシフト)
〔訳注:原注では上記のように記載されているが、該当箇所は見当たらず、下記の記事だと思われる〕
https://www.nytimes.com/2011/08/21/magazine/do-you-suffer-from-decision-fatigue.html
● 「思考の目録」で頭のなかを棚卸しする

 決定疲れから回復するための第一のステップは、あなたの肩にのしかかる選択の重荷を、ひとまず下ろすことだ。つまり、少し距離を置いてみよう。

 まず、決断をくださなければならない項目にはどんなものがあるのか、明確にする。そのためには、書きだすのがいちばんいい。なぜ、わざわざ書きだすのかって? 実際に決定をくだすまでは、そうした項目はただあなたの頭のなかにある思考にすぎないからだ。

 そうした多様な思考をすべて保管しようとするのは、素手で魚を捕まえようとするようなもの。あっという間に手から滑り落ちて、頭のなかの濁ったぬかるみへと姿を消してしまう。

 でも、そうした思考を書きだしておけば、明るい陽光の下でしげしげと眺めることができる。思考を頭の外にだすことで、頭のなかのごちゃごちゃを整理できるのだ。

 注意を向けなければならない項目をすべて書きだせば、「思考の目録」をつくることができる。そうすれば、一歩引いて問題を俯瞰し、自分で人生をコントロールする第一歩を踏みだせる。

 クローゼットのなかを整理するときと同様、残すものと処分するものを決めるには、まず衣類をすべてとりださなければならない。頭のなかにごちゃごちゃとあるものの目録をつくれば、クローゼットにぞんざいに押し込んであるものの棚卸しをすることができる。

 そこではおそらく、無益な「しなければならないこと」がはびこり、理性や感情を向ける価値のあるものを覆いつくしているはずだ。

 目録をつくる手順は簡単だ。紙を1枚用意し、そこに3つの縦方向の列をつくろう(縦に線を2本引いてもいいし、縦に紙を折りたたんでもいい)。

 1 最初の列には、いま、実際に「取り組んでいる」ことをすべて書きだす。
2 真ん中の列には、「取り組むべきこと」をすべて書きだす。
3 最後の列には、「取り組みたいこと」をすべて書きだす。

 すべて箇条書きで、短く書こう。あるタスクからほかのタスクを連想したら、それも書きだそう。この作業には少し時間をかけて、よく考えよう。自分に正直になろう。

 とにかく、あなたの頭のなか(そして心のなか)にあるものをすべて外にだし、紙に並べよう。では、深呼吸をしてから、始めてもらいたい。
● 時間配分を最適化する ──あなたは「なに」に投資しているのか

 「思考の目録」を眺めていると、あなたの貴重な時間とエネルギーをどう投資しているかがよくわかる。それはいわば、あなたの選択の数々が描かれた地図だ。次のステップでは、その項目に実施する価値があるか否かを見きわめる。

 僕たちはいつもなにかしらの用事(あるいは「すべきこと」)で忙しくしていて、そもそも「なぜ、これをしているのか」と自問しなくなっている。すると、しなくてもいい用事をすべて背負い込み、その重荷に苦しむことになる。

 そんなとき、「思考の目録」をつくれば、客観的に用事を眺め、「なぜ、これをするのか」と自問することができる。では実際に、目録にある項目のそれぞれについて、Whyと自問してみよう。ただ、次のふたつの質問を自問すればいい。

 1 これは重要なことだろうか?(あなたにとって、あるいは、あなたが愛する人にとって)
2 これは必要不可欠だろうか?(家賃や税金の支払い、奨学金の返済、仕事など)

【ヒント】このふたつの質問にうまく答えられない場合は、「この用事を完了できなかったらどうなるだろう?」と自問してみよう。その用事を無視した場合、どうなる? その結果、深刻な悪影響が及ぶだろうか?
 この自問自答を終えたら、目録にはふたつのタイプのタスクが残るはずだ。「実施する必要があること」(責務)、そして「自分がしたいこと」(すなわち、あなたの目標)だ。

 本書(『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』)では、どちらのタイプのタスクも効率よく実行する方法を説明していく。さあこれで、バレットジャーナルに書き込む必要がある項目が手元に残った。

 いま、あなたの頭のなかには、こんな疑問が浮かんでいるかもしれない。「どうして紙に書きだしたんだろう? ノートに直接、書けばいいじゃないか?」と。もっともな疑問だ。

 では、お答えしよう。これからあなたが本書を読み進めるうちに、さまざまなアイディアが新たに頭に浮かんでくるかもしれないし、バレットジャーナルのテクニックを試すうちに「思考の目録」の項目をいっそう減らすかもしれないからだ。

 バレットジャーナルを初めて使うときには、「これは重要だ」「これは自分の人生に価値を加える」と信じている内容だけをノートに書き込むべきだ。自分の人生に取り入れるものを取捨選択する際には、ノートのページ数を気にせずに、じっくりと考えてもらいたい。
ライダー・キャロル

最終更新:5月24日(金)6時00分

ダイヤモンド・オンライン

 

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