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5Gで動画にだけ着目する人が予想できてない姿

5月20日(月)11時25分配信 東洋経済オンライン

あらゆる産業が激変する未来が待っている(デザイン:小林 由依、イラスト:大寺 聡)
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あらゆる産業が激変する未来が待っている(デザイン:小林 由依、イラスト:大寺 聡)
パソコン、スマートフォンなど身近にある通信電子機器に必ず使用される電子部品。村田製作所は、電圧調整を担うコンデンサーの一種である積層セラミックコンデンサー(MLCC)で世界トップシェアを誇る。MLCCはiPhoneのようなハイエンドスマホには600~1000個ほど搭載されているとされる。
今年9月にいよいよ日本でお目見えする第5世代移動通信システム「5G」。「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」という特徴により、さまざまな産業を根底から変える可能性がある。
そんな5G時代には、村田製作所のような電子部品メーカーの役割が一層高まることが期待されている。4G時代にスマホの普及で大躍進した同社はどう見るのか。5月20日発売の『週刊東洋経済』は「5G革命」を特集。そこで登場した、村田製作所のモジュールの開発責任を担う中島規巨代表取締役専務執行役員のインタビューをお届けする。

 ――スマホ普及の恩恵を中心に、売り上げは過去5年で約2倍弱、営業利益は2倍強となりました。IoT(モノのインターネット)化が加速するとされる5G時代において、村田製作所の成長も加速するのでしょうか。
 正確な数字は言えないが、チャンスは間違いなく広がる。まず、当社の主力であるMLCCは電子機器の5G化に伴って搭載点数が引き続き増える。電池についても全固体電池は、熱の発生を抑えることからウエアラブル端末などにおいて、安全面でのニーズが高い。

 そして最も優位性があるのは、高周波のデバイスと通信モジュールだ。すでに中国の「Sub6(サブシックス、6GHz未満の周波数帯)」向けに量産を開始しているが、日本や韓国で予定されている6GHzを超える高周波帯や、さらには30GHzを超えるミリ波向けでの需要にも期待している。ミリ波については約30年前から研究を始めた成果をいよいよ発揮できる。
 これまでの開発テーマの方向性は間違っていなかった。通信の世界は3Gから4G、4Gから5Gへと発展してきたように、長い目でみたら規格がどのように変わっていくかは見えていて準備をすることはさほど難しくない。

 ――とりわけ期待できる製品は? 

 薄く曲げることが可能な樹脂多層基板「メトロサーク」だ。高周波特性に優れ、接着層が不要なことから薄型で、複雑な曲げ加工も可能なため折り紙のように使える基板だ。5Gの信号として使用される高周波は直進性が高く、基板を折り曲げられることで多方面から信号を受ける。そうした中、自由に曲げられたり、部品と部品の間に実装可能だったりするメトロサークは重宝される。顧客であるスマホメーカーが、自由度の高い設計ができるからだ。
 あとは、ノイズを減らすために使用するフィルタだ。ミリ波になると、現在のSAW(弾性表面波)フィルタでは機能が不十分となり、セラミックを使ったLCフィルタが必要になる。セラミック製のLCフィルタはあまり競合がいないため、当社のシェアを高められる。

 ――5G需要はどれくらい先まで続きますか? 

 スマホの需要がある程度見込める、5年くらい先までは大丈夫だ。問題はその先だ。

 5Gのメリットは通信速度が速くて、映画が数秒でダウンロードできることやネットによる動画中継がテレビで流れるのと同時になるなどわかりやすい具体例が多い。ただ、4Gと5Gの違いで根本的な大きな違いは、レイテンシー(遅延)が0秒に近く、ほぼ遅延がないということだ。
 現在はスマホやタブレットを購入するときに64GBや256GBなどメモリー量を気にして選んでいる人は多いだろう。でも、5Gになれば通信によるデータのやりとりで遅延が生じないので、クラウドに大量のデータを保存してやりとりしても問題ない。メモリーにデータを保存する必要はなくなり、スマホのようなメモリーつきの通信機器はいらなくなるかもしれない。

 ――村田製作所のビジネスに与える影響は。

 5Gが浸透した時代になれば、特定の用途に合わせたウエアラブル端末が普及するだろう。5Gはつねにネットワークやクラウドにつながっている状態となるので、医療分野でのバイタルチェックや歩行者と自動車間を結んで交通事故の防止に貢献するウエアラブルデバイスが必要になる。
 一方で、いずれはスマホやウエアラブル端末も必要なくなる場面があるだろう。

 例えば、外出先や仕事場、通勤時の通り道、自宅など一般的な生活空間においてはいつでもクラウドに接続できる端末が設置されていて、個々人が必要なデータをそれぞれの場所にある端末で自由に見ることができるようになる。そうなれば、通信機器を持ち運ぶ手間は省ける。通信機器同士のシェアリングエコノミーが実現する。

■4Gでは電話が1つの「アプリ」になった
 現在はどうしてもスマホの延長線上で5Gのアプリケーションを発想しがちだが、3Gから4Gへと規格が変わるときに何か変わったかを思い出してほしい。私はマニアだから、自宅にポケベルやガラケーを保管しているが、それを眺めていたときに3Gから4Gでいちばん変わったのは電話が1つのアプリになったことだと思った。

 3Gまではあくまで電話機で、メールの送受信や「iモード」などが使えるようになったという感覚だったが、4Gでは電話がさまざまなアプリと変わらない1つのアプリと化した。おそらくスマホをかつての携帯電話と同じ電話機として使用しているという認識はなく、電話の概念自体が通信規格の変化とともに変わった。だから4Gから5Gへの変化でも同様に何かしらの概念の変化が起きるだろう。
 5G時代のポイントに「動画」が例として挙がることがあるが、今の4Gでも若干通信速度が遅いだけでYouTubeや映画などを見るのに困りはしない。5Gへの変化は現時点で例示されている以上に社会に大きなインパクトをもたらすだろう。実際にビジネスモデルや社会が5Gによってどのように変化するかは若い人たちにより積極的に考えてもらいたい。きっとあふれる想像のなかに今後現実となるものもあるだろう。

 村田製作所のような電子部品メーカーとしてはどんな通信機器が求められるようになっても、対応できる部品を技術開発していく。必要な部品をしっかり供給し、部品に求められる性能を達成していくインフラ作りをしっかりやっていきたい。
『週刊東洋経済』5月25日号(5月20日発売)の特集は「5G革命」です。
劉 彦甫 :東洋経済 記者

最終更新:5月20日(月)11時25分

東洋経済オンライン

 

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