ここから本文です

食品ロスの大胆削減に「天気予報」が効く理由

5月20日(月)5時40分配信 東洋経済オンライン

例年、土用の丑の日に需要が高まるうなぎだが、近年は大量廃棄が問題となっている(編集部撮影)
拡大写真
例年、土用の丑の日に需要が高まるうなぎだが、近年は大量廃棄が問題となっている(編集部撮影)
 恵方巻きや土用の丑の日のうなぎなど季節のイベントが行われる際に、食品の大量廃棄が注目されるようになってきた。まだ食べられるのに廃棄されている食べ物、いわゆる「食品ロス」は日本では毎年約640万トンに上り、社会問題化している。

 農林水産省によると、食品ロス年間約640万トンのうち一般家庭で発生するものがおよそ半分。残りの企業活動を通じて発生するもののうち(年間約350万トン)、食品メーカーやスーパーなどの小売店で発生するものが6割以上を占めている(下図)。メーカーや小売店ともに、商品を廃棄せざるをえなくなってしまうもっとも大きな原因は、需要に見合わない量の在庫を確保してしまうことだ。
 特に、天候変化により販売動向が大きく変動する季節性商品は、需要を読み間違えればすぐに廃棄につながってしまう。商品の廃棄は単に「もったいない」というだけでなく、食品メーカーやスーパーにとっては利益を押し下げる要因になる、頭の痛い問題だ。

■気象データを活用した需要予測

 この社会問題に対し、民間の気象予測会社・日本気象協会が、気象データを活用して商品の販売予測を行う取り組みを本格化している。気象協会は、一般ユーザー向けにはWebサイトの「tenki.jp」を運営する一方で、鉄道会社や自治体にはより詳細な気象情報の販売や気象予測を基にしたコンサルティング業務を行っている。
 気象協会は今年4月、スーパーやドラッグストアなどの小売店向けに特化した需要予測サービス「売りドキ! 予報」の提供を始めた。同サービスでは、これまでに気象協会が蓄積してきた気温や湿度、降水量などのさまざまなデータと、小売店のPOS情報を収集しているデータ分析会社・True Data社が蓄積したデータを照らし合わせて分析。500を超える商品セグメントごとに売れ行きをスマホやタブレットのアプリで一覧にし、前年対比の増減率を7段階にして通知する。
 月額制で販売する予測のタイプには1日、1週間、1カ月先までのものがあり、予測スパンの長さによって活用方法が異なる。

 1日先の予報は、店内で加工し、売れ残りがそのまま廃棄につながりやすい総菜や精肉売り場の品ぞろえに活用できる。例えば精肉カテゴリーでは、暑い日には焼き肉用の厚切り肉、寒くなればしゃぶしゃぶ用の薄切り肉がどのくらい売れる、といったことが気温との関係でわかっており、精肉カテゴリー全体の加工量を調整することができる。週間や月間の中長期予測であれば、賞味期限が比較的長い商品の仕入れ種類や量を判断するのに役立つ。
 品ぞろえや需要予測は、店舗の売り場担当者の「経験と勘」で行われていることが多い。そのため、その日の天気によってカテゴリーごとの大まかな増減はわかるものの、具体的な量にまで落とし込むのが難しかった。

 最近は一部大手スーパーなどで自社のデータに基づく需要予測システムを導入している企業もあるが、地方の中小スーパーなどでは対応が遅れている。「データや人材の確保ができていない中小の企業を中心に、積極的に開拓していきたい」と、日本気象協会で需要予測プロジェクトを統括する本間基寛氏は話す。
 日本気象協会は「体感気温」をベースにした新しい指標も開発している。季節の始まりや終わり、前日との変化の度合いによって、同じ25度でも人の感じ方は異なるからだ。「暑い」「寒い」といったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)でのつぶやきの量と実際の気温の関係も、指標として組み込んでいる。

■一足早く導入した食品メーカー

 今回は小売店に特化して始めたサービスだが、主に食品メーカーに向けた需要予測は一足先の2017年から展開していた。メーカーの場合は、自社の販売データと気象データを掛け合わせて需要の予測を行ってきた。
 例えば、調味料メーカーのミツカンは2017年から導入。気温の変化によって売れ行きが大きく変わる「鍋つゆ」や「冷やし中華つゆ」といった商品の生産管理や在庫調整に利用してきた。「1カ月先までの需要予測を任せている商品では、最大90%在庫を減らせた。欠品ロスも削減できている」(ミツカン)。

 コーヒー大手のネスレ日本は、ペットボトルコーヒーの輸送をトラックから船舶へ切り替える際に、日本気象協会のサービスを使用してきた。輸送に時間がかかる船舶では中長期での需要予測が必要になるからだ。菓子大手の森永製菓も、定番のアイスクリーム「チョコモナカジャンボ」の需要予測に活用。在庫を削減し、製造してから店頭に並ぶまでの時間を短縮することで食感を保つようにしている。
 こうした食品メーカーには全国的な需要予測で対応できる一方で、小売店向けは「地域や店舗による差が大きく、個々の店舗には対応できていない」(本間氏)という。

 さまざまな場所やタイミングで生じる食品ロスに根本的な解決策はなく、地道な取り組みの積み重ねが重要になってくる。そういった意味で、日本気象協会のサービスが小売業界にどこまで浸透するか、行方を注視したい。
石阪 友貴 :東洋経済 記者

最終更新:5月20日(月)5時40分

東洋経済オンライン

 

【あわせて読みたい】

【PR】Yahoo!ファイナンスからのお知らせ

Yahoo!ファイナンスの特集

平均年収ランキング

ヘッドライン