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「ミンティア」を支持する人が急速に増えた事情

5月19日(日)16時00分配信 東洋経済オンライン

小売り店頭に陳列されたタブレット菓子(筆者撮影)
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小売り店頭に陳列されたタブレット菓子(筆者撮影)
 コンビニやスーパーなど小売店の店頭で、タブレット菓子(錠菓)の棚が拡大しているのにお気づきだろうか?  味は大きく分けて“ミント系”と“フルーツ系”がある。

 「フリスク」(1992年日本発売)や「ミンティア」(1996年発売)といったロングセラーブランドが中心だが、最近は商品アイテムも増えた。例えばガムメーカーのロッテは、「キシリトール」「ブラックブラック」などの看板ブランドで参入している。

 錠菓全体の市場規模も300億円を超え、2018年には前年比10%増となった(※)。
(※)インテージ「食品 SRI/キャンディ(錠菓市場)/全国(沖縄を除く)/全業態/2018.1~2018.12の調査データ
 老舗業界紙「食品新聞」で、菓子全般を取材する北阪真二氏はこう解説する。

 「消費者の好みが、ガムから錠菓にシフトし、キャンディからも流れてきました。最近は錠菓の中でも、ビッグタブレットと呼ぶ大粒タイプが好調で、『ミンティア』も『フリスク』もレギュラータイプ(小粒)よりも大粒タイプが市場を底上げしています」
 なぜ、ここまで錠菓が人気なのか。後発ながら圧倒的なシェアを持つ「ミンティア」(アサヒグループ食品)に話を聞き、消費者心理の視点で考えてみた。

■売り上げは10年で2倍の219億円

 「2018年は『ミンティア』全体で219億円となり、この10年で倍増しました。過去最高売り上げも18年連続で更新中です。好調な理由はいくつかありますが、消費者の意識は『口内清涼』よりも『エチケット志向の高まり』だと思い、そこにも訴求してきました」
 アサヒグループ食品で「ミンティア」のマーケティングを担当する大津幸義氏(食品事業本部食品マーケティング部担当副部長)は、こう説明して続ける。

 「例えば20代や30代男性の場合、スキンケアでは制汗スプレーを愛用しますし、ヘアケアではワックスを好みます。オーラルケアではマウスウォッシュ新商品も人気で、ハミガキ男子も増えました。これらを持ち歩く人も目立つ。同じ携帯性商品である『ミンティア』も、菓子だけではなく、消費者のエチケット志向も意識しているのです」
 口に入れる清涼菓子としては「錠菓」と「ガム」は似ているが、ガム市場は右肩下がりが続き、前述の調査データでは、2014年の約700億円から2018年には約500億円に下落した。ガム離れは「かむのが面倒」「都心の駅や公園ではゴミ箱も減り、かんだ後に捨てる場所がない」などが指摘される。一方で、「ロッテの『イート・ミント』はかんで溶ける商品として、ガムでもタブレットでもない――を掲げています」(北阪氏)。
■「のど飴」を意識した商品

 ロッテが訴求する「ガムでもタブレットでもない」のフレーズを、筆者は別の視点で興味を持った。実は一般消費者を取材すると、近年は「業際(ぎょうさい:異なる業界にまたがること)を気にしない消費」が目立つからだ。

 もちろん人によるが、例えば「プチぜいたくで楽しむスイーツ」を買う場合は、デパ地下(デパートの地下食品階)も、ホテルの1階(食品売り場)も、ネットのお取り寄せも含めて検討する。コンビニの高額菓子を選択肢に入れる人もいる。そうした消費者意識に対して、「口に入れる菓子」でのメーカー訴求が似てきたと感じたのだ。
 「ミンティアの商品ラインナップは、瞬間リフレッシュを掲げた『レギュラー』(50粒・7g)、長持ちリフレッシュを掲げた『ブリーズ』(30粒・22g)、のどスッキリを掲げた『エクスケア』(25粒・25g)の3シリーズです。エクスケアは、のど飴を意識した商品で、仕事中のリフレッシュ意識の変化にも注目しました」(大津氏)

 「リフレッシュ意識の変化」とはどういうことか。

 「オフィスでの働き方を調べると、短時間の『メリハリのあるリフレッシュ』と、作業・仕事をしながら席を立たない『ながらリフレッシュ』に分かれているのを感じます。そこでミンティアは、前者を小粒、後者は大粒の商品ラインナップで訴求しています」(同)
 「働き方改革」への対応で、残業を規制する職場も増えた。一方、定時で仕事を終えるために作業に没頭し、昼食とトイレ以外は数分の休憩すら取らない人も目立つ。そうした人の気分転換となるように訴求しているという。

■会議や学校でも「許される存在」

 「携帯性があり、手軽な錠菓は、例えば社内会議の途中で口に入れても、失礼にならない一面もあります」

 食品新聞・北阪氏のこうした指摘は興味深い。実は、アサヒグループ食品・大津氏も次のような話をしていた。
 「10代の学生でもミンティアを支持してくれる人はいます。味の選び方は、好みやシーンに応じて変わるようです。友達と楽しみたいときはフルーツ系やカルピス味。テスト前や受験勉強では強刺激のドライハードを眠気覚ましとして選ぶ人も。実はミンティアは、『高校に持っていっても怒られないお菓子』と聞くこともあります」

 社風や校風にもよるだろうが、会議の最中や高校の教室でも「許される存在」というのは興味深い。確かに、飴やガムよりも錠菓は“抵抗感が低い”一面はありそうだ。
 「かつては売り場のレジ前・ゴールデンゾーンは、上から『ガム』『錠菓』『キャンディ』の順でした。それが『錠菓』『ガム』『キャンディ』となり、約5年前から『グミ』『錠菓』『ガム』の順。特にフックがけのグミが存在感を増しています」(大津氏)

 この傾向が目立つのが、セブン-イレブンを筆頭にしたコンビニだ。実際に売り場に行くと「果汁グミ」(明治)や「フェットチーネグミ」(ブルボン)などの小袋(約50g)が幅をきかせる。後者はイメージキャラクターに「乃木坂46」を起用した訴求も行う。
 グミの原材料は、水あめ、砂糖、果汁、ゼラチンなどで一定の腹持ちもする。消費者の「小腹需要」としては、錠菓の大粒よりも優位にあるようだ。「果汁グミは時々買って保管しています」(診療所勤務の女性)という声も聞いた。

 「口に入れる菓子」(業界のくくりでは「ガム・キャンディ類」)の中では「グミ」と「錠菓」は成長商材で、約300億円の市場規模も拮抗するが、消費者像は少し異なる。

 「錠菓全体のコアユーザーは40代。ミンティアの場合も、レギュラー・ブリーズともに40代が中心。男女比はほぼ半数、金額ベースでは6:4となっています」(大津氏)
■「どんどん変化する消費者」との向き合い方

 マーケティングの世界では「消費者はどんどん変化する」といわれ、各現場はそれを念頭に置いた商品開発も行う。現在は好調の「錠菓」だが、“ガム離れ”のような現象が起きないとはいえない。「ミンティア」は消費者とどう向き合っているのか。

 「毎年、約2000人の『嗜好調査』を行います。首都圏各地の街頭で声をかけた10代から60代の男性・女性に、パッケージを提示しないで味の好みや感想を聞くものです」(大津氏)
 例えば、小粒の調査結果は、味感では「刺激・辛さが強い」、ベネフィットは「眠気を覚ませる」、食シーンでは「眠いとき」が首位だった。逆に大粒は、(味感)「フルーツの味がおいしい」、(ベネフィット)「癒やされた気持ちになる」、(食シーン)「ドライブ・運転中」だった。これらも新発売・リニューアル発売時の味覚の参考にする。

 ちなみに元気なお年寄りも増えているが、70代を調査対象としないのは、「70代以上はガム世代で、錠菓との親和性が薄い」のだという。
 売り上げ的には絶好調の「ミンティア」だが、大津氏は警戒の手を緩めない。

 「タブレット菓子も万全ではなく、炭酸水やお茶、機能性チョコなど、仕事中に口に入れるあらゆる食品に取って代わられる可能性もあります。常にアンテナを張り巡らせながら対応していきます」

 前述した、仕事中の「ながらリフレッシュ」だけでもライバルは多い。例えばゼリー飲料やエナジードリンクもあるが、錠菓やグミには価格優位性がある。手に取ってもらえるパッケージデザイン、携帯性も含めた戦いが繰り広げられている。
高井 尚之 :経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

最終更新:5月19日(日)16時00分

東洋経済オンライン

 

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