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日本とあまりに違う!米国の若者の「政治」意識

5月6日(月)5時30分配信 東洋経済オンライン

アメリカのリベラル層には嫌われているトランプ大統領。とくに未来を担うミレニアル世代の若者たちが、アメリカの政治をどう思っているか聞いてみた(写真:ロイター=共同)  
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アメリカのリベラル層には嫌われているトランプ大統領。とくに未来を担うミレニアル世代の若者たちが、アメリカの政治をどう思っているか聞いてみた(写真:ロイター=共同)  
今から約1年半後の2020年11月3日に行われるアメリカ合衆国大統領選挙を控え、アメリカでは共和党、民主党それぞれの立候補者が続々と名乗りを挙げ始めている。そして、とくにミレニアル世代と呼ばれる若者たちの間では、それに伴って政治意識が急激に高まっている。
そこで今回、コロンビア大学の学生を中心としたミレニアル世代の若者たちと座談会を行い、アメリカの政治および若者の変わりゆく価値観や実態について議論を行った。
彼らはアメリカでトップクラスの大学の学生を中心としたメンバーであり、かつ、ニューヨークという超リベラルな土地柄に住んでいる。つまり、おそらく彼らがアメリカの未来の知識階層になり、影響力を持っていくだろう。未来のアメリカの知識層は、今のアメリカをどう見ているのだろうか。

■トランプ大統領をどう思っている? 

 原田:今、アメリカでは、大統領選の各党の立候補者がどんどん出てきている状況ですが、まずはトランプ大統領について若者の皆さんに聞いてみましょう。皆、彼についてはどう思いますか? 
 テイラー:大っ嫌い! (笑)

ヨータム:トランプの政策には賛成できません。でも、だからといってサンダースなどの非常に左の政治家にも100%賛成できません。

 通訳:トランプ大統領を「45代」と呼ぶ若者も多いと聞いたことがあるけれど? 

 一同:「45代」は私たちの周りではあまり使っている人はいません。

 アンナ:彼に「大統領」という呼び名をつけると彼を大統領だと認めていることになるから、単に呼び捨てにする学生が多いんです。
 原田:僕はこの数年、ヨーロッパ各国を周り、たくさんの若者たちにインタビューしてきたけど、トランプ大統領を嫌いと言う若者たちが世界中の、とくに大都市部で本当に多くなっていると感じています。トランプ大統領のせいで、世界の若者たちの間でアメリカという国へのリスペクトが減ってきているという意見もたくさん聞きました。

 日本では「トランプ大統領と安倍首相が仲良しだから、アメリカと日本の仲が良くていいじゃないか」「トランプ政権になってからアメリカは景気がよくなっているのだからいいじゃないか」「トランプ大統領はキャラとして面白いじゃないか」という声がある一方、「彼は人間として尊敬できない」という否定的な声もあり、意見が割れている気がします。
 でも、全体的には日米関係がいいせいか、肯定的に捉えている人が多いかもなあ。皆さんはトランプ大統領のどこがいちばん嫌いなの? 

 テイラー:あまりにありすぎて答えるのが難しいわ(苦笑)。女性の権利侵害、反ユダヤ主義、ナチスを連想させるファシズム、白人至上主義などなど。私は白人だけどユダヤ系で、主人は移民。兄はゲイです。だから大変よ。

 原田:あらら、ご家族皆が攻撃されている感じなんですね……。でも、彼の女性への暴言はテレビで見たことがあるけど、女性の権利侵害って例えばどんなこと? 
 テイラー:女性の中絶の権利をはく奪しようとしている。オバマケアから避妊関連の保障をなくしてしまおうとしているし。本当にひどい。

 アンナ:私は特定の人種を差別する人を支持することはできません。

■ミレニアル世代は世代的に“優しい世代”

 原田:君たちミレニアル世代は、移民も多いし、移民の子どもも多いし、人種のミックスがかなり進んできている。だから、古い白人至上主義は受け入れられない人が、とくにニューヨークなんかの大都市部では増えているんだろうね。
 それと世界中、ミレニアル世代は世代的に“優しい世代”になっていると僕は感じています。例えば、人権問題や環境問題に関心が高い若者が増えている。日本でも同じように若者たちが優しくなってきていると思います。

 ヨータム:トランプはまるでピエロのように、本当に愚かな人にしか見えない。僕はイスラエル出身で、彼は親イスラエルではあるんだけど、彼の多くの言動にはまったく賛同できない。

 原田:ニューヨークにはリベラル派が多いとは聞いていたけど、ニューヨークの若者たちのアンチトランプ意識は思った以上に強烈なんですね。
 アンナ:トランプの登場によって、アメリカの若者たちの政治意識が高まってきていると言われています。アメリカの若者は投票に行かない、政治より自分のことが大切だと言われていたけど、前回の予備選は結構な数の若者が投票に行きました。

 原田:アメリカのミレニアル世代の間で数年前にヒットした「ガールズ」というドラマで、皆と同じコロンビア大学出身のある女性が、付き合いかけた彼氏が、実は共和党支持者だとわかって、嫌で振ってしまうシーンが出てくるんだけど……。
 一同:(笑い、うなずく)

 原田:急に今、この部屋にトランプ大統領の支持者が入って来たら、何て言う? 

 テイラー:トランプ好きだからと言って、その人を差別することはしないけど、どうして支持するのか理由は徹底的に聞くわ。理由によっては攻撃するかもしれない(笑)。

 アラン:ニューヨークは本当にアンチトランプが多い。でも、これがアメリカのすべてではないです。僕の田舎のペンシルベニアでは、地元の友達はトランプ好きもかなり多いです。いずれにせよ、皆、トランプ登場以降、SNS上で激しく議論する現象があって、本当に面白い。
 原田:アメリカ版マイルドヤンキーの若者は、トランプ大統領支持者がそれなりに多いんだね。ちなみに、君の地元の友達はトランプ大統領のどこを支持しているの? 

 アラン:彼らは“シングルイシューボーター”の人が多いと思います。つまり、トランプのすべてを支持しているわけではなく、トランプの言う妊娠中絶など、何か1つの政策や考えを支持していることが多い。

 また、深刻な格差の増大も含め、アメリカ社会が昔に比べていろいろと苦しくなってきているのは事実なので、トランプのような超アウトサイダーが何かこの閉塞感を大きくがらっと変えてくれるんじゃないかと、期待しているタイプの若者もいます。
 それから、彼のはっきりモノを言うところが気持ちいいと言っている若者もいます。

■アメリカの若者の政治意識が高まっている背景

 キャリス:私は共和党支持者の多いミシシッピ出身です。地元の友達が皆トランプが好きなわけではないけど、かと言ってヒラリーにも投票しませんでした。

 「ミドル・アメリカン」(東海岸や西海岸やその他の大都市部に住んでいない人々)の中には、家族やある業界の保護や宗教に価値を置く人が多くいますが、そうした人々が大都市部やリベラルな地域の人たちから疎外感を感じていたことが、トランプ登場の原因になったと思います。
 エレン:私はアルメニア出身の移民で、2002年にアメリカに来ました。もともとは人権団体で働いていました。2013年にはドイツに住んでいたこともあります。

 ドイツ時代、アメリカの前にハンガリー、ドイツ、ポーランドで右と左が分裂していたのを見てきたので、トランプもアメリカをいずれ分裂させることになるだろうと思っています。また、トランプのやっていることは完全に恐怖政治です。

 以前、保守的な土地柄のアラバマに住んでいたときは、ほとんどの人が共和党支持者でした。NYに来てみると99%がリベラル派の人たちばかりです。コロンビア大学の学生のほとんどもリベラル。本当にアメリカ全土をひとくくりにするのは難しいと思います。
 原田:トランプ大統領が、ニューヨークや主に大都市部の若者たちに本当に好かれていないことがよく感じとれました(笑)。一方で、地方も含め、広大なアメリカをひとくくりにできない難しさもリアルな実感としてわかりました。

 超リベラルなニューヨークに住み、アンチトランプである君たちには、本当に大変な時代ですね。でも、「ピンチはチャンス」じゃないけど、アメリカの若者の政治意識が高まっていることはすばらしいことだよね。
 日本はトランプ大統領ほど強烈な政治家もいないし、一見アメリカほど厳しい社会問題も少なくて平和に感じられるから、若者の政治意識が高まらず、投票率も上がらないのかもしれません。日本にもアメリカの大都市部の若者におけるトランプ大統領のような「逆縁の菩薩」が登場してくれたほうが、若者の政治意識という観点ではよいのかもしれないね。

 話を変えます。日本でも今、アメリカの「AOC現象」がようやくちょこちょこメディアで取り上げられるようになってきています。
 まだ、彼女についてあまり知らない日本の読者のために改めて言っておくと、AOCとはアメリカの政治家のアレクサンドリア・オカシオ・コルテスのことです。ニューヨーク市出身の父親とプエルトリコ出身の母親を両親に持つ、史上最年少の29歳で下院議員となったここにいる皆さんと同じミレニアル世代です。

 政治家になる前には、高すぎるアメリカの大学の学費ローンを返済するためにウェイトレスやバーテンダーをしていたこともあり、大変庶民目線を持っていると言われ、彼女の政治手法は「Instagram Politics(インスタグラム政治)」と言われ、SNSでの、ときに問題発言も含めた強い発信力で多くの人を魅了しています。
 また、サンダース議員同様、「民主的社会主義者(democratic socialist)」を名乗り、「1000万ドル以上の年収のある層への所得税率を70%に引き上げる」、20年かけて化石エネルギーから再生可能エネルギーへと完全転換する「グリーン・ニューディール(Green New Deal: GND)」など壮大な理想を掲げています。

 皆さんと同じ世代の若い政治家ですが、彼女は皆さんの間で実際に人気がありますか?  まだ29歳で、アメリカは35歳まで大統領に立候補できないから、彼女は次回の大統領戦には出馬できないのだけど。
■人気はあるけれど政治的ハードルは高いのでは? 

 一同:とっても人気があると思います。若者の気持ちを代弁してくれているし、自分たち世代が向かいたいと思う方向に力強く進んでいると思います。格差問題についても環境問題についても、本当に積極的に発言・行動しています。

 キャリス:彼女が、登りつめるための政治的ハードルはかなり高いと思います。SNSでの発信力はすごいし、とても人気はあるけれど、まだ政治経験がかなり少ないので、今、幅広いトピックについていろいろと質問を受けてボロが出ている。このままのような答えを続けていると共和党に揚げ足を取られ続けて、つぶされてしまうのではないかと思います。
 アラン:全体的に民主党は、ここ何年かの間に左から右にじりじり寄ってきていたと思います。

 民主党内でここ数年、医療問題や保険問題などがあまり語られなくなっていたけど、彼女は無料で医療を受けられるようにしようと問題提起しました。これはとても意味があることだと思います。

 もう1つは彼女の選挙資金集めのやり方。今までは大企業が政治家や選挙に多額の出資をしていたけど、彼女の場合はたくさんの個人が出資しています。
 原田:選挙資金の集め方については、オバマ前大統領の手法を参考にしているんだろうね。彼女はオバマ大統領の選挙運動にもボランティアで参加していた経験があるし。

 話をまとめると、AOCについての若者たちの期待は大きい。同世代である分、ひょっとするとオバマ前大統領やサンダース議員よりも大きくなる可能性もある。

 でも、彼女はあまりに話題になりすぎている分、既存の議員や共和党議員に標的にされて、重箱の隅も含めていろいろと突かれ始めているから、彼女が35歳になるまで持つかどうかが焦点ですね。
 もちろん年齢が悪いわけではないけれど、国全体が高齢化し、定年制の議論はどこ吹く風、高齢政治家ばかりが目立っている日本からすると、彼女の登場はとてもうらやましい、というのが本音のところです。

 日本の人気政治家と言えば、小泉進次郎議員に集中しているけど、AOCと違ってもう中年だし、地盤のある3世議員です。あ、彼も関東学院大学を出た後に、コロンビア大学の大学院に通ったので、皆さんの先輩ですね。それ自体が悪いことでは決してないけれど、日本にも彼よりももっと若く、そして地盤がないところからはい上がってくる若者世代の政治家が出て、彼以外の選択肢もでてくると、日本の若者たちの政治意識も急激に高まってくるかもしれませんね。
■若者世代が求めているのは衝撃的で新しいスター

 原田:ところで、前回の大統領戦でヒラリー候補と民主党の候補の座をめぐって激しいバトルを繰り広げ、主に大都市部を中心とした若者に支持されたサンダース議員についてはどう思いますか?  彼は今回も立候補を表明したけれど、アンチトランプのミレニアル世代は今回こそ彼を大統領にしたいと願っているんだろうか? 

 テイラー:彼はもう大統領選に出ないほうがいいです。彼は、すでに一度過去に立候補していて、選挙に負けています。今こそ、若く新しい候補者が立ち上がるべきです。サンダースは前回の選挙で民主党内の分裂を引き起こし、民主党が選挙を戦ううえでダメージを与えました。
 アラン:前回、彼が出たことで、民主党支持者がヒラリー派とサンダース派に割れてしまったことが、トランプを生み出す大きな原因になってしまったと思います。今回こそ民主党は、民主党支持者も含め、絶対にトランプに勝てる強い候補者を1本に絞らないと。

 エレン:サンダースの考えや政策自体は、ミレニアル世代には大変フィットすると思います。だから、彼は選挙に出るんじゃなくて、政策アドバイザーに就いてほしい。

 原田:サンダースの思想は好きだけど、彼の選挙にはもう期待していない人が多いんだね。まあ、前回失敗もしているし、すでに77歳のおじいちゃんだから、君らミレニアル世代とはあまりに年齢もかけ離れてもいるしね。
 だから、トランプ大統領を思いっきり引き離せるような衝撃的で新しいスターを君たちは求めているんだね。今のところ、そこまでの候補者が、まだ大統領選に出てきていないと言われているのが、かわいそうなところだけど……。

 (次回に続く)

【座談会参加者プロフィール】
ヨータム:コロンビア大学学生。政治学専攻。イスラエル出身。軍隊に6年いた。趣味はイラストレーション。校内雑誌に掲載している。音楽が好き。将来はブランドメッセージのある起業をしたい。
アンナ:コロンビア大学4年生。趣味は旅行とネットフリックス。今後、韓国語を勉強したいと思っている。
アラン:コロンビア大学哲学専攻の4年生。ディベートソサエティに入っていて、日々、たくさんディベートする。ペンシルベニア出身。
アダム:コロンビア大学4年生、政治学専攻。週に20時間は大学の学生リーダーをしている。予算は1million(日本円で約1億1000万円)を運用していて会計担当。将来は政治家になりたい。学生リーダーをしているのは趣味と実益を兼ねている。リーダーになるために5000~6000の学生寮の部屋を叩いて回って、自分への投票を呼びかけたことがある。少し前に健康の問題からビーガンになったばかり。でも、本当はハンバーガーが大好き。
イラーナ:政治経済専攻。大学の寮で6人で住んでいる。アイビーリーグのフェンシングのチャンピオン。
テイラー:ペンシルベニア大学出身。趣味はフィクションの小説を書くこと。最近、5万語の小説を1カ月で仕上げた。大学機関の事務局幹部育成プログラムを卒業している。いずれ大学の受験課の長になりたい。旦那さんはドイツ人のデータサイエンティストでペンシルベニア大で知り合った。
キャリス:コロンビア大学で歴史専攻の4年生。趣味は映画製作、演技。
エレン:コーネル大学を卒業してコロンビア大学ビジネススクールの研究所で働いている。歴史と政治学を専攻していた。趣味はランニングと旅行。
(協力)荻野僚子:コロンビア大学ビジネススクール日本経済経営研究所
(調査設定・通訳)シェリーめぐみ:1991年からニューヨーク在住。ジャーナリスト、ラジオ・テレビディレクターとしてアメリカのエンタメ、文化、経済、政治まで幅広く日本に情報発信。オフィシャルブログ 。連載に日刊ゲンダイ連載「ニューヨークからお届けします」。JFN On The Planet シェリーめぐみfrom NY(月~木:全国36局ネット) など。
原田 曜平 :サイバーエージェント次世代生活研究所・所長

最終更新:5月10日(金)17時34分

東洋経済オンライン

 

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