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いまさら聞けない「物件管理」の基礎知識《楽待新聞》

4月26日(金)20時00分配信 不動産投資の楽待

(写真:不動産投資の楽待)
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(写真:不動産投資の楽待)
不動産投資で成功するためには、「良い物件」を「良い条件」で購入することはもちろんだが、購入後の「良い管理」も重要になる。自主管理をするか、管理委託をするか。管理会社はどのように選び、どの部分まで管理を任せるか。オーナーの選択によって、物件の収益性や建物としての価値は大きく変わってくる。

今回は、物件管理の基礎や管理会社の成り立ち、管理業界をめぐる昨今の問題点などについて紐解いていきたい。

■オーナーの9割「管理会社に委託」

現在「不動産管理業」を行う不動産会社はどれくらいあるのだろうか。国土交通省が2015年に発表した「賃貸住宅管理業者数の推計」によると、全国の賃貸住宅管理会社数は3万2000社を超える。

国土交通省が2010年に発表した統計を見ると、全ての管理業務を委託しているオーナーは約6割。さらに、一部委託まで含めると約9割に達し、大半のオーナーが管理会社を活用して賃貸経営をしているようだ。

管理会社はさまざまな業態に分類できる。都内の管理会社に約10年勤めていた楽待コラムニストのメッシさん監修のもと、それぞれの管理会社の特徴や依頼した場合のメリット・デメリットをまとめてみた。経験に基づく一例であるため、すべての会社に該当しない部分もあるが、知識として参考にしてほしい。

【賃貸仲介系管理会社】

本業は物件の賃貸仲介業務で、管理業務も行っている会社。客付力を見込んだオーナーから管理を依頼され、管理業務を始めるケースがある。

・目的は賃貸の媒介契約獲得のため、管理業務は低コストで依頼できることがある
・自社管理物件よりもAD(広告料)が多い物件が優先される傾向がある

「『自社元付物件(オーナーが自社に賃貸仲介を依頼)』『他社元付物件(オーナーが他社に賃貸仲介を依頼)』『自社が管理している物件』の賃貸付けを行います。本業はあくまで賃貸仲介業のため、契約時の報酬が高い物件を優先して案内する傾向があります。また、管理業務の知識やノウハウが乏しい場合も少なくありません」(メッシさん)

【売買仲介系管理会社】

本業は物件の売買仲介業務で、管理業務も行っている会社。不動産を仲介した際、管理も併せて依頼されて管理業務を始めるケースがある。

・規模の拡大を希望する場合、売り物件情報を優先的に案内してもらえる可能性がある
・売買仲介しか経験していない社員の場合、賃貸付けや管理業務の知識が乏しい可能性が高い

「入居者と接する機会がある賃貸仲介系管理会社と比較すると、さらに管理業務のレベルが低い場合もあり得ます。また、売買仲介を行う会社がグループ会社として管理会社を作った場合、グループ会社内で日が当たるのは売買仲介部門のことが多いため、管理部門の社員はモチベーションが低下していることがあります」(メッシさん)

【建築メーカー系管理会社】

自社アパート等の販売と併せて管理業務を行っている会社。アパート建築と一緒に管理業務をセットで受注をすることが多い。

・社員数も多く組織体系がしっかりしているため、一定レベルのサポートが期待できる
・画一的なサービス提供のため、管理業務や契約内容については融通が利かないこともある

「アパート建築と管理業務をセットで受注できるため、管理戸数が多いという特徴があります。資本力もあるため、CMなどを活用し、集客できるのも強みです。ただし、働いている社員の管理業務に対する知識、モチベーションの高さはあまり期待できません」(メッシさん)

【管理専業の管理会社】

本業が管理業務で、賃貸仲介や売買仲介を行っていない会社。

・管理物件の空室をなくすため、賃貸仲介を行う不動産会社に対して空室情報を広く公開して集客してくれる
・入居希望者を集客する店舗を持っていないため、自社で直接賃貸付けはできない

「4種類の管理会社の中で、最も少数派の管理会社だと思います。入居者を集客する店舗がないことは管理契約を新規獲得する分にも不利になりやすく、事業を拡大しようか悩んでいる会社も多々あります。一方、管理業務が専業のため知識やノウハウは期待できます」(メッシさん)

管理会社は業務の内容によって、以下のように分類されることもある。

・AM(資産管理):不動産の購入から運用、売却の代行など
・PM(賃貸経営管理):建物の管理・保守、賃貸付け、家賃回収など
・BM(建物管理):日常清掃や設備の点検、植栽管理、警備など
・FM(施設管理):保有不動産の有効活用、設備更新の提案など

管理会社によっては得手不得手があり、委託する場合は管理会社の特性を理解する必要がある。自分の資産の管理を依頼する大事な管理会社がどんな会社なのか、理解を深めた上で管理委託をしたほうがいいだろう。

■「管理会社」ができるまで

今では当たり前の存在になった管理会社だが、そもそも「管理会社」の起源とは何だろうか。

蒲池紀生氏が著した『不動産業の歴史入門(住宅新報社)』によると、江戸時代の「家守(やもり)」がそれに当たるとされている。

当時の庶民の住まいは、複数の世帯が連なる「長屋」が一般的。家守は長屋を所有している家主に従属し、家賃の回収や修繕の手配など、現在の管理業と同じような業務を行うことで家主から給金を得ていた。そのほかにも、新しい入居者からいわゆる「ご祝儀」をもらう、入居者の糞尿を農家に肥料として売却して収入を得るなどして、多くの戸数を抱えている家守にはかなりの収入があったと考えられている。住んでいる場所から遠方の長屋を持つ家主にとって、家守は重要な存在だったのだろう。

明治時代中期にはいると、「業」として不動産の管理を行う会社が出現してくる。ちなみに、日本で最古の管理会社と考えられているのは、明治26年創業の「合資会社兵神館(現:帝国信栄株式会社)」だ。兵神館が発行した、昭和18年版「営業案内」の創業事情に以下のような記載が確認されている。

「当社は明治26年の創業でありまして、わが邦土地家屋の管理業として最も古く、(中略)実に本邦土地家屋管理業の元祖を謂われて居るものであります」

帝国信栄株式会社に会社の成り立ちを質問したところ、「長屋を多く抱えた家主から『集金業務』を請け負ったことが我が社の始まりです」。そして段々と、その後「退去時の対応」「修繕の対応」など、業務の幅を広げていくこととなった。昭和20年ごろの管理戸数は家屋約9万戸、土地1万件以上。管理料としてオーナーから「地代の4%」「家賃の5%」をもらっていたそうだ。この時から、個人の生業から「事業」へと変わっていく動きがみられていった。

■「無償」から「有償」へ

「管理業務は当初、仲介をお願いするついでに無償で行われていたことが多かった」と述べるのは、住宅や不動産を研究テーマに掲げる麗澤大学特任教授の太田秀也氏。

建設省(現:国土交通省)出身で、賃貸住宅管理の行政経験のある太田氏は「戦後の日本において、悪徳な不動産会社によって売買や仲介の現場では空売り(架空の物件を販売すること)などのトラブルが目立っていました。それに対処するため、売買や仲介においては宅地建物取引業法が制定され、規制がされることとなったのです」と説明。「しかし、管理業においては形態も確立されておらず、表面化するほどのトラブルがみられなかったこともあり、規制の対象とされなかったのではないかと思われます」

しかし、ついでといえども業務は決して楽なものではなく、「対価に見合った報酬が欲しい」と考える管理会社が出始める。「そこで管理業の有償化をけん引したとされるのが、福岡県にある『三好不動産』の三好勉氏と言われています」(太田氏)

■「管理費」が定着するまで

三好氏は福岡宅建協会の会長を務めたほか、全国賃貸管理業協会(全管協)を設立して会長に就任するなど、賃貸管理業界の適正化に力を注いだ人物である。三好氏が1995年に出版した『三好勉の不動産賃貸ビジネスー賃貸管理部門の拡充で安定経営(にじゅういち出版)』には、このような記載がある。

「業者の健全経営のためには、タダ働きではなく、有料化をしてきちっとしたサービスを提供しなければならない。そう唱えて、宅建業協会で管理報酬額表を作り、全業者の店頭に貼らせた。家主さんにも宅建業協会名で管理料に関する文書を郵送した」

この行為に対して公正取引委員会から注意を受けたものの、業界内の意識改革の契機になったと考えられる。前出の太田氏も「明確にわからないが、管理を有償化するという考えが多くの管理会社に根付いたきっかけになったはず」とみている。

管理費が「月額賃料の5%」が相場になった経緯については明確な記載がなかったものの、国土交通省建設産業局・不動産業課の石原寛之さんは「管理費として得られる利益を算出し、『月額賃料5%』が採算がとれる一つのボーダーラインだったのでは」と推測する。

管理会社の主な利益となるのは毎月の管理費である。管理会社が利益を出すためにはスケールメリット、つまり管理戸数を拡大していることが必要だ。そのため、管理戸数を獲得するために、管理会社は「管理の新規獲得」「他管理会社から管理の引き抜き」を行うことになる。

ただし、もちろん管理費だけでは経営がままならないことも。そのため、以下のように管理費以外にもさまざまなタイミングで利益を取るようになった。

・入居決定時の仲介手数料
・賃貸契約の更新手数料
・工事による利益(工事費用に自社の利益をのせる)
・保険会社や家賃保証会社のマージン収入

新規の管理契約を獲得するため、中には自社管理物件の「入居率」を高く見せようとする会社も存在する。国として統一的な算出方法が決まっていないこともあり、ある大手管理会社社員は「1カ月のうち1日でも入居していたら入居とみなして計算している」と明かす。また、大手サブリース会社などでは{1-(空室物件の借上家賃支払額/家賃総額)}のように、戸数ベースではなく家賃ベースの入居率を表に出している場合もある。

■「良い管理会社」を選ぶには

さまざまな管理会社が存在する中、オーナーが良い管理会社を見極めることは難しい。そこで目安になり得るものが、国土交通省の告示による「賃貸住宅管理業者登録制度」への登録の有無だ。

「賃貸住宅管理業者登録制度」とは、敷金・原状回復などの賃貸住宅管理を巡るトラブルが多数発生している状況の下、賃貸住宅の管理業務の適正化を図るため、国土交通省が2011年12月に創設した制度である。

国土交通省が推計する賃貸住宅管理業者は、全国に約3万2000社存在する。このうち、登録制度に登録しているのは4353社(2019年3月末時点)と1割強に留まる。言い換えれば、9割の管理会社は統制するルールもなく、業務を行える状況にある。

ただ国土交通省によると、民営借家1458万戸のうち、約760万戸を登録業者が管理している。つまり、1割の管理会社が全体の約半分の物件を管理していることになる。制度の認知はこれからという面もあるが、オーナーが管理会社を選ぶ際の1つの尺度にはなりそうだ。

登録する管理業者は、事務所ごとに「賃貸管理業務に6年以上従事している人」または「賃貸不動産経営管理士の資格を保有している人」を配置することが義務づけられ、また、業務処理準則(契約内容の重要事項をオーナーへ説明することなどの一定のルール)を遵守して活動することとなり、違反した場合は国土交通省から指導勧告などを受けることとなる。

登録制度は国土交通省の「告示」であり、管理業者を管理する1つのルールとなったことは間違いない。オーナーは、本制度に登録している業者を国土交通省のHPで確認できる。

国土交通省によると、この1年で登録業者は約300社増え、徐々にだが増加傾向にあるという。最近のサブリースをめぐるトラブルを受けて、登録制度の在り方を見直す方針。国土交通省の石原さんは「制度が広がっていくことで、管理会社をめぐるトラブルの抑止につながれば」と述べた。

■オーナーは「経営者意識」を

このように管理会社を取り巻くルールが検討される中、やはりオーナー側の「経営者意識」も重要になってくる。

「不動産管理業務におけるトラブルについては、民事上で解決を図るしか方法がない場合が多くあります」(石原さん)

石原さんによれば、国土交通省に寄せられたトラブルの事例として、一度も見たことがない物件を購入し、業者に運営を丸投げした結果、「こんなこと聞いていなかった」とトラブルになることが多いという。そんな現状を鑑み「オーナーは経営者として『経営の管理部分を委託する』という考えを持っていただきたいです」と話す。

国土交通省では2018年3月に「賃貸受託標準管理委託契約書」と「サブリース住宅原貸借標準契約書」を改定した。改定後の契約書では、問題が発生しやすい賃料の改定についても、わかりやすく明記がされている。

しかし、現在の運用では「契約書は作成にあたっての標準的なひな形として提示しているものであり、実際に契約書を作成するにあたっては、管理業者任せにするのではなく、オーナー自身もしっかりと契約書の内容を確認することが重要になります」と石原さんは注意を促す。制度の整備は進んでいるが、自分を守るのは自分自身でしかない。

■泣き寝入りする大家たち

管理会社が増えていく一方、管理業務に関するトラブルも表面化してきた。国土交通省が開催した「第3回 賃貸住宅管理業者登録制度に係る検討会」の関連資料にある「賃貸住宅に関する相談件数(国民生活センター)」によると、賃貸住宅に関する相談件数の割合は非常に高い。

トラブルの増加を受け、国土交通省は「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を策定した。これにより、賃借人の原状回復義務とは何かを明示し、賃借人と賃貸人の負担割合の一般的な基準を示した。「トラブルの未然防止と円満な解決に役立てられることを期待します」としたものの、法的拘束力を持つものではなく、まだまだ泣き寝入りしている大家や入居者もいると考えられている。



紹介してきた通り、管理会社は業態によってさまざまな特徴があり、その管理業務は多岐にわたる。不動産投資で成功するためには、世に存在する無数の管理会社の中から、自分に合ったパートナーを選択することが重要になってくる。
不動産投資の楽待 編集部

最終更新:4月26日(金)20時00分

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