ここから本文です

知らないと損、「給与明細」の読み方6ポイント

4月25日(木)5時00分配信 東洋経済オンライン

あなたの手取り金額は、本当に正しいですか?(写真:Hirotama/PIXTA)
拡大写真
あなたの手取り金額は、本当に正しいですか?(写真:Hirotama/PIXTA)
 給与明細の内容を見ずにそのまま机の中にしまったり、捨ててしまったりする人も多いのではないでしょうか。自分の給与が正しく支払われているかを確認するためにも、給与明細に目を通す習慣をつけるといいでしょう。今春の新入社員の方は、初任給の給与明細でぜひ確認してみてください。

 給与明細とは、ひとことで言えば、給与の計算根拠を示した書面です。給与明細を発行しなければならないことは法令上の義務として定められています。
所得税法第231条第1項
居住者に対し国内において給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、その給与等、退職手当等又は公的年金等の金額その他必要な事項を記載した支払明細書を、その支払を受ける者に交付しなければならない。

■給与明細の構造

 給与明細は大きく「勤怠」「支給」「控除」の3つの欄に分かれています。

 「勤怠」の欄は、出勤日数、欠勤日数、有給休暇取得日数、総労働時間数、時間外労働時間数など、給与計算の根拠となる勤務実績の集計結果が示されています。
 「支給」の欄は、基本給、時間外労働手当、通勤手当、住宅手当など、会社から社員に支払われる金額の詳細が示されています。その総額が、いわゆる「額面」です。

 なお、「遅刻早退控除」「欠勤控除」は「控除」と名前が付いていますが、マイナス表記で「支給」の欄に入っていることが一般的です。

 「控除」の欄は、所得税、住民税、雇用保険料、健康保険料、厚生年金保険料といった、租税公課が控除されます。労働組合費、食事代、親睦会費など、会社独自の控除項目がある場合もあります。
 「総支給額」-「総控除額」で計算される金額が、いわゆる「手取り」ということになり、この手取り額が銀行口座に振り込まれます。

 給与明細を確認するといっても、何をどう確認すればよいのでしょうか。最重要となるチェックポイントを6つ紹介します。

 1つ目は、勤怠欄の時間外労働の時間数です。

 近年はサービス残業を許さない世論や、働き方改革法で労働時間の客観的把握が義務付けられたことを受け、サービス残業は減ってきているという実務感覚です。しかし、まだまだ撲滅されたわけではありません。
 給与明細に表示されている時間外労働の時間数が、自分が認識している時間外労働の時間数と合っているのかということや、30時間とか40時間といった一定時間を上限に時間外労働の実績がカットされていないかを確認してください。

 また、業務命令による研修や、全員参加の社内行事などが所定労働時間外に行われた場合は時間外労働となりますので、こういった時間が集計の対象外とされていないかも確認をするようにしてください。
■時間外手当の金額は? 

 2つ目は、支給欄の時間外労働手当の金額です。

 勤怠欄の時間外労働の時間数が正しかったとしても、時間外労働手当の金額が正しいとは限りません。

 時間外手当の計算式は次のとおりです。

 「1時間当たりの賃金単価×割増率×時間外労働を行った時間数」

 計算式の構成要素を詳しく見ていきましょう。

 まず、「1時間当たりの賃金単価」です。時給制の場合は時給そのものですが、月給制の場合は、「月給」を月平均の所定労働時間で割り戻して算出します。なお、ここでいう「月給」には、基本給だけでなく、役職手当や資格手当などの諸手当も含まれることがポイントです。通勤手当のように賃金単価の基礎から除外することができる手当も一部存在しますが、基本給しか賃金単価の基礎に入れていない場合は誤った賃金単価となっている可能性が高いでしょう。
 次に、割増率です。1日8時間1週40時間以内の法定内の時間外労働は100%(割り増しなし)、1日8時間1週40時間を超える法定外の時間外労働は125%です。就業規則で法定を超える割増率が定められている場合は、就業規則の定めが優先されます。正しい割増率で計算がされているかも、電卓をたたいて確認しておきましょう。

 最後に、「時間外労働を行った時間数」です。「勤怠」の欄で正しい時間数が入っていたとしても、実際の計算式においては、社内で内規的に定めた20時間とか30時間といった上限を適用している場合があります。この点も、本当に実際の時間外労働を行った時間数で計算をされているか、電卓をたたいて確認をしておきたいものです。
 なお、固定残業代(みなし残業代)が適用されている場合は、固定残業代は「20時間分」とか「5万円分」とか、固定残業代の上限を決めなければならないのが法律上のルールです。固定残業代の上限が決められていなかったり、決められた上限を超えているのを無視したりして、何時間時間外労働を行っても追加の時間外労働手当が支払われていない場合は、違法な固定残業代制度が運用されているということになります。

 3つ目は、支給欄で、雇用契約書や就業規則に沿った手当がきちんと支払われているかということです。
 給与明細と雇用契約書・就業規則を突き合わせてチェックしている人はあまり多くないかもしれません。

 例えば、雇用契約書では、基本給30万円としか書かれていないのに、会社が勝手に給与明細で基本給25万円・固定残業代5万円とするのは違法です。総額が同じならば問題ないと思ってしまうかもしれませんが、5万円相当までは時間外手当をもらえないということですし、基本給が30万円から25万円になることで1時間当たりの賃金単価も下がりますので、本人は二重の意味での不利益を被っていることになります。
■手当が支払われていないことも

 また、就業規則を見ると、「○○な者には住宅手当を支払う」とか「○○の業務に従事する者には作業手当を支払う」と書かれていて、自分は該当するはずなのに、当該手当が支払われていないという場合もあります。

 意図的に支払っていない場合だけでなく、悪意はなくても給与計算の担当者が見落としてしまう可能性もありますので、就業規則で自社の賃金体系を確認して、自分に支払われるはずの諸手当で漏れているものがないかを、毎月ではなくて構いませんので、定期的に確認するといいでしょう。
 4つ目は、支給欄にマイナスで表示される遅刻早退や欠勤控除の金額です。

 遅刻早退や欠勤があった場合には、賃金から不就労控除されることは当然です。しかし、月給制の場合、1時間当たりや1日当たりの不就労控除額が正しく計算されているかの確認が必要です。

 この点、時間外労働手当と異なり、遅刻早退や欠勤の控除には法定の計算式がありません。各企業が社会通念に反しない範囲で、就業規則などで計算のルールを定めることになります。
 基本給以外にどこまでの範囲の手当が控除単価の基礎に含まれるのかということや、日割りする分母には暦日数が使われるのか、それとも所定労働日数が使われるのか、といったことが就業規則などに記載されているはずですので、控除額の計算が就業規則などの定めどおりの計算式で行われているか、電卓をたたいて確認をしてみてください。

 計算が一致しない場合や、就業規則などを読んでも計算根拠が示されていない場合は、給与計算の担当部署に計算根拠を確認しましょう。
 5つ目は、控除欄の各種保険料および税金です。

 まず、労災保険料ですが、労災保険料は会社が100%保険料を負担する義務がありますので、万一、社員の給与明細から労災保険料が控除をされていたら違法となります。

 雇用保険料は、時間外労働手当や非課税通勤手当を含んだ総支給額に対し、0.3%(建設業など一部の業種では若干異なる率)を乗じた額が控除されます。

 健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料は、複雑なルールに基づいて控除がされますので、よほど給与計算に精通していなければ正しいかどうかの確認はできません。大ざっぱには、総支給額に対し、健康保険料はおおむね5%、厚生年金保険料はおおむね9%、介護保険料は40歳以上の場合におおむね0.9%の数字が控除されていれば正解と考えてよいでしょう。なお、介護保険料は、個別項目ではなく健康保険料の内数として控除されている場合もあります。
■税務署の「月額表」を見て確認する

 所得税については、税務署が「月額表」という書類を出しており、この表を見れば、課税所得と被扶養者数に応じて、何円の所得税を源泉控除すればよいかが示されています。毎月でなくても構いませんので、「こういう仕組みで所得税が控除されているのだ」ということを知るために、1回は給与明細と月額表を突き合わせてみるとよいでしょう。月額表は、税務署で入手するか、国税庁のホームページからもダウンロードできます。
 住民税については、住所のある市区町村から通知があった額をそのまま控除します。毎年5月か6月に会社から、今年の住民税の控除額の一覧表が個別に渡されるはずですので、その一覧表と控除額が合っているかをチェックしてください。会社から一覧表が渡されていない場合は、会社に依頼をして入手をしてください。なお、住民税は前年の所得に対して徴収されますので、新入社員の方は原則として住民税の控除はありません。

 6つ目は、控除欄のそのほかの控除項目です。
 雇用保険料、厚生年金保険料、介護保険料、所得税、住民税は、法定の租税公課ですので、法律上当然に控除をすることができます。

 しかし、労働組合費、食事代、親睦会費など、法定外の控除を勝手に会社が行うことは違法です。控除する場合は、「労使協定」という書面を会社と労働者代表が取り交わしていることが必要です。法定外の控除が行われている場合は、社内に労使協定の根拠があるか確認をしておきましょう。

 なお、労使協定があったとしても、本人の利便や福利厚生に関連した控除ではなく、意に反した強制貯蓄や、就業規則に根拠のない罰金の天引きなどは労働基準法違反となります。
 ここまで給与明細の見方を法的な観点も交えながら説明してきましたが、給与は労働の対価ですので、自分の権利を守るためにも、自分の給与明細が正しいかどうかをチェックできる知識は持っておきたいものです。

 労使関係が円満な会社を前提に考えても、給与計算のルールは複雑ですので、悪意がなくてもエラーが生じてしまうこともあります。ダブルチェックという意味も踏まえ、働く人も給与明細に関心を持ち、重要なポイントについては確認をできる知識を持っておくことが望ましいでしょう。
榊 裕葵 :社会保険労務士、CFP

最終更新:4月25日(木)5時00分

東洋経済オンライン

 

【あわせて読みたい】

【PR】Yahoo!ファイナンスからのお知らせ

平均年収ランキング

ヘッドライン