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話し合って決めるチームがほぼ失敗する理由

4月24日(水)6時30分配信 東洋経済オンライン

私たちが意思決定を間違える理由を探ります(写真:Fast&Slow / PIXTA)
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私たちが意思決定を間違える理由を探ります(写真:Fast&Slow / PIXTA)
■「3人寄れば文殊の知恵」にはならない

 「3人寄れば文殊の知恵」と言いますが、チームをつくることにより、誤った意思決定をしてしまうことがあります。

 アメリカの社会心理学者アーヴィン・ジャニスは1972年に「集団浅慮」という概念を提唱します。

 「集団が選択肢を現実的に評価するよりも満場一致を優先させようとしたときに生じる、素早くかつ安易な思考」と定義されています。

 例えば、1人で道路を渡る際には左右をしっかりと見渡し、信号を確認してから渡るにも関わらず、大勢の仲間と一緒に道路を渡る際には状況を確認せずに先頭の人についていく(集団の一体感を維持する)ことで、事故のリスクが高まってしまうことなどがあげられると思います。
 ジャニスは太平洋戦争のきっかけとなった真珠湾攻撃において、アメリカ軍には集団浅慮があったと分析しています。真珠湾攻撃の直前、ハワイ駐留のアメリカ軍司令官は本国から日本軍のハワイ攻撃の可能性を警告されていました。ところが、アメリカ軍の幕僚たちと合議する中で「そんなことはないだろう」という結論に至ってしまい、最後まで警戒を怠った結果、奇襲を受けてしまったのです。

 このように、チームにおける意思決定について安易に捉えていると、大きな失敗に繋がる可能性があります。逆に、チームにおける意思決定方法について学ぶだけでパフォーマンスを大きく向上させることができるのです。
拙著『THE TEAM 5つの法則』でも詳しく解説していますが、チームの意思決定には3つの方法があります。

 1つ目は「独裁」。チームの中の誰か1人が独断で意思決定するやり方です。

 2つ目は「多数決」。いくつかの選択肢を提示した上で、チーム全員で意思を問い、多数の賛同を得た選択肢に決定するやり方です。

 3つ目は「合議」。チーム全員で話し合って結論を導くやり方です。

 どの意思決定方法が優れていると思いますか? 
 これらの意思決定方法には、どれが必ずしも優れているというわけではありません。それぞれメリット、デメリットが存在します。それぞれの意思決定方法はどれを選ぶかによって、「メンバーの納得感の得られやすさ」と「意思決定にかかる時間の長さ」が変わってきます。

 「独裁」は唯一、意思決定者以外は誰も意思決定に関与しないので、当然、メンバーの納得感が最も得にくい方法です。逆に1人が独断で決めるため、最も時間がかからない意思決定方法です。
 一方で「合議」はメンバーが意思決定に関与するため、メンバーの納得感が最も得やすい方法です。逆にみんなで話し合って決めるため、最も時間がかかる意思決定方法でもあります。

■どの方法で決めるかをあらかじめ決めておく

 チームにおける意思決定で大切なことは、「どの方法で決めるかをあらかじめ決めておく」ということです。

 多くのチームでリーダーは「自分1人で決めたほうが速い」と思っているが、メンバーは「みんなで話し合って決めたい」と思っているなどの意思決定に対する認識のズレにより、不和が生じてしまっています。
 しかし、どの方法で意思決定するかについて共通認識を持っていれば、チームメンバー全員でその意思決定のメリットを最大化し、デメリットを最小化するために動けるはずです。

■「正しい独裁」はチームを幸せにする

 チームにおける意思決定については、「みんなで話し合って決めるのが良いことだ」と思っている人が多いです。世界の歴史において、かつては血統によって決まった王様や皇帝、将軍によって治められてきた国の統治システムを、「民主化」によって民衆の手に取り戻してきたからもしれません。
 しかし、「みんなで話し合って決める」合議という意思決定方法の最大のデメリットは時間がかかる、ということです。逆に、リーダーが最終的な意思決定を下すでも良いですし、領域によって誰か意思決定する人をあらかじめ決めておくのでも良いですが、「誰か1人で決める」独裁という意思決定方法は圧倒的に「速さ」を担保することができます。

 昨今は環境変化のスピードが速くなり、意思決定に時間がかかることはビジネスにおける致命傷となってしまう状況になってきています。
 この数十年の中で日本企業の時価総額ランキングで上位にランクインしたソフトバンクやファーストリテイリング(ユニクロ)は孫正義さんや柳井正さんというオーナー経営者がトップダウンでスピーディに意思決定していることも、ビジネスにスピードが求められていることの象徴だと言えるでしょう。

 逆に日本企業は、あらゆる意思決定を会議に委ね、誰かがリスクを背負ってスピーディに決断することができずに結果として苦境に立たされています。
 これからはリーダーが1人で決めていくことが求められます。

 では、独裁という意思決定手法はどのようにすればうまく行くのでしょうか? 

 独裁というのは決して誰からも情報収集をせずに、誰からの意見も聞かずに決めるということではありません。

 意思決定者が必要な情報を十分に集め、さまざまな角度からの意見を聞いたうえで決めることは、意思決定の精度を高めるために非常に重要です。

 しかし、そのうえで大切なことは、「良い意思決定」「正しい意思決定」にとらわれすぎずに、「強い意思決定」「速い意思決定」を意思決定者が心がけることです。
 今、2つの選択肢からどちらかを選ぶという意思決定をしなければならないとします。

 多くの場合、どちらかを選ぶメリットの大きさとデメリットの大きさは拮抗しています。

 「レシーブ練習よりもスパイク練習が多いほうが良い」というようなメリットとデメリットのどちらが大きいのかについて意見が分かれるようなことに意思決定は必要だからです。

 「チームのメンバーができる限りサボらずに練習に来たほうが良い」というような明らかにメリットが大きいようなことは意思決定の対象にすらなりません。
 極論を言うと、どんなに最善の手を選んだとしたとしても、メリットが51%あり、デメリットが49%あるような意思決定ばかりだと言っても過言ではありません。

 だとすれば、どちらの選択にメリットが51%あり、どちらの選択にメリットが49%しかないのかということを思い悩む時間があるのであれば、迅速に意思決定して、その手を選んだことが正解にあるように力強く推進した方が、メリットは60%、70%と増えていくはずです。
 ソフトバンクの孫さんはファーストチェス理論というものを意思決定時に用いていると言われています。ファーストチェス理論とはチェスにおいて「5秒で考えた手」と「30分かけて考えた手」は、実際のところ86%が同じ手なので、出来る限り5秒以内に打ったほうが良いという考え方です。この考え方をもとに、とにかく速い意思決定をしているといいます。

 どうしても「正しい意思決定をしよう」「良い意思決定をしよう」として時間をかけすぎてしまいますが、意思決定者は上記のような考えを頭に入れ、「強く」「速い」決断を1人でやる、ということが大切です。
 多くの意思決定がチームの中で賛成、反対の両方のメンバーが存在し、時に意思決定者は反対意見のメンバーのことを気にしてなかなか決められないという状況が発生しますが、反対意見を恐れて意思決定を遅らせることはチームメンバー全員を不幸にすることがあります。

 しかし、意思決定者は孤独を恐れず、チームのために意思決定しなければなりません。

■正解探しよりも正解づくりを

 また、意思決定は意思決定そのものよりも、意思決定後に選んだ手をどれくらい着実に実行し、正解にできるかどうかが重要です。
 しかし、多くのチームで、意思決定したことについてメンバーたちが「本当はこちらの選択肢のほうが良かったのではないか」「何故、こちらの選択を選んでしまったのか」というような不満を漏らし、きちんと実行がなされないということが起きています。

 意思決定するまでに意思決定者に情報や意見を伝えたり、議論を尽くしたりすることはもちろん必要ですが、一度意思決定されたのであれば、その意見について「自分は本当はこう思っていた」などと考え、話すことは効果的ではありません。
 多くの意思決定には51%のメリットと49%のデメリットがあることをチームメンバーが理解し、意思決定者の決断を自分たちが正解にする気概が重要です。

 独裁による意思決定を成功させるのは、意思決定者だけではなく、その意思決定を実行するチームメンバー全員なのです。

 反対や孤立を恐れずに、1人で決めよ。

 しかし、メンバーは意思決定者を孤独にするな。

 チームにおける意思決定をするうえでとても大切なことです。
麻野 耕司 :リンクアンドモチベーション取締役、ヴォーカーズ副社長

最終更新:4月24日(水)6時30分

東洋経済オンライン

 

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