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仕事の生産性にまで影響する「幸福」の正体

4月24日(水)8時00分配信 東洋経済オンライン

幸福な人ほど、創造性が高いという研究結果が報告されています(写真:TAGSTOCK1/iStock)
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幸福な人ほど、創造性が高いという研究結果が報告されています(写真:TAGSTOCK1/iStock)
 「あなたは今、幸せですか?」と問われたら、何と答えるでしょうか。3月に国連が発表した「世界幸福度ランキング」2019年版によると、最も幸せな国はフィンランドで、北欧諸国が上位を占める中、日本は昨年から4つ順位を下げ58位に。

 幸福度の指標は、「1人当たりGDP」「健康寿命」「人生の選択の自由度」などから調査されるもので、「主観的にどう感じるか」ではありませんが、周囲を見渡してみて、楽しそうに働いている人はたくさんいるでしょうか。
■幸福度が高い人ほどパフォーマンスも高い

 今や「働き方改革」という言葉を耳にしない日はありませんが、いかに生産性を高めていくか、頭を抱える企業も少なくありません。生産性を高めるには、「社員が幸せであることだ」と言ったら、どう思われるでしょうか。

 これまでも従業員満足度(Employee Satisfaction:略してES)という概念はありました。ESは給与や労働時間などの待遇、人間関係、労働環境などに対する満足度を数値で定量的に示すもので、ES向上に向けた取り組みは日本国内において積極的に行われてきました。
 ESが高まると、企業業績にもプラスの影響を与え、顧客満足度(Customer Satisfaction:略してCS)の向上にも効果があると言われています。

 一方、従業員幸福度(Employee Happiness:略してEH)は、従業員個人の幸福度を主観的な評価によって数値化する取り組みです。日本ではあまり馴染みがありませんが、アメリカでは、Googleを筆頭に、CHO(Chief Happiness Officer)という従業員の幸福度を高めるための役職を設ける企業が続々と現れています。
 ある調査では、CHOによるコンサルティング導入以降、社員の定着率が90%にまで上がった企業もあるといいます。

 従業員の幸福度が高いことは、いったいどれほど企業にインパクトがあるのでしょうか。

 アメリカ・イリノイ大学名誉教授のエド・ディーナー博士らによると、幸福感の高い人は、そうでない人と比べて、創造性が3倍高く、生産性は31%、売り上げは37%も高いといった研究結果が報告されています。また、幸福度が高い人は、欠勤率や離職率が低いことも明らかとなっています。
 この研究結果だけ見ると、働き方改革を行うより、社員の幸福度を高めたほうがよほど効率的だ、と思われるかもしれません。しかし、個人の幸福度を高めるというのは、口で言うほど易しいものではありません。それは、目に見えるものだけに限られるわけではないからです。

■幸せには2種類ある

 幸福学の研究では、幸せには2種類あることが知られています。1つは「地位財」と言われ、お金やモノ、社会的地位など、他人と比べられるものをいいます。俗にいう、金銭欲、物欲、名誉欲などです。
 しかし、こうした幸せは長く続かないと言われています。確かに、給与がアップしたり、高額のボーナスが出たりすればうれしいものですが、しばらくすると「もっとほしい」という感情が芽生えてくるものです。他人と比べて自分はどうかと、むしろ、際限なく人を惑わすものかもしれません。

 一方、精神的、身体的、社会的に良好な状態からもたらされる「非地位財」があります。いわゆる心の豊かさや、健康、安全といったものです。特に心の豊かさについては、人それぞれが主観的に感じるものであり、目には見えません。こうした幸せは、長続きするといわれています。
 慶応義塾大学大学院の前野隆司教授は、精神的に良好な状態について調査した結果、幸せには心理的な要因として4つの因子があることを明らかにしています。

 それは、「自己実現と成長(やってみよう因子)」「つながりと感謝(ありがとう因子)」「前向きと楽観(なんとかなる因子)」「独立と自分らしさ(ありのままに因子)」です。

 この4つの因子は相関関係があり、すべての因子を満たすように暮らしていけば、幸福度が高まると考えられます。
■マネジメント層の仕事の与え方も重要

 これらを踏まえて働くことで、少しずつ幸せ体質になれるかもしれません。例えば、どのような仕事であっても、やらされ感たっぷりで嫌々取り組むのではなく、興味とやりがいをもって前向きに取り組むことです。「ありがとう」と言えるチームへの感謝や信頼、職場での良好な人間関係も欠かせない要素といえます。

 そのためには、マネジメント層の仕事の与え方も重要といえるでしょう。短期的な成果ばかり求めると、一時的には詰め込みで業績は上がるかもしれませんが、強い負荷が生じれば疲弊してしまいます。
 ハラスメントとは対極に、心理的安全な環境でのエンパワーメントが求められてくるでしょう。そして、何のためにこの仕事をするのか、この会社があるのか、存在意義や目的を言語化できることも大切だと考えます。

 幸福度の高い人は、創造性も高いとされていますが、前野教授らの研究によると、創造性のためには多様性が重要とのこと。つまり、幸福度と創造性、多様性の3者は、高い相関関係が見られるそうです。

 多様な人材が活躍するためにも、柔軟な働き方ができる環境を整え、自律的に業務ができるように裁量を持たせることで、より一層創造性が発揮できるのではないでしょうか。
 イノベーティブな価値を生み出すには、多様性のある組織で、信頼できるメンバーと率直に意見を交わし合える環境が大切ということでしょう。

 個人の幸せが、会社の発展に通じる。そう考えると、まず自分自身の幸せを求めることは、決してわがままなことではありません。友人や家族、組織、社会が幸せになるためにも、自らの幸せを大切にしたいものです。
佐佐木 由美子 :人事労務コンサルタント/社会保険労務士

最終更新:4月24日(水)8時00分

東洋経済オンライン

 

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