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「女性の事務系仕事」は令和時代に生き残れるか

4月22日(月)6時00分配信 東洋経済オンライン

急速にAIビジネスが成長してゆくなか、いままでは女性が主に活躍していた業種がなくなってゆく可能性を筆者は指摘します(写真:kikuo/PIXTA)
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急速にAIビジネスが成長してゆくなか、いままでは女性が主に活躍していた業種がなくなってゆく可能性を筆者は指摘します(写真:kikuo/PIXTA)
 2019年5月1日、皇太子さまが即位され令和の時代が始まる。令和の日本を担っていくのは今の若手社員たちであり、大学や高校中学で学んでいる人たちである。

 この人たちはどのような仕事に就き、どのように働いていくのだろう。中でも女性の仕事はどうなるのだろうか。

 今を時めくGoogle、Facebook、Amazonなどの企業も2000年前後のころには取るに足りない存在だったことを考えると、令和30年ごろにはどのような社会になって、どのような企業が栄えているか。中でも現在大変な勢いでAIが進歩し、情報化が進展して、従来人間が行っていた仕事が奪われるといわれているが、これは女性の仕事と生き方にどう影響するか考えてみたい。
■AIによって仕事が淘汰される時代へ突入

 2015年にオックスフォード大学のオズボーン准教授らと野村総研の研究チームは、2045年ごろには現在の仕事の49%が自動化されるという予測を発表した。

 その後、個々の仕事を細かくばらしてみると、自動化できるものとできないものがあり、新しく生まれる仕事もあると議論は深まっているが、職場も仕事の内容も平成時代と比べ大きく変わる。今後、単純な仕事はAIなどに置き換えられていき、人間にしかできない高度な仕事をする人が引っ張りだこになって格差が広がっていくと予想されている。
 そして工場などの生産現場に比べて遅れていた事務系の仕事の自動化が始まると言われるが、そうなると女性の職場は大きな影響を受ける。現在、日本の女性雇用者は過半数が非製造業の事務あるいはサービスの分野の仕事に就いている。

 平成の日本経済が国際競争力を失った一因は、企業がAI開発や投資を十分に行わず、低賃金の非正規雇用によるコストカットでしのごうとしたからだといわれる。女性の職場進出は数では増えたが、こうした賃金の安い非正規雇用が多かった。
 しかし今後は単純な事務系の仕事には自動化の流れが押し寄せ、銀行の窓口、損害保険の審査・給付、コールセンターのオペレーターなど女性の多い事務系の仕事は少なくなっていく。外国語も通訳・翻訳機が発達していくので日常会話ぐらいなら自動翻訳がカバーする。つまり、女性が現在安定的な収入を得ている仕事が少なくなるのだ。

 そういうと、経済的な安定を得て生きていくためには、格差社会の上に位置する「勝ち組」男性と結婚し、養ってもらうのがいちばん「お得」ではないか、と考える女性もいるかもしれない。しかしそれは、間違いである。そうした「勝ち組」男性は数がとても少なく、圧倒的に数が多いのは非「勝ち組」の男性、そして女性である。
 莫大な所得は得られなくても、この男女が失業せず、持てる経験や人間性が生きる仕事に就き、そこそこの安定した所得が得られ、お互いに支えあい、人間らしい暮らしができるようになれば、日本の多くの人の生活、もっというと令和の社会は安定する。

■「人間」にしかできない仕事

 金融の窓口業務は減るだろうが、融資・相談・営業などの仕事は増える。単純な会計処理は会計ソフトで早く済むかもしれないが、新しい費目をどう処理するかを考え顧客と財務戦略を相談する会計士的な仕事はなくならない。単純な「資格」や専門能力を持つだけでなく、それに何かプラスアルファを付け加えることができる女性ならいい仕事に就くことができる。
 例えば、一般的なカロリー計算をしているだけでなくおいしい調理ができる管理栄養士、翻訳機や通訳機を活用し外国籍の人とも信頼関係を作り維持できる看護師さんや薬剤師さん、介護ロボットに移動は頼んでも高齢者と温かい会話ができる介護士さん、AIから情報を得て一人ひとりにふさわしいケアプランを作成するケアマネジャー、AIの教材を使いこなすコツを子どもたちに教えることができる小学校や中学校の教師、などなど。きっと仕事の中身は変わっていくだろうが、AIなどの助けを借りながら、仕事の中身も変わっていく。中でも人に関わる仕事はこれからもなくなるどころかより重要性が増していく。
 これからの仕事はSTEM(Science、Technology、Engineering、Mathematics)が不可欠といわれるが、それをどのような用途にどう使うか、そこを理解して応用しなければ科学技術がどれほど高度でもビジネスにも社会の発展にも結び付かない。困っている人や問題・課題に気がつき、その「困りごと」を科学技術で改善・解決しないかと工夫する、女性もそうしたイノベーションの担い手になる力が求められる。
 体力のいる仕事は機械に置き換えられ、力持ちが重宝される男性の仕事が大きく減ってきた。同じように、言われたことを言われたとおりに忍耐強く、単純な事務処理をするだけの女性の仕事はAIや自動化によって今後ますます減っていく。丁寧で従順で、忍耐強く単純作業に取り組む「女性らしい」仕事はなくなる。

 一方、人とコミュニケーションができ、共感し、課題を発見し新しい提案ができる女性の仕事は減るどころか、増えていくに違いない。女性が大学などの教育の場で身に付けるべきはそうした令和時代を生き抜くことができる力であり、仕事においてもそうした力を伸ばしていくこと、それがますます求められているのではないだろうか。
坂東 眞理子 :昭和女子大学理事長

最終更新:4月22日(月)6時00分

東洋経済オンライン

 

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