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米国に叩かれても元気だった中国の半導体産業~セミコン・チャイナ2019現地レポート~

4月22日(月)21時00分配信 LIMO

本記事の3つのポイント

写真:LIMO [リーモ]
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写真:LIMO [リーモ]
会場入り口はセキュリティーチェックで人が溢れかえっていた
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会場入り口はセキュリティーチェックで人が溢れかえっていた
 ・ 19年3月20~22日のあいだ、半導体製造装置・材料に関する国際展示会「SEMICON China 2019」が開催された。米中の対立関係が強まるなか、中国半導体産業の今後に不安の声が集まるが、展示会そのものは過去最高の出展企業数、来場者数を記録した
 ・ 注目される中国新興メモリーメーカーでは、武漢に工場を構えるYMTCが量産化でリード。今年から本格的な商業生産をスタートさせる
 ・ 装置・材料メーカーも徐々に力をつけ始めている。大手半導体メーカーの量産工程に装置を導入するなど、目に見えるかたちで実績が出始めている

 私がセミコン・チャイナを見学するのは、これで17回目となった。ご存知のように、中国は2018年から米国との貿易戦争が始まり、ハイテク分野でも両国の覇権争いが激化している。米国は中国の半導体産業の台頭を封じ込めようと、新興メモリー企業のJHICC(晋華集成電路、福建省泉州市)への米国製製造装置の輸出を禁じた。「米国が中国半導体を本気で叩くようになり、中国の半導体産業は成長の芽を摘まれてしまった」と多くの半導体アナリストは語る。

 しかし、今年のセミコン・チャイナを見た人ならば、この見解に大きな違和感を覚えたことだろう。「叩かれた者は必死で抵抗する」のが世の常であり、今年のセミコン・チャイナは過去最高の出展企業数、見学者を記録した。「中国は先端半導体の国産化を絶対に諦めない」――そんな強い決意を感じさせる熱気に包まれた3日間だった。

出展企業は1200社、来場者は10万人

産業タイムズ社のブースでは中国工場MAPを配布
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産業タイムズ社のブースでは中国工場MAPを配布
 今年のセミコン・チャイナの出展企業数は約1200社(18年は1116社)、来場者は10万人を超え、過去最大規模となった(18年の来場者数は9万1252人)。展示規模は18年の3.26万㎡(約3626ブース)から、今年は4万㎡超(約4000ブース)へと約20%拡大した。17年までは5棟、18年は6棟の運営規模だったが、19年は巨大なテント棟を増やした。1棟は展示会場として、もう1棟は来年の会場申し込み場所として使用した。

 電子デバイス産業新聞を発行する当社(産業タイムズ社)もブース出展し、中国の半導体工場マップを配布していたが、来客が多くて例年以上のペースでなくなってしまった。配布したのは、(1)300mm半導体工場マップ、(2)200mm半導体工場マップ、(3)半導体組立・検査工場マップ、(4)液晶パネル工場マップ、(5)300mmウエハー工場マップ、(6)200mmウエハー工場マップの6種類。在庫の残りが少ないですが、希望者には在庫がある限り提供しますので、東京本社か上海支局までお越しください。

営業フロンティアが残る唯一のセミコン展示会

 国策の後押しもあって、中国は半導体の国産化意欲が強く、新工場案件が今も複数進行している。世界の半導体工場投資の2割を占めるようになったこともあり、セミコン・チャイナへの日本企業の出展も増えている。

 今年の日本企業の出展は118社となり、前年よりも倍増した。日本の装置メーカーのブースを訪ねると、「重要な来客が多くて、例年なら空き時間に展示会場内を見学に行くのだが、今年はまったく行く暇がなかった」(日本の装置メーカーの海外営業部長)というほどの活況ぶりだった。

 出展企業はまだまだ増える勢いだが、展示館の余地がないため、ブースの取り合いになっている。「いい場所が取れないので出展を諦めた」(日本の後工程材料メーカー)や「ブースを確保できなかったので、隣で開催していたレーザー展にやむなく出展した」(装置パーツメーカー)など、苦労している企業も多かった。

 ちなみに、20年のセミコン・チャイナは3月18~20日、今年と同じ上海新国際展覧センターで開催予定。SEMIは毎年、展示会期間中に来年のブース申し込みを受け付けているが、また今年も次回の申し込みはすでにいっぱいでキャンセル待ちの状態だという。出展希望の企業は早めにお申し込みを(SEMI China顧客サービス部、TEL.+86-21-6027-8500、semichina@semi.org)。

量産稼働で一番乗りのYMTC

YMTCの工場完成イメージ
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YMTCの工場完成イメージ
 DRAM国産化プロジェクトのJHICCは工場立ち上げができず困っており、チャンシン(CXMT、長鑫存儲科技、安徽省合肥市)は開発見直しや知的財産権対策で当初計画よりも製品開発に遅れが生じている。新興DRAMメーカーの2社は産みの苦しみと格闘している。

 その一方で、新興NANDメーカーのYMTC(長江存儲科技、湖北省武漢市)は19年4~6月期に量産用装置(20K/M)を導入し、年内に3D-NANDの32層品の量産と64層品の試作を開始する。

 投資計画が発表された時、「中国メモリー3社のうち、どこが最初に量産にこぎ着けるか」という質問をたくさん受けたが、その答えはYMTCだった。グループ子会社として取り込んだXMCはもとはSMICを源流としており、NORフラッシュのファンドリー受託で経験を積み、スパンションの技術を導入して3D-NANDの開発を早くから進めていた。NAND最大手のサムスン出身者を大量に雇い入れて非米系技術ソースで開発していたことも、米国の制裁リスク回避に寄与していると考えられる。最先端ではないが、今年は中国が3D-NANDの商業生産を始めるエポックメーキングな年となる。

中国装置メーカーに“要注意”

AMECの1X対応のプラズマエッチング装置「Primo nanova」のサンプル模型
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AMECの1X対応のプラズマエッチング装置「Primo nanova」のサンプル模型
 展示会に出展した日本の装置部品メーカーの複数社にヒアリングすると、会社全体としては19年の業績は前年よりも落ち込むが、中国市場に限定すると30%前後のプラスになるという。中国の製造装置メーカー向けの出荷が増えるということは、いよいよ中国の装置メーカーが力をつけてきたということだ。

 ここで注目されるのが、中国の装置メーカー大手のAMEC(中微半導体設備、上海市)だ。AMECは米アプライド マテリアルズ(AMAT)出身の中国人幹部によって設立された、いわゆる海亀(海外帰りの中国人が創業した)企業だ。上海の浦東新区金橋輸出加工区と江西省南昌市に装置工場を展開している。主力製品は、プラズマエッチング装置(65nm、45nm、28nm、22nm、1Xnmに対応)とMOCVD装置(青色LED用、4インチで34枚同時処理)だ。MOCVD装置は南昌工場でも生産している。

 中国最大手のノーラ(NAURA、北方華創微電子装備、北京市)も海外企業の買収や共同技術開発などで近年急に力をつけている。日本の業界人の間では、アルファベットをローマ字式に読んで「ナウラ」と発音している人が多いが、当の中国の人たちは「ノーラ」と発音している(まあ、どっちも似た発音で間違えることはなさそうだが……)。

 ノーラはCVDやPVD、プラズマエッチング装置を製造していた北方微電子と、縦型拡散炉やLPCVD、洗浄装置、マスフローコントローラーなどを製造していたセブンスター(七星華創電子、北京市)が合併。17年8月に洗浄装置メーカーの米アクリオンシステムズを買収。中国政府系の半導体ファンドなどの豊富な資金支援をもとに事業拡大に積極的だ。日本の大手装置メーカーの日本工場で10年以上働いていた中国人技術者を招聘して、開発に取り組んでいる。

 キングセミ(芯源微電子設備、遼寧省瀋陽市)はコーター・デベロッパーを生産している。数年前から日本の大手装置メーカー幹部を技術顧問として雇い、技術開発を進めてきた。TSMCがアップルのアプリケーションプロセッサー向けに開発したFan-outパッケージ(TSMCではInFOと呼ぶ)用のコーター・デベロッパーで16年に採用が決まり、TSMCの徹底的な技術改善要求に応えることで技術を蓄積した。キングセミはこれまでにTSMCに30台以上を出荷している。しかし、東京エレクトロンのような前行程のコーター・デベロッパーを生産する実力はまだない。

人材開発に力を入れるSEMI

SEMI Chinaの居龍総裁
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SEMI Chinaの居龍総裁
 セミコン・チャイナ初日のキーノートスピーチでは、SEMIチャイナの居龍総裁やSEMIのAjit Manocha CEO、華虹集団の張素心董事長、長電科技の李春興CEOたちが講演した。2日目に開催された「SIIPチャイナ(半導体産業イノベーション投資フォーラム)」では、国家IC産業ファンドの丁文武総裁や中国科学院微電子研究所の葉甜春所長、清華大学微電子学研究所の魏少軍所長、上海集成電路産業投資基金の沈偉国董事長などが中国の半導体産業の技術開発の状況と投資機会について講演した。

 米中対立による逆風下ではあるが、今年のセミコン・チャイナは先端半導体と半導体産業のサプライチェーンの国産化、および優秀な半導体人材の育成サポートに注力し続けるとの強いメッセージを発していた。

 米中貿易戦争による世界経済の停滞懸念のなか、中国の経済減速や市場縮小などに警戒感が漂っている。しかし、中国政府は家電製品や自動車などで景気対策を発表。5G通信インフラやこれに対応するための新たなデータセンター投資が今秋から活発になり、不透明ながらもいつもの力技で経済の落ち込みを跳ね返す可能性が見えてきている。

 中国にとって5GやIoT、AIの国産技術による発展にはメード・イン・チャイナの半導体が欠かせない。「米国に叩かれても中国はへこたれない。むしろ、何が何でも国産化する」という強い意思を見せつけられた展示会だった。百聞は一見に如かず、中国はやはり現地を見ないと分からない……と改めて思った。

電子デバイス産業新聞 上海支局長 黒政典善

まとめにかえて

 JHICCの装置輸入制限など、18年は中国半導体産業にとっては試練の年でした。しかし、SEMICON Chinaの出展企業数や来場者数を見るかぎり、やはり関係者の同国半導体産業の成長性に対する期待は現在も高いようです。19年は新興メモリー企業の量産スケジュールの遅延や、海外企業が対中投資に二の足を踏んでいることもあり、中国の半導体設備投資は例年に比べて低調に推移する可能性が高いですが、長期的視点に立てば、半導体装置・材料分野にとって最も成長力のある市場であることは間違いなさそうです。
電子デバイス産業新聞

最終更新:4月22日(月)22時50分

LIMO

 

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