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進まぬ孤独死対策、打開策はどこに? 《楽待新聞》

4月22日(月)20時00分配信 不動産投資の楽待

(写真:iStock.com/Jelena83)
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(写真:iStock.com/Jelena83)
無縁社会が叫ばれるなか、自死はもちろん、誰にも看取られずに命を落とす人が増えている。高齢化が進む日本では、高齢者の孤独死対策が急務。自治体や民間企業が「見守りサービス」などを展開しているが、解決の目処は立っていない。孤独死はどのように起きるのか。そして数多あるこうした見守りサービスはなぜ普及しないのか。

■第一発見者しか知らない「現場の壮絶さ」

「多くの場合、第一発見者となるのは私たち不動産管理会社や大家さん。その精神的ダメージは計り知れないほど大きいです」

管理会社に勤務し、千葉県内を中心に2000軒以上の物件を管理している藤原忠義さん(44歳・仮名)はため息交じりにこう語る。

「20年以上この仕事をしていますが、入居者が亡くなっている現場を何度も見てきました。自然死は数知れず、自死も5件ほどありました。特殊清掃をお願いした『事故物件』は10件ほどでしょうか。2年に1回のペースです。最近では独特の異臭で判断できるようになりましたので、すぐに警察を呼ぶようにしています」

藤原さんがいままで一番つらかったのは、入浴中にお亡くなりになったケース。溶けるように腐食が進み、浴槽の中でどろどろの状態になっていたのだという。

「他に、室内がゴミ屋敷状態になっているケースもありました。ビールの空き缶やコンビニ弁当の容器が地層のように重なっているのですが、一番上にあったのは栄養ゼリーのゴミの層で、その上にご遺体があったんです。栄養ゼリーしか食べなくなったら末期、ということなのかもしれません」

ゴミの上で亡くなっていたお年寄りの変わり果てた姿が、いまだにフラッシュバックすることもあるという。

■孤独死は男性に多い

日本少額短期保険協会の調査によると、亡くなってから発見されるまでの期間は、男性の場合は平均20日、女性は7日ほどだという。

女性の方が男性よりもコミュニケーション能力が高い事が多いので知り合いも多く、発見が早くなるのだそうだ。内閣府の調査でも、高齢の男性のほうが地域との接点が少ない傾向にあるという結果が出ている。

「私が経験した中では、発見が遅れたケースはすべて男性でした。高齢になると、特に男性は付き合いそのものが億劫になるのかもしれません。女性の多くは、家族や友人からここ数日見かけないと連絡があって住まいを訪ねるのですが、独居の高齢男性の場合はこのような連絡はまずありません」(藤原さん)

孤独死の現場は後処理も大変だ。遺体は市役所に引き取ってもらうが、入居者の所有物は大家が引き取ることもあるという。藤原さんの管理物件で孤独死が起きた際、亡くなった入居者の所有物に奥さんのお骨や仏壇、位牌のようなものもあった。そのときは、知り合いのお寺に収めさせてもらったそうだが、これ1つとっても手間がかかって大変だったという。

■急落する事故物件の資産価値

自然死、自死ともに特殊清掃を依頼するような重篤な「事故物件」のケースでは、物件の資産価値低下によるダメージも大きい。

発見が早い、あるいは寒い時期の病死で部屋にダメージがまったくなかったとしても、他の入居者が「気味が悪い」と退去していき、空き室になることもある。部屋の汚れといった目に見えるダメージだけではなく、アパート全体の評判が一気に下降するのだ。

「事故物件も、都会なら2~3割家賃を下げれば、医療関係者とか葬儀関係者の方が入居するなんていう話もあります。しかし私の管理物件があるエリアでは、家賃を下げてもなかなか入居者は見つかりません」

こう藤原さんが言うように、事故による空き室リスク、資産価値低下は都会よりも郊外や地方のほうが深刻なようだ。

また、住人が亡くなった以上、部屋の整理をはじめとする原状復帰にかかる費用、その後の事故物件としての家賃設定など、問題は山積み。リフォームが必要な場合はなおのことだろう。

■少額保険で窮地を脱した大家

アパートやマンションの管理を管理会社に委託していても、事故物件化してしまえばお金の問題はどうしてもつきまとう。まして個人オーナーの場合だと、泣き寝入りということも少なくない。

西東京市を中心に4棟のアパート経営をする鏑木克彦さん(58歳・仮名)も数年前、所有物件で孤独死が発生。リフォーム費などの費用が回収できなかった大家の1人だ。

「保証人は引っ越して行方知れず。八方手を尽くして探し出したのですが、生活が苦しくてとても払えない、ということでした。その保証人の元を尋ねると築古の風呂なしアパートに住んでいて、たぶんお金がないというのは本当なんだろうなと思いあきらめましたが」

お金も手間もかけて孤独死があった部屋の後処理をし、なんとか一歩を踏み出せたのは「保険のおかげだ」と鏑木さんは言う。孤独死に特化し、一戸あたり月々300円の掛け金で原状回復費補償100万円、事故後の空き室、値下げ家賃保証200万円などがカバーされる保険に加入していたのだ。

「自分の物件に限ってこういう事件は起きないと思っていたのですが、あるものですね。金額的には数十万円ほど足が出ましたが、保険に加入していなければかなり厳しい状況になっていたと思います」

孤独死による損害をカバーする保険には、火災保険の特約として付加されるもの、また少額短期保険(ミニ保険)などいくつかの種類がある。補償内容は、原状回復費や家賃損失、遺品整理費などが多い。基本的には1棟全戸で加入する必要があるが、保険会社が提携する見守りサービスとの連携などを条件に一戸から加入できる保険商品も登場している。

■独居老人を見守るモデルは「巨大団地」にもあった

お年寄りの入居を断るというケースは、全国で問題になっている。年金があるので家賃の確保は堅いという見方もある一方、孤独死によって事故物件化する確率が高いと見られているためだ。

賃貸住宅のほか、分譲の団地やマンション、戸建て住宅でも、孤独死予備軍とも言える独居老人が少なくない。その解決策として期待される各種見守りサービスは、ボランティアから企業の商品まで多種多様に存在するが、費用や人手不足など問題も多い。

そんな中、ある巨大団地の自治会では自主的に見守りのNPO団体を設立し、増える独居老人のケアをしている。ただし、見守り活動を行うボランティアもまた同じ団地に住む高齢者。若い世代の住民が入居せず、新陳代謝ができない団地ではこのような「老老見守り」を行うほかない。

「個別に訪問したり、電話でのSOSを受け付けたりといった活動がメインです。あとはゴミ出し、電球の交換など日常生活のお手伝いをすることで、住民の健康状態もチェックしています。以前はスマートメーターを通じ、電気使用量が大きく変化したときに異常として通知されるシステムで見守りをしたこともありました」(同NPO団体リーダー)

しかしこうした取り組みは住民の協力が不可欠。最初は数十世帯の協力の下で進められたが、「面倒くさい」という理由から、協力する住民が1人、2人と減っていき、最終的には自然消滅してしまったという。

「いまは、センサーを部屋に配置し、住人に動きがないと判断した場合、生存確認装置を通じて任意の連絡先に通知する仕組みのテストを始めるところです」

この団地は基本的には分譲で、住人同士のコミュニケーションが取れているから、このような活動ができるともいえる。それでも、2年に1回くらいは孤立死する方がいるそうだ。それが、賃貸と分譲が半々の巨大団地では状況ががらりと変わる。特に賃貸住宅では、保証人不要で入居できるとあり、また家賃も安いことからお年寄りと外国人が急増している。

■惨めな姿を子供に見せたくない

独居高齢者が増えるなか、見守りをアシストするアプリや生存を確認するシステムには、電力やガスといったインフラ大手、家電大手から警備会社、また独自のIT技術を駆使した中小企業までさまざまな企業が参入している。

監視カメラの技術を使ったもの、スマートスピーカーを利用したもの、異常時にみずから非常ボタン押して助けを呼ぶもの、ブレスレットのように腕に巻き心拍の異常をあればSOSを発信するタイプなど、技術的にも高度なものも多い。

しかし、どれもいまひとつ普及しないのは、独居高齢者のプライバシーをないがしろにしているせいかもしれない。または単に面倒くさいということもあろう。

そしてもう1つ、貧困との関係も見過ごせない。仮に自分の体に異常があったとしても、自分のそんな姿を子供に見せたくないという親心だ。先述のNPO団体のリーダーは次のように語る。

「団地に住むお年寄りには、自ら子供との関係を絶とうしている向きがあります。親として貧しい老後を過ごしていることを、子供に知られたくないのかもしれません」

■自治体との連携に活路を見出す

そうした中、孤独死を未然に防ぐシステムの普及を目指し、千葉県内の自治体が民間企業との協業で実験を進めている。

人の動きを感知する小型のセンサーで、一定時間何も動きがないと本人(携帯電話)に通知されるというもの。電話に出ないときは任意の第三者に連絡がいき、異常が発生している可能性を知らせるという仕組みだ。

この取り組みでは、任意の第三者として地域の消防署の専用音声電話に連絡。消防署に直通でつながるようにし、救急隊が独居老人宅に向かえるような仕組みを検討しているという。

もちろん、民間のシステムを公の機関に組み込むことにはハードルもあるが、自治体の協力体制が敷かれ、場合によっては補助金などが給付されるようになれば普及が進む可能性もある。前出の藤原さんもこれには期待を寄せている。

「空き室対策として、事故リスクがあっても独居老人に入居してもらうケースは少なくありません。その場合、生存確認装置によって孤独死のリスクが減らせるのであれば、ビジネスとして成り立つと思います。あとは、生存確認装置のコストをどこで吸収するか。もし自治体が負担してくれるなら管理会社としても大歓迎だし、独居老人の住宅問題も解決に向けて一歩前進するのではないかと思います」(前出の藤原さん)

高齢化社会が進めば、孤独死は確実に増えていく。自らの物件が事故物件化するリスクはコンマ何パーセントしかないと考えるか、コンマ何パーセントもあると考えるか。オーナーの考え方次第で、その対策は異なる。
不動産投資の楽待 編集部

最終更新:4月22日(月)20時00分

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