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台湾に行ったら「ベジタリアン」料理が凄すぎた

4月20日(土)6時20分配信 東洋経済オンライン

台湾といえば、市場の屋台だが、そこでも素食があふれている。看板にある卍(写真右上)は素食を意味している(筆者撮影)
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台湾といえば、市場の屋台だが、そこでも素食があふれている。看板にある卍(写真右上)は素食を意味している(筆者撮影)
 台湾に出かける人の楽しみの多くはグルメだろう。もちろん中華料理が人気だが、夜市の屋台などで食べる魯肉飯(ルーローファン・豚肉煮込みかけご飯)や小籠包(ショーロンポー)、牛肉麺(ニョウローメン)など肉料理が多彩だ。

■台湾素食が人気になっている

 最近、台湾素食(そしょく・スーシーと読む)が注目されていることをご存じだろうか?  

 中国語の素食とは菜食(ベジタリアン食)やヴィーガン(VEGAN)食に近いものを意味する。
 日本ではまだヴィーガンという言葉を知らない人も多いだろう。ベジタリアンが穀物や野菜を中心に食べる人という意味で使われているのに対して、ヴィーガンは動物愛護の観点などから徹底的に動物性食品を口にしない人(食生活以外でも毛皮のコートや革製品なども身につけない人)のことを指す。

 ヴィーガンの人は牛乳や卵も口にしない。味噌汁もカツオだしは不可だ。昆布やシイタケなど、植物性のだしのみを口にする。

 なぜ、牛乳や卵も口にしないのかといえば、それらが肉食と同様に家畜に苦痛を強いているとの考えだ。例えば卵。卵を産ませる採卵鶏を孵化させたら当然、半分はオスのヒヨコが生まれる。オスは卵を産まないから不良品であり、生まれてすぐにシュレッダーなどで殺処分されている。
 ではメスのヒヨコはどうか。日本ではケージ(網のカゴ)飼いが主流で、狭いケージの中で一生を過ごし、卵を産まなくなったら廃鶏と呼ばれ、ゴミのように殺処分される。

 日ごろ日本ではあまり、ベジタリアンを見かけないし、ましてやヴィーガンの存在すら知らない人も多いだろう。健康や食材になる動物たちのことを考えて肉や魚、それに加えて卵や牛乳まで口にしないのは相当不自由を強いられるし、栄養面での不安もあると考えている人がほとんだと思われる。
 しかし、台湾では粗食ならぬ素食、すなわちベジタリアン食やヴィーガン食の人でも楽しめる食材が豊富で、食材もレストランもあちこちで見かける。まったく粗食ではないのだ。台北の素食事情についてみてみよう。

 まずは、回転素寿司。

 台湾でも日本料理は人気で、回転寿司もたくさんある。そうした中で肉・魚をいっさい使わない回転素寿司も人気だ。

 日本ではおしんこ巻きなどはあるが、ここではマグロ、トロ、サーモン、イカなどもすべてこんにゃくなどで作った寿司だ。
 台北市内にある回転素寿司「水問」を訪ねてみた。訪れたのは土曜日の14時すぎだったが来客はひっきりなしだった。まずはマグロを取ってみた。赤身とトロ。本物そっくりだ。興味深かったのはお皿の色分けだ。

緑皿:全素(卵・牛乳不使用)
黄皿:卵使用
白皿:牛乳使用
赤皿:卵・牛乳使用
 以上の4色があり、どれも肉・魚はいっさい使っておらず、卵、牛乳の使用状況によって4色に分けられている。値段はどれも一皿32台湾ドル。約120円だ。普通の回転寿司と変わらない値段だ。
■台湾で肉を食べない人が多い理由

 なぜ、台湾では素食人口が多いのか? 

 「中高年者では、仏教・道教・一貫道などの宗教の影響が大きい。若者では環境保護・動物愛護の理念を踏まえ、健康志向もあり、菜食を選ぶ傾向がある」と社団法人台湾動物社会研究会(EAST)の執行長・朱さんは話す。

 台湾における10%程度が素食人口といわれている。ちなみに宗教上での素食の人たちはベジタリアンなどとも少し異なり五葷(にんにく、ネギ、タマネギ、らっきょう、にら)といった食材も食べない。
 東京の渋谷のように若者でにぎわう街・台北市西門では、ヴィーガンを勧める市民団体「Vegan 30」がデモンストレーションをしており、多くの若者の興味を引いていた。

 こうした中で、素食レストランビジネスは好調のようだ。善果餐飲グループ(GOOD DEEDS)が経営する上善豆家・禪風茶樓・十膳麺堂・善菓屋の4種類の飲食店のうち、高級な雰囲気が漂うレストラン・禪風茶樓を訪ねてみた。精進料理の中華スタイルといった印象だ。素食だが創作料理でおいしい。言われなければ素食とは気づかないかもしれない。
 ヴィーガン向けの食材も豊富だ。仏教団体で、有機農業・植樹・プラスチック不使用・植物由来飲食を目指す財団法人「慈心有機農業発展基金会」が運営する会社「里仁」のスーパーが有名である。有機野菜や素食をそろえたスーパー「里仁」は台湾全土に133店舗展開している。

 そのうち、最も大きいという台北市内の店舗を訪問してみた。生鮮食料品に加え、レトルト食品、冷凍食品、さらには家庭用雑貨や書籍までそろう。

 台北を訪問したのは3月下旬だったが、ちょうど台北世界貿易センターで台北国際素食茶藝展が開催されていた。
 ものすごい数の素食の食材・食品会社が展示販売を行っており、そのパワーには圧倒された。

 目立ったのが肉もどきだ。素食主義といってもやはり肉の味を求める人は多いのだろう。味付けされた代用肉が豊富にあった。例えば、チャーシューなども肉の部分と脂の部分がうまくできていて、言われなければ代用肉とは気づかないかもしれない。

 このように人気の台湾素食だが、ベジタリアン、ヴィーガンが人口の10%程度とはとても思えないほどだった。
 素食レストランで食事をする家族に聞いてみたが、娘がヴィーガンなので一緒に食事を楽しむために食べに来たと話してくれた。家族に1人でもヴィーガンがいると、その家族も食べに来る。だから、より人気があるのかとも納得した。そして、菜食主義者でない人たちも満足できるのが台湾素食のすごさだろう。

 日本でも「持続可能(サステナブル)な消費」「エシカル(倫理的)消費」が注目されてきている。台湾素食はこうした考えにもかなう。こういった台湾の素食文化が日本でもブームになる日も来るのかもしれない。
■肉食は世界的に見ても持続可能ではない

 現在、世界各国では持続可能な社会に向けた取り組みも進んでいる。地球温暖化対策が喫緊の課題である中、人口増大が進む発展途上国が豊かになり、先進国並みに肉の消費を行うと水不足、環境汚染などが甚大となり、地球環境が深刻な状況に陥ることが指摘されている。

 例えば、鶏肉1キロを作るために、穀物が3キロ必要だ。豚肉1キロ作るために7キロ、牛肉に至っては1キロを作るために11キロ必要と言われている。
 肉食は持続可能性のない食材という認識が高まっているのだ。また、発展途上国の中には肉どころか穀物さえ満足に摂取できない子どもが大勢いるなかで、先進国では穀物を家畜に与えて肉や卵、牛乳を得ていることが貧困問題を深化させているとの指摘がある。

 仏教の教えに基づく殺生の禁止に加えて、台湾では現代の地球環境保護や動物愛護の思想を踏まえて、素食が流行していることは台北の街を歩き、人々の声からも伝わってきた。
 日本人にはこの認識はあるのだろうか? 

 来年には東京オリンピック・パラリンピックを迎える。すでに訪日外国人観光客も数多く訪れており、2020年4000万人の目標を政府は掲げている。

 数多くの観光客や一流アスリートが集う1年後にベジタリアン・ヴィーガン食の人たちの要求を満たす食事を提供できるのかは未知数だ。台湾素食のような光景が近い将来の日本でも見られることを願う。
細川 幸一 :日本女子大学教授

最終更新:4月20日(土)6時20分

東洋経済オンライン

 

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