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「嫌悪施設」付近の物件、資産価値や入居に影響はある?《楽待新聞》

4月20日(土)17時00分配信 不動産投資の楽待

(PHOTO: iStock.com/Yuthongcome)
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(PHOTO: iStock.com/Yuthongcome)
昨年、東京都港区の南青山で、児童相談所を建設する計画に住人らが反対した「騒動」を覚えている人も多いだろう。「『青山ブランド』のイメージが悪くなる」など資産価値の低下を懸念して反対意見を述べる場面も報道されていた。

その存在が、住民や物件所有者らから嫌われる施設のことを「嫌悪施設」と呼ぶ。「必要性はわかるが、自分の物件(住宅)近くには建てないでほしい」という意味を含んで「NIMBY(Not In My Back Yard)」という言葉で言い表されることもあるが、収益物件の近くにあると、入居者が決まりづらかったり、資産価値が低下したりするとして、嫌悪施設が近隣にある物件は「絶対に持ちたくない」と避けるオーナーも多い。

冒頭に述べた児童相談所も、一部の人から「嫌悪」される存在になってしまっているが、そもそも何が嫌悪施設に当たるのだろうか? 本当に、資産価値は低下するのだろうか? 近くに嫌悪施設がある物件に、銀行の融資はつくのだろうか? そんな疑問に答えるべく、今回は不動産鑑定士、銀行員、そして投資家のさまざまな意見を聞いてみた。

■「嫌悪施設」に明確な定義はない

「嫌悪施設」は、実は明確に定義されてはいない。不動産流通市場の整備などに携わる公益財団法人「不動産流通推進センター」は嫌悪施設を以下の4分類で説明するものの、実際には明確な定義はなく、「嫌悪を感じるかどうかは個々人により判断が異なるなど、一概には言えない」という。

同様に、「付近」というのもどの距離までを言うのか、どの程度近くにあったら影響するのか、ということもあいまいだ。

<住宅地近辺の主な嫌悪施設>

○騒音や振動が発生するもの
高速道路などの主要道路、飛行場、鉄道など

○煤煙や臭気が発生するもの
工場、下水道処理場、ごみ焼却場、火葬場など

○危険を感じさせるもの
ガソリンスタンド、高圧線鉄塔、暴力団組事務所など

○心理的に忌避されるもの
墓地、刑務所、風俗店、葬儀場など

株式会社西原不動産鑑定の代表取締役で、不動産鑑定士の西原崇さんは、「例えば墓地と言っても、高級住宅地にあり、著名人の墓も多い『青山霊園』の隣がダメな立地なのか、と言われればそうではありません。また、古くからのお寺がたくさんあるような地域では、お墓が立ち並ぶのも普通の光景。こうした場合、墓地が『嫌悪施設』とは言えないのではないでしょうか」と話す。

入居者や住民がその施設にどのような感情を覚えるかは、人によってさまざま。また、その施設が地域にとってどのような立ち位置にあるかによっても与える影響は異なってくる。

それでも、ほとんどの場合で『嫌悪施設』となってしまう施設もある。例えば暴力団事務所だ。

「これは、(近くにあると)墓地などよりよっぽど深刻だと思います。黒塗りの車が頻繁に出入りしていたり、その筋のような人が大勢いたりすれば、やはり多くの一般人はその近くの物件には住みたくない。住んでくれる人を見つけるには、相場より家賃を下げざるを得ないケースが多いと思います」

西原さんは、嫌悪施設による価値の低下について、「収益物件の場合、嫌悪施設が近隣にあることが、間接的に資産価値に影響を与えます。つまり、嫌悪施設があるが故に家賃を下げざるを得ず、それによって収益が低くなってしまうために、資産価値が落ちる、と考えられるのです」と解説する。

風俗街でも同様のことが言えるが、西原さんによると、歌舞伎町などでは、付近で働く人向けに家賃を高く設定したマンションでも満室運営ができているそうだ。

「ただし、こういったケースでは滞納率が一般的なマンションと比べて高い傾向にあります。そのため結局銀行の融資がつきづらく、利回りを高く設定しないと売れません。結果的に収益価値が落ちるので、資産価値としては下がっていることになります」

■葬儀場や火葬場は「それほど問題ない」?

嫌悪施設というと、一般的には墓地や火葬場、葬儀場、暴力団事務所、工場といったイメージが強い。しかし何度も述べる通り、周囲の人が嫌悪を覚えれば「嫌悪施設」になってしまう。

「例えば校庭が賑やかな小学校や保育園、1階に入った飲食店、宗教施設も当てはまるでしょう。居酒屋なども、騒音が聞こえるようなら『嫌悪施設』ですし、極論を言えば、コンビニもたまり場になったり、音がうるさかったり、ということから嫌う人もいます」(西原さん)

一方で、葬儀場や火葬場は「実はそこまで大きな影響はない」という。近年の火葬場は煙が出づらく、また外観もきれいで、気にされづらいということだ。葬儀場も、近隣にできると聞くと反対運動が起こる場合もあるが、西原さんは「できてから土地の価格が極端に下がった、ということもあまり聞きません」という。

墓地の場合は、「特に開口部(ベランダなど)の向きにある場合には、入居が付きづらい傾向にあると思います」と言い、どの向きに嫌悪施設が位置しているかによっても影響の多寡は変わるそうだ。

■銀行は嫌悪施設付近の物件に融資をするのか

収益物件への融資を担当する金融機関の視点はどうなのだろうか。メガバンクで融資担当業務を20年勤め、自身も不動産投資家である「投資家SA」さんは「確かに、マニュアルには『嫌悪施設の付近は望ましくない』というようなことが書いてありました」と述べつつも、「しかし、基本的には個別判断だと思います」と説明する。

以前、指定暴力団の総本部近くの物件への融資を担当したことがあるという投資家SAさん。当時は抗争などもなく、近隣とも共存していたことから、審査も通ったのだという。

「不人気スポットであっても、物件がそれ相応の価格であればうまく運営していくことはできます。銀行も『嫌悪施設があるからダメ』とはならず、個別の事情で判断していると思います」

不動産投資家としても、嫌悪施設が近くにある物件であっても「もちろん、検討します」と断言する。「嫌悪施設があるから投資対象外、というのは、どちらかというと今よりも昔の考え方のような気がします。価格交渉の材料にも使える可能性もありますし、結局価格や収益との折り合いがつけばいいと思いますね」

地方銀行に勤務経験があり、現在は大手不動産管理会社社員でもある投資家の「アンダーズ」さんも、「稟議書には『お墓がある』などと書きますが、評価額を下げた記憶はありません」と語る。最終的には、事業計画の内容や、投資家本人の属性を優先させて審査をしていたそうだ。また、ターゲットにする入居者層によっても、嫌悪施設の評価が分かれると感じているともいう。

「以前、アパートを土地から新築したい、という方の融資を担当したことがありました。土地がすごく安い物件だったんですが、その理由が近くに火葬場があり、葬儀場も周囲に複数あるような場所だったからなんです。正直、『大丈夫かな』とも思ったんですが、入居者のターゲットを単身者に絞るという話でした。ファミリー狙いなら厳しいと感じましたが、『単身者のみなら、家賃を安く設定すればある程度は入るか』となり、結局融資が通りましたね」(アンダーズさん)

自身が現在検討している物件も、隣に葬儀場がある物件だという。「最近葬儀場ができてしまって、現在のオーナーさんが『もうだめだ、早く売りたい』となったみたいです。実際には気にしない人も多いので、現時点でも相場よりは物件価格が若干安いのですが、もう少し下がれば買ってもいいな、と思って様子を見ています」

■投資家は嫌悪施設でも「問題ない」

実際、「嫌悪施設」をあまり気にせず、また、入居も問題なくついているという投資家も多い。

不動産投資家のAさんが横浜に所有する8戸の木造アパートは、徒歩10分ほどの距離に、火葬場がある。購入時にもあることは知っていたが、特に気にはしていなかったそうだ。「すぐ裏にあるならさすがに気が引けますが、アパートから見える場所でもないですし、問題はないと思います」。実際、現状は満室運営ができているという。

渋谷区に11平米ほどのワンルームマンションを区分所有しているBさんは、「すぐ近くにラブホテルが数件ありますが、立地の良さなのか、入居もすぐに決まりますし、問題はありません」と話す。ラブホテルがあるから、ということで家賃の値下げ交渉にあったこともないという。「720万円で購入した物件ですが、『1300万円ほどで売ってくれないか』という話もよくありますよ」と、売却への支障もないようだ。

■騒音で退去も…トラブルには注意

一方、やはり「嫌悪施設が近くにある物件は持ちたくない」というオーナーも存在する。編集部が実施したアンケートでも「嫌悪施設付近はすべて避けている」(福岡県・60代男性)といった回答も一定数見られた。

実際、退去につながるケースもある。不動産投資家のCさんが大阪市内に所有する戸建て物件のすぐそばには居酒屋やカラオケ店があり、酔客が路上で出す大声や、カラオケ店からの音漏れなどの騒音があるという。

「もちろん、入居の賃貸借契約の際に『静かな住宅街ではない』と説明して、了承ももらっているんです。それでも、やはり騒音を理由に2年で2組が退去してしまいました」

現在は、その戸建てをセカンドハウスのように利用する人が借りているというが、こうしたトラブルも起きてしまうことは念頭に置いておきたい。

50メートルほどの距離に新興宗教の施設がある戸建て物件を所有するDさん。購入時はその施設の存在が一切気にならなかったという。現在も夫婦が入居しており、また大きなトラブルになったこともないそうだ。

だが、Dさんは重要事項説明においては必須だろうと考えているという。「やはり集会となれば不特定多数の人が集まってきます。リスクであることには間違いないと思いますから、重要事項説明書に盛り込まなくてはいけない事象だろうな、と考えています」

嫌悪施設については、基本的に売買・賃貸の重要事項説明義務が課される。ただし、その範囲や対象は明確ではないため、注意が必要だ。

数年前まで賃貸仲介業に従事していた投資家のEさんは、「いわゆる嫌悪施設が付近にある場合には、賃貸仲介の場合にも当然説明しなくてはなりません。ただ、どこまで説明するかの線引きは、正直あいまいでした」と明かす。

賃貸需要についても、家賃が安ければどこでも気にしない、という人はいるそうで、「『この施設が近くにあるんだけど、それ以外はこんなにメリットがたくさんある』と、最初にデメリットを伝えることで、入居は決まりやすくなります。こうした物件は広告料も多いので、仲介としては決めたいんです」と話す。



実は定義があいまいな「嫌悪施設」。家賃を下げざるを得なくなれば資産価値も低下するが、そもそも物件価格が安く、利回りが良かったり、実際はそこまで家賃を下げなくても良かったりすることもありそうだ。

トラブルもあるため十分注意はしつつ、必要以上に恐れることもせず、投資家として各物件の事情を冷静に判断していきたい。
不動産投資の楽待 編集部

最終更新:4月20日(土)17時00分

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