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「学生しか住まない」物件に投資してしまったオーナーの苦悩《楽待新聞》

4月18日(木)20時00分配信 不動産投資の楽待

(写真:paru-Fotolia)
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(写真:paru-Fotolia)
一部の需要に依存した物件が危険であることは不動産投資の「常識」とされている。移転リスクのある大学付近の学生向けアパート、倒産リスクのある企業城下町の物件などはその代表例だろう。では、こうしたエリアに物件を所有する投資家は、リスクにどう向き合い、どう対処しているのか。複数事例の取材を通じ、「依存物件」オーナーの苦悩に迫る。

■容易ではない「学生依存」からの脱却

地方創生の号令のもと、かつてはこぞって都心を離れた大学が、ここ数年で再び都心への回帰を加速させている。少子化が進む中、大学にとって学生の確保は喫緊の課題。熾烈な学生獲得競争を勝ち抜くには、キャンパスの立地や利便性が不可欠だからだ。

分かりやすい例として、国内有数の学園都市として知られる東京都八王子市がある。同市は現在も20以上の大学・短大が集積する学生の街だが、中央大学の看板学部である法学部が、2023年を目処に東京・後楽園のキャンパスへの移転を決めて話題となった。さらに杏林大学や実践女子大学など、同じエリアの複数の大学も後を追うように都心への回帰を表明していった。

こうした街に物件を持つ投資家は、どのような状況で物件を買い、どのように事業を続けているのか。

【Case1】「社会人に入れ替える作戦」に失敗

東京都在住のサラリーマン投資家Sさんは2015年、八王子市に隣接する日野市内に、築25年の木造アパートを購入して自主管理している。購入価格は約7000万円、1K×全14戸、家賃は4万円前後で、満室時の利回りは9%。最寄り駅までは徒歩4分で、「中央大学・明星大学駅」まで1駅という立地である。自転車での通学には少し遠いが、バイクなら通えるという距離だ。

「中央大学が移転することは購入前から知っていましたし、依存物件のリスクについても理解しているつもりでした。そのうえで『学生需要に頼らなければよい』と考えて購入を決めたんです」

実はSさんは、八王子市にほど近い神奈川県相模原市にも木造アパートを保有している。相模原市も、青山学院大学や北里大学、麻布大学など複数の大学が集まる学生の街だ。

「相模原の物件も立地的には『依存物件』でしたが、移転リスクに備えるために学生の入居者を徐々に社会人に入れ替えました。それで満室経営に成功していたんです。日野市の物件も同じ方法でうまくいくと思っていたのですが……」

相模原の物件は築10年とそこまで古くなく、バストイレは別。一方、日野市の物件は築25年で3点ユニットと、学生向けの間取りだった。これらの点が社会人には受け入れらていないのでは、というのがSさんの分析だ。

それでも、客付け業者への営業はもちろん、人材サービス会社やNPO法人などにも働きかけてなんとか入居者を集めようとしたSさん。しかし結局、社会人に入れ替える作戦はうまくいかず、現在、入居者の半数程度が学生だ。結果、移転リスクが拭えないことに加え、退去が集中する年度末は不安な日々を過ごしているという。サラリーマン大家であるSさんにとって年度末は最も忙しい時期なだけに、心労も大きい。

「年度末は知人にも入居者の紹介をお願いしています。問い合わせがあれば夜間に内見に立ち会ったりするなど、常にフル回転で客付けしている状態です。できればやはり、社会人の方に入居していただきたいのですが、物件のグレードは高くないですから……。客付の厳しさは身に沁みますね」

さらにSさんはこの物件を自主管理しているため、管理面での苦労も絶えないという。

「地方から上京したばかりの学生はなかなか東京のルールに馴染めないようで、ゴミ捨てのスケジュールを守ってもらえません。初めての1人暮らしで開放的になっているのかハメを外す子も多く、騒音や地域のルール違反で近隣からのクレームもしょっちゅうです。最近は『彼氏と同棲することになった』という理由で急に退去する子もいて、学生物件管理の難しさを実感しています」

現在は努力を重ねて満室を維持しているが、最寄り大学の1つである中央大学法学部は2022年に都心への移転を予定している。それまでにどうにかして社会人への入れ替えを進めたいとSさんは考えている。

■大学の移転を知りながら……

【Case2】「300万の値引き」が決め手で購入も、客付けに苦戦

前出のSさんとほぼ同じエリアに1K×8戸の木造アパートを購入した投資家の「海好き大家」さんは、購入直前に最寄りの私立K大学が移転予定であることを知ったという。物件はK大学まで約500メートルと至近で、不動産業者からも「学生需要が見込める手堅い物件」だと購入を勧められていた。ところが購入を本格的に検討し始めた頃、約6ヶ月後にK大学が都心へ移転予定であることが分かった。

「私にとってこれが初めての物件購入でした。不動産業者との付き合いも初めてだったので強くは言えなかったのですが『移転の可能性はないのか?』ということをそれとなく聞いたんです。でも、『大丈夫ですよ』の一点張り。その頃には大学の公式サイトに移転計画が告知されていたので、知らないはずはないんですけどね。隠していたのでしょう」

K大学の移転を知った直後、いったんは購入をやめようと考えていたTさんだったが、初めて「買いたい」と思えた物件をなかなか諦めることができずにいた。そんなある日、その物件が300万円ほど値下げされていることに気付く。この値下げが後押ししとなり、「あとは努力でなんとかなるだろう」(海好き大家さん)と考え、約4200万円で購入を決めた。

購入当初は家賃4万8000円で11%の利回りを想定していたが、K大学の移転によって周辺では賃料の値崩れが起きた。結局、賃料を6000円下げて満室を目指すことにした。

「物件は八王子駅からバスで25分、もう1つの最寄り駅からもバスで15分と交通の便が悪く、周辺にはめぼしい商業施設もありませんでしたから、客付けにはかなり苦戦しましたね」

内覧希望者が出れば自ら車で迎えに行って案内し、道中では立地の悪さや周辺施設の不便さを正直に伝え、1カ月のフリーレントなどで入居者に地道なアピールを続けた。物件のWebサイトも自作するなど、相当な労力を費やしてどうにか満室にこぎ着けた。

海好き大家さんは現在公務員で、兼業申請をして不動産投資を始めた。大家業には公務員の仕事とはまったく違った魅力があり「そのおかげで客付けの苦労も気にならなかった」という。

「本業の公務員では、決められた仕事をルールに沿って進めていくことが多かったのですが、大家業は自分で選び、自分で決断することが求められます。それが私にとっては新鮮で楽しかった。不動産投資を始めたことで自信も付き、本業もうまくいくようになりました。これまでは国民のみなさんの税金から給与を頂いていたので、今後はシングルマザーのための物件提供など、社会に恩返しができるような大家を目指していきたいです」

■「大学生協」との戦い

【Case3】地方1棟マンション、「新参者」の苦悩

地方の依存物件には、地方特有の問題が潜むケースもある。

関西在住の投資家・Hさんは今から7年前、九州の某エリアに1棟RCマンションを購入した経験を持つ。立地は国立F大学最寄り駅から徒歩3分、ほかにもいくつかの私立大学や専門学校が集まる学園都市だ。

物件はバブル期に建てられたものらしく、周辺の建物よりもグレードが高かったが、購入時は40部屋中20部屋以上が空室だった。「前オーナーが地主系だったようで、客付け業者もやる気がなく、入居付けに努力した様子が見られませんでした」とHさんが振り返るように、内装はリフォームされた形跡がなく、外壁や共用部も汚れが目立っていた。それでも、「手を入れれば必ず化ける」と感じて購入を決めたという。価格は1億5千万、満室想定当時の利回りは13%だった。前オーナーには、購入前に外壁修繕と屋上防水を済ませることを約束してもらった。

購入後、Hさんはまず学生の入居者を集めるべく客付け業者に営業を始めたが、地元にゆかりのない「新参者」ゆえに思わぬ洗礼を受けることとなった。

「F大学の新入生の多くが、大学生協のあっせんでアパートを決めていたんです。大学生協にパイプを持つ客付け業者は地主系大家さんとベッタリで、新参者の私などまったく相手にしてくれませんでした。このエリア周辺には私のような投資家はほとんどいなかったようです」

この逆境がHさんに火をつけた。話を聞いてくれる客付け業者に片っ端から営業に出向き、空室には最小限のリフォームを施した。さらに家具家電付きのプランや内覧会の開催など、当時のそのエリアでは珍しかった手法を駆使して徐々に入居者を集め、1年をかけて満室にすることができた。

40戸のうち30戸以上が1Kの間取りだったが、一部1LDKの部屋もあったため、そこにはカップルなど複数での入居も可とした。それでも、入居者全体の6~8割は学生。しかしHさんは、社会人への入れ替えなどは特に考えなかったという。

「最寄りのF大学は国立大学でしたから、めったなことでは移転しないだろうと考えて学生を中心に集客しました」

その後、購入から6年たったタイミングで物件を売却。保有期間中は90%以上の入居率を維持していたこともあり、1億6000万円で手放すことができた。

■企業城下町での投資は「心中覚悟」で

大学と同様、移転や倒産のリスクがある企業城下町ではどうだろうか。

愛知県の自動車企業集積エリアに住む投資家のMさんは、1年ほど前、同エリアにRC造6戸の1棟マンションを6000万円で購入した。某大手企業へ徒歩圏内という好立地で、地域の労働者の需要を見込んだ依存物件である。収支は購入前のシミュレーション通りに推移しており、今の所退去もない。同エリアに2棟保有する相続物件も含めて、現状入居率は100%だという。

「依存物件だという自覚はありますが、この地域は賃貸物件に限らず、小売店も飲食店も全ての経済活動が自動車産業に依存しています。つまりこの地で不動産投資をするなら、必然的にすべて依存物件になりますね(笑)」

Mさんはこのエリアに生まれ育ったため、細かい地域事情をよく知っている。例えば同じ市内でも道路1本を挟んだだけで一気に需要が落ち込む地域もあれば、かなり離れた僻地でも意外に良好な地域もあるのだという。

「自動車関連の企業にお勤めの方々は属性がよいのでマイホーム派が多く、少しでも賃料が高いとフラット35が競合になります。ちょっと特殊な事情の多い難しい地域だと思いますね」

Mさんはこの地での依存物件投資へのリスクについて、次のように考えている。

「自動車関連企業の移転や撤退はないと確信していますし、そもそも移転できる規模の企業群でもありませんが、もしそうなった場合は地域経済全体が崩壊するので完全にお手上げです(笑)。すべての現金をかき集めて完済してしまうしか逃げ道はないでしょうね。まあ、それで相応な含み損を抱えることになりますが」

■「移転しやすい大学」「しにくい大学」の見極め方

最後に、冒頭で触れた大学の「都心回帰」について分析しておきたい。

国内の大学事情に詳しい進学アドバイザーの倉部史記氏によると、この傾向は「これから地方大学の都心回帰は、さらに加速することは間違いない」という。理由は、移転によるメリットが大学にとってあまりに大きいためだ。

「少子化が進む昨今、大学にとって喫緊の課題は『学生の確保』です。大学は教育機関であると同時に経営組織でもあるわけですから、熾烈な学生獲得競争を勝ち抜いていかなければならない。立地は競争力を高めるために大きな武器ですから、地方のキャンパスがこぞって都心に移っているというわけです」(倉部氏)

例えばいち早く都心回帰を打ち出し、2005年に埼玉県から東京都文京区へ移転した東洋大学では、移転後の志願者数が順調に増加。また2014年に一部の学部を日野市から渋谷区へ移転させた実践女子大学では、移転後に志願者数が3割以上増加するなど効果はてきめんだ。将来の少子化は不可避である以上、大学の都心回帰傾向が続くことは間違いなさそうだ。

大学の都心回帰は、地方の学生向けアパートを所有する、あるいは今後購入予定の投資家にとっては気になる話題であろう。大学移転の可能性を事前に予測する方法はないのだろうか。

前出の倉部氏によると、移転しやすい大学には特徴があるという。倉部氏の話をまとめると、以下の点がポイントとなる。

■移転しやすい地方大学の特徴

・定員割れが起きている大学

入試の倍率が1.0倍を切った「定員割れ」状態にある大学は、学生数確保のために移転する可能性がある。また合格者全員が必ず入学するとは限らないため、現在はまだ定員を割っていなくても、倍率が1.0倍に近づいていくほど移転の可能性も高まると言える。大学の公式Webサイトや入試情報サイトなどを調べ、倍率をチェックしておきたい

・特定の学部/学年のためだけに提供されているキャンパス

こうしたキャンパスは、より利便性の高い都市部に集約されるケースが見られる。例えば三重県の皇学館大学は、自治体からの誘致を受けて名張市に社会福祉学部キャンパスを開校し、学生がボランティアや街づくりに参加するなど順調であったが、定員割れが続き2009年に撤退している

・女子大、短大、ファッションや芸術系学部のキャンパス

傾向として、女子大や短大を検討している高校生や、ファッションや芸術を学ぶ学生は都市部でのキャンパスライフを望むことが多く、理工系などと比べて立地の影響が大きいと見られている。定員割れを起こしている場合、こうした層の志願者を増やしたい大学は、人気向上や学生数確保のため、都市部へ学部や学科を移転させる可能性がある

・規模が小さく、都心に既に土地を持っている大学

日野市から渋谷区へ移転した前出の実践女子大学は、渋谷の一等地に学校法人として中学・高校の土地を所有していた。都市部に学生を抱えるだけのキャパシティを持つ大学もまた、移転する際のハードルが低いといえる

また倉部氏は、「どんな大学も(移転の)可能性はゼロではない」と前置きしたうえで、移転しにくい大学の特徴を次のように挙げる。

■移転しにくい地方大学の特徴

・国際色が強く教育レベルの高い大学

外国人留学生を集めてレベルの高い国際教育を実施している大学は、都心にこだわらない傾向にある。外国人留学生が重視するのは生活コストの安さや地域の安全性であり、都市部でのキャンパスライフへの憧れも日本人学生に比べれば少ないためだ。例えば大分県の立命館アジア太平洋大学には世界各地域から優秀な学生が集まっており、学生の約4割を外国人留学生が占める

・医療系の大学

実習先として医療機関を確保する必要がある医療系の大学は、近隣の医療機関とのつながりを重視している。医療系の学部は増加傾向にある一方、実習先医療機関は不足しがちなので、すぐに移転する可能性は比較的低いと考えられる。

そのほか、国公立大学はそもそも人気が高く、キャンパスの規模が大きいため移転コストがかさむことから移転のリスクは比較的低いといえる。小中高大が併設され、連携した教育で社会から高く評価されているような一貫校も同様だ。

■「地域に根付いた大学」も油断はできない

自治体や地元地域との連携がうまくいっている、地域に根付いた地方大学は移転しづらい、と見る向きもある。これは一理あるように思えるが、少子化時代を生き抜くために、大学が「地方創生を切り捨てる」という苦渋の決断を強いられるケースも出てきている。

「東京理科大学は、1年生全員が北海道・長万部で全寮制教育を受ける基礎工学部を再編し、今後は都心での4年一貫教育に集約すると表明しました。この長万部キャンパスでは毎年、同学部の新入生が1年間を過ごすということで、地域住民と学生との連携が非常にうまくいっていたんです。毎年、新入生が入学するたびに地域を上げて歓迎しており、地方創生の成功モデルとも言われていたのですが……」(倉部氏)

その後地域の猛烈な反発があったのか、大学は方針を一転、「国際化のための教育の場」としての全寮制の継続を発表したが、その具体的な対象者や移行時期などの詳細はまだ固まっていない。こうした動きは今後、別の大学でも起こりうる。少子化が深刻化している昨今、大学も背に腹はかえられぬといった事情があるようだ。



ここまで紹介した事例のオーナーたちは結果として大きな失敗をすることはなかったが、そこには不断の努力が求められ、苦悩もつきまとう。大企業の城下町といった特殊な例を除けば、多くのオーナーは依存から脱却する道を探してもがいているのだ。やはり、依存物件への投資はさまざまなリスクをはらむ。依存のリスクから目を逸らし、安易に投資することはやはり危険だということを改めて認識しておきたい。
不動産投資の楽待 編集部

最終更新:4月18日(木)20時00分

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株式会社ファーストロジック

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