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マンション選びの「ババ抜き」で負けないために《楽待新聞》

4月12日(金)11時00分配信 不動産投資の楽待

(写真:不動産投資の楽待)
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(写真:不動産投資の楽待)
所有者の高齢化と建物の老朽化という「二つの老い」が進行する中で、管理が行き届かずに荒廃していくマンションが増えている。将来的なスラム化を防ぐ手段の一つは建て替えだが、過去に実現したケースはわずか230件ほど。年金暮らしの高齢者にとって建て替えや引っ越しに伴う費用負担は重く、合意形成という大きな壁が立ちはだかる。

永住意識が高まる中で「終の棲家」であるマンションの未来を信じる入居者もいるが、管理に無関心な投資家との温度差は大きい。10年後、20年後まで価値を保ち続ける物件を見極めるために必要なことを考える。

■実需オーナーの「危機感」で持ちこたえる

「おそらく近い将来、朽ち果てて廃墟になるような物件ですが、利回りが優秀なので……。本格的に危なくなったら手放せばいいだけです」

築40年を超す世田谷区のワンルームマンション。区分オーナーの40代の女性は「事故物件だったこともあって2011年に500万円で購入できました。利回りは14%を超えています」と語る。

物件は自主管理での運営だが、共用部の手入れは行き届いている。全60室の3分の1を占める実需オーナーの多くは高齢者で、終の棲家がこのまま老朽化することは当然望んでいない。自分たちの手で資産価値を保とうと、日々の管理に力を入れている。

そんな想いとは裏腹に、投資家の運営に対する関心は著しく低い。「オーナーが日本全国に散らばっているので、音信不通というケースも多いです。管理組合の総会では委任状すら集まりません」と女性。死亡したオーナーの相続人など運営に興味のない人も多く、修繕積立金は滞納が相次いでいる。約40年間で大規模修繕の履歴は1度もない。

■暗い未来

女性は「水漏れなど問題が起これば実需オーナーが対応してくれるし、共用部は綺麗に保たれているので、投資家目線で見れば助かっています」と語る。「でも大規模修繕をしていないので中身はボロボロでしょうし、建て替えも修繕もできないので、朽ち果てていくのを待つだけの状態です」

投資家の無関心で修繕積立金不足に陥り、スラム化に近づいていく中で、入居者の未来には暗雲が立ち込めている。女性は「実需の人たちはずっと住んでいきたいだろうから苦しいと思います。でも私のような投資家としては、利回りが高いのであと数年すれば多少値下がりしていても売ればいいだけですから。自分だったらこんな物件恐ろしくて住めませんよ」

■崩壊寸前マンションを狙うハゲタカ

このように修繕積立金が不足していたり、管理組合が機能していなかったりするマンションはリスクも大きいが、逆に狙い目とみることもできる。投資物件を多数扱う渋谷区の不動産会社の担当者は「そういった物件はスラム化への懸念から買い手が付かず、取引価格が下がるケースがあります。その分利回りが高くなるので、そういったマンションに絞って狙う投資家もいます」

別のオーナーは「管理組合が機能不全に陥っている『危険な物件』は口コミで広まっているので、安値で買って何も知らない中国系の投資家に5年ほどで売り抜ける方法もあります」と語る。「管理組合の借り入れが何千万円あろうと、外国人投資家は気にせず買いますから。今後は『ババ抜き』のように危険な物件がぐるぐる回っていく未来もあり得るかもしれません」

■立ちはだかる現実

国土交通省の調査によると、2015年末現在のマンションストック数は623万戸で、このうち旧耐震基準の1981年6月以前に建設されたマンションは106万戸に上る。資産価値を維持するには建て替えも選択肢の一つだが、2016年4月1日現在で建て替えが完了した物件は全国で227件にとどまる。

これらは容積率に余裕があり、建て替えで以前より戸数が増え、その余剰分を販売することで建て替え費を捻出できたケースがほとんど。容積率緩和などの対策も進んでいるが、現時点で実現可能な物件は限られる。同じ大きさで建て替える場合は1世帯当たり数千万円の支出が必要と想定され、年金暮らしの高齢者にとっては費用負担が重くのしかかる。また、建設当時の法令では適法だったが、その後の法改正で違法となった「既存不適格マンション」も、従前と同じ容積率で建て替えることができないため実現は極めて困難だ。

国は耐震性が不足した古い物件の建て替えが進んでいない状況を問題視し、2014年にマンション建替え円滑化法を改正。以前は区分所有者全員の賛成がなければ土地建物の売却ができなかったが、耐震性不足の認定を受けたマンションは5分の4以上の賛成で可能になった。理論上は老朽化して立ち行かなくなった物件を解体して敷地を売却し、区分所有者で分配金を受け取ることが可能だが、実際はそのハードルも高い。

■「老いた家」で身動きできず

「投資家の都合だけで住まいを奪うわけにはいかないので……」

八王子にある1978年建築の旧耐震ファミリー向けマンションのオーナーの男性は語る。45室のうち3分の2は実需入居者だが、その半数ほどは新築当時から住み続けており、急速に高齢化が進んでいる。「夫は老人ホーム、妻は独居で年金や生活保護暮らしというケースも多いです」

この物件も既存不適格で、容積率オーバーのため同じ面積での建て替えができず、現在の建築基準法に適合する容積率で建て替えれば部屋数が減ることになる。建物を解体して更地化すれば、理論上は持ち分に応じた金額が分配されるものの、椅子取りゲームのような状況になって一部のオーナーは住まいを失う。男性は「おそらく十数世帯はマンションを出ていかないと建て替えられない。終の棲家だと思って住んでいる80代ぐらいの入居者のことを考えれば、合意形成は困難です」

修繕積立金は約1億円貯まっているが、男性は「解体費用を3000万円として、7000万円を全世帯で分けると1世帯の分け前は約155万円。土地持ち分割合は路線価30万円、土地面積300平米と仮定すると1世帯200万円ぐらいにしかならない。合わせて350万円ほどを持ってマンションを出ていって、ほかのところに住めるかというと難しい」と語る。「投資目的のオーナーであればお金だけもらって解散するという選択もできますが、実需オーナーの場合はお金の問題ではなく、自分の生活がかかっているので」

■平穏な暮らしを壊せない

結局、このマンションでは建て替えを断念し、長寿命化を目指す方針で一致。都の補助金を活用して耐震補強をする方向で動いている。「実需オーナーのおかげで管理状態は良好に保たれていますし、普段から付き合いもある人たち。建て替えを強行して住まいを奪うことはできません」と男性は言う。

国土交通省が2013年に実施した調査によると、マンションの世帯主の年齢は60歳以上の割合が50.1%にも上る。居住者の永住意識は年々高まっていて、1980~2013年で21.7%から52.4%まで上昇。半数以上が現在住んでいるマンションを「終の棲家」として考えていることが分かる。一方で、マンションの老朽化に対する管理組合の対応としては「建て替えの方向で具体的な検討をした」はわずか2.6%。「議論を行っていない」が56.5%にも上り、危機意識の薄さが浮かび上がる。

■価値の落ちにくいマンションの見分け方

10年後、20年後も価値が落ちにくいマンションはどのように見分ければいいのだろうか。不動産コンサルタントで株式会社さくら事務所会長の長嶋修氏は「まずは外観をざっと見て、ひび割れやタイル落ち、膨張している部分がないかをチェックします。共用部の廊下などで鉄筋の錆び汁などが浮かんでいることもありますが、重要なのは管理組合としてそれを把握しているかどうか」と語る。共用部やエントランス、廊下、駐輪場、ゴミ置き場などが乱雑なマンションは、管理組合の運営がうまくいっていない証だという。

さらに「上下水道の配管や電気配線など隠れて見えない部分が大事なので、築30年を超えるような物件では、かつて交換したことがあるか、今後交換の予定があるかどうかなどを確認するべきです」と指摘。「普通は見ないような地下ピットや駐車場なども、許可をもらえれば入って確認したい。ひび割れから水が染み込んでコンクリートの表面に白い成分が染み出す『エフロレッセンス(白華現象)』が重症化したようなケースなどは注意が必要です」

管理組合の運営状況を把握するには、長期的な修繕計画や大規模修繕の実施時期、修繕費の増額時期などをチェックする必要があるという。長嶋氏は「日本でもだいぶ情報開示の姿勢が上がってきましたが、それでもまだ消極的なマンションの方が多い。逆に言えば、管理組合の議事録などの内部資料をオープンにするマンションは、自分たちの運営に自信を持っていると判断することもできます」

国土交通省が2013年に実施した調査によると、駐車場使用料等からの充当額を除く1戸あたりの修繕積立金は月平均1万783円。「新築時は見かけ上の金額を抑えるために低く設定されていることが多いですが、1平米あたり220円が適正です」と長嶋氏。「大規模修繕は15年から20年に1度必要。1回目は足りても2回目の大規模修繕で積立金が足りなくなるケースが多く、その場合は値上げするしかない。10年目、15年目など徐々に値上げしていく計画ではなく、最初から将来必要な額を考えて平準化していた方がいいと思います」。

中には修繕積立金が月3000円のまま新築から50年近く経過し、大規模修繕に億単位の資金が必要と分かったため一気に8倍近く値上げすることになったマンションもあるという。

■中古マンションの「勝ち組」と「負け組」を分けるものは

国土交通省の調査によると、2015年の時点で築40年超のマンションは全国に約56万戸あり、10年後には162万戸、20年後には316万戸まで増えると試算されている。空室率は築40年を超えると高くなる傾向があり、平均空室戸数割合は全体では2.4%だが、完成年次が1974年以前では5.6%、1969年以前では8.2%まで上がる。今後も住民の高齢化で管理組合が機能不全に陥り、管理費の滞納が進んで大規模修繕や建て替えができずにスラム化するマンションが増えていく恐れがある。

長嶋氏は「今は管理組合が優秀なマンションと機能不全に陥っているマンションの値段がそれほど変わらない。悪く言えば何をつかむか分からないロシアンルーレットのような市場ともいえるし、良く言えば管理状態の見極めによっていい買い物もできる。今後は管理組合の質によって市場評価は二極化していくでしょう」

「マンションは管理を買え」といわれるが、正常に機能していない管理組合が増加する中で、価値が落ちない物件の見極めは困難になっている。中古マンションの「勝ち負け」がはっきりしていく流れの中で、市場から高く評価されるために、自ら資産価値を高めていく意識が必要な時代に入った。事前に管理状況などを徹底的にチェックした上で、購入後は管理組合の一員として高い参加意識を持ち、専門家の意見を取り入れながら長期的な計画で価値を維持していくことが重要になる。
不動産投資の楽待 編集部

最終更新:4月12日(金)11時00分

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株式会社ファーストロジック

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