ここから本文です

元国税局員の芸人・さんきゅう倉田さんが語る税務調査の闇《楽待新聞》

4月3日(水)15時00分配信 不動産投資の楽待

(写真:不動産投資の楽待)
拡大写真
(写真:不動産投資の楽待)
国税調査官からお笑い芸人へ転身――。異色の経歴を持つ、さんきゅう倉田さん。しかし、「珍しい経歴」「なぜその道へ進んだ?」と意外に感じているのは周りだけで、本人の中では、大学在学中から芸人になることも選択肢の1つにあったという。

「当時は、安定を求めて国税局へ入庁しました。調査官として日々コツコツと働く中、『派手に生きよう』と考え直すようになったんです。後は野となれ山となれで、辞表を出して国税局を退職しました」(倉田さん)

2年弱勤めた東京国税局では、法人課税部門に所属し、100を超える中小企業や個人事業主の税務調査に携わった。中にはドラマのような税務調査の現場も…。国税調査官時代のエピソードから、知っておきたい税務調査の基礎知識、税務調査に入られにくくする対策を聞いた。

■国税調査官になったのは偶然

――なぜ国税調査官になられたんでしょうか? 倉田さんは理工学部建築学科卒業だそうですが。

確かにあまりいないかもしれません。3年次に単位を取り終わっていて、時間が余っていたので、残りの学生生活を有意義に過ごそうと、公務員の勉強をすることにしたんです。僕、根が真面目なんですよ(笑)。

公務員試験は日程がかぶっているものもあり、すべては受けられないんですが、いくつか受かった中から、説明会の印象が良かった国税局を選びました。

――「絶対に国税局に入る!」という熱い思いがあったわけではないんですね。

そうですね(笑)。映画『マルサの女』を観たのも、国税調査官になってからでしたし。ただ、あれこれ論理的に考えて、詰めていくのが好きな性分なので、業務自体は向いていたと思います。

――100を超える現場の税務調査を担当する中で遭遇したという、ユニークな事例をいくつか教えていただきたいです。

一風変わった現場は決して多くはないんですが、とくに記憶に残っている事例をお話しますね。1つ目は、成人向けのDVDを制作する会社へ税務調査に入ったときの話です。

社長ひとりだけの会社で、20畳ほどの室内には至るところにDVDが高く積み上げられていて、床にも散らばっていたりして、身動きも取りづらいほどゴチャゴチャしていました。

部屋の両端にソファが置かれていて、うち片方のソファに掛けて税務調査をしていました。成人向けDVD制作会社というと、なんとなくその筋の人、怖そうな人を想像していたんですが、社長は「外暑かったでしょう。上着脱いでくださいね」など、細やかな気遣いをしてくださる優しい方で。

基本的に中小企業の税務調査は2日間に渡って、9~16時くらいまでやるんですが、初日の半分くらいはじっくり話をするのに時間をかけて、社長の人となりや会社の状況をつかむことになっています。

――そこでどんな話が出てきましたか?

「最近はネットで無料の映像を見て満足する人もいるから、うちみたいにDVDを作っている会社はけっこう厳しい状況なんですよね」とおっしゃっていましたね。

また、従業員はいるのか聞くと、「今はこういうご時世だからひとり。昔は雇っていたんだけどね」などと、カッコつけることなく、現状を話してくれました。でも、今は自分しかいない、というのになぜか人の気配がするんです。

――どういうことでしょうか?

積み上げられたDVDの隙間から、肌色がちらっと見えたり、「かわいいね」「彼氏いるの?」「どんなことしてるの?」などと、人の囁き声が聞こえてくるんです。幻覚じゃないですよ。

そこで社長に「誰かいますよね?」と聞くと、「まあまあまあ…」と言葉を濁されて。話を詰めていくと、制作費削減のために社内で撮影をしている、というんです。

――税務調査中に、ということですよね?

ええ。撮影日をずらすこともできず、かつ調査する場所もその一部屋しかなく、やむを得なかったようで……(笑)。ただ、社長さんは申告に関して違法なことをしておらず、調査自体はつつがなく終わったんですが、実は続きがあるんです。

調査から1週間ほど経って、その会社のサイトを眺めていたんです。お試し動画のコーナーがあり、そのうち1つを流してみると、ソファの上で男女が絡み合っていて。そこでチラッと、「倉田」という僕の名札が写り込んでいたんです。映像の揺れに合わせて、名札も揺れていて(笑)。

「これはまずいのでは…?」と思って閲覧し続けていると、映像が終わりに近づいたとき、男性が女性の体にブランケットのような布をかけてあげたんですね。よく見ると、それ、僕のスーツのジャケットでした。

――知らず知らずのうちに、倉田さんも微妙に「出演」していたということですね。

そうなんです(笑)。すぐに社長に電話をかけて、その動画を削除していただき、とりあえず一件落着しました。

■「お前を刺してやろうと」、恨まれた過去

――税務調査として、不動産投資関連の会社や個人を尋ねていったことはありますか?

あります。会社と個人、1つずつ事例をお話ししますね。まず、会社の方は70代男性がひとりでやっていて、ご自身のお母さんを従業員にして、毎月30万円の給与を支払っているケースでした。

男性が70代なので、お母さんは90~100歳くらいの年齢になりますよね。そんな高齢の女性が月30万円分の仕事ができるかなあ、と準備調査(*1)の段階で不思議に思っていたんです。

*1 準備調査 税務調査の対象となる法人・個人を決定後、調査官は事業概況説明書や過去の調査時等に入手した会社案内、ホームページ等をチェックし、調査対象がどのような事業を行っているか把握。さらに、各種申告書や財務諸表を分析し、申告数値の変動や中でも目立つ費用計上科目を洗い出し、実地調査(現地に出向いて帳簿などを調査する、いわゆる税務調査を指す)で重点的に調査する項目を検討したり、資料を作ったりする。

――70代の社長さんは、お母さんにどんな仕事を任せている、とおっしゃっていましたか?

お会いして話を聞くと、「うちは管理会社を使っていないから、基本的に不動産の管理は24時間対応でやらないといけなくて、自分ひとりでは到底無理。だから、電話番や掃除、共有部の電気の交換、入居者とのやりとりなど、母親にいろいろと手伝ってもらっていて、給与として支払っている30万円は適切な金額なんだ」とおっしゃっていました。

――その話を信じましたか?

いえ、怪しいなと疑っていました(笑)。税務調査当日は社長の自宅兼事務所であるマンションにおじゃましていて、お母さんと一緒にお住まいだと聞いていたので、お母さんを呼んでもらったんですね。

奥の部屋から出てきたお母さんは、地面しか見えてないくらい腰が曲がっていて、手も震えているような状態。認知症などの症状はないようでしたが、かなり耳が聴こえづらくなっている様子でした。不動産管理の仕事ができるとは到底思えませんでした。

――お母さんは自身のお仕事について、なんとおっしゃっていたんでしょうか?

「お母さん、お仕事されてますか? お仕事、大変じゃないですか?」と聞くと、「仕事してない」。「毎月、お金を(息子さんから)もらっていると聞きましたが、もらっていますか?」と聞くと、「もらってない」と。

税務調査は抜き打ちで行うものではなく、事前に調査対象者と予定を決めて実施するものです。税務署からの連絡から調査当日までに十分時間はありますから、さすがに口裏を合わせているだろうと思ったんですが、社長とお母さんの間でそれも一切なかったようです。社長が黙ってお金を自分のものにしていた、というわけですね。

――お母さんもびっくりですね。最終的に、社長はどれくらいの額を追徴課税として納めることになったんでしょうか?

約200万円です。通常、調査で問題が見つかったケースでは5年分、よほど悪質な不正をしているケースでは7年分遡って調べることになっています。こちらの事例はそこまで悪質ではないため、5年分の調査を行いました。ただ、これも後日談があるんです。

後日、社長さんが納税にいらした後、「話がしたい」と勤務中に呼び出されたんです。そこで、「駅前に◯◯◯(某ファストフードチェーン店)あるだろ。俺、いつも17時頃、おまえが通るのをガラス越しに見てるんだ。包丁で刺してやろうと思ってよ」と脅されまして。

国税調査官というのは、どちらかというと恨まれやすい職業なので、この手の脅しはあるだろうとは覚悟していて、さほど驚きはなかったです。ただ、恐怖感はありました。

――それに対し、どう対応したんですか?

「社長、そんなこと言わずに、気をつけて帰ってくださいね」となだめて、なんとか帰ってもらいましたが、帰路は「今日もファストフード店で僕のことをチェックしていたらどうしよう…怖いな」と感じていました。ファストフード店は駅前にあり、その前を通らないと家に帰れないので。

怯えながらファストフード店近くまで歩いていくと、外に人だかりができていたんですね。社長が包丁を持っているのでは…と恐る恐る近づくと、社長のお母さんがハンバーガーを撒き散らしていたんです。

どうやら社長が忙しくて、お母さんをファストフード店へ「見張り」に寄越していたようです。僕が経験した中でも、やや怖かった事例のひとつですね。

■不動産投資家の税務調査は?

――続いて、個人の不動産投資家に行った税務調査の事例を教えていただけますか。

不動産投資を本格的に始めたタイミングで会社を辞めた、個人事業主の男性の税務調査をしたことがあります。なぜ男性が調査対象になったかというと、自宅近くのファミレスや居酒屋などへの支払いが多かったから。

取引先や仕事仲間とはまず行かない場所だよな、と感じるような辺鄙なエリアの店ばかりで、おそらく家族との外食費を経費にしているんだろう、と想像しました。

もらってきているのもレシートではなく、領収書でしたし。普通に考えて、レシートのほうが日付や人数など、載っている情報が多いです。あえて領収書にするのは、情報を隠す目的があるんじゃないかと、疑ってもいたんです。

――税務調査中、男性はそれらの領収書の内容について、なんとおっしゃっていましたか?

はじめのうちは、「仕事関係者や不動産投資仲間と食事をしている」とおっしゃっていました。でも、僕が「皆さん、こんな遠方まで来ますか?」「来るにしても、どうして◯◯さんがごちそうするんですか?」と詰めると、「俺が一番年長だから」と一言。

さらに、「誰と行ったか教えてください」と迫ると一瞬言葉に詰まって、「それは教えられない」とおっしゃるんです。埒が明かないので、「ご家族で食事に行かれたんじゃないですか?」と単刀直入に問うと、「行ったこと(行ってそれを「経費」にしたことも)あるかも…」とぽつぽつと正直にお話ししてくださるようになりました。

――事業用と個人用の財布を一緒にしていたんですね。でも、個人として使ったお金は、当然経費にはできませんね。

そうですね。たとえば、もし怪しい領収書の8割が、家族と食事に行ったときのものだと、8割は認定賞与(*2)の扱いになります。当然、経費にはできず、所得税の対象になり、課税されることになります。

*2 認定賞与 税務調査において、その経費は「経営者が会社のお金を個人的に使ったものである(=利益供与)」と判断し、その支出を経営者に対する賞与と考えること。

――男性は最終的に、いくらほど追徴課税されることになったのでしょうか。

過少申告加算税や延滞税、利息などを含めて30~40万円といったところでしょうか。加えて住民税の追加もありました。

――男性は、どういう対策をしておけば、追加納税する事態にはならなかったと思いますか?

帳簿の摘要欄に、いつ、誰と、どこで、何の目的で食事をしたか等、詳細が書いてあれば、税務署はその情報を見て判断しますが、男性はそれらをまとめていらっしゃらなかったんです。もし、それなりにきちんと書いていれば、結果は変わったかもしれません。

ただ、税務調査初日にじっくり話を聞いて、相手の性格をつかむようにしているので、本当に金払いがいい人なのか、けっこう遊んでいる人なのか、見抜ける自信はありますね。

■税務調査が入るのは、ある意味「運」!?

――そもそも税務調査に入る会社や個人はどうやって決めているんでしょうか?

まず、税務調査が入りやすい要素としては、「売上や利益が同業他社と比べて明らかに伸びている」ことがあります。たとえ、その会社や個人が悪いことをしていなくても、売上や利益の変動が大きければ大きいほど、もし申告にミスがあった場合、追加納税される額も大きくなりますから。

極端な話、年収300万円のところで申告の誤差が10%あっても、30万円くらいしか取れないわけです。それなら年収3000万円のところに行ったほうが……となりますよね。そのため基本的には、売上や利益が上がっているところを狙います。

――逆に、売上や利益が下がっているところに税務調査に行っても、あまり追徴税額は期待できないんですか?

ところが、そういうわけでもないんです(笑)。下がった理由が明確でなければ、税務調査に入るかもしれません。売上や利益を隠している可能性があるからです。

その他の要素としては、「申告書に怪しい点が見受けられる」こともあります。いい加減にまとめられた申告書、添付書類に抜け漏れがある申告書は、職員の目に留まりやすくなるんです。また「タレコミがある」と、調査に入られる可能性が上がります。

――タレコミ、ですか?

その人に恨みを持つ人が、「◯◯は正しく申告していないと思う」など、適当なことを告げ口してくるケースがあります。たとえ、明確な根拠はなかったとしても、調査に行くことはありますね。すごく基本的なことを言いますが、人から恨みをかわないこと、妬まれないことはかなり大事だと思います。

――入られるかどうかは、「運」の要素が非常に大きいように感じます。

法人設立(個人事業の開業を含む)から3年以上経ち、3年分の申告書が提出された状態になり、かつある程度の所得があると、どんな会社も調査対象になる可能性があると考えてください。

また、個人だと確定申告の時期(1~4月)にはあまり税務調査を行いませんが、法人だと1年を通して税務調査を行う可能性はあります。

ここまでを総合して考えると、運の要素がかなり大きいといえます。というのも繰り返しになりますが、税務調査は最低3年分、多くて5年分、特別な場合では7年分遡って行われます。だから、最初に戻りますが、法人設立・個人事業開業3年を経過すると、あとはもう運というわけです。

――運で決まるところが大きいとはいえ、なるべく税務調査に入られないよう、個人投資家ができることを知っておきたいです。

全部びっくりするくらい当たり前のことですが、大きく3つ、できることがあるかなと思います。1つ目は、税理士と契約を結んでおくこと。税理士をつけているだけで、税務署職員に「きちんとしている」印象を与えることができます。それにより、税務調査に入られない可能性は上がるでしょう。

某大手警備サービスのシールを玄関先に貼ると、泥棒が入る確率って減りますよね? それに近い感覚だと思います。

もちろん、税理士をつけたからといって、絶対に入られないと言い切ることはできませんが、たとえ税務調査が決まった場合でも、基本的には税理士が対応してくれるのでストレスは少なくなるでしょう。

――これまで事例として挙げてくださった方々は、税理士をつけていなかったのでしょうか。

どなたもつけていませんでしたね。正しい方法で税務調査の機会を減らすには、税理士をつけるのがベストです。ある程度利益があるなら、顧問税理士をつけるのをおすすめします。人によって金額に差はありますが、月1万円くらいから頼める税理士もいます。

2つ目は、これも当然ですが、申告書をきちんと作ること。必要な添付書類もすべて添えることです。足りないものがあると、悪い意味で目立ってしまいます。

3つ目は、節税に関係する内容ですが、経費を増やすなら正しい方法で増やすこと。当然、仕事に関連したお金しか経費にできないので、いかに仕事と関係するところでお金を使うかが重要になります。

その上で、どこからどこまでが仕事なのか、また関わる人についても、この人は仕事で、この人はプライベートで、この人は仕事とプライベート両方で関わる人、というふうに明確に線引きして、その範囲で考えて、経費を使う必要があります。

「これは◯◯のために、◯◯で使ったお金だから経費」と具体的、論理的に説明できるくらいになっておくのが理想ですね。たとえば、不動産投資家なら、物件を見にいくのは仕事ですから、そこで従業員を連れて行く際の交通費や、内見の合間にとった食費なども経費になりますよね。また、家族を従業員にして、非課税の範囲内で働いてもらうのも、節税につながるでしょう。

正しい方法で申告、納税、節税をするのが一番かと思います。

<さんきゅう倉田さんプロフィール>
お笑い芸人。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。元国税調査官。FPの資格も持ち、Webメディアを中心にマネーにまつわるコラム等も執筆中。
不動産投資の楽待 編集部

最終更新:4月3日(水)15時00分

不動産投資の楽待

 

情報提供元(外部サイト)

不動産投資の楽待

不動産投資の楽待

株式会社ファーストロジック

最新記事を毎日更新

実際に不動産投資を行っている投資家の
「失敗談」や「成功談」をはじめ、
不動産投資をするなら必ず抑えておきたい
ノウハウを記事にして毎日配信!

【あわせて読みたい】

【PR】Yahoo!ファイナンスからのお知らせ

Yahoo!ファイナンスの特集

平均年収ランキング

ヘッドライン