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アンジェス Research Memo(3):HGF遺伝子治療薬が国内で条件及び期限付販売承認を取得

3月26日(火)16時48分配信 フィスコ

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■主要開発パイプラインの動向

アンジェス<4563>の主要開発パイプラインは、HGF遺伝子治療薬、NF-κBデコイオリゴ、DNA治療ワクチン等がある。各パイプラインの概要と進捗状況、今後の開発方針は以下のとおり。

1. HGF遺伝子治療薬
HGF遺伝子治療薬は、血管新生作用の効果を活用して重症虚血肢の症状を緩和することを目的に開発が進められてきた。重症虚血肢とは、安静時でも疼痛を感じる重度の末梢性血管疾患を指す。血管が閉塞することによって血流が止まり、下肢切断を余儀なくされることもある重篤な疾患となる。HGF遺伝子治療薬を血管が詰まっている部位周辺に注射投与することによって新たな血管を作り出し、血管新生による血流回復によって症状の改善を図る効果が期待されている。重症虚血肢の潜在患者数は米国だけで推定50万人とみられ、このうち現在の治療法(血管内治療や外科的バイパス手術)の適応とならない患者、あるいはこれら治療法を行うリスクが高いと判断される患者数は10~20万人と推定されている。

2019年2月に厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 再生医療等製品・生物由来技術部会にて審議され、条件及び期限付販売承認が了承された。今後正式に承認されれば5年以内を期限としてHGF遺伝子治療薬を投与した症例全例を対象に市販後調査(製造販売後承認条件評価)を行い、有効性や安全性を検証したうえで再度承認申請を行い、問題がなければ本承認の流れとなる。今後薬価収載されたのち、販売されていくことで承認取得によるマイルストーン収入や販売ロイヤリティ収入が得られると当社では考えている。なお、今回の承認申請では効能として「安静時疼痛及び潰瘍の改善」を目的としていたが、このうち「潰瘍の改善」が効能として条件期限付で承認され、「安静時疼痛の改善」については臨床試験等を別途実施していく予定となっている。

また、2019年2月にはイスラエルのKamadaとイスラエルを対象国とした導出(独占的販売権許諾)に関する基本合意書を締結しており、今後、イスラエルでも当局からの販売承認が得られ次第、Kamadaを通じて販売を開始することになる。イスラエルでは日本などの先進国で薬事承認された医療用医薬品については、同国での追加臨床試験を行うことなく承認される可能性が高く、早ければ2020年の発売を見込んでいる。今回の基本合意により、イスラエルで薬事承認及び保険償還が承認された場合に、同社は一時金として最大125万ドルを受領し、また発売後の累積売上及び年間売上に応じた一時金として最大285万ドル及び製品供給による売上を得ることになる。さらに今回は、Kodamaの主力製品であるα-1アンチトリプシン(AAT)製剤「Glassia」※の国内での製造販売権を同社に導出するために誠実に協議することに合意した。

※日本で難病指定となっているα1-アンチトリプシン(AAT)欠乏症の進行を抑える医薬品。AAT欠乏症になると、若年性に慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)を発症する。主な症状は、労作時呼吸困難、慢性の咳嗽・喀痰で、症状が進行すると酸素吸入、人工呼吸管理が必要となる。


米国での臨床試験開始に向けたFDAとの協議についても準備ができ次第開始する意向だ。協業先である米スタンフォード大学※と共同で過去の臨床試験データの解析を行い、同社において試験計画を策定している段階にある。同社では新たな治験デザインを検討しており、主要評価項目も国内で承認された「潰瘍の改善」としてFDAと協議を進めていくものと見られる。当面は国内での販売に関して田辺三菱製薬と連絡を密にして進めていく必要があるため、米国での臨床試験開始のタイミングは2020年以降になる可能性が高いと弊社では考えている。なお、臨床試験はスタンフォード大学医学部を中心に限られた少数の施設で実施することを想定している。また欧州市場については、米国での治験開始に目途が立った段階でEMA(欧州医薬品庁)との協議を開始する意向となっている。

※スタンフォード大学医学部内にあるSLDDDRS (Stanford Laboratory for Drug, Device Development & Regulatory Science)と呼ばれる組織と協業している。SLDDDRSは、同大医学部のRonald G. Pearl教授が中心となり、革新的な医薬品・医療機器の開発戦略の構築、臨床試験に関する新たな手法の開発と推進、そのために必要なスタンフォード大他組織との連携などを手がけている。


2. NF-κBデコイオリゴ
NF-κBデコイオリゴは、人工核酸により遺伝子の働きを制御する「核酸医薬」の一種で、生体内で免疫・炎症反応を担う「転写因子NF-κB」に対する特異的な阻害剤となる。主にNF-κBの活性化による過剰な免疫・炎症反応を原因とする疾患の治療薬として、研究開発を進めている。

(1) 椎間板性腰痛症(注射投与)
椎間板性腰痛症の患部に注射投与することによって、慢性腰痛に対する鎮痛効果とともに、椎間板変性に対する進行抑制や修復を促す効果が期待でき、新タイプの腰痛治療薬として2018年2月より米国にて第1b相臨床試験が開始された。

予定症例数は24例で、椎間板性腰痛症患者を対象としたプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験となる。投与後12ヶ月間の経過観察を行い、安全性及び有効性(痛みの緩和など)を確認する治験デザインで、カリフォルニア州立大学サンディエゴ校を中心に複数の医療施設で実施されている。当初の計画より若干遅れがあるものの、特段の支障もなく被験者の登録が進んでいるもようだ。治験期間としては24例目の投与が開始されてから12ヶ月後となるため、2020年以降の終了を目途としている。同試験によってPOCを取得できれば、ライセンスアウト交渉を進めていく方針となっている。椎間板性腰痛症は慢性的な腰痛疾患で、特に中高年層を中心に患者数も多く、市場規模が大きいだけに今後の開発動向が注目される。

(2) アトピー性皮膚炎(軟膏剤)
アトピー性皮膚炎(顔面に中等症以上の皮疹を有する患者を対象)を適応症とした第3相臨床試験を国内で2016年まで実施したが、主要評価項目においてプラセボ群に対する統計学的有意差が得られなかったため承認申請を断念している。今後は販売提携先である塩野義製薬の意向も確認しながら、開発方針を決定することにしている。

(3) 次世代型「キメラデコイ」
同社は2016年7月に、次世代型「キメラデコイ」の基盤技術の開発を完了し、製品開発を開始したと発表した。従来のNF-κBデコイオリゴと比較して、「STAT6」と「NF-κB」という炎症に関わる2つの重要な転写因子を同時に抑制する働きを持つため、炎症抑制効果も格段に高まることが期待されている。実際、動物実験ではNF-κBデコイオリゴに比べ格段に高い炎症抑制効果を持つことが確認されている※。また、次世代型「キメラデコイ」は生体内での安定性に優れるほか、NF-κBデコイオリゴよりも分子量が3~4割少ないため、生産コストも低くなるといった長所を持っている。

※核酸医薬の専門誌であるMolecular Therapy-Nucleic Acids(2018年3月発行)に、マウスを使った動物実験での研究論文が掲載された。キメラデコイを気管内に投与した結果、喘息の原因である炎症を引き起こす生体内物質の増加を抑え、気管内の炎症を抑制する効果が確認されたこと等が報告されている。


同社では具体的な対象疾患として、喘息、慢性関節リウマチ、変形性関節症、クローン病(炎症性腸疾患)などの炎症性疾患を想定している。既に開発が進行中の椎間板性腰痛症については既存のNF-κBデコイオリゴで開発を継続するが、今後新たに開発するものに関しては、基本的に「キメラデコイ」で進めていくことになる。現在は製品の完成度を高めている段階で、前臨床試験の開始時期は未定となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《SF》
株式会社フィスコ

最終更新:3月26日(火)17時23分

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