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iPhoneのみで完結できる「Apple Card」の正体

3月26日(火)13時00分配信 東洋経済オンライン

3月25日、Apple Park内のSteve Jobs Theaterでアップルブランドのクレジットカード「Apple Card」を発表するティム・クックCEO(筆者撮影)
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3月25日、Apple Park内のSteve Jobs Theaterでアップルブランドのクレジットカード「Apple Card」を発表するティム・クックCEO(筆者撮影)
 アップルは3月25日、Apple Park内のSteve Jobs Theaterで新サービスを発表するイベントを開催した。この中でテレビ番組や雑誌、ゲームのサブスクリプションサービスとともに発表されたのが、アップルブランドのクレジットカード「Apple Card」だ。

 Apple CardはiPhoneのみでその場で発行することができるクレジットカードだ。

 これまでのApple Payでは、発行済みのクレジットカードをiPhoneで読み込ませてApple Payとして利用できるようにする仕組みだった。そのためアップルは日本を含む世界各国のカード発行銀行に、Apple Payの普及を広げてきた経緯があった。
 しかしApple CardはApple Pay主体のクレジットカードだ。プラスティックカードの到着を待たず、すぐにApple Payとして設定されて使えるようになる仕組みになった。

 Apple Payが利用できない店舗向けに実物のカードも発行されるが、チタン製で券面にはカード番号や有効期限、セキュリティーコードの表示はなく、すべてiPhone内で調べることになる。

■既存のカードの「概念」を覆す

 Apple Card発行に当たり、Appleがパートナーに選んだのはゴールドマン・サックス。iPhone向けにデザインし直したクレジットカードは、利用残高や支払期日までの日数などもすべてiPhoneのWalletアプリ内で確認できるという。
 さらに会場が驚かされたのは、遅延損害金、年会費、海外利用手数料、限度額超過手数料を廃止し、より低い利率を実現している。そのうえで、通常のApple Payの買い物で2%、Apple StoreやAppleのサブスクリプションサービスは3%のキャッシュバックを設定した。

 しかも、そのキャッシュバックは「デイリーキャッシュ」と呼ばれ、1カ月ごと、1年ごと、あるいはポイント付与ではなく、毎日Apple Pay Cashを通じて現金価値としてキャッシュバックが行われる。
 Apple Pay Cashはすでにアメリカなどでサービスが提供されている個人間決済をiMessageで可能にする仕組みだが、そのまま店舗での決済にも利用でき、手数料ゼロで自分の銀行口座に戻すこともできる。つまり本当の意味でのキャッシュバックが毎日受けられるのだ。

 Apple Cardは2019年夏から、アメリカ向けに発行される。なお国際ネットワークはマスターカードをパートナーに迎えている。

 アップルはApple Cardを通じて、顧客に対して「より健全な金融生活」を提案した。手元のiPhoneですぐに利用額や返済額を確認することができるApple Cardは、ちょうど画面を見る時間の統計を取るように、iPhone内で消費の傾向が集計されてグラフで表示できるようにしている。
 決済履歴は、アップルの地図データを使い、どの店でいくら購入したかを店のロゴやカテゴリを表示して確認でき、紙の利用明細とは異なる体験を実現している。

 こうして消費傾向を「見える化」することによって、消費の見直しなどを毎日意識することができるようになる効果を狙っている。

 その一方で、アップルは利用者の明細のデータを収集することをせず、端末の中で集計したり、店舗の情報を明細に付与するとしている。明細データを販売するようなこともないという。先述の明細と地図とのマッチングも、端末内の処理だという。
 この点もアップルのプライバシーの基準に合わせてサービスを実現しており、この問題に注目が集まるアメリカ市場では、重要な訴求のポイントになっていくだろう。

■銀行への挑戦とも取れるが…

 アメリカでは一般的なクレジットカードで、利率は15~27%程度が設定されており、また大きなリワード(特典)が付いているカードを作るには、より高いクレジットスコア(個人信用力)が求められる。

 アップルは今回の発表で、具体的な利率のレートを指摘しなかったうえ、どんな人がApple Cardを作れるのか、という点にも触れなかった。夏までに明らかになると考えられるが、信用力に応じて利率が決まるような仕組みになることも考えられる。
 アップルはApple Payについて、セキュリティーの高さを背景に、利用者と加盟店、発行銀行に対して、不正利用の撲滅による不便さとコストの低減を説き、導入を進めてきた経緯があった。

 Apple Cardの発行は、2015年以降協力してきた銀行の競合としてアップルが名乗りを上げたことを意味している。しかも、利率を低く抑え、手数料を廃止し、はじめからiPhoneを前提としているApple Cardが奪う顧客は、カード会社としても見過ごせないはずだ。
 今後、キャッシュバックやリワード、デジタルでのサービスなどを中心として、アメリカの個人向けファイナンシャルサービスでの競争が激化することが考えられる。

 その一方で、リワードが不十分である点、これまで支出管理がクレジットカード訴求にあまり効果的でなかった点、アップルのデータ分析力への期待感の薄さを理由に、さほど大きな影響力を持たないのではないか、と厳しい見方もみられる。

 アップルが乗り出した金融サービスが受け入れられるのか、また金融業界がどのような反応を示すのか、夏以降の動向が注目される。
松村 太郎 :ジャーナリスト

最終更新:3月26日(火)13時00分

東洋経済オンライン

 

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