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「潮田はノー」、リクシルに投資家が解任要求

3月24日(日)5時00分配信 東洋経済オンライン

機関投資家から「ノー」を突きつけられた、LIXILグループの潮田洋一郎・会長兼CEO(2019年1月、記者撮影)
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機関投資家から「ノー」を突きつけられた、LIXILグループの潮田洋一郎・会長兼CEO(2019年1月、記者撮影)
LIXILグループ(以下リクシル)の不透明なガバナンスに対し、機関投資家がついにしびれを切らした。イギリスのマラソン・アセット・マネジメントやポーラー・キャピタル・ホールディングスなど機関投資家4社は3月20日、共同で「リクシルに対し、臨時株主総会の招集請求を行った」と発表した。
同社では2018年10月31日、社外から招聘した代表執行役の瀬⼾欣哉・社長兼CEOが突然辞任。後任には創業家の潮⽥洋⼀郎氏が会長兼CEOに復帰し、社外取締役の山梨広一氏がCOOに就任した。
その理由について潮田氏は、当時の会見で持ち株会社の必要性など瀬戸氏との「認識の違いが最後まで埋まらなかった」と説明したが、メディアや機関投資家は納得をせず、いらだちを募らせていた。
こうした状況を受けてリクシルは2月25日、外部の弁護士に依頼して行った報告書の要旨を公表。潮田氏が指名委員会に対して瀬戸氏が辞任する意向があるように説明したこと、瀬戸氏に対しては指名委員会の総意なので辞任するように促した事実を認定している(ただし、人事に関する取締役会の決議は有効とした)。
不十分な説明を続けるリクシルに対して、機関投資家4社はついに潮田氏と山梨氏の解任に動き出した。しかも、この動きに社内取締役の伊奈啓⼀郎氏も賛同して共同提案者に名を連ねている。目的は何か。臨時株主総会招集を主導するマラソンの高野雅永・東京事務所日本調査担当、ポーラー・キャピタル・パートナーズの小松雅彦・調査部長に聞いた。

■見たこともないようなガバナンス

 ――これまでの経緯は? 

 高野氏:リクシルのCEOが瀬戸氏から潮田氏に交代する中で、いつくかガバナンスの問題があった。指名委員会のメンバーである潮田氏が自分自身を執行役に指名した。山梨氏は指名委員の委員長。これは見たこともないし聞いたこともないような違反だ。
 (昨年の)12月17日に潮田氏と山梨氏から機関投資家向けの説明があった。CEO交代の理由として、潮田氏は「瀬戸氏のCEOとしての力量があまりにもひどかった。会社のバリューを大きく毀損するので解任に至った。(指名委員がCEOになることは)ガバナンスに問題あると思ったが、緊急性から踏み込んだ」と説明した。

 本当かなと思うところがあり、取締役会と指名委員会の議事録の開示を要求したが断られた。そこで2人以外の社内外の取締役に質問状を送ったが、「1月の取締役会で返事をするかどうかを検討する」と返事があった後は、なしのつぶてだった。
 その後、2月25日に外部弁護士による経緯や手続きの検証結果が出た。内容は18ページあるものをリクシルが個人情報と会社の機密を除いて8ページに縮めたものだ。この内容が事実だとすると、潮田氏が二枚舌で、誤解、ミスリードした形だ。

 3月7日の機関投資家向け説明会でも、社外取締役の川口勉氏は、瀬戸氏の経営手法に疑問があったと繰り返した。だが、報告書に(深刻な意見対立があったと記載はあるが)それについては書かれていない。
 本当に瀬戸氏の経営手腕に問題があるのならば、非常に重要なことなので、会社の公的なところで話しあってもらわないと困る。そうでなければ飲み屋で言うのと同じだ。

 そもそもCEO交代の経緯を聞いているのに、機密情報や個人情報が18ページ中10ページもあるのか疑問がある。説明会では「本当に公平な第3者を入れて、黒塗りにするなりして全文を公開してくれ」「株主の代表である社外取締役がちゃんと対応して欲しい」と要望があがったが、川口氏は「承りました」と言った後、何もない。
 (解任に至る)事実関係もひどいが、その後のコミュニケーションでも株主をないがしろにしている。今回、瀬戸氏と潮田氏のどちらがよいCEOなのか、という次元を問題にしているのではない。(潮田氏が)ガバナンスそのものに対して、株主の信頼を裏切ったという点だ。

 形式上、リクシルには指名委員会がある。だが、みんな感じているようにその中身は本当に機能しているのか。(リクシル株を)3%程度しか持っていないであろう創業家の潮田氏が(リクシルの経営を)私物化してしまった。
 これを突き付けられた以上、株主としては潮田氏と山梨氏に経営を託せない。また、われわれには顧客から資産を預かって運用しているという受託者責任もある。株を売って損切りするのではなく、株主責任と受託責任を果たすために臨時株主総会を招集した。これが背景だ。

■「最後の手段として解任を要求する」

 小松氏:確かに瀬戸氏の改革は短期的にはコストが先行して業績はよくないが、長期的には当時の執行部の戦略がうまくいき、株価は上がるとみていた。ところが突然、不可解なCEO交代が起きて、リカバリー策も中期経営計画も宙に浮いた状態になった。
 私は20年以上アナリストをやっているが、中間決算の説明会で突然CEOの交代を発表、しかも中期経営計画の最初の半年での交代というのは記憶がない。

 これ自体はいきなり起こった「事故」のようなもの。だがその後、事情を説明をして欲しいと、社外取締役に書簡を送ったが回答はなく、面談への回答もない。3月の(社外取締役の)川口氏の説明会が会社の回答かもしれないが、その説明も十分でなかった。

 コーポレート・ガバナンス・コードには「CEO選任は会社の最重要の戦略的意思決定。十分に時間をかけて審議する」と書いてあるが、報告書を読めば、とてもそんなことが行われた形跡はないとはっきりした。
 われわれは潮田氏(の戦略)がよくて投資したわけでない。株を売るのではなく、リクシルのバナンスの機能不全を正すこと。正しい状況に持って行くこと、それが受託者責任と思って立ち上がった。

 会社側がコミュニケーションを取ろうとしてない以上、最後の手段として信頼の置けない2人の取締役を解任を要求する。残った人たちが自浄作用を発揮し、しっかりした後継を決めることを期待したい。

 ――臨時株主総会の招集を機関投資家が、しかも連名で行うのは極めて珍しい。
 高野氏:今回はマラソン主導でやったと理解して欲しい。連名になった理由は、臨時株主総会開催の基準(6カ月以上、3%以上を保有する株主に招集権限がある)を1社では満たしていなかったことにある。

 私が説明会に出たり、報道で名前が出たことで(賛同する機関投資家の議決権が)少しずつ積み重なっていった。また社内取締役会の伊奈啓⼀郎氏など、われわれの「ガバナンスをより正しい方向性に向かわせたい」という考えに共鳴してくれる方が出てきた。時間はかかったが、なんとか臨時株主総会の招集請求を出せる状況になった。
 ――通常は社内取締役を牽制するのは社外取締役の役割だ。

 高野氏:これまでも社外取締役の対応をお願いしてきたが、アクションはない。せいぜいが、3月の説明会に出てきて、言い訳のような説明をしていただけ。残念だった。

 本来ならば株主の立場を代表するはずなのにどこを見ているのか。われわれの提案を受けて、社外取締役の本来あるべき姿、果たすべきことを考えてもらいたい。

 ――今回、リクシルに求めたのは潮田氏と山梨氏の解任だけか。自社が推薦する取締役の選任などは求めないのか? 
 高野氏:求めたのは2人の解任だけだ。株主にできるのは取締役の解任だけであり、CEOやCOO(など執行役)の選任は会社が決めることだ。3月20日付で臨時株主総会招集請求書を投函した。すみやかに招集するように要求している。

■委任状争奪戦はやらない

 ――プロキシーファイト(委任状争奪戦)などはやらないのか? 

 高野氏:今回は瀬戸氏と潮田氏、どちらのCEOが優れているかという、優劣を問うのではない。ガバナンスを問うという議案だ。リクシル株主の7割は機関投資家で、投票結果は公表される。票取り合戦をやるよりも、株主にもちゃんと考えてもらいたい。
 ――これまで株主が臨時株主総会を招集するのは、経営権を取る目的が多かった印象だ。今回はリクシルのガバナンスを問うためだけに、手間とお金をかけて臨時株主総会を開く。この会社にそこまでの価値があるのか? 

 高野氏:(臨時株主総会の開催を要求した)4者のコンセンサスではないが、私はこうした行動を通じて、ガバナンスが正しい方向に向かうことで、日本株もよい方向に向かうと思っている。会社は誰のものか、(利益やキャッシュの)分配を株主、役職員、成長投資のどこに向けるのか考えてもらえる良い機会になるはずだ。
 小松氏:スチュワードシップコード、コーポレート・ガバナンス・コードが導入されて約4年。対話をしていけば、こういうことにならないケースもある。ガバナンスの不備が是正されていけば、外国人投資家の日本に対する見方もポジティブに変わるのではないのか。

 ――瀬戸氏の執行役への復帰はありえるか? 

 高野氏:繰り返しになるが、株主が(執行役の)CEO、COOを任命するのはスジが違う。それは取締役、指名委員会がちゃんと株主の声を聞いて判断するべきことだ。
松浦 大 :東洋経済 記者

最終更新:3月24日(日)8時36分

東洋経済オンライン

 

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